鎌倉ハロウィンパーティー~魔女の悪戯

作者:雨乃香

 いたるところに飾られたジャック・オー・ランタンが闇を幻想的に照らし、魔女を模した置物やスティックといった小物が街を彩り、街はハロウィンムード一色に染まっていた。
 そんなハロウィンパーティの雰囲気に浮かれる街の中、一人暗い顔をしてジャック・オー・ランタンを睨む少女がいた。
「ハロウィンパーティーなんて別に羨ましくないし……」
 自分に言い聞かせるように少女は小さく呟いてため息を吐いた。
 つい最近このあたりに引っ越してきた少女にはまパーティーに一緒に出掛けるような友達はおらず、内気な彼女にできることは、毎日交わされるクラスメイト達の楽しげなパーティの計画を聞き流すことだけだった。
 そうしてつまらなそうに街を歩く彼女はそれに出会ってしまった。
 ハロウィンの仮装と見間違うような赤い頭巾と、金色の鍵を手にした、少女を模したドリームイーターに。
 少女が何か反応を見せるよりも早く、その心臓は鍵に一突きにされている。それはドリームイーターが人の夢を得るための行為。
「ハロウィンパーティーに参加したい……ですか。その夢、かなえてあげましょう。世界で一番楽しいパーティーに参加して、その心の欠損を埋めるのです」
 ドリームイーターが鍵を引き抜くと、少女は意識を失いその場に倒れ込み、変わりに新たな人影が現れる。
 とんがり帽子に南瓜のランタンを模した丸いスカート、顔は鷲鼻を模した仮面で覆われ、その両目やくりぬかれたスカートの穴からはドリームイーター特有のモザイクが覗いている。
 可愛らしい魔女の姿をしたそのドリームイーターは、クスリと笑い、
「トリック・オア・トリート。パーティは楽しまなくっちゃね」
 そう呟くと、浮かれた街並みへとはしゃぐ様に消えていった。

「日本各地でドリームイーターが暗躍していることが藤咲・うるる(サニーガール・e00086)さんの調査で判明しました」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は苦い表情を浮かべながらケルベロス達に事の顛末を話し始める。
「出現しているドリームイーターは、ハロウィンパーティに対して何らかの不満や、劣等感を抱いていた人たちから生まれたもののようで、パーティーの当日に一斉に行動を開始するようです。
 これらのドリームイーターは世界で最も盛り上がるハロウィンパーティーの会場、鎌倉のハロウィンパーティーの会場に現れます。皆さんには実際にパーティーが開始するまでにこのドリームイーターを撃破してほしいのです」
 目標のドリームイーターは 真っ黒なとんがり帽子に真っ黒なマント、オレンジ色のジャック・オー・ランタンを模したスカートに鷲鼻の仮面をつけた魔女の仮装をしたような姿をしているという。
 その姿に違わず攻撃方法もドリームイーターが普段から使うモザイクによる攻撃以外にも水晶の剣を複数召喚し飛ばしたり、触手を召喚しての攻撃も行ってくるとのことだ。
「このドリームイーターはハロウィンパーティーが始まると同時に出現します、なので、実際のパーティーが始まる時間よりもはやく、実際のパーティーが始まったかのように振る舞うことで目標をおびき出すことができるでしょう」
 セリカは説明を終えると、ケルベロス達に真っ直ぐに視線を向け、強い口調で語りかける。
「復興のお祝いでもあるこのハロウィンパーティーで人々を不安にさせるわけにはいきません。誰もがこのパーティーを心置きなく楽しめるよう、ドリームイーターにはお帰り願いましょう」


参加者
ユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)
ジークリンデ・エーヴェルヴァイン(無垢の白と血濡れ赤・e01185)
藤波・雨祈(雲遊萍寄・e01612)
テティス・エルシェン(フォレストドール・e02486)
アインヘリアル・レーヴェン(欺瞞の坩堝・e07951)
風魔・遊鬼(風鎖・e08021)
セレナ・スフィード(薬局店員・e11574)
イリア・アプルプシオ(機械仕掛けの旋律・e11990)

■リプレイ


 ハロウィンパーティーを目前に控える鎌倉市内。
 街中がお祭りの前の空気に浮かされる中、人気のない公園に集まるケルベロス達の姿があった。
 風魔・遊鬼(風鎖・e08021)はその公園の中、ジャック・オー・ランタンやスカルキャンドルを周囲に配置し偽のパーティー会場の設営を行っていた。
 おどろおどろしくも、どこか暖かい光に照らされる公園の様子を一望すると、藤波・雨祈(雲遊萍寄・e01612)は火の点いていない煙草を咥えつつ髪を結う。
 自分で髪を結ぶのはあまり慣れていないのか、もたつきながらも準備を終えると、彼もまた遊鬼と同じように会場の設営を手伝い始める。薄暗い公園内で血糊のついた白衣で動き回る彼の姿はなかなかにホラーと言えよう。
 ケルベロス達の中でも一際準備に力を入れているのはユスティーナ・ローゼ(ノーブルダンサー・e01000)。色白の肌に黒のドレスはよく映え、彼女の扮する吸血鬼の雰囲気を見事に表現している。
「敵をだますには何とやら。自分が納得するレベルのものでないと敵を謀る事などできないわ」
 と言ってのけた彼女の妥協しないその性格がそうさせるのか、設営の手伝いにも余念はなく、細部までこだわりながら蝙蝠の風船や、蜘蛛の飾りなどをバランスよく配置し、会場を彩っていく。
 その隣では顔に大きな縫い目のメイクを施し、ボロボロの衣装を着てゾンビに仮装したアインヘリアル・レーヴェン(欺瞞の坩堝・e07951)が小道具作りを手伝う傍ら、自らのサーヴァント、ツヴィンガーに血糊や腐食したかのようなペイントを施し、禍々しいアンデッドの様な見た目へと変えていく。
 そんな中、一際大仕事に興じているのはどこか見覚えのあるエインヘリアルの鎧に身を包むセレナ・スフィード(薬局店員・e11574)。彼女は屋台の基礎を組んだり、コンテスト用の舞台用意したりと大掛かりな設営の担当していた。その補佐に回っているテティス・エルシェン(フォレストドール・e02486)はひまわりの花を被った頭を傾げながら、しげしげと物珍しそうに屋台を眺めている。
「これはどういった催しなの?」
 複数の林檎が浮かぶボールがいくつも並ぶ屋台を指さしながらどこか楽しそうに彼女が効くと、セレナは作業の手を止めて説明を始める。
「それはダック・アップルというイギリスのハロウィンの伝統的な遊びで、手を使わずに口だけで水から林檎をひきあげるんだ」
 その言葉に感嘆のため息を漏らしつつ、テティスはさらに興味深げにそのボールを眺める。
 そうして各々がハロウィンパーティーの準備を進める中、仮装を終えた二人のケルベロスが頬を赤くしながら合流する。
 自らバニーガールの衣装を選んでおきながら、眼鏡の下うっすらと涙をためつつ周囲に視線を彷徨わせるジークリンデ・エーヴェルヴァイン(無垢の白と血濡れ赤・e01185)の足取りはたどたどしく、同様にイリア・アプルプシオ(機械仕掛けの旋律・e11990)の足取りもまたぎこちない。
 こちらは知人に選んでもらった魔女をモチーフとした衣装であったが。極端に布が少ないマイクロミニの衣装で、あられもなくその白い肌を秋の寒空の下晒している。しかし当人は寒さよりも短いスカートの方がよっぽど気になるのか、しきりに手で押さえてはゆっくりと他のケルベロス達の元へと歩いていく。
「……ハロウィンパーティ、というものは……今回がはじめてですが……ふむ、実に、興味深いですねぇ……」
 千差万別の衣装やたくさんの屋台や飾りつけを見つめながらアインヘリアルが呟く。なんでもない普段通りの声色、ただ設営準備の為に会場内を歩くその足取りは心なしか軽い。
「さて、パーティー会場設営、もうひと頑張りね」
 羞恥心を隠すかのようにわざわざ大きな声を出すジークリンデに、周囲のケルベロス達も再び気合を入れて作業へと没頭していく。


 設営が終わると人気のなかった公園内はハロウィンの雰囲気たっぷりのパーティー会場へとすっかり姿を変えていた。ケルベロスたちは自分たちの仕事の出来栄えに満足しつつ、設営の疲れを癒すかの用に、会場内を自由に行動し始める。
 食事を取るものもいれば、興味を引かれるままに屋台を回る者もいる、だが誰一人として油断をしている者はいない。
 あくまでもドリームイーターをおびき出す為の作戦の一環であるということは誰もがきちんと理解している。
 三十分ほどそうして彼らが過ごした後、それはどこからともなく現れた。
「トリック・オア・トリート?」
 空から降る声にケルベロス達が顔を上げると、空に浮かぶ人影は箒から飛び降り、きれいな着地を決めて見せた。
 闇夜に溶ける真っ黒なとんがり帽子に同じ色のマント、オレンジ色のジャック・オー・ランタンを模したスカートの穴から除くのはドリームイーター特有のモザイク、帽子の下の顔は鷲鼻の仮面に覆われてその表情をうかがうことはできない。予知されたとおりの魔女の姿をしたドリームイーター。
 彼女は帽子のつばをつまみ上げ、きょろきょろと視線をさまよわせたあと、不思議そうに言葉を紡ぐ。
「んんー? あれれ、カボチャ行列は一体全体どこかしら?」
 オーバーなアクションを伴って首をかしげる魔女に、甲冑を鳴らしながら一歩前に出たセレナがたからかに声を上げる。
「フハハハ! この第一王子たる私の予知は完璧だっ! この場に貴様が来ることは知っておったぞ!!」
 仮想用の、先端にランタンをつけた槍を魔女へと突きつけながらセレナは楽しげな笑い声をあげる。
「残念ながらここにカボチャ行列はこないんだ、代わりにどうだい可愛い魔女さん、ちょいと俺らのパーティによっていきなよ」
 雨祈がセレナの言葉を継ぐように魔女に声をかけながら銃を抜くと、魔女の方も自分がまんまと誘き出されたのだと気づく。だが彼女は特に慌てる様子もなく、そう、とひとつ頷く。
「お菓子がないならしかたないわね、せいぜい私を楽しませてね?」
 箒を片手に、もう片方の手には一冊の本を手に魔女は楽しそうに呟いた。
「魔女さんに悪戯はさせませんよ」
 テティスの言葉と共にケルベロス達は自らの武器を手にし、魔女を包囲する。
「あなたのハロウィンは開始と同時に終わり。お菓子の変わりにグラビティを召し上がれッ!」
 叫びとともに繰り出されたユスティーナの攻撃を魔女はステップを踏むようにひらりとかわす。
「ふふっ、舞踏会は楽しいわね?」
 余裕を見せながら動き回る魔女に対しジークリンデはその背後から魔力を込めた弾丸の雨を叩きつけるが、魔女はそれを予知していたかのように魔方陣を展開銃弾を跳ね返す。
「せっかく可愛いよく似合った衣装を着けているんだから、もう少しおしとやかにしたらどうかしら?」
 そんな挑発的な言葉を吐く魔女に、ジークリンデは表情こそ変えないものの耳まで赤く染めながらさらに弾丸をばら撒き続ける。
 その勢いに加勢するように、仮装用の槍を捨て二振りの刀に持ち替えたセレナと、遊鬼が魔女へと攻撃を試みるが、そのどちらも突如虚空に現れた水晶の剣で弾かれ、軌道をそらし、かわされる。
 パーティーを盛り上げるBGMのように公園内には絶え間なく戦闘音が響き続ける。その中心で踊るのはケルベロスと魔女。仮装をした彼女達の戦いはハロウィンの夜に相応しく幻想的で、美しい。
「今度はこっちの番」
 魔女が腕を振るった軌跡に幾本もの水晶の剣が浮かび上がり、ケルベロス達へと向かい飛んでいく。狙うのは前に出て直接魔女と打ち合っていた四人。
 様々な角度から襲い来るそれらを避けきることはできない、そう判断を下したイリアは右手に握った剣で攻撃を弾きながら、左手に握った短剣で地面に天秤の守護正座を描き、聖域を作り上げ仲間への攻撃を僅かながら軽減する。
「今回復しますね」
 テティスが声をかけながら薬液の雨を振り撒き、仲間達が受けてしまった傷を癒していく。
 互いに激しい攻防は続いているが、魔女は一切の攻撃を防ぎきっているのに対し、ケルベロス達はどうしても避けきれない攻撃を受けてはテティスとイリアの回復に頼り凌いでいるにすぎない。
 不味い流れなのは明白、それを変えようとセレナが鋭く踏み込む。
「いでよ、我が魂」
 手にした刀を媒体に、魔力を流し込まれたそれは白銀色のハルバードへと突如姿を変える。
 突然の間合いの変化に距離を読み誤った魔女は、避けることを諦め、その攻撃を箒でしっかりと受け止める、が、威力を殺しきることができず、その体が沈み込む。
 ハルバードがもとの刀へと巻き戻りいく、その瞬間、体勢を崩した魔女の体を爆風が包み込む。
 雨祈の放ったグラビティによる攻撃を受けながらも、魔女はまだまだ余裕を持った表情で口笛を吹く。
 その音を掻き消すように、ジークリンデは再び魔女へと向けて銃弾の雨を浴びせかける。
 かわし切れない銃弾に服をボロボロにされながらも魔女は致命的な弾だけを器用に避け、魔方陣で弾き、なお踊る。
「お返し!」
 言葉と共にボロボロになった服の隙間からモザイクが溢れ、巨大な口を形成しジークリンデに対し牙を向く。
「ツヴィンガー」
 その攻撃がジークリンデヘ届くより早く、アインヘリアルのサーヴァントが飛び出して変わりにその攻撃を受けとめる。
「え、ひゃっ、なにこれ!?」
 対して魔女は、突如飛び出してきた禍々しい見た目にペイントされた謎の生物をモザイクで喰らった事を後悔するかのようにぺっとすぐさま吐き出し、ツヴィンガーは地面をコロコロと転がる。
 突然の事態に混乱する魔女の首へとアインヘリアルの放った鎖が迫る。彼の両腕から伸びるそれは、意思を持つ蛇のように魔女の首を締め上げる。
 必死にもがき、何とか召還した水晶剣で鎖を断ち切った魔女の元には既に遊鬼が死角から迫っている。
 雷の霊力を帯びた短刀から繰り出される神速の刺突。意表を突かれた魔女は避けることもできず、その衣装の大きく裂かれながら、胸元を貫かれる。
 確かな手応えを感じる一撃ではあったが、決着をつけるにはまだ足りない。
 魔女の傷跡から溢れだすようにモザイクが弾け、とっさに遊鬼はその場から距離をとる。数瞬前まで彼のいた場所をモザイクの牙が噛み砕く。
「あぁ、せっかくの衣装が」
 残念そうに呟きながら魔女は溢れたモザイクを再び体へと巻き戻していく。
「でも、やっぱりパーティは楽しいね。一人じゃこうはいかないもの」
 魔女の表情は仮面の下に隠され伺うことはできないが、その声は先ほどまでとは一転し、喜色を隠さないとても弾んだ声だった。


 再び魔女とケルベロス達の舞踏が始まる。
 繰り出されたモザイクの牙をユスティーナは華麗にかわしながらも、時折苦悶の表情を浮かべる。テティスとイリアの治療のおかげで外傷こそなかったが、長引く戦闘に彼女の体は悲鳴を上げていた。
 そんな気弱な表情を見せるのほんの一瞬のこと、口を引き結び、リズムに乗って間合いを詰めると、彼女にしか聞こえない旋律に乗せて、連撃を繰り出していく。
 魔女は何とかその攻撃を避け、受け流そうとするが、長い戦いで消耗した体力を回復する術を持たない魔女の動きは精細さにかけ、幾重もの打撃をその体に受ける。
 それでもなお、魔女は笑いながら再び立ち上がる。
「このままじゃきりがないわね」
「どこかで打って出ないと」
 仲間達にヒールグラビティをかけて回るテティスとイリアの二人は言葉をかわしながらもその手を止めることはないが、二人の顔に浮かぶ疲労の色も濃くなり始めている。
 決着をつけなければならない。
 誰よりも早く切り込んだ雨祈は手にした武器にあらん限りのグラビティチェインを込めて魔女の体に叩きつける。だが、魔女は止まらない、彼女もまた、決着をつけるべく、次の一手に全てをかけていた。
 魔女の組んだ両手、その目の前の空間が裂け、おぞましい触手が次から次へと這い出し始める。狙うのうは攻撃の構えに入っていたアインヘリアルだ。
 とっさにアインヘリアルはツヴィンガーの影に身を隠そうとするが、触手は器用にツヴィンガーを避けると、そのままアインヘリアルの首をめがけて、迷いなく進んでいく。先ほどとは立場が逆転する形。
 だが、触手がアインヘリアルを捕らえることはない。
「悪いが、そろそろお開きだ」
 間に割って入ったセレナが両の手に握るその刀で襲い来る触手を切り、打ち払い、その攻撃を防ぎきる。
 その間に、アインヘリアルの攻撃の準備は整っている。
「……跪け」
 両手を広げた彼の周りに数えきれない煌きが浮かび、その全てか針のような電撃が雨のように降り注ぎ、魔女の体を穿っていく。
 マントも、スカートも、とんがり帽子も、ぼろ布へとなり下がり彼女を魔女たらしめるのは鷲鼻の仮面だけとなる。
「もう終わりかぁ、でも楽しかったよ」
 寂しげに呟きながら口元だけで笑みを作ったドリームイーターは、二門のアームドフォートから極光の剣を作り上げて迫るジークリンデを正面から見据える。
 長く続いたパーティの終わり。
 魔女の体をジークリンデの放った一撃が両断した。
 

 公園の修復を終えたルベロス達はイリアの提案の元、仮装姿のまま街を練り歩きハロウィンパーティの会場を目指す。
 遊鬼は時折すれ違う子供たちに設営の為に使ったお菓子や小道具を配り、声をかける。
「気を付けるでござるよ」
 普段通りの忍者衣装は様になっていたが、慣れないぎこちない口調の彼に子供達は楽しそうにじゃれ付いている。
 同じようにセレナもまた子供たちに人気で、エインヘリアルの衣装をあっちこちから引っ張られて絡まれている。
「グワッ! 止めぬかガキども!! この……第一……王子……っくっ! 増援、増援はまだか!? ……っ兜はやらぬぞっ!」
 テティスとアインヘリアルはそんな賑やかな様子を少し離れた位置から眺めながらゆっくりとその行進についていく。
「もし目が覚めているのなら外に出て本物のパーティーを楽しんでいてくれてるといいのだけれど」
「そうだとイイんだけどな」
 未だに短いスカートを気にしながら呟くイリアに同意しながら雨祈もゆっくりとハロウィンの街中を歩く。
「私達ケルベロスがそんな暗い表情でどうするのかしら?」
 心配そうにしている二人に、ユスティーナは平然と語りかける。この催しは人々の不安を取り除くための復興のお祝いなのだからと、なんでもない態度を取る彼女に、イリアと雨祈の二人も小さく笑みを形作る。
「そうよ! 本当のパーティーはこれからなんだから」
 ジークリンデのその高らかな声に、いつの間にか行進に加わっていた人々も沸き立つ。
 会場へと向かう仮装の一団は明るい声をあげ、夜の街に暖かな光を届け、広げながら、ゆっくりと進んでいった。

作者:雨乃香 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
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