ステュムパロスは静電気羊の夢を見るか?

作者:青雨緑茶

「ああ、もう。涼しくなってくるとこうなんだから」
 とある民家。嫌そうに手を振りながら愚痴をこぼす一人の女性。
 子供が散らかしたぬいぐるみを片付けた後、触れた金属のドアノブが、バチッ。
 いわゆる静電気を溜めやすい体質の人間にとっては、秋が深まり冬が近づくというのは憂鬱な季節の到来である。
「本当、嫌だわ。不意打ちで痛い思いさせてくるし、埃は吸いつけるし、服も髪も纏わりつくし……」
 たかが静電気とはいえ、気にしはじめるとどこまでも鬱陶しいもの。そうして、愚痴の止まらない彼女であったが――。
 その心臓を、突如現れた第六の魔女・ステュムパロスが、手に持つ鍵で一突き。
「あはは、私のモザイクは晴れないけど、あなたの『嫌悪』する気持ちもわからなくはないな」
 意識を失って崩れ落ちた女性を見下ろし、ステュムパロスは嗤う。
 ステュムパロスの傍らに、薄汚れた大きなモコモコがずるりと出現する。
 それは見上げるほど大きな羊のぬいぐるみだった。
 その巨体にバチバチと青白い火花を帯電し、毛羽立った被毛には吸着した埃がびっしり纏わりついて汚らしく、まさしく女性の『嫌悪』を具現化したかような姿。
「さあ、素敵な羊さん。その『嫌悪』を撒き散らしといで」
「メェェェー」
 ステュムパロスに促されて一声鳴き、静電気羊のドリームイーターは窓を割り、外へ飛び出して行った。


「以前遭遇したのはピンクのくまさんでしたが、今回はひつじさんですか」
 風鈴・羽菜(シャドウエルフの巫術士・e39832)は、事件の概要を聞いてそのドリームイーターの姿を思い浮かべる。
 その想像の中には、可愛いモコモコの羊がめぇめぇ鳴いている様子だが。
「ただの羊さんなら良かったんすけど、埃と静電気を撒き散らすとっても困った羊さんなんすよ」
 黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)が、更に詳しい説明をする。
 苦手なものへの『嫌悪』を奪って事件を起こすドリームイーター、第六の魔女・ステュムパロス。ステュムパロスは既に姿を消しているようだが、奪われた『嫌悪』を元にして現実化した怪物型のドリームイーターが事件を起こそうとしている。
「今回もまた、現れたドリームイーターによる被害が出る前に撃破して欲しいっす。こいつを倒す事ができれば、『嫌悪』を奪われてしまった被害者女性も目を覚ますはずっすよ!」
 続けて、ダンテは資料を配る。
「敵のドリームイーターは通称『静電気羊』。1体のみで、配下などは存在しないっす。
 見た目はまぁ、遠目から見れば羽菜さんが想像する通り、可愛いといえば可愛いかもしれないっすね。でっかい羊のぬいぐるみっす。
 ただ静電気をバチバチ纏って埃まみれなんで、触りたくない、近づきたくない、って感じが先行するんじゃないかと思うっすよ」
「それは確かに、『嫌悪』のドリームイーターなだけはありますね……。現場は、どのような場所になるのですか?」
「静電気羊は飛び出してきた民家からほど近い廃工場に移動するっす。その体にもっと埃を吸着しようって魂胆みたいっすね。人気もなく特に戦闘の邪魔になるような要素もないはずなんで、ケルベロスの皆さんはそこで待ち構えて、バシーンッと迎え撃てばオッケーっす」
 で、攻撃方法は。と資料を捲るダンテ。
「えーと、大量の埃を撒き散らしてのパラライズ、空中放電によるアンチヒール、それにそのバチバチの巨体で突進したりのしかかってきたりして毒状態に似た電気の継続ダメージをかなりの確率で与えてくる技……要するに、状態異常盛り盛りの敵っす!
 静電気とはいうもののれっきとしたグラビティ攻撃なんで、いわゆる市販の静電気対策グッズや避雷針なんかは役に立たないと思っといた方がいいっすよ」
 一通りの説明をして、ダンテは拳を握って羽菜達ケルベロスを激励する。
「苦手なものは人それぞれっす、それを奪ってドリームイーターにするなんて陰湿にもほどがあるっす。面倒な敵だとは思うっすけど、なんとか討伐して欲しいっす!」
 羽菜もモコモコ羊さんの夢は振り払い、凛と気を引き締めて頷く。
「はい、心得ました。お仕事、頑張ってきます」


参加者
エルモア・イェルネフェルト(金赤の狙撃手・e03004)
据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)
ルージュ・ディケイ(朽紅のルージュ・e04993)
ユグゴト・ツァン(不変の怪・e23397)
菊池・アイビス(コウノ獲リ・e37994)
風鈴・羽菜(シャドウエルフの巫術士・e39832)
レベッカ・ウィンドワード(精霊の詠み手・e40084)
鮫洲・紗羅沙(ふわふわ銀狐巫女さん・e40779)

■リプレイ


「今度は『嫌悪』のドリームイーターか。羊自体は可愛くて好きなんだけど、今回のは愛らしい姿とは程遠いのかな」
 ダンテが予知した廃工場の中。少々薄暗いが、ある程度は差し込む光があり行動に支障はないその場所で、ルージュ・ディケイ(朽紅のルージュ・e04993)を始めケルベロスの面々は待機していた。
「静電気はたしかに困り者ですねー。私も冬は尻尾の手入れが大変でー」
 羊は羊でも、今回の敵は埃と静電気を纏う困った羊。ご自慢のふわもこの尻尾を揺らし、鮫洲・紗羅沙(ふわふわ銀狐巫女さん・e40779)がのんびり答える。
 風鈴・羽菜(シャドウエルフの巫術士・e39832)は敵の出現を待つ間、僅かな殺気を風に乗せ殺界形成の舞を踊る。その風で少々埃が舞い上がるが、それに咳き込んでしまったのは他でもない彼女自身。
「……けふけふ、みなさん、すみませんでした」
 眉を下げて律儀に謝る彼女に、大丈夫、と誰からともなくフォローが入る。例え人払いが不要であったとしても、念のためにと一般人の被害を遠ざける姿勢はケルベロスとして間違いではない。
「それにしても、こう見えてわたくしも機械ですから、静電気には少しだけ苦手意識が……あっ! あれですわ! 埃の塊っ……じゃなくて、静電気羊!」
 ご丁寧に入り口からノコノコ入ってきたモコモコの巨体が目に入り、エルモア・イェルネフェルト(金赤の狙撃手・e03004)はお喋りを止めてバスターライフルを構える。
「メェー?」
 バチバチ、青白い火花を散らして、場違いに間延びした鳴き声を上げる羊。
 チェーンソー剣・Die Sterntalerを握り、真っ先に躍り出たのはルージュ。凄まじいモーター音が反響すると同時に繰り出される騒音刃。
 ギュィィィンッ!
 その一撃を合図として、番犬達の羊狩りが始まった。


「嫌悪から生まれたドリームイーターは恐ろしげな物が多いですが、あれはまだしも愛嬌がありますな」
 エルモアが放ったバスタービームが炸裂した隙、前衛の味方へとメタリックバーストをかけつつ、据灸庵・赤煙(ドラゴニアンのウィッチドクター・e04357)が紳士的な落ち着きを払って羊を見遣る。人に危害を及ぼす以上、放置はできませんがね、と。
「羊皮紙を作るべきだ。衣でも好いな。枕も素敵。上質な睡眠を得る為には『静電気』を無くさねば。無理ならば減らさねば。――兎角。戦闘だ」
 その前衛に意気揚々と立ち、『Idhui dlosh odhqlonqh』と名状し難い呪文を唱え、自身の命中率を更に引き上げるユグゴト・ツァン(不変の怪・e23397)。ディフェンダーでありながらも、彼女は敵を屠る気満々だ。
「メェメェ!」
 下準備に余念がない番犬達へと、羊が抗議するように鳴く。
 せっかくここには自分好みの埃が沢山あるというのに、変なのが邪魔してきた! とでも言いたげだ。
「おーっと、イケンわこら。ジャリん頃わしんちにあったモコモコさんと、よう似とる」
 菊池・アイビス(コウノ獲リ・e37994)は後衛がバッドステータスに耐えられるよう縛霊手から紙兵を散布しながらも、幼少期の思い出のぬいぐるみの影を見出してぼやく。
 ドリームイーターである以上倒すしかないのは承知の上だが、忍びなさそうである。
「さて、静電気羊よ。わらわはお主に会いたがっていた戦友に代わり、任務を受けた立場ゆえ……色々と、調べさせて貰おうぞ」
 レベッカ・ウィンドワード(精霊の詠み手・e40084)は自身がこの場に立つ理由を淡々と口にし、攻撃のタイミングを見計らい最前線のディフェンダー二人の陰より出る。
「メェッ!?」
 そのまま両手に構える二つのアークに重力を宿して十字を斬り、羊へと叩き込まれる星天十字撃。薄汚れた巨体が、攻撃を受けてぼふんっと埃を撒く。
 そのまま埃はもうもうと、霧か煙かと見紛うほど白く立ち込め――。


「けふっ、けふっ……! この埃、落とせないものでしょうか……!」
 後衛へと撒き散らされた大量の埃、『アクリロニトリル・ダスト』。
 そのダメージを受けた羽菜が、動きを妨害されながらもどうにかフォーチュンスターの一撃を足技に籠め、服破りを試みる。
「心配無用。湿度を上げれば、静電気も埃も恐れるに足りません」
 赤煙が加湿器のように薬液を噴霧し、癒しの雨として後衛を包み込む。
 後衛の三人ともがそのグラビティに対して耐性のある防具を装備していた事もあり、見た目に見合わず被害はごく軽微なのが幸いだ。
「我が心身は地獄の所業。我が存在は豊穣の化身――」
 オウガメタルに覆われた拳で砕かんばかりに羊を殴りつけ、ユグゴトの戦術超鋼拳が入る。二つ目の服破りが付与された証に、羊の胴の被毛が裂けて。
「惜しいな。こんなに埃まみれじゃなければ、きっと可愛かったのに」
 ルージュが残念そうに発して、唸りを上げるチェーンソー剣のズタズタラッシュで無慈悲な斬撃を与えれば、裂けた被毛から綿が飛び出る。
「メェェェッ」
 お気に入りの薄汚いアクリル製ふわふわ被毛を裂かれ、羊は実にご立腹。
 バチバチッ!
 纏う火花が勢いを増し、羊の巨体だけでなく空中にまで放電されて前衛を襲う。
「うっわ、前に来たか! すぐそっちにも紙兵散布したるからな!」
 ジャマーであるアイビスが、急ぎ、前衛にも紙兵の守護を与える。ジャマーvsジャマー、列攻撃vs列回復。条件は同等、あとは伸るか反るか。
「治療ついでに、盾も付与しましょうねー」
 紗羅沙がマインドリングから浮遊する光の盾を具現化し、付与から漏れたディフェンダーの一人にキュアを掛け直すと共に防御力を上げる。
「くっ!」
 その一方で前衛ではレベッカが羊へとヴァルキュリアブラストを繰り出すが、任務経験の浅さもあってか、命中率は芳しくない。
 戦闘が長引き後方支援が効いてくるようになれば確実なダメージソースとなるだろうが、現時点では彼女の攻撃はともすれば外れがちだ。
「メェェーッ!」
 だが羊の方もまったくもって面白くない。ケルベロス達は防具もバッドステータス対策も抜かりがなく、特に対策に関しては全員がキュアか耐性のグラビティを用意しているという周到さ。状態異常盛り盛りの羊といえど、こうなるとただの大きなぬいぐるみ。
 横腹の裂けた姿で後肢で立ち上がり、青白く帯電する巨体を更に迫力あるものとして短い前肢の蹄をバタバタさせ、前衛の一人目掛けてのしかかってこようとするが――。
 だが、狙われたエルモアは、敏捷耐性を生かしてひらりと華麗に回避し。
「ぬいぐるみなのに嫌悪だなんて可哀想に……洗ってあげたくなりますけれど、我慢、我慢ですわね!」
 その隙に味方が幾つかのバッドステータスをお見舞いするのを見届けて、羊の晒した腹にガトリングガンを連射して蜂の巣にする。
「木の葉よ、私に力を」
 目には目を、状態異常には状態異常を。羽菜も敵の行動制限を念頭に置く合間、舞踊の所作でグラビティを操るその身に魔法の木の葉を纏い、自身のジャマー能力を高める。
「メェッ! メェッ!」
 威嚇するように鳴く羊へ大鎌を振るって斬りつけ、傷口から生命力を簒奪するルージュ。
 仲間との絆を結んでいれば更に呼吸を合わせられ、本人が意識する通りの連携の戦果を発揮できただろう。だが彼女自身の素のステータスの高さゆえ、それに届かずとも与えるダメージは決して低くはない。
「ぬいぐるみならばぬいぐるみらしく、大人しくするべきですな」
 ドラゴニックハンマーを砲撃形態に変形させ、竜砲弾を羊の脳天に打ち当てる赤煙。
 その一撃に羊が見事に身を竦めて怯むのを見逃さず、チェーンソー剣の唸りが響く。
「あー何や不憫になるのうコイツ……ゲッホゲホ! 汚ッ!」
 ぶわぁっと舞い上がった埃に咳き込むアイビスだったが、綿がはみ出たその傷口を広げるように斬り裂いてのジグザグ付与の効果は抜群だ。
「メェメェッ、メェメェッ!」
「……! 後ろに、また来ます!」
 巨体を振るって撒き散らす埃を増大させる羊の動きは先ほども見たもので、羽菜の声に後方の他二人も素早く反応する事が叶う。
 結果、埃に包まれる難を逃れる三人。状態異常が驚異の敵といえど、当たらなければこちらのもの。
 戦いはすっかりケルベロス達のペースで進んでいる。続けざまの攻撃に火花を散らし、中衛目掛けて猛然と突進してくる羊。
「メェェェーーッ!!」
「盾たる私は『仔』を守る。私の周囲に在る『番犬』を『仔』と認識」
 全身を地獄化し灰色の冷気たる『炎』を纏うユグゴトが、正面から仲間を庇う。
 組み合うといっそどちらがデウスエクスかと見紛うような様相だが、しかしもってその姿が今は頼もしい。
「みなさん、このままいきますよ~。あなたを導く燈火となりましょう……」
 銀狐巫女の秘術【幻楼燈火】(ゲンロウトウカ)。紗羅沙が幻影より生み出した見えざる導火によって敵の動きを予測し、レベッカの命中率を研ぎ澄ませる。
「助かる。――もう、外さんぞ」
 エンチャントが複数ついた事により、彼女の狙いが定まる。
 全身を光の粒子に変え、天秤宮のアーク『黄金の錫杖』の柄が過たず強く突き刺された。
「メェェェッ……!」
 静電気羊の巨体はあちこちの被毛が破れ、はみ出た綿が不定形を思わせる。
 まるでその姿は見上げるほど巨大なボロ雑巾。まだ繊維……もとい戦意は喪失していない模様だが、終わりの時は近い。


「ユグちゃん、行くで! モコモコ堪忍やでー!」
「承知。羊の皮と毛を剥ぎ取り、黒山羊たる私が着こなそう」
 アイビスとユグゴトが動きを重ね、蹴りから尖鋭に刺し貫く辰(タツ)と、生命力を喰らう地獄の炎弾たるフレイムグリードが鮮やかに挟撃を決めた。
「お主の命運ごと、ここで断ち切ってやろう」
 杖術『水月霊断破』(ジョウジュツ スイゲツリョウダンハ)。もう外す事はないレベッカが羊に肉迫し、すべての霊気を集中させ超重力の冷気を纏う錫杖を振り下ろす。
「メェッ……!!」
 最期の一足掻きとばかりに、闇雲に空中放電の火花を散らす羊。
 バチバチバチッ!
 もはや静電気なんて可愛いものではない、激しいショートが襲う。
「風調所作『鈴鳴』……――今ですっ」
 敵のショートを赤煙が庇い立って防ぎ、羽菜の舞により、静電気羊のなけなしの意識は完全に逸れた。
 自身が舞う事で巻き上げる埃をもう吸い込んでしまわないようにと着物の袖口で口元を覆い、羽菜は九尾扇で真っ直ぐにその隙を指し示す。
 ルージュが一気に朽紅の氷舞(エルブ)を使い、羊を雁字搦めにするように茨で締め付ける。ここへ攻撃が入れば、棘はよりその全身に深く突き刺さる。
「その埃ごと、綺麗に吹き飛ばして差し上げますわ!」
 紗羅沙が放ったルナティックヒールの光球を受け、攻撃力の増しているエルモアが動く。
 煌めく万華鏡の君(カレイドシューター)を展開すれば、彼女から放たれるレーザーを6機の特殊兵装『カレイド』が反射し、跳弾するレーザーが羊の全身を貫く。
「メッ……!? メェッ、メェェェェーーッ!!」
 薄暗い廃工場内に輝きを放ち、静電気羊は大きく爆ぜて塵へと還った。
 響く最後は、赤煙がその身の帯電をアースすべく地面に拳を突き立てた音と気合い一声。
「――喝!」


 大きな被害を出す事なく、静電気羊は番犬達の手により無事討伐された。
「なんだか、私のせいで必要以上に埃まみれになってしまったような気が……」
 羽菜はまだ気にしているようだが、彼女のグラビティは充分にその役割を果たした事だろう。
「埃はしょうがないですよー。それにしても、やっぱりパチパチするのは得意じゃありませんねー」
 名誉の負傷ならぬ名誉の埃まみれなケルベロス一同に労をねぎらうヒールをかけながらも、紗羅沙の尻尾や耳は静電気の残りでぼわんっと膨らんでしまっている。早々に手入れが必要そうだ。
「ネットで静電気について調べてみましょうか。まあ、静電気対策にも色々ありますのね……え、空調まであるの?」
 アイズフォンを使用して情報を得て、紗羅沙達と共有するエルモア。食わず嫌いにも似た苦手意識も、情報交換をする事で軽減するのかもしれない。
「やれやれ。消えてしまわなければ、肉や毛など残骸を回収したかったのじゃがの」
 レベッカはというと残念そうである。それでも後でレポートに纏めて戦友へ渡したい気持ちから、脳内では交戦した静電気羊の動作や状況を反芻し、生態環境を分析する。
「まー確かに静電気にゃイラッとくるが……モコモコさんは殴りとうなかった……」
 肩を落として、アイビスはまだ言っている。よほど思い出のぬいぐるみを可愛がっていたのだろう。
「静電気の羊よりも可愛い黒山羊を育むが吉。帰還の後、仔の群れを成すべきか。勿論、暴走状態の私だけが為せる故。今現在では不可能だが!」
 自嘲を込めた謎の言葉を吐き、ユグゴトは場を離れる。他の者達も、周囲の軽微な破損にヒールを終えて撤収の運びとなる。
 廃工場を出ると、秋の日差しが平穏そのものに番犬達へ降り注ぐ。
「嫌悪から生まれたドリームイーターが更なる嫌悪を生む……ステュムパロスをどうにかしない限り、この連鎖は続くのでしょうな」
「だな。苦手なものであれ、自分の大切なものを奪われるのは勘弁して貰いたい所だ」
 赤煙とルージュの話す通り、『嫌悪』を奪うステュムパロスの事件は今なお続いている。
 だがその足取りもいずれは掴めるはず。この世界には、彼らケルベロスがいるのだから。

作者:青雨緑茶 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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