決戦第三の魔女~本当の驚きを教えよう

作者:なちゅい

●もっふもふの巨大猫
 にゃー。
 みゃおう。
 少女、川中・愛莉は可愛らしい猫に囲まれていた。
「もふもふー」
 もふもふとした気持ちいい心地を、彼女は存分に堪能する。
 もっともっと、もふもふしたい。そう思った彼女が上を見上げると、上から巨大な三毛猫が彼女目掛けて落ちてきた。
「きゃああああっ!」
 ……そこで、愛莉は飛び起きた。
 目覚めた場所はいつもの自分の部屋。彼女はホッと安堵する。
「なーんだ、夢……か……」
 だが、次の瞬間、彼女はその背から大きな鍵で心臓を貫かれてしまう。彼女は意識を失い、ベッドの上へとばったりと倒れてしまった。
 その鍵を持っていたのは、ウェアライダーの姿をした少女だった。そいつは、白い鹿のような生物に跨っていて。少女の胸部、そして、跨る鹿の生物はうっすらとモザイクに包まれている。
 第三の魔女・ケリュネイア。それがこの魔女の名だ。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
 倒れた愛莉は心臓を貫かれたはずだが、その体には傷すらついてはいない。
 その隣には、新たなドリームイーターが姿を成す。それは、愛莉が夢で見たもふもふの三毛猫。その体は淡いモザイクに包まれている。
 澄ました顔のケリュネイアは新たに生み出した夢喰いの姿に、小さくこくりと頷いていたのだった。

 様々な事件が乱発している状況に、ケルベロス達も各地をあちらこちらと駆け回り続けている。
 そんな中、鏑木・郁(傷だらけのヒーロー・e15512)がこんな一言をヘリオライダーへと掛け合う。
「そろそろ第三の魔女の居場所を突き止められないものか」
 事件の元凶の一つを潰すことが出来れば、それだけで事件が減る。それに応じたリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)がついに、相手の姿を予知で捉えた。
「見つけたよ。第三の魔女ケリュネイア……」
 そいつは、パッチワークの魔女の1人。『驚き』の感情を奪うドリームイーターだ。
 発生する事件は今までと同様、夢によってビックリした子供が狙われる事件。だが、タイミング的に、ケルベロスはその子供をケリュネイアが狙うところに駆けつけることが出来る。
 これまでの関連依頼であれば、被害者宅周辺を徘徊してドリームイーターを誘い出す形で対処していたが、今回は直接、被害者宅へと向かって欲しい。現場には、第三の魔女ケリュネイアがいるはずだ。
「夜中、ケリュネイアが現場で少女、川中・愛莉を襲撃し、新たなドリームイーターを生み出そうとしているところに飛び込むことになるよ」
 両親に説明などする暇はない為、庭に出るドアを蹴破っての侵入が手っ取り早いだろう。
 その少女の自室は、両親が資産家ということもあってかなり広い。後のヒールを考えれば、部屋内で立ち回る分には問題ない。
「できるだけ、ケリュネイアの気を引いてこの場で一気倒したいところだね。少女を襲われて新たなドリームイーターが生まれると、ケリュネイア打倒が遠のいてしまう」
 手っ取り早いのは、少女を起こして部屋から外へと逃がすこと。そして、ケリュネイアをこの部屋から逃がさないこと。それができれば、撃破に大きく近づくはずだ。
「相手も幾度となく事件を引き起こしてきたドリームイーター。油断は禁物だよ」
 ここで相手を討ち取ることが出来れば、ケリュネイアが引き起こしている事件を終わらせることができるはずだ。
「事件の元凶となるドリームイーター、第三の魔女の撃破を。よろしく頼んだよ」
 リーゼリットは最後にケルベロス達へとそう告げたのだった。


参加者
結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)
ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)
周防・碧生(ハーミット・e02227)
ノーザンライト・ゴーストセイン(ヤンデレ魔女・e05320)
トライリゥト・リヴィンズ(炎武帝の末裔・e20989)
スピノザ・リンハート(忠誠と復讐を弾丸に秘め・e21678)
塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598)
二階堂・燐(鬼火振るい・e33243)

■リプレイ

●第三の魔女ケリュネイア
 宮城県某所。
 夜、ケルベロス達は身体に固定などした照明で前方を照らしつつ、現地に向かう。
「第三の魔女……多くの連中の手を煩わせてきた張本人か」
 皆が解決してきた、驚きから生まれた夢喰いの討伐依頼の報告書。そして、自身の解決した依頼。スピノザ・リンハート(忠誠と復讐を弾丸に秘め・e21678)はそれらを思い返し、拳を握り締める。
「ついに捕捉できたんだな。この機会にきっちり倒そうぜ」
 八重歯を光らせたトライリゥト・リヴィンズ(炎武帝の末裔・e20989)は力強く語る。
「漸く掴んだ尻尾……逃しはしません」
 それらの被害者はいずれも子供。これ以上好きにはさせないと、アンニュイな雰囲気を漂わせる周防・碧生(ハーミット・e02227)は静かに告げる。
「必ず、幕引を」
 様々な想いを胸にする仲間達が相手に闘志を燃やす中、浅からずパッチワークの魔女と因縁を持つ結城・レオナルド(弱虫ヘラクレス・e00032)はその身を震わせる。
 ――幾度経験を積んでも、戦うのは怖い。
 彼はその恐怖を抱いたまま、目的の川中家宅を目にする。一度、照明を消し、メンバー達は庭へと回っていく。
「……いくよ。壱、弐の、参っ!」
 夜闇の中、眼鏡を煌かせた二階堂・燐(鬼火振るい・e33243)は鬼を宿す宝刀「鬼門大通天」を抜き、部屋に通じるドアをバラバラにぶった切る。
 すると、メンバー達の視界に、少女に鍵を振り上げた獣人の姿が眼に入った。
「ムギくん、GO!」
「筋肉全開、やらせるかぁぁあああ!」
 呼ばれたガタイのよい大男、ムギ・マキシマム(赤鬼・e01182)が飛び出し、獣人の鍵を受けとめる。
 若干、目の前にトラウマが蘇るが、ムギはそのまま少女の身柄を確保しようと動く。
 なだれ込むようにケルベロス達は室内へと入り、獣人の前にレオナルドが立ち、メンバー達が包囲して牽制する。
 少女を逃がすべく庭に出ようとするムギ、トライリゥトを背にする、古ぼけた白衣を羽織る塩谷・翔子(放浪ドクター・e25598)が相手を討伐せぬよう射線を塞ぐ。
「魔女、ノーザンライト・ゴーストセイン、なの」
 魔女帽に黒い衣装を纏う、ノーザンライト・ゴーストセイン(ヤンデレ魔女・e05320)は目の前の相手よりも魔女らしい見た目で名乗りを上げる。
「さんざん引っ掻き回してくれたな、『第三の魔女』!」
 ドアを切り裂いた刀をそのまま突きつけ、燐は目の前の相手に言い放つ。その時、やや後方にした碧生が驚く振りをして、相手の気を引こうとしていた。
「ふーん、そう。ケルベロス、先を読まれていたの」
 対する第三の魔女ケリュネイア。驚きを欠損させた彼女は再度淡いモザイクに覆われた牡鹿に跨り、淡々と自らを囲むケルベロスを見回す。
 これまで、幾度も彼女達の後手に回ってきたケルベロス。だが、今回は違うと燐が叫ぶ。
「絶対に逃しはしない……。僕らがあんたを、斬らせてもらう!」
「……貴方達は私を驚かせてくれるのかしら」
 ケリュネイアも応戦の構えだ。そんな淡々とした態度の獣人姿をした魔女を、ノーザンライトは少し寂しげに見つめていた。
「感情なんてのは、人それぞれ。残念ながら他者のを奪ったって、アンタが満たされる事はないんだ」
 戦闘態勢を取りながら、翔子は続ける。
「……アンタの心で感じなければ、ね」
 それを、これからこのドリームイーターに教えられるとよいのだが、果たして。
「ここで必ず倒す。あんたの悪戯もこれまでだぜ」
 距離を取って位置取るスピノザも、攻撃のタイミングを図る。
 前に立つレオナルドは目の前の相手に恐怖を覚え、小刻みに震えていた。
(「でも、もう俺は一人じゃ無い」)
 彼は強く床を踏みしめ、震えを止める。
「だから、俺に勇気を! もう誰も喪わない為に!」
 斬霊刀を抜くレオナルドは一喝し、魔女ケリュネイアへと飛び込んでいったのだった。

●激しくも淡々と
 部屋の外、家の庭では。
 少女、川中・藍莉は首を傾げ、自身を連れ出したケルベロス達を見つめる。
「俺達はケルベロスだ。助けに来たぜ!」
「ケルベロスのムギと言うもんだ、起きたばかりで状況が分からんだろうが、すぐに此処から避難しなければならない」
 隣人力を働かせたトライリゥトが少女へと簡単に説明すると、ラブフェロモンを振り撒いたムギもまた続けて。
「君は俺達が護る。だから、今は俺達を信じて指示に従って欲しい」
「……うん」
 少女は落ち着いた表情で頷き、家の外へと駆け出していった。

 獣人にも似た姿をしたパッチワークの魔女、第三の魔女ケリュネイア。
「いくわ」
 素っ気無く告げたそいつは牡鹿に乗ったまま駆け出し、胸のモザイクを解き放つ。
「シロ、耐えておくれよ」
 その前へと飛び込んでいったのは、翔子の呼びかけに応じたボクスドラゴン、シロだ。蛇のような身体のシロはモザイクを受け止め、反撃にタックルを繰り出す。
 そして、援護するように、翔子がオウガメタルを……しかしながら、それは彼女の手元にはない。
 自身の不手際に小さく舌打ちした翔子はじゃらりと黒い鎖を鳴らし、仲間を包み、護る為の魔法陣を描くことにしていた。
「やあ、こんばんは。……ついに僕らに追いつかれた気分はどうだい?」
 その手前へ、盾に包まれる感覚を覚えた燐が挨拶しながら飛び込む。
 燐の一太刀をケリュネイアは大鍵で防ぐが、再び振るわれる彼の刃が相手の身体を僅かに裂き、その斬撃痕を僅かに凍らせた。
「今夜はあんたに、本当の驚きを、教えよう」
 そして、両者はしばし、鍔迫り合いを始める。
 ただ、相手はデウスエクスだ。1対1の力量差は明確。ケリュネイアが燐を弾き飛ばしたところで、ノーザンライトが光の剣を出現させて。
(「獣人・魔女・性格……」)
 その全てが、彼女にとっては親近感を覚えてしまう。
(「本音は、友人になりたいけど」)
 だが、相手はドリームイーター。倒すべき相手であり、それは叶わぬ話だ。
 せめて、知らぬ間に誰かにやられてほしくはない。ノーザンライトはその一心でこの場に立ち、ケリュネイアへと刃を突きたてようとする。
 レオナルドも続く。元より、自らが倒すべき相手。ドラゴニックハンマーを振り上げ、彼は加速した一撃をケリュネイアに浴びせかけた。
 ケリュネイアに少なからず思うことがあるのは、皆同じ。
 ここで確実にこの魔女を仕留めようと、スピノザは高く飛びあがってから強く蹴りつける。
 敵の状況をじっと見詰める碧生は時折、敢えて驚く素振りを見せることで、敵の気を引く。驚きを求めるケリュネイアのこと、少なからず反応を見せていたようだ。
 その隙を突き、碧生はケルベロスチェインを伸ばし、ケリュネイアを牡鹿ごと縛りつけようとする。
 未熟は承知、だが、強くあろうとする意志を彼は夢喰いへと見せ付けた。
「…………」
 思わぬ攻撃であっても、ケリュネイアはまるで感情の起伏を見せない。
 敵は鎖に縛られたままで、人馬一体ならぬ人獣一体となって部屋を疾走し、突撃してくる。
「今日は強敵だ! いつも以上に気張っていくぜ、セイ!」
 そこで、外側から駆け込んできたトライリゥト。ボクスドラゴンのセイに盾を任せ、自身は敵へと肉薄して縛霊手で殴りかかる。
 網状の霊力で絡まれども、ケリュネイアの疾走は止まらない。
 前衛メンバーを薙ぎ払う夢喰いにケルベロス達は跳ね飛ばされてしまうが、それを正面から受け止めた者がいた。
「護るべき仲間がいる限り、俺の筋肉は不滅だ」
 僅かに眉を動かしたケリュネイアの目の前には、ムギが立つ。彼はオウガ粒子を飛ばしながら告げる。
「お前に本当の驚きを教えよう」

●これこそ、本当の驚きだ!
 部屋狭しと駆け巡るケリュネイア。激しい戦いの中ですら、敵はほとんど表情を変えはしない。
「次はどう驚かせてくれるのかしら」
 驚きを知ることができるなら、魔女にとっても本望。それが知る機会かも知れぬと、夢喰いは鍵を振るい、モザイクを飛ばす。
「最善手こそ最適解、ってな」
 駆け回る相手ならば、足を止めるまで。
 スピノザは敵を足止めすべく蹴りを繰り出す傍ら、連続して拳、金属の杭を打ち込む。それに派手さこそないが、的確な攻撃で彼は徐々に相手の体力を奪い取っていく。
 今のところ、ケリュネイアが逃げる素振りはないが、いつ、逃げようとするかも分からない。その為、ケルベロス達は一瞬たりともその包囲を緩めることなく戦う。
(「敵の攻撃の兆候など、分かればよいのですが」)
 碧生は敵の挙動に注視し、捕食形態としたブラックスライムを食らいつかせて相手を足止めしようとする。
 サーヴァント達も前に出て壁になってくれていたが、ムギも負けじと前に出て、ケリュネイアの鍵の一撃を受け止めた。
「唸れ筋肉、魔力を糧に倒れぬ強さを示せ!!」
 思ったよりも手痛い一撃に、ムギは魔力は筋肉を糧として急激な筋肉再生を起こして怪我を塞ぐ。
「はいよ、回復はお任せってね」
 それでもカバーできずに攻撃を受けたメンバーには、翔子が回復に当たる。
 ケリュネイアの攻撃は異常攻撃ばかり。だからこそ、仲間達が攻撃の手を止めぬようにと、彼女は癒しの雨を降り注がせて仲間達の体調を戻していく。
 燐が大きく刃で斬りかかり、レオナルドが雷を纏わせた刃で突き貫く。
 ノーザンライトは御業を呼び出し、ケリュネイアの体を掴もうとするが、相手はやはり驚くことすらなく、腕を突き出すようにしてモザイクを放ってくる。
「やらせるかよ。俺達が、勝つ!」
 少しずつ長引く戦いに疲弊を感じてきていたトライリゥトは力強く叫び、自らを鼓舞して敵と対する。
 ボクスドラゴン、シロもけなげにケルベロス達を庇って身を投げ出すが、中、後衛陣の体力減少を感じ、翔子も傷の深いメンバーに気力を撃ち出す。
「さぁて、これからだ」
 翔子の言うように、戦いはまだまだこれから。
 手前の燐が達人の一撃と斬撃を繰り出すと、それを受けてしまうケリュネイアとまたも鍔迫り合いが始める。
 親友のボクスドラゴン、リアンが属性注入して燐を癒す横で、碧生は敵の隙を見計らい、碧生は月光にも似た魔力を差し向ける。
「今宵、覚めぬ眠りに就くのは貴方です……。我が敵を、捕らえよ」
 そこに飛んで来る一つの影。碧生の呼びかけによって召喚された狼は猛り、夢喰いの身体を飲み込まんとする。
「番犬に討たれる驚きに浸りつつ――深く深く、沈むと良い」
「まだ……、浅いわ」
 淡々と返すケリュネイアは食らいつかれた狼から逃れ、疾走を続ける。とはいえ、その動きは徐々に鈍っているのは間違いない。
 いつ、逃げ出すかも分からぬ相手。ボクスドラゴン、セイがその疾走に耐える後ろで、トライリゥトは仕掛ける。
 今回、刀はないが、トライリゥトは縛霊手を手刀のように扱い、仲間の与える傷へと重なるように斬りかかった。
「お前は強い。けど、勝つのは俺達だ!」
 自らの筋肉に自信はあるからこそ、ケリュネイアの一撃の重さを感じるムギも相手の強さを認めざるを得ない。
 ドラゴニックハンマーを握りしめた彼は、敵に正面からドラゴニック・パワーを噴射させた一撃を叩きつける。
「……こんなはずは」
 目の前がモザイクに包まれる感覚。ケリュネイアは自らの体力がなくなってきていることに気づく。
「俺達にこんな所で倒されること、意外に思うか?」
 相手に自覚がないと感じたスピノザは鎖鎌『鮫』を担ぎ、刃に虚の力を纏わせる。
「だとしたら、それがあんたの望んでた『驚き』ってやつだよ」
 肩口から斬りかかるスピノザ。間違いなく致命傷となる一撃によって、彼は敵の体力を奪っていく。
「同じ魔女として、友人になりたかった」
 その存在が薄れ掛け、時折モザイクに包まれるケリュネイアへ、ノーザンライトが本音を漏らす。
 親近感・興味・哀しみ……。
 ぐちゃぐちゃに入り混じる感情を抱き、彼女は相手に光の剣を突きつける。
「捕虜ではなく……ただ、こちら側の生き方をしてみて。直感……あなたとは友人になれる」
「お生憎様ね」
 だが、ケリュネイアは是としない為、ノーザンライトは左の手のひらからオーロラの片手剣を引き抜く。
「魔女ノーザンライトの名において。顕現せよ、七色の聖剣……ノーザンライツセイバー」
 彼女がそのまま突き出した一撃は、敵の胸を穿つ。
 ただ、ケリュネイアは牡鹿を少し後退させており、急所を外していた。
「……まだ、よ」
 傷口からおびただしいモザイクが零れ落ちるが、まだ戦えると鍵を振り上げたケリュネイアに、レオナルドが心底に驚きを見せた。
「俺は驚いている、お前達魔女とこうして再びあったことに」
 一度刀を鞘に収めた彼は、抜刀と共に言い放つ。
「そして、今度はお前に驚いて貰うぞ、お前達が弄んだ人間の力に!」
 レオナルドの心臓より発生する陽炎の中、高速の斬撃をケリュネイアへと浴びせかけた。
「これが、そうなの、かしら……」
 大きく目を見開いたケリュネイアは全身をモザイクに変え、そのまま消えてしまったのだった。

●静かに夜は更け行く
 完全にケリュネイアの姿がなくなったことを確認し、一息ついたトライリゥトが仲間に問いかける。
「第三の魔女、討ち取ったりだな。後何体だっけ?」
 とりわけ、パッチワークの魔女に因縁あるレオナルドであれば、把握しているはずだが……。
 ――この感情をあと何度覚えるのか。
 幾体倒せども、恐怖は拭えない。レオナルドは夜空を見上げて物思いに耽る。
 気づけば、魔女がいた場所には彼女が持っていた鍵杖が残されていて。
「魔女談義したかった」
 ノーザンライトはそれを拾い上げ、誰にも聴こえぬ声で自らの感情を吐露していた。

 ケルベロス達はその後、外に逃がした少女、川中・愛莉の無事を確認し、スピノザが気力の撃ち出し、そして駆けつけてきた彼女の両親へと応対する。
「騒がせて悪かったな、けどもう安全だぜ」
 スピノザが事情を説明する横で、片づけを行っていた碧生がベッドで再び眠り始めた愛莉の寝顔を見つめる。
「今度こそ、安眠と良い夢を」
 部屋の外、翔子は紫煙を燻ぶらせる。
 その煙は静かに立ち上っていく。ゆっくりと静かに。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月19日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 13/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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