金髪ドリルヘアーお嬢様こそが至高ッ！

■リプレイ

●教会前
「縦ロールとは、また随分とおかしな教義を思いつくものだねぇ」
　ノア・ノワール（黒から黒へ・e00225）はしみじみとした表情を浮かべながら、仲間達と共にビルシャナが拠点にしている教会の前に立っていた。
　ビルシャナは金髪ドリルヘアーお嬢様こそ至高であると訴え、信者達と一緒にイケナイ妄想を膨らませているようだ。
「ドリル、ドリルねえ……。そこまで熱中するものなのかなーと私は思うね」
　ノエマ・コルレオーネ（いつも心に小倉トースト・e38454）が、自分の考えを述べる。
　だが、ビルシャナ達はドリルヘアーのお嬢様に夢中らしく、朝から晩までその事ばかり考えているらしい。
「―――これって、アレでしょ？　エロゲ―とかによくあるシチュのヤツ。そんなもの子供のときからやりこんでる私はとっくにマスターしているからね」
　筒路・茜（赤から黒へ・e00679）が、えっへんと胸を張る。
　そういった意味でも、今回の依頼は楽勝……楽勝のはず。
「それでは、皆様のヘアーセットを行いますわ」
　シア・アレクサンドラ（キボウノウタヒメ・e02607）がニコッと笑って、仲間達のヘアーセットをし始めた。
「ドリルヘアーは初めてだね。うーん、なんというか……あれだね。恥ずかしいね」
　ノエマが苦笑いを浮かべ、自分の髪型をチェック。
　ミミックのレスターが『自分も！』と言わんばかりに、ピョンピョンした。
「いや、あんた髪ないじゃん……」
　これにはノエマも、ツッコミ。
　レスターはションボリである。
「意外と悪くありません……わね」
　ウォーグ・レイヘリオス（山吹の竜騎を継ぐもの・e01045）も、シアに金髪ドリルヘアーにしてもらい、まんざらでもない様子で鏡を眺めた。
　お嬢様っぽい服を着ているので、雰囲気もバッチリ。
　これでビルシャナ達のハートも鷲掴み間違いなしだ。
「俺は金髪ドリルヘアーのお嬢様、俺は金髪ドリルヘアーのお嬢様になる……今日の俺は金髪ドリルヘアーのお嬢様だ！　これでどこからどう見ても金髪ドリルヘアーのお嬢様……ですわ！！」
　七種・徹也（玉鋼・e09487）も金髪ドリルヘアーのカツラを被り、ゴージャス極まりないドレス姿で、自分自身に言い聞かせた。
　何となく自己催眠を掛けて、金髪ドリルヘアーのお嬢様になったため、これで完璧、バッチリである。
「髪は銀だが……この心は黄金に輝いているはずだから、大丈夫さ！」
　ヴォルフラム・アルトマイア（ラストスタンド・e20318）もビハインドのアレクと一緒にドリルヘアーになって、互いにみょいんみょいんと引っ張り合う。
　そのおかげで憂鬱な気持ちが吹き飛んだものの、素直に喜んでいいのか微妙なトコロである。
「ドレスも着た！　シアちゃんに髪もバナナドリルにしてもらった！　言葉遣いもマスターした！　いざ、ビルシャナァ！　ですわっ！」
　そう言って難駄芭・ナナコ（爛熟バナナマイスター・e02032）が金髪ドリルヘアーに黒ゴスロリ姿で、バナナをモグモグ食べながら、仲間達と共に教会の中に入っていった。

●教会内
「いいか、お前ら！　ドリルヘアーのお嬢様こそが至高ッ！　そして、俺はそんなお嬢様に罵られるため、今まで生きてきたッ！　それは、何故か？　それこそ至高だからだ！」
　教会の中にはビルシャナがおり、信者達を前にして、自らの教義を語っている最中だった。
「どうも初めまして。えーと、ノエマですわ。とりあえず、お聞きしますけど、何が望みなんですの？」
　すぐさま、ノエマがお嬢様風の口調で、ビルシャナ達に語り掛けていく。
「だったら、俺達を罵れ！　いや、罵って下さい」
　ビルシャナが即座に、土下座！
　まわりにいた信者達も、床に頭を突っ伏し、同じように土下座である。
「――茜、タイが曲がっていてよ」
　そんな中、ノアはビルシャナ達をスルーして、茜のタイを直し始めた。
「―――……あっ！　ノアぁっ♪」
　茜もまんざらではない様子で、ほんのり頬を染める。
「うぐぐ……、何か違うッ！　もっと、こう……なんというか、アレだ。もっとドＳじゃないと……」
　しかし、ビルシャナは不満顔。
　まわりにいた信者達も、罵ってもらう体勢でいたため、とても困り顔のようである。
「フフフ、ならば……どうだ、この完璧なドリルヘアーは！　素晴らしいだろうっ！　ですわっ！　更に！　このドリルヘアーはな！　バナナを収納するのにも役に立つのだ！　つまりバナナを実用的に生かせる髪型という事なのだぁ！　ですわっ！」
　それに気づいたナナコが荒獅子の如く勢いで、ビルシャナ達にドヤ顔で、お嬢様アピールをし始めた。
「おお、いいぞ！　いいぞ！　もっと、だ！　もっと、こうっ！　高飛車で……俺達を見下し、ゴミを見るような目で……罵ってくれ！」
　その途端、ビルシャナが興奮した様子で、床に頭をズズーッと擦りつける。
　まわりにいた信者達も『お願いしますッ！』と言わんばかりに、瞳をウルウルとさせた。
「それよりも皆様、そんな鳥人間さんと戯れているより、こちらに来て一緒にお茶などどうかしら？　やらないといけないことがありますので、その後になりますが……。いったんここから出ていっていただけるとわたくし嬉しいですわ」
　シアが含みのある笑みを浮かべ、信者達に視線を送る。
　だが、信者達は戸惑いムード。
　その間もビルシャナにジッと睨まれ、自分の考えを口に出せないようだった。
「……悲しいな。君達は、まるで変に固まってしまったコンクリートだ。そんな鳥さんに惑わされて、私達（金ドリ嬢）の手を煩わすなんて……。本当にダメな使用人だ。いくらだって罵倒してあげるよ。そんな鳥よりも、私達の傍に来なさい。厳しく叱ってあげるから」
　そんな空気を察したヴォルフラムが、信者達に交渉を持ちかける。
　それは信者達にとって、甘い誘惑。
　しかし、ビルシャナに逆らう事は、ある意味で自殺行為。
　命を捨てる覚悟がなければ、出来ない事であった。
「はぁ……まったくもって度し難いですわね。ここで駄鳥の味方をしても、得する事なんて何もないのに……。……とは言え、私（わたくし）、無駄な命を奪うのは嫌いですの。だって、命を奪うのにも労力が居るでしょう？　皆様方を豚だと言うつもりはありませんわ。家畜は私達の血肉となるもの。今のあなた方はそれ以下でしょう？　……もし、家畜程度には扱いをよくされたい、というのなら、そこの駄鳥を差し出してくださらないかしら？　そうすれば、お仕置き程度で済ませてあげてもよろしいですわよ？」
　それに気づいたウォーグが笑顔を浮かべ、思わせぶりに九尾扇を仰ぐ。
　そのため、信者達は余計にオロオロ。
　『この状況だったら、ビルシャナを裏切った方が得じゃね？』と言わんばかりの雰囲気である。
「お、お前ら……」
　ビルシャナもこれには唖然。
　あまりにも真っ直ぐな信者達の欲望に、驚きが隠せないようだった。
「聞けェ、愚民ども！　いますぐ俺達の言う事を聞いて、ビルシャナから離れるんだ！　ですわ！　俺と一緒に来れば、愚民であることを馬鹿にしつつも、最後まで見捨てないでいてやるんですわ」
　徹也も金髪ドリルヘアーを揺らしながら、捲し立てるようにして信者達に語っていく。
「ええい、お前らサーカスごっこはおしまいだぁ！　私が調教してやる！　イピカイエー、アホンダラァ！　ハムスター野朗ども！　全員そこへ並べえ！」
　その途端、ノエマが痺れを切らせて怒り出し、信者達を怒鳴りつける。
「わ、分かりました～」
　次の瞬間、信者達がビクンと身体を震わせ、ズラリと横に並ぶのだった。

●ビルシャナ
「うぐ……信者達が借りてきたわんこの如く従順に……！」
　ビルシャナが羨ましそうにしながら、拳をぶるりと震わせる。
　条件的に考えて、ビルシャナは論外。仲間外れ。
　そのため、ドサクサに紛れて、並ぶ事が出来なかったものの、これはこれでアリ。
　ぼっち状態で放置プレイも、御褒美以外の何物でもないと、実感したようだ。
「……何も驚く事はない。ビルシャナの傍と私達の傍……。その選択を迫られ、私達を選んだだけだ」
　ヴォルフラムがクールな表情を浮かべ、ビルシャナにゼログラビトンを放つ。
「やっぱり、お嬢様っぽいといったらあれだね、魔法」
　続いて、ノエマが小倉トーストを投げて爆発させ、ビルシャナの身体を凍らせた。
「……えっ？　小倉トーストが爆発……しかも、凍った。な、何故……！？」
　これにはビルシャナも驚き、思わずツッコミ。
　身を守る事よりも、ツッコミを優先した。
「こんな感じかな。……かしら？」
　ノアもお嬢様っぽく振舞いながら、ビルシャナに戦術超鋼拳を叩き込む。
「うぐ……これは魔法と言うより……物理……。でも、嫌じゃ……ないッ！」
　だが、ビルシャナは内側から湧き上がる何かを感じ、激しい痛みと同時にヘヴンを感じた。
「それじゃ、私も魔法っぽく……」
　茜もお嬢様魔法少女ちっくにポーズを決め、ビルシャナにドラゴニックスマッシュを炸裂させる。
「だから、それは魔法じゃなくて……凄くイイ……んんっ！」
　そのせいか、ビルシャナがヘヴンスマイルを浮かべ、幸せそうに身震いをした。
　ここまで来ると、ツッコむ必要もなくなって来たのか、完全無防備でカモンスタイル。
　『やれるものなら、やってみろ！』と言うよりも、『早くお仕置きしてください！』と言わんばかりの雰囲気だ。
「それなら、遠慮はしない……ですわ」
　徹也も金髪ドリルヘアーを揺らし、ビルシャナに達人の一撃を放つ。
「な、何故だ。い、痛いはずなのに……。抵抗しなければいけないはずなのに……ううっ……はっ！」
　ビルシャナが恍惚とした表情を浮かべ、ビクンビクンと身体を震わせた。
　その時点で下半身がヤバイ事になっているのか、モザイクが掛かりっぱなしである。
「だったら、このままバナナも受け入れろ、ですわ！　むしろ、こっちが本命！　信者達は既にバナナの虜ッ！　残っているのはアンタだ、ビルシャナァ！」
　次の瞬間、ナナコがドリルヘアーからバナナを取り出し、ビルシャナめがけて斬りつけた。
「御免あそばせ」
　それに合わせて、シアが理力を籠めた星型のオーラで、ビルシャナに蹴りを放つ。
「ああ、イイッ！　凄くイイッ！」
　その一撃を食らったビルシャナがドＭ全開のヘヴンスマイルを浮かべ、壁にめり込むようにして息絶えた。
「まさか、あんなにハードな御褒美が貰えるなんて……。あ、あの俺達にも、御褒美……くれるんですよね？」
　ビルシャナが息絶えた事で、信者達が我に返ったものの、未だにドＭオーラを漂わせ、ケルベロス達に迫っていく。
「まあ、少しくらいなら……」
　そう言ってウォーグがゲンナリしつつ、思いつく限りの言葉で罵りながら、信者達に対して鞭を振り下ろすのであった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2017年10月7日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 3／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 2
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