呪われた歌姫は瓦礫に舞う

作者:久澄零太

「とぉーう!」
 上里・もも(遍く照らせ・e08616)は粉塵の拡散防止、及び人を立ち入らせないためのシートを軽々飛び越えて、とある廃墟に忍び込む。ここはかつての戦闘で瓦礫の町と化したものの、少しずつ復旧の目処が立ち始めた区画。しかし範囲が広すぎてなかなか進まず、一先ず防護シートだけ張られて放置されていた物の一棟。
「なんか変な気がして来てみた……んだ……けど!?」
 飛び越えた先はモザイクのドーム。外からは見えなかった事もあり、ももはそのまま飛び込んでしまった。
「なんなのここ……え?」
 隠れたモザイクの中、彼女が見たものは狼、あるいは蛇、あるいは鳥、あるいは……自分。複数の動物が入り乱れた異形の上に、ももと同じ姿の上半身が生えている。
「ここに気づいてしまったか」
 獣と人の巨大な異形は、ももを見下ろし底冷えした声を吹きかけた。
「入ってしまった自分の不運を恨むがいい……」
 動物達を繋ぐ帯のようなものが、ももを取り込もうと迫っていく……。

「みんな集まったね?」
 大神・ユキ(元気印のヘリオライダー・en0168)はコロコロと地図を広げて、とある修復区画を示す。
「この辺りは昔の戦闘でボロボロになっちゃってたんだけど、範囲が広くてずっと放置されてる所もあるの。そこを調べに行ったももちゃんがワイルドハントに襲われてるから、急いで救援に向かって!」
 ユキはここで、なにやら古い本を取り出した。
「敵は神話のオバケの、スキュラみたいな姿をしてるの。身体中の動物はそれぞれ別に意識を持ってて、精神系の攻撃は効きにくいから気をつけてね」
 戦闘スタイルによっては、苦戦する相手になるかもしれない。
「敵はみんなを取り込もうとしたり、動物を分裂させて人海戦術を使ってきたりするんだけど、一番上の女の子が本体でここに攻撃しないと意味がないみたい」
 無数の生物が絡み合った大型の異形、その頂点にしかダメージが通らないらしい。遠距離攻撃、もしくは敵を誘導して廃墟の中に誘い込み、崩れかけた建物を足場にする必要がありそうだ。
「それと……この女の子の部分は何か嫌な予感がするの。必殺技みたいなものがあるとすれば、この部位が何かすると思うから気をつけてね……」
 ヘリオライダーは不安に揺れる瞳を番犬に向けて、その背中を送り出すのだった。


参加者
セス・レフコクリソス(ライブコントローラー・e01822)
巽・真紀(竜巻ダンサー・e02677)
ヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020)
九条・櫻子(地球人の刀剣士・e05690)
上里・もも(遍く照らせ・e08616)
フィオ・エリアルド(鉄華咲き太刀風薫る春嵐・e21930)
猫夜敷・愛楽礼(吼える詩声・e31454)
ジジ・グロット(ドワーフの鎧装騎兵・e33109)

■リプレイ


「どうすっかな、一度燃やしてからかくれんぼと鬼ごっこの耐久レースでもするか……?」
 遭遇の一撃をすり抜けて、廃墟に飛び込んだ上里・もも(遍く照らせ・e08616)は物陰から様子を覗うと、無数の犬が迫ってくる。大した時間稼ぎにならないと判断したももは獣を蹴り飛ばし、ワイルドハント……スキュレエの前に躍り出た。
「鬼さんこちら!手のなる方へ!」
 挑発するように別の物陰へ。自ら追い込まれるように狭い物陰に飛び込み、背を壁に預けて挟撃を避ける。
「さて、どこまでもつかな……ってお前が来るのかよ!?」
「当然だ、死ぬがよい」
 スキュレエ本体が立ちはだかり、彼女から現れる無数の犬がももの包囲『壁』を狭めていく。
「スサノオ、お前も都合よく覚醒して分身できるようになったりしない?」
 白焔のような犬は「無理」と首を左右に振った。
「あーもー……」
 諦めと覚悟の入り交じったため息をこぼした瞬間、スキュレエの上半身に焼夷弾が撃ち込まれ、それを無数の帯が壁になって防ぐ。爆煙に視界が塞がれる中、反撃に転じようと妖魔の帯が殺到するが、白竜はその間をすり抜け片手に掴んだジジ・グロット(ドワーフの鎧装騎兵・e33109)を地面すれすれに滑空。
「モモチャーン!!」
「ジジー!?」
 ももの頭にスサノオが乗っかり、ももをかっさらうようにジジが抱き留め、セス・レフコクリソス(ライブコントローラー・e01822)は真っ直ぐ壁に向かっていく。しかし気流を操作する彼は慣性を無視するかのように壁に合わせ、グルリと反転。スキュレエと睨み合うようにして天井を這い、追撃の帯を白い砲で迎撃しながら天井に風穴を開けて一つ上の階層に降り立った。
「まったく手間のかかる奴だ」
「ごめーんね!」
 呆れた様子のセスに、援軍が来た事で精神的に余裕のできたももがウィンク。
「上里さん、大丈夫ですか!?」
 騎乗機を駆る猫夜敷・愛楽礼(吼える詩声・e31454)が瓦礫を踏み台に二階に飛び乗り、彼女を叩き落とそうとする帯をフィオ・エリアルド(鉄華咲き太刀風薫る春嵐・e21930)の凍結弾が強制停止させ、できた氷柱を足場にももの下へ。
「もう大丈夫、私がきたよ!」
 黒い銃身に銀の装飾を施した銃剣から薬莢を吐き出させ、別の弾を込めるフィオがももの口調を真似て彼女の前に立つ。
「え、まじで!?みんな来てくれたの!?」
 愛楽礼の応急処置を受けながら、ももの表情が和らいでいく。
「体が軽い……こんな気持ち初めて。もう、何も怖くな」
 かぷ。言い終える前に、背後から迫っていたでっかい犬に頭だけ食われたももが胴体だけでぷらーん。
「君達遊んでいる場合じゃないだろう!?」
 ヴィルフレッド・マルシェルベ(路地裏のガンスリンガー・e04020)が獣を撃ち抜き、ももが床にベチャッ。もちろん首は残っている。
「後ろに穴が開いてるトコは気をつけた方がよさそうだね」
 巽・真紀(竜巻ダンサー・e02677)が改めて戦場、廃墟を見回しスキュレエを見据える。
「つーか肌出し過ぎだろアイツ。とんでもねーな、モモチャンの暴走フォーム」
 ほぼ最低限の布面積しかない真紀に言われるって相当だよね。ていうか。
「出し過ぎというより、何も着てないような……」
 九条・櫻子(地球人の刀剣士・e05690)が苦笑しながら弓に矢を番える。地上の櫻子と真紀、廃墟二階の他六名の番犬による挟撃が完成したが、未だ予断は許されない。
「さぁ、ここから反撃だよ!」
 ももの声を号砲に、番犬達が動き始めた。


「ほな、まずは転ばぬ先のなんとかってヤツやな!」
 ジジがばら撒いた赤い折り紙が薔薇を形作り、前衛の胸元にそっと添えられて、加護の花を受け取ったフィオが駆ける。左右にステップを刻んで軌道を読ませず、ランダムな動きで肉薄。あと数メートルまで踏み込んで天井に向けて発砲。拡散弾が弾けて天井を崩し、粉塵と瓦礫に身を潜めて落下する瓦礫を蹴り上へ。自分で開けた穴へ飛び込もうとして、片脚をその縁に引っ掛け天井に両脚をついてスキュレエに狙いを定める。
「手足が届くのなら、そこは私の道だよ……!」
 上へ逃げたと錯覚したスキュレエが無数の帯を伸ばすが、フィオはその帯を足場に本体へ接近。咄嗟に防御の為に交差された帯を後ろへ倒れ込むようにしてスライディング。ガードを潜り抜けて本体の腹部へ銃剣を突き刺した。
「戦場が悪かったね」
 零距離で撃ち出された弾丸が少女の肉体を抉り鮮血を散らす。しかし傷は浅いのだろう。フィオを捕えようと帯が殺到するが、火珠に乗った愛楽礼が飛び込み、片手でグリップを握ったまま片手をフィオに。
「フィオさん手を!」
 パシッ。互いの手を握り合い、背中に乗せた愛楽礼が駆け抜けていく。二人を逃すまいと帯を広げるスキュレエだが、セスが射線に割り込んだ。
「ま、これくらいデカくなければ俺が出張った意味もないというものだ!」
 建物内では飛行のメリットもない。翼を畳み、地上に脚をつけた彼は腰を落とし、重心を安定させて大きく息を吸った。
「図体が大きければ当てやすい!」
 竜の顎から閃光が溢れ、黄金の角の間に赤い稲妻が走る。ターゲットを変えた帯に体を貫かれながら、その一本を絡めるようにして掴み取り、巨体を自身の方に引きずり寄せた。
「この距離なら避けようもあるまい!」
 咆哮は暴虐の光に化けて、咄嗟に展開された帯を焼き払い少女の肌を焼く。かつて建造物すら融解させた熱線に肌を焼かれ、白煙を上げる妖魔に竜炎の矢を放つ櫻子。
「おのれ……」
 矢を叩き落とすスキュレエだが、そちらを向いたのが間違いだ。
「貴様の相手は俺様だろう?」
 注意が逸れたスキュレエの帯を引いて壁に叩き付け、動きが止まった隙に気流を纏う。飛行する代わりに極めて低く浮遊して、更に地面を蹴って空間を滑るように急加速。
「飛ばずともこれくらいの動きは出来る!」
 長い砲身を携えたセスに砲撃を防ごうと広く薄い帯を広げる妖魔に、白竜は笑う。
「愚か者。本命はこちらだ!」
 そのまま引き金を引くことなく突貫。飛び蹴りで防護膜を貫通し、砲を槍代わりに少女を貫通、白い砲身を真っ赤に染める。
 セスを生み出した獣の群れで吹き飛ばし、四肢に食いつかせて動きを封じるとトドメに帯を錐状にして狙う妖魔だが。
「私をお忘れではありませんか?」
 瓦礫を蹴り、妖魔の背後に肉薄する櫻子。既に刀の鯉口は切られている。鞘走る白刃は縦横無尽に駆け、櫻子が妖魔をそっと蹴って地面に帰る。チン、得物を収めた途端、咲き誇る椿のように鮮血が噴き出した。


「ももは一人でイイんだよ。勿論『お前の方をブチのめす』って意味だぜ、オーケー?」
 妖魔に真紀の声が『落ちる』。フィオの動きを真似て、崩れた天井の突起に脚をかけ、全身のバネを使って上下逆さまに走るという芸当を披露して見せた彼女が頭上より接近、重力に一瞬だけ身を任せて回転し、両手で天井を押して回転しながら膝を少女の首に搦めて遠心力のままに組み付き、流れるようにクラッチ。そのままへし折ろうとするが決まらない。
「さすがに簡単にはいかないか」
 反撃に伸ばされた帯を見て、ふとフィオの動きを思い返す。
「こんなカンジか?オーライ、踊るぜ!」
 バッと飛び退いて、妖魔を蹴りつけ床に着地。フィオの動きを逆再生するように左右に体を振ったバックステップで追撃をかわし切り、迫った壁には跳んで両脚をついた。
 蹴って跳んで天井を蹴り、床を蹴ってスレスレを這うように低く跳んで両手で跳ねて瓦礫を飛び越え乍らその頂点でその瓦礫を蹴って再び天井へ。跳ねまわりながら肉薄する真紀の軌道が読めず、獣の群れを壁にする妖魔。
「ハッ!ダンスも踊れねぇワンコじゃついてこれねぇぜ!」
 空中で身を丸めて回転する真紀は軽々と獣を飛び越えて、妖魔を直接蹴りつけるが反動で再び宙へ。体を伸ばして大きく弧を描きながら獣の群れのど真ん中に着地するが、牙が迫るより速く再び床を蹴り、スキュレエの顔面を蹴りつけて今度は天井へ。再び舞い戻る真紀の蹴りから身を守ろうとする妖魔だが、真紀はすり抜けて彼女の体の方へ跳んだ。
「フィオが一回やって見せたじゃねぇか、防御をすり抜けるってな」
 少女の真横に着地した真紀は反転、頭で体を支えて高速回転して幾度となくフィオがつけた傷口を抉るように蹴りつけて、そのまま巨体を滑り降りるように素早く離脱。
「――」
「止まった……何か来ます!」
 ふと、妖魔が動きを止めた。何かを察した櫻子が声を上げ、セスが左腕の砲身を右手で固定。片目を瞑りスキュレエの口元に照準を合わせる。
「そう簡単に歌わせると思うなよ……!」
 撃ち出された砲撃は正確にスキュレエの喉を狙うが、着弾寸前に無数の獣が射線に飛び込み、防がれてしまった。咄嗟にヴィルフレッドも拳銃を向けるが、引き金にかけた指に力が入らない。
「な、なんだい、これ……力が……」
 戦場に微かに響く歌声。本来人間の可聴域にないのであろうそれは番犬達の聴覚から神経を狂わせて、その身の力を奪っていく。
「ここまで来て……」
 膝をつき、奥歯を噛むフィオの耳朶を打つ旋律が二つ増えた。

 喜びも 悲しみも 幸せも 痛みも それが愛だと貴方が言うなら 貴方の側に居られるのなら 私は全てを受け入れます……。

 笑いたければ笑うがいい 僕は僕の道を行く 誰も信じてくれなくてもいい たった一人 夢を語り合った君の思い出が背中を押す さぁ 最後までカッコつけようぜ……!

 一つは愛楽礼の忠実な獣の心を詠んだ歌。一つはももの夢を諦めない想いを込めた歌。二人は既に立ち上がるのも辛いのだろう。互いの体を支えにして、背中合わせに旋律を重ねる。
「これは……」
 全身に重力鎖が駆け巡り、力が戻ってくるのを感じたセスが砲身を構え、櫻子が刀の柄に手を乗せる。番犬と妖魔の歌がせめぎ合う戦場に、ジジが大剣を降ろし、木製の柄に人差し指を立てた。
「ほな、お二人さん、準備はええね!?」
 ――Je touche du bois。ジジの唇が小さく言の葉を紡ぎ、トン、トン、トン。得物の柄でリズムを刻み、二人の歌姫は息を吸う。
「側にいさせて」
「隣にいてよ」
「私のこの身はあなたの為に」
「僕の力は君の為に」
「私はあなたを支えたいの」
「僕は君がいるから立ち続けられる」
「「そう、僕(私)達は二人で一つだから」」
 ももと愛楽礼の声が妖魔の声を呑みこんで、番犬達が自由を取り戻す。
「さぁ、フィナーレだよ……!」
 フィオが地面を蹴り、迫る帯すら足場にして、追い縋る獣の顎を更に蹴り、スキュレエの巨体を駆け上がる。奥の手である歌声が潰された今、恐れるものは何もない。張り巡らされた帯の投網を掻い潜り、隙間をすり抜けた先で待ち構える獣を銃剣の弾丸が穿つ。少女に肉薄して、直前で身を丸めて目の前で姿を消して見せると素早く背後を取り、咄嗟に振り向いた少女と見つめ合うように得物を……。


 スキュラとは、美女が呪いにより、下半身を犬の頭にされた化物である。スキュレエにはスキュラの特徴に加えて鳥の要素が付与され、セイレーン……歌声で船を沈める異形の力があると番犬達は見抜いていた。その時に気づくべきだったのだ。彼女には蛇の要素も含まれていた事に。
「ぁ……ぇ……?」
 後、数ミリ。振り抜いた銃剣の刃はスキュレエの首にわずかに届かない。全身が石像と化したかのように動けないフィオに、妖魔はクスリと笑う。そっとその体を押して、牙を剥く獣の群れの中に突き落とした。
「目を見た相手の動きを止める……メドゥーサの異能か!」
「セスさん分析してる場合じゃない!愛楽礼さん!」
「分かってます!」
 火珠を駆り、落下途中のフィオをかっさらう愛楽礼。追随する獣をセスの熱線が焼き払い、舞い戻る愛楽礼からフィオを受け取ったももが彼女を揺さぶる。
「ダメ、息してない……!」
 慌てるももの前で、フィオの胸に挿されたジジの折り紙の薔薇が散り、彼女が息を吹き返す。
「うわ、まさか保険にかけといたっちゅーに、こんな形で役立つなんて思わんかったわ……」
 本来は歌の対策にかけた物だったせいか、本人が一番驚いてる傍ら、ヴィルフレッドが拳銃両手に腕を交差。
「たくさん歌ったんだ、今度は踊らないと損だろう?」
 引き金を引いて、続けざまに腕を広げ乍ら無数の弾丸を放つ。扇状に広がる弾幕はあらぬ方向へ飛んでいくが、その行く先は全て砕けた壁や天井から露出した、コンクリートを固定するための鉄製の骨組み。金属同士の衝突で甲高い音を立て、それらが重なりオルゴールのような音色を奏で、少しずつ妖魔に迫っていくが。
「そっちばかり気にしていいのかい?」
 少年の微笑みと共に足元から巨大な漆黒の槍が具現、スキュレエの巨躯を弾き飛ばし、その先で再び槍が具現。妖魔を弄ぶように、あるいは舞踏へ誘うように、戦場に舞わせる。
「トドメは合体技です!」
「「え?」」
 キラキラおめめでももとフィオを見てる愛楽礼。
「瓦礫、騎乗機、巨大な敵と来たらヒーローでしょう?そして私たち三人とも獣人ですし」
「えぇ……?」
 半眼になるももに対し、フィオはウサミミをぴこん。何か思いついたっぽい。
「いくわよ『もも』!今こそ私たちの力を重ねる時!!」
 女優モードのフィオがヒロインさながら、凛々しい声音で瞳を真紅に染めていく。自身の得物を蹴り上げて、一瞬で狙い澄まし蹴り飛ばす。銃剣の刃を少女の腹部に突き刺して、そこを示した。
「狙いはあそこ。いいね!?」
「え?え?」
「『もも』!さぁ行くよ!」
「えぇ!?」
 流れに乗っかる愛楽礼に、困惑を隠せないももだが。
「もうどうにでもなれー!!」
 ヤケを起こして二人と共に走り出す。振るわれる帯を飛び越えて、空中で回避を行えない所に獣が迫るが。
「必殺技は邪魔しないのがお約束だろう?」
 真紀が獣の一匹に組み付いて首を折り、その体を地面代わりにブレイクダンス。高速スピンと共に全て蹴り落とした。
「真紀さん!」
 ももにサムズアップを返し、真紀は地上へ落ちていく。火珠が飛び込み、騎乗機を蹴った三人は更に上へ。撃墜すべく帯が伸びるが、全て粉微塵に散る。
「それは無粋というものですよ?」
 一瞬で斬り刻んで見せた櫻子が小さく微笑み、納刀。
「そうら、行って来い!!」
 妖魔と同じ高さで姿勢を整える獣人達の背を、セスの気流が押した。
「「「いっけぇえええ!!」」」
 身体能力に追い風を受けて、三人の蹴りが突き立つ得物を穿つ。貫通した腹部に手を添えて三人を見上げた妖魔は驚愕に目を見開き、崩れ落ちていった。
「終わった……」
 戦場跡を見つめるももの肩を愛楽礼が叩く。
「お疲れ様、もも」
 フィオが彼女の目を見つめて。
「改めてお帰り、もも」
「ちょ、二人とも!?」
 二人はただ、微笑みを浮かべていた。

作者:久澄零太 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 0
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