空一面を覆い尽くす鉛色の雲。吹き抜ける秋風に乗ってふわりと舞い降りたのは、真綿のように白い雪だった。
まだ10月に入ったばかりというのに、こんなに早い時期に雪が降るなんて。蓮水・志苑(六出花・e14436)は息を飲み込み、季節外れの雪に誘われるように山村の中へ足を踏み入れる。
「この先にあるのは、もしかして……」
次第に高鳴る胸の鼓動。視線の先に待ち受けるのは、一帯がモザイクに包まれた不思議な空間だった。
靄がかかったように霞んで映る視界。原型が崩され曖昧に歪められたような奇怪な領域に、志苑は逸る気持ちを抑え切れずに歩みを進める。
周囲は肌のみならず心にまで纏わり付くような、粘液の液体で満たされている。とはいえ息苦しさはなく、自らが発する声も明瞭に聴こえるようだ。
自分の予感が正しいのなら――心の隅に抱く複雑な想い。自身が今この場所に至るのは、決して偶然などではないだろう。
「このワイルドスペースを発見できるとは……貴女はこの姿に因縁ある者かしら」
いつの間にか目の前に顕れた一人の少女。志苑の漆黒の髪とは対照的な、雪のように白い髪。身に纏う着物もまた純白で、紫色の双眸だけが、二人を繋ぎ合わせる共通点となる。
「ですが……今、ワイルドスペースの秘密を漏らすわけにはいきません」
志苑とよく似た面影を持つ少女の両手には、一振りの薙刀が握られている。氷のように冷たい光を放つ真白き刃をちらつかせ、淡々と囁く言葉に宿るのは、明確なる殺意であった。
「貴女は、ワイルドハントである私自らの手で――死んでもらわなければなりません」
少女の胸に飾られた、緋色の花は血の色にも似て。けれどもそれは、志苑が心の底で望んでいるものかもしれないと。
己の内に眠る羅刹の心。眼前に立ちはだかる少女がもしそうであるのなら――志苑は運命に導かれるように武器を手に取り、力を解き放つ。
戦場に美しく舞い踊り、咲き乱れる白雪の華。壮麗なる剣戟の音を響かせながら――。
ワイルドハントの調査を行っていたケルベロスが夢喰いに襲われるという事件。
これまでにも多くの事例が発生しているが、ある山村へ向かった志苑もまた同様に、襲撃を受けたようだと玖堂・シュリ(紅鉄のヘリオライダー・en0079)が説明をする。
そのドリームイーターは自らをワイルドハントと名乗っているようで、モザイクを覆った現場の内部で何らかの作戦を行っていたらしい。
「このままだと志苑さんの命が危険なことは間違いない。キミ達はこれから現場に急行し、彼女の救援に向かってほしいんだ」
これからケルベロス達が向かう戦いの舞台となる場所は、空間内が粘液で満たされているものの、戦闘行為に支障が及ぶことは一切ない。また現場に到着すれば、すぐに志苑とも合流できるだろう。
敵となるワイルドハントは、志苑と似て非なる少女の姿をしているようだ。敵は冷気を帯びた薙刀を得物とし、刺突攻撃の他、吹雪を発生させて動きを阻害させたり、無数の斬撃を繰り出してくるようである。
ヘリオライダーの力を以てしても予知できなかったこの事件。それを志苑が調査によって発見できたということは、敵の姿と関係があるのかもしれない。
「とにかく今は何よりも、志苑さんを無事に助けることが先決だから。キミ達なら必ず全員で戻ってこれると――そう信じているよ」
仲間の窮地という困難も、彼等ならきっと乗り越えられるだろう。
シュリはヘリオンの操縦桿を強く握り締め、速度を上げて暗雲を突き抜けていく。
一刻も早く、『彼女』の元へ仲間を送り届けることを果たす為――。
参加者 | |
---|---|
セレナ・アデュラリア(白銀の戦乙女・e01887) |
千手・明子(火焔の天稟・e02471) |
天見・氷翠(哀歌・e04081) |
蓮水・志苑(六出花・e14436) |
御影・有理(書院管理人・e14635) |
翡翠・風音(森と水を謳う者・e15525) |
御堂・蓮(刃風の蔭鬼・e16724) |
クローネ・ラヴクラフト(月風の魔法使い・e26671) |
●因縁との邂逅
空からふわりと舞い降る白い華。
季節外れの雪は『そこ』に『何か』があるのを知らせるように、一人の少女を彼の地に導いていく。
山村としての原型を奇怪に歪められた空間で、蓮水・志苑(六出花・e14436)が廻り合ったのは――彼女とよく似た姿をした少女、と思わしき異形の存在だ。
「どうして私の……その姿をなさっているのでしょうか」
清浄なる氷の霊力纏いし太刀を抜き、志苑は自分と似た少女を最大限に警戒しながら威嚇する。外見の造形だけなら瓜二つと言える少女が異なる点は、志苑の黒髪とは対照的な雪のように白い髪。
あの姿は、まるでいつかの――。
これも奇縁というべきか。早鐘のように脈打つ鼓動、武器を持つ手も自然と力が強く加わって、極度の緊張感が彼女の心を支配する。
互いに相手の出方を伺いながら睨み合い、はらりと落ちる一片の雪が、剣先に触れたその瞬間――二人の少女が同時に動く。
しかしその時、タイミングを図ったかのように、二体のオルトロスがどこからともなく現れて。素早く二人の間に割り込んで、白髪のワイルドハントの少女に向かって飛び掛かる。
「大丈夫か、蓮水。ここから先は俺達も加勢する」
本格的な戦闘となる直前に合流を果たしたケルベロス達。
御堂・蓮(刃風の蔭鬼・e16724)は志苑の身を案じつつ、相棒の空木と並んで敵の少女の前に立つ。
「何とか間に合ったみたいだね。お師匠、しっかり援護をお願いね」
守りに就いたオルトロスに命じるクローネ・ラヴクラフト(月風の魔法使い・e26671)の声掛けに、白い仔犬は勇ましく吼え、主の言葉に確り応じるのであった。
片やクローネも、牽制気味に星降るオーラを蹴り込み敵の注意を引き付ける。
「この場所は普通の世界じゃなさそうね。皆、油断しないで」
空間内部に満たされている粘液が、身体に心に纏わり付くかのような不快感を覚えつつ。千手・明子(火焔の天稟・e02471)が黒鎖を操り地面に描くは、加護を齎す魔法陣。眩い光が仲間を包んで、守りの力を付与させる。
「……癒しの願い、命の想い、光雨となりて降り注げ……」
歪に崩れた異質なモザイク空間に、天見・氷翠(哀歌・e04081)の清廉とした祈りの声が澄み渡る。祝詞に合わせて水晶飾りの薄衣が清楚に舞い、精霊の力を宿した光が雨の如くに降り注ぎ、内に眠りし仲間の闘争心を活性させる。
「いくら志苑によく似た姿を取っていようとも、私達の目は誤魔化せない。志苑の命を奪おうとしたこと、後悔させてやる」
大切な友の窮地を救うべく、御影・有理(書院管理人・e14635)がワイルドハントに斬り掛かる。振り抜く刃は青白い輝き放って弧を描き、飛び退ろうとする敵の足元に、掠めた刃が僅かながらも血を滲ませる。
「顔形が似ているのは少々やり辛いものがありますが……それでも、手加減するわけにはいきません」
見知った者と同じ風貌の敵が相手とあって、翡翠・風音(森と水を謳う者・e15525)は若干気後れしていたが。仲間を救出する為ならばと、覚悟を決めて迎え撃つ。
氷の剣姫が刃を振るって一差し舞えば、吹雪が生じて番犬達の視界を遮ろうとする。しかし風音は棍を回転させて吹雪を凌ぎ、流れるような動作で突きを繰り出し、敵の腹部に打ち当てる。
銀色の髪を束ねた少女が携えるのは、乙女座の星辰宿した騎士剣だ。セレナ・アデュラリア(白銀の戦乙女・e01887)の研鑽された剣の技、仲間を守ると誓いを立てた刃が炸裂し、敵に一太刀見舞わせる。
「我が名はセレナ・アデュラリア! 騎士の名にかけて、貴殿を倒します!」
勇敢に名乗りを上げて、騎士たる少女がワイルドハントに立ち向かう。
斯くして、一人の仲間を救出すべく駆け付けたケルベロス達。その彼等とは対照的に、一対一の勝負を阻害されたワイルドハントは、薄ら冷たい微笑を浮かべつつ。この場に集った八人全ての番犬に、溢れんばかりの殺意を込めて襲い掛かってきた。
●羅刹の剣姫
「必ず来て下さると、信じていました。それでは共に参りましょう」
自分は決して一人だけではない。こうして増援に来てくれた仲間達の存在が、とても心強くて頼もしく。志苑の顔から一瞬笑みが零れるが、すぐに真剣な表情へと戻り、戦いに意識を集中させる。
精神力を極限まで高め、強く念じた力は敵の得物である薙刀を爆発させて吹き飛ばす。
「これが蓮水の……まるで伝承に伝え聞く、美しくも妖しい雪女だな」
志苑の姿と酷似しているワイルドハントの外見に、蓮は伝承にある妖を重ね合わせて対峙する。
この場所が因縁ある者にだけ見つけられるのは、果たして何の意味があるのだろう。疑問に思うことは多かれど、それなら叩いて聞き出すまでと。青蓮華の御霊を祀りし縛霊手から、霊糸の網を展開させて敵の動きを絡め取る。
「志苑の清らかな姿を、見た目だけでも真似たセンスは褒めてあげても良いかしら。でも、それもここまで――」
例え外見だけは似せたとしても、彼女の剣の鋭さだけは模倣できるものではない。
間近で見てきた親友の技、そこに届くかこの目で確かめようと。明子は黒塗りの打刀拵に空の霊力纏わせて、紫電の如き速さの突きを抜き放つ。
明子の放った一撃が、ワイルドハントの肩に突き刺さり、氷の剣姫が羽織る白い着物が血に染まる。しかし相手は痛がる素振りを微塵も見せず、刃を復元させて番犬達に牙を剥く。
「!? 早い……っ!」
ワイルドハントの冷気を帯びた刃が、明子を狙って迫り来る。身を躱して回避しようとするも間に合わず、咄嗟に武器で払って軌道を逸らし、どうにか直撃だけは免れた。
それでもその威力は凄まじく。掠めた程度と思った氷の牙の剣圧が、明子の脾腹を鋭く裂いて、滴り落ちる鮮血が地面を赤く染め上げる。
「確実に捉えたと思いましたけど――ですが、次は外しません」
かの少女を雪女と喩えるならば、少々可憐過ぎたのかもしれない。中身は獣のように獰猛で、脅威を覚える暴力的な太刀筋は――羅刹の如くと言っても過言でない。
「……大丈夫、すぐに治してあげるから」
回復役のクローネが、すかさず癒しの力を行使する。指に嵌めたシルバーリングの赤い輝石に手を添えて、捧げる祈りは光となって明子を包み、傷を癒して守りを固める盾と化す。
「例えこの身が傷付こうとも、仲間は必ず守り抜く――今度こそ、絶対に取り零さない」
有理の脳裏に蘇えるのは、ただ一人の肉親だった妹が、無残に命を奪われていく悲劇の記憶。あの時無力であった自分が得た力、それは最も大切なモノを亡くした代償だ。
――もう二度と辛い思いはしたくない、させたくない。
有理は強い決意を力に変えて、掌に込めた魔力が竜の姿を映し出す。顕れた竜は幻ではあるが、噴出された炎の息吹は紛れもない本物で。紅蓮の紗幕が煌々と燃え盛り、仲間を模した異形の影を灼き祓う。
氷を扱う相手を見ていると、風音は否が応でも故郷のことを思い出す。銀色に閉ざされた世界で全てを奪われて、辛くて哀しい記憶が風音の心を締め付ける。
でもだからこそ、あの時の二の舞だけはさせまいと、凛然と前を見つめてマインドリングに祈りを込めて。握り締めた手の中に、迸る光の剣が具現化される。
「この地に眠る森の精霊よ……どうか私に、力を……!」
一族から継いだ腕輪に想いを注ぎ、風音は過去を断ち斬るように光の剣を振り下ろす。
「ワイルドハントさんも事情はあると思うし、戦いたくはないけど……。蓮水さんだけは、無事に返してほしいから……」
氷翠が薄い青色混じりの白翼を、大きく広げて魔力を集束させる。凝縮された蒼い魔力の塊を、氷翠が掌翳してワイルドハントに撃ち込めば。解き放たれた冷気が渦を巻き、時を凍て付かせる結晶が、敵の身体を蝕んでいく。
「己の物ではない、借り物の力である以上、その能力を使いこなせるわけがありません」
例えケルベロスの暴走した姿に変化しようとも、力自体が本人よりも上回ることはない。セレナも自身の裡なる獣の力と向かい合い、戦ってその試練を乗り越えてきた。
だから今度は自分が支えになるのだと、セレナは全ての魔力を身体に巡らせ、持てる力を瞬間的に限界まで引き上げる。
「参ります! アデュラリア流剣術、奥義――銀閃月!」
セレナの家系に伝わる剣術の、奥義の一つ。駆ける疾さは相手を超越し、摺り抜けるように敵の背後に回り込み、閃く刃がワイルドハントの空いた背中を斬り付ける。
「ええ。己が姿容を取られても、私自身とは似て非なる、全く別なるモノに他ありません」
見た目に惑わされ、己を見失ってはそれこそ相手の思う壺である。志苑は努めて冷静に、敵の全てを見極めようと、ありとあらゆる全神経を研ぎ澄ます。
セレナの攻撃で、一瞬よろめき生じたその隙を、逃しはしないと追撃に出る。手にした刀は氷のように透き通り、振り翳して放つ斬撃は、目には見えない霊体のみを薙ぎ祓う。
表情にこそ表れないものの、ワイルドハントの動きが次第に鈍りつつある状態に、ケルベロス達は攻撃が確かに効き目を及ぼしていると感じ取る。
とはいえ敵の火力は未だ衰えない。威力の高い攻撃は、ケルベロス達の体力を徐々に削って消耗させて。それでも全員が力を合わせて互いを補い、敵の苛烈な猛攻も、踏み止まって耐え抜いていた。
傷の治療もクローネだけでなく、リムとシャティレの二体の小竜も手伝って。ここまで誰も倒れることなく、戦いはいよいよ佳境に入ろうとする。
●雪解けの刻
其れが本物ではないと分かっていても、友達が暴走した姿を見てしまうのは、些かの心苦しさを感じずにはいられない。
彼女のあんな姿を見るのは、どうか今日が最後でありますように。クローネの友を想って慈しむ、優しい心が吹き抜ける一陣の風に乗る。
「――春の訪れを告げる、豊穣の風。穏やかで優しい西風の王よ。我等に、花と虹の祝福を授けたまえ」
春の陽射しのような微風が、甘い花の香を運んで戦場中に広がって。戦う者の心と身体に安らぎ与え、更なる気力を呼び醒ます。
「さっきと比べると、技の切れも落ちてきたようね――遅い!」
氷の剣姫が刃を大きく振り被ろうとする、その動きを察した明子は、相手の攻撃よりも先に仕掛けて間合いを詰める。
右片手上段へ構えた刀を、相手の刃に重ねて擦り上げて。白鷺が翼を広げて羽搏くかの如く、華麗な剣舞は敵を斬り裂き、鮮やかな朱色の花が乱れ咲く。
「……お伝えしましょう。……鼓動なきもの達の声を、意思を」
風音が瞑目しながら静かに語り、自然が放つ波動を自らの身体の中に取り込んでいく。集めた力を練り上げて、創成したのは一振りの風の太刀。
呼吸を合わせて心を自然と同化させ、大気の刃がうねりを上げて流れる気脈を一閃すると――ワイルドハントは鼓動を断たれ、身体を震わせ悶えるように片膝を突く。
氷の剣姫の口から呼気が漏れ、息を荒げて苦しそうな顔をする。あと一息のところまで敵を追い詰めて、ケルベロス達はこのまま一気に攻めて勝負を賭ける。
「……もう、ゆっくり休んでいいんだよ」
ワイルドハントが何を行うつもりなのかは分からない。しかしその根底にあるものは、おそらく悲しい原理なのかもしれないと。
だからせめて最期はひと思いにと、氷翠は御業の力を用いて敵を捕らえて抑え込む。
そこへセレナが駆け寄って、剣を浴びせて深手を負わせ、友たる少女に視線を送って止めを託す。
「そろそろ、雪解けの時ですね。……志苑殿。最後は、あなたの手で」
しかしそう容易く討ち取られるわけにはいかないと、手負いの剣鬼は番犬達の捕縛を振り払い、死力を尽くして最後の足掻きを試みる。
「あの技は……」
相手が繰り出そうとする技の型には、氷翠も見覚えがある。気を付けて、と呼び掛けようとするより前に、敵の方が早く仕掛けて志苑を襲う。
刃で咲かせる戦の華は、命を散らす無数の剣撃となり。荒れ狂う雪嵐の如く残酷無比に、六花の刃が同じ姿の少女を斬り刻もうとする。
「蓮水を傷付けさせはしない……俺が絶対、守ってみせる」
剣鬼の前に立ちはだかった一人の少年。蓮が身を挺して少女を庇い、敵の捨て身の攻撃全てを受け止め、闘志を奮い立たせて耐え凌ぐ。
「瑠璃の空、底より染め上げ。目覚め告げるは、暁の御子――」
有理の唇から紡がれる、『光を齎す者』を讃える詩篇。古代語魔法の詠唱は、荘厳たる声を響かせながら、蓮の負傷を瞬く間に治す。
「星の群れより尚美しき、輝く者よ――灯と為れ!」
続けて有理が唱える理は、蓮に遍く星の加護を齎して。闇を葬る意志を力に変えて、彼の者に光輝く暁色のオーラを纏わせる。
「……来い、くれてやる。代わりに刃となれ」
蓮が古びた書物を取り出し頁を捲り、封印された思念を己の中に降臨させる。自身の力を媒体に、現れたるは赤黒い影の鬼。
豪快に腕を振るえば、雷を帯びた風が吹き荒れて。敵の動きを封じたところへ、志苑が刀を手にして歩み寄る。
「舞うは命の花、訪れるは静謐、白空に抱かれ――終焉へお連れいたします」
先程のワイルドハントと似た剣捌き、しかし絶対的に違うのは、彼女自身の迷いのない信念だ。その揺るがぬ矜持は、心の無い紛い物では到底叶う筈はなく。凛として尚咲き誇る白雪の、追儺の剣を手向けの花として。
容を模しただけの氷の剣姫は遂に力尽き――景色の中に溶け込むように、儚く霞んで消え散った。
敵の脅威を退けた今、彼等がこの地に留まる理由はもう何もない。
大切な仲間が無事でいてくれた、そのことがこの戦いにおける最大の成果だろう。
どれだけ容姿を似せた相手でも、それが暴走した姿であろうとも、彼等は己を見失うことなくこの困難に打ち勝った。
「そもそも偽者と見間違えるようなことはないからな。それに、本物の方が……」
蓮がぽつりと呟きながら、志苑の顔をふと見つめると。黒髪の少女が不意に振り向き互いの目が合って、少年は指で頬を掻きながら、気まずそうに目線を逸らして誤魔化した。
そんな二人のやり取りに、明子は目を細めて嬉しそうに顔を綻ばせ、小さく頷きながら心の中で安堵した。
作者:朱乃天 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年10月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 1/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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