鎌倉ハロウィンパーティー~孤独な赤い星

作者:神南深紅

●お友達のいないこども
 簡素なスモックを着た小さな男の子は砂場の淵に腰掛け、見事なくらい直角に首を垂れてうなだれていた。誰がどこからどうみても、しょぼくれている子供の図だ。辺りに遊んでいる子供は1人もいない。皆、室内でやがて来るハロウィンパーティの飾り付けや、お絵かき、パパとママが来るのか来ないのかなど、おしゃべりに没頭していて、たった1人この場にいない子供の事など誰も気にしていない様だ。
「火星くん~、お部屋に入ってくださ~い」
 担任の綾香先生が声を掛けるのはこれが3度目だが、砂場に座った子供が動く気配はなく、綾香先生が部屋履きから外履きに履き替える様子もない。

「どうしてあっちに行かないのですか?」
 不意に知らない声がして、動かない子供がビクッと大きく体を震わせた。見知らぬ少女が持つ鍵が子供の胸を――心臓をグサッと刺し貫いたのだ。胸を貫かれた子供は怪我もせず死にもしない。
「ハロウィンパーティーに参加したい……ですか。その夢、かなえてあげましょう。世界で一番楽しいパーティーに参加して、その心の欠損を埋めるのです」
 言うなり子供はトサッと軽い音を立てて前のめりに砂場に倒れ、入れ替わるように人型の異形が現れる。着古した大きく色褪せた赤のボロ布を頭からフードの様にかぶり、節くれだった杖を手にしている。身体は全てモザイク状だ。人型のフードをかぶったモザイクはスッとその場から姿を消した。
 笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)は溜息をついた。
「困った事が起こりそうです。藤咲・うるる(サニーガール・e00086)さんが調べてくれたんですけど、日本のあっちでもこっちでもドリームイーターが暗躍しているようなんです」
 ねむははぁともう一度溜息をつく。出現したドリームイーターはハロウィンのお祭りに対して強い劣等感を持っていた人で、ハロウィンパーティーの当日に一斉に動き出すらしいのだ。
「ハロウィンドリームイーターが現れるのは、世界で最も盛り上がるハロウィンパーティー会場……つまり、鎌倉のハロウィンパーティーの会場なんです。そんなことになったら大変です。もう皆さんにお願いするしかありません! ハロウィンパーティーが始まるまでにハロウィンドリームイーターを撃破しちゃってくださいなのです」
 ねむはぎゅっとこぶしを握った。

 色褪せた赤いフードを目深にかぶったケルト神話のドルイドの様な風貌のドリームイーターは、幼稚園で皆の仲間に入れなかった5歳の子供火星(まぁず)君の心から生み出された。父母も祖父母も忙しく、園主催のパーティに誰も来てくれないことが主因であったし、少々赤っぽい髪や奇抜な名前も孤立してしまいがちな遠因であった。だから、古びた杖を携えたこのドリームイーターは友人同士で楽しそうにしている者達に強い執着を持つ。わいわいと騒いだり、軽口を言い合ったり、ケンカしたり仲直りをしたり、そういう人との濃い関わり合いをしている者達が羨ましく、ねたましいのだ。そういう者達に引き寄せられるように接近し攻撃をしてくる。主に使うのは杖で『心を抉る鍵』として肉体を切り裂きトラウマを具現化したり、モザイクを飛ばして敵を包み悪夢を見せたり、自らのダメージをモザイクで修復したりする。
「ハロウィンドリームイーターは、ハロウィンパーティーが始まると同時に現れますから、本当のハロウィンパーティーが始まる時間よりも早く、もう始まったように楽しそうにしていたらハロウィンドリームイーターも騙されちゃって出てくると思うんです」
 名案でしょう? というようにねむは得意そうに言う。
「ねむも楽しみにしているんです。だから、本当のハロウィンパーティーをみ~んなで楽しむために、悪いドリームイーターは撃破しちゃいましょう。」
 ねむは普段よりやや熱心にお願いしますと2度言った。


参加者
花凪・颯音(花葬ラメント・e00599)
橘・芍薬(アイアンメイデン・e01125)
石蕗・陸(うなる鉄拳・e01672)
星之宮・悠人(天玻璃仰ぐ銀の拳士・e02853)
戸部・福丸(ドラゴニアンの降魔拳士・e04221)
ローゼス・エレガンティエ(ビードロの鏡・e05100)
アズミ・ベノート(弱虫のバトルクライ・e12900)
アリオーン・コーエン(蒼炎を纏う黒馬・e13422)

■リプレイ

●パーティを始めよう
 世界で一番素敵なパーティが開催されるのは鎌倉と決まっている。それは今、世界で一番デウスエクスによる爪痕が残る場所だからだ。

「「トリックオアトリート!」」
 男声、女声、子供の声、抑揚のない声が一斉に同じ言葉を楽しげにコールされると、その場にいた全員が席を立ち、歓声をあげて素早く違う席を求めて移動する。
「これ、席が取れないと結構悔しいね……!」
 席にあぶれて立つしかない花凪・颯音(花葬ラメント・e00599)は笑顔の中にごく僅かな『悔しさ』をにじませながら言った。傍らで同じ意匠の仮装をした生花だらけのロゼが不思議そうに首をかしげて見上げてくる。
「私には苦手な事はほぼないわ。たとえ親しい友人同士が仲良く興じる『フルーツバスケット』だとしても、死角はないわよ」
 硬質な美貌を讃える橘・芍薬(アイアンメイデン・e01125)は緑色の動きやすい服装で椅子に綺麗な姿勢で腰掛けている。同じく緑の帽子をかぶり、腰のベルトに飾りの短剣を刺しているのはピーターパンの扮装だろう。
「ん? そういえば、なんか違う言葉が混じってねぇか?」
 ハロウィンにちなんだお題ばかりでなかなか座れなかった石蕗・陸(うなる鉄拳・e01672)は久しぶりに座ると、少し前から気になっていたのだと、椅子の背が向けられている中央へ顔を向けて言う。そうすれば立っている者以外とは至近距離で話が出来る。
「俺はルールはちゃんと覚えてるよ。掛け声はトリック・オア・トリート!」
「そうそう、トリックオアトリートメント!」
 アズミ・ベノート(弱虫のバトルクライ・e12900)と戸部・福丸(ドラゴニアンの降魔拳士・e04221)がもう一度掛け声を重ねる。今回のフルーツバスケットはハロウィン特別仕様ということで『フルーツバスケット』とコールするところを『お菓子くれなきゃいたずらしちゃうよ』という決まり文句を使っている。
「フルーツバスケットの掛け声は『トリック・オア・トリート』。トリートメントでは治癒や補修という意味になる」
「えええっ」
 冷静にアリオーン・コーエン(蒼炎を纏う黒馬・e13422)がツッコミをいれると、福丸は本当にビックリしたらしく驚愕の叫びをあげた。
「本当に? 本当にトリートで終わり? メントはつかないの?」
「使わない、ですね」
「わーわー! 恥ずかしい!」
 苦笑しながら星之宮・悠人(天玻璃仰ぐ銀の拳士・e02853)が言うと福丸は照れ隠しに腕をバタバタさせながら顔を伏せる。普段の日なら『トリートメント』の方がはるかに使う言葉なのだが、ハロウィンに限っては使われるのは『トリート』なのだ。
「さぁ、次は颯音君が移動する者を決める番だよ。ふふっ、フフ、私の美しい立ち姿を披露させることはできるかな?」
「まーた言ってるぜ」
 陸は西部劇に出てくるガンマン(長いフリンジ付き)の様な格好をしたローゼス・エレガンティエ(ビードロの鏡・e05100)の腹へと握った拳をまっすぐに伸ばすと、ローゼスは美しく椅子に腰掛けながら優雅な仕草で陸の手を回避し、颯音にゲームの進行を促す。
「いや、こういう場合は掛け声を間違えた福丸が立つべきだな」
 吸血鬼の黒い服とマントを身に着けたアリオーンは細く長い指を額にあてながら言う。
「そ、そうかな。じゃあ交代だね。ここ座って」
 福丸は素直に椅子からぴょんと立ち上がると、立っていた颯音とロゼに明け渡した。

 壊れる前は自動車のショールームだったらしく、大きな道路に面した大きな窓からは中の様子がよく見える。ごく簡単にヒールで補強するとケルベロス達はパーティの準備に取りかかった。ローゼスは器用に折り紙で作ったコウモリやおばけ、カボチャのランタンを壁に貼りアリオーンがそれを手伝う。アズミは内装ついでにふざけてローゼスにまで電飾を巻こうとした。
「美しいモノを更に飾りたくなるアズミ君の気持ちはわかるがね……」
「ふざけ過ぎちゃったかな、ごめんね」
 動くのに邪魔になりそうだからとローゼスは丁重に断り、アズミは笑ってクリスマスめいたチカチカする電飾を引っ込める。
 福丸は林檎を大量に持参し積み上げ、芍薬はバイト先から絶品ハンバーガーをテイクアウトしてきてくれた。
「やっほー、遅くなったわね。準備進んでる? 料理持ってきたわよ。こっちがカボチャのパイに手作りのケーキ。あ、あとこっちはうちの新作バーガー、良かったら味見してみて」
 陸はデパチカのハロウィン商戦をあてこんだ総菜をみつくろい、颯音は手作りの菓子を持参し悠人はそれをテーブルに並べてゆく。分担して持ち寄ればすぐにハロウィンパーティらしい内装と、潤沢な食事や飲み物が集まった。そこで彼等は最前からフルーツバスケットに興じている。お題はハロウィン限定でコールもハロウィンの定番台詞だ。

「それじゃあ次は……カッコイイひと!」
 福丸の声にガタッと幾つもの椅子が大きく後ろに倒れたのは、開け放したガラスの重い扉から目深にフードをかぶった男が乱入してきたからだ。手にはうねるように節くれだった童話の魔法使いが持つような杖を携えている。
「オレも! オレもオレも仲間に入れてくれよぉおおお!」
 フードのついたマントをはためかせ乱入してきたのは全身モザイクのドリームイーターが飛ばしたモザイクが福丸を包み込もうとする。
「わああっ」
 突然出現した敵とその攻撃に福丸の体勢は全く整っていない。
「させるかよ!」
 モザイクと福丸の間に陸が割って入り、その攻撃を身体で受け止める。
「うっ……」
 深い茶の前髪に隠れうつむく陸の表情はよく見えないけれど、その攻撃は心を蝕む。
「陸」
「大丈夫だ」
 不安そうに名を呼ぶ福丸に陸の声は少しも辛そうではなさそうに聞こえる。

●戦いを始めよう
「やっと来たわね! もう待ちくたびれたじゃない」
 仲間達に、そして全身モザイクのドリームイーターに恨み言を言いながら芍薬は真っ先に戦闘態勢に入る。何時の間に手にしたのかリボルバー銃が正確にドリームイーターの頭部を撃ち抜いてゆく。
「九十九」
 芍薬の意を汲んだテレビウムの九十九が陸の前へ出ると、再生した応援動画を視聴させて傷を癒す。
「助かったぜ。やってくれた借りは速攻返す!」
 九十九を飛び越え陸は空中で襟元を緩め、両袖をまくった腕を突き出し達人の域にまで到達した華麗なる美技で敵を無骨に殴りつけた。ライドキャリバー『ヴォーテクス』もガトリング掃射でほぼ同時に攻撃する。
「ぐあっ!」
 えぐるように繰り出された拳を腹に、全身に銃撃を受けたドリームイーターが身体をくの字に曲げて数歩退る。更にボクスドラゴンのロゼが弾むように床を蹴り敵へ体当たりを敢行する。
「あの、陸の回復は僕がやるから……」
「わかったよ」
 颯音は陸へ使うつもりだった『エレキブースト』をとっさに止める。
「勇猛なる者よ、其の歩みし戦乱の理を此処に指し示せ……」
 星に眠る竜騎士の猛き姿が最前列で戦う覚悟を持つ者達に、破邪の力を与えてくれる。
「さっきはありがとう。ボクを助けてくれて」
 福丸のオーラが陸を癒し、流れるように自然に敵へと接近した悠人の放つ電光石火の蹴り技は破邪の力を乗せて敵の喉を打つ。
「楽しいパーティの会場に無粋な闖入者は要りません」
「オレは負けない! 役に立ちたい! 覚悟を決めて行くぞ魔槍……色鮮やかに派手に貫け!」
 アズミの声は一言ごとに気合いを高め、虹の様に輝く宝石を散りばめた得物を『やり投げ』の要領で身体をしならせ、思いっきり……(一瞬まぶしそうな顔をしてローゼスへ身体が向いたのだが、慌てて修正し)投げた! うなるような音をたてて揺れる槍が敵を貫く。
「幼子の心に付け入るとは気に入らん」
 腹に大きな穴のあいたドリームイーターを睨め付けたアリオーンが地獄の炎を燃え上がらせたままの斬霊刀、二振りの刀を敵に向かって叩きつけた。肩口のモザイクをまき散らしながら、しかし手にした杖を頼りに敵はまだ倒れない。
「やっと来てくれたね、私達の新しい招待客。フフ歓迎しよう!」
 ローゼスは両手の飛び道具から『時間を凍らせる弾』を創り、放ってゆく。だが、全身のモザイクを移動させて腹の穴を塞いだドリームイーターは元通りになった姿でフードの奥からにた~っと笑う。
「あっはははっ、遊ぼうよ、もっと、もっと」
 ドリームイーターは狂ったようにゲタゲタと大笑いする。
「冗談じゃないわ」
 芍薬は胸部をパカリと開き、そこから強力でまぶしい光を射出させる。真っ直ぐに放たれた光は軌跡を描いてドリームイーターを貫通する。ぱらりと幾ばくかのモザイクが爆ぜるように散ってゆく。更に九十九の攻撃が加わる。
「これは遊びじゃないのよ。そんなこともわからないの?」
 糾弾というよりはどこか悲しげな芍薬と立ち位置を入れ替えるように陸が拳を繰り出した。魂を喰らう降魔の一撃だ。目にも止まらぬ攻撃に回避する間もなくドリームイーターに命中し、ぐるりと一回転して床に転がったところをヴォーテクスが轢く。
「どうだ! イテェじゃすまねぇくらい痛いだろっ」
 敵に受けた傷の痛みなど微塵もみせずに陸は笑って敵を見下ろす。
「あなたに恨みはないけれど、孤独な心を弄ぶ者にはお仕置きが必要だ」
 颯音のロッドから雷がほとばしり、ロゼのブレスと一緒になって転がったままのドリームイーターを攻撃する。
「でも……ボクはちょっと感謝してるよ」
 小さな小さな誰にも聞こえなかったかもしれない小さな声で福丸は言い、最前列の者達へと霊力がこもる紙兵がハラハラと降ってゆく。
「……だってみんなと知り合ってパーティして、遊べて、楽しかったんだ」
 ドリームイーターを生み出した子供にもこんな暖かい気持ちを教えてあげたい。きっとあの子もそう願っている筈だと福丸は強く思う。
「それはそうだね。私も楽しかった」
 一瞬優しく笑った悠人だが、すぐに表情を消しまだ体勢の整わない敵へと拳を入れ、同時に網の様に広がる霊力で敵を捕らえる。
「今度は私を狙わないで欲しいね。まぁ何時如何なる時でも衆目を集めてしまう我が身の美しさが罪なのだから、アズミ君だけを責めるわけにはいかないけれどね」
「あ、やっぱりバレてたよね? ごめんごめん。もう大丈夫だから……たぶん」
 小さくヘコヘコローゼスへと頭をさげると、アズミは生死の境界、デッドラインからおぞましくうごめく触手を喚び出し敵へと放つ。ドリームイーターはかぶっていたフード付きのローブもぼろ布の様になり、全身のモザイクがほぼ露わになっていたが、それもケルベロス達の攻撃で随分と脱落している。その様を冷徹な黒い瞳で見据えたアリオーンは静かに言った。
「火星(まぁず)、だったか。あの子の名前……最近にありがちな名前だが、カッコいい名前だと、俺は思うぞ。紅い髪の色も綺麗だ」
 ドリームイーターに夢を喰われた子供へとアリオーンは語りかける。この場にいない、どこにいるのかもわからない子供に届くとは思えなくても、どうしても言わずにはいられなかった。ドリームイーターの反応も特にない。
「仕方ないか」
 物質ではなくなった斬霊刀を抜き放ち攻撃を仕掛ける。しかし、思いがけなく敵がアリオーンの攻撃と真逆に動き、結果的に回避されてしまう。しかしそこへ爆炎の魔力が込められた大量の弾丸が連射される。
「君を生んだ主はカッコいい名前に反して中々に奥ゆかしい。私の名前もカッコいいけれど!」
 どんな場面でも賛美の言葉を欠くことのないローゼスは隙のない立ち姿と顔の向きをキープしつつ華やかに微笑む。
「ゆ、許さない! 許さないよ。オレの事、バカにしたなぁぁあ」
 駄々っ子の様に絶叫したドリームイーターがローゼスへと杖を振り上げた。それを剣か刀の様に繰り出してくる。
「美しい私の顔を狙うとは! 顔に傷は困るからね!」
 とっさにローゼスは敵に背を向け両手で頭部、いや顔を覆って身を守る。
「……!」
 しかし来るべき痛みはローゼスを襲ったりしない。
「本当に子供なのね。攻撃の筋が真っ直ぐでバレバレよ」
 敵とローゼスの間には芍薬がいた。杖の攻撃を身体で受け止めている。
「うっ」
「今度はこっちからお返しするわ。エネルギー充填率……100%! いくわよ、インシネレイト!」
 芍薬の優しく触れた掌が紅く輝き、熱くたぎる熱エネルギーがドリームイーターの内部へと送り込まれて背から爆砕され放出される。
「これで最後だ!」
 陸のガントレットに体中のグラビティ・チェインが破壊の力となって絡みつく。そのまま真っ直ぐに突きだした拳はドリームイーターを突き抜け、砕けたモザイクがガラスの様に散ってゆく。
 そして……ポンと敵の姿は大きな大きな、そしてオレンジ色も鮮やかなカボチャになった。ご丁寧に内部はくりぬかれ目鼻が刻まれたハロウィンの装飾品だ。
「な、なんで? どうして?」
「危ない!」
 たった今まで戦っていた敵の変わり果てた姿に警戒も忘れ、悠人の声も聞こえないほど驚いた福丸はカボチャのオブジェに駆け寄った。
「カボチャ……だね。っていうか、ジャックオーランタン?」
 いつの間にか福丸の横に立つアズミはひょいと手を伸ばしてソレを持ち上げる。
「かるっ」
「どういう事なんだろう?」
 颯音はロゼに語りかけるが、ロゼも愛らしく首を傾げるだけで答えはない。
「なにはともあれ……私達の勝利だよ、諸君」
 ふぁさぁ~っと髪を掻き上げながらローゼスが微笑む。
「私達の友情と美が敵を凌駕したのだよ。さぁ、では再び世界で最も楽しいパーティの続きを再開しようではないか」
 ローゼスは美しい優雅に両手を広げる。
「そうしよう! そうしよう!」
 福丸はぴょんぴょん跳びはねながら喜々として言う。
「……そうしよっか」
 ちょっと考えてアズミは手近なテーブルの上にカボチャを置くと、すぐにアリオーンがその不思議なオブジェに手を伸ばす。どこからどうみても、ただの飾り物でちょっと大きな雑貨屋あたりに飾ってありそうな代物だ。妖しい雰囲気も奇妙なギミックが発動しそうなボタンもない。
「これはこれで納得するしかないのか」
「その様ね。お疲れさま」
 芍薬に冷たい飲み物を差し出されたアリオーンは敵だったオブジェをハロウィンの飾りの中央へと置いてやる。そうすると最初からそこに在るべきであったかのようにビックリするほどしっくりした。
「ゲーム始めるぞ! ほら、さっき立ってたのは福丸だよな」
「うん、ボクだよ」
 陸が大きく手を振り、空いている椅子を示す。
「わかった」
 情報収集はもうちょっとここにいてからでもいいかもしれない。アリオーンは薄く笑い、芍薬と共にまぁるく椅子が並んだ方へ……仲間達が呼ぶほうへと歩き出した。

作者:神南深紅 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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