ハロー、バイバイ

作者:秋月きり

「やはり、此処もモザイクに包まれている……」
 生い茂る木々を掻き分けた先の開けた場所。それがノル・キサラギ(銀架・e01639)の目指したキャンプ地だった。ただ山奥にあるだけのその場所を知ったのは、つい先日の事。人の賑わいを感じられない其処に、説明付かない焦燥――或いは何らかの予感を感じ、向かった彼を出迎えたのは、モザイクに包まれた景色だった。
「まずは調査をしないと……」
 臆さず踏み入った彼を出迎えたのは、奇妙な景色だった。
 ばらばらにつなぎ合われた景色は否が応でもモザイクを想起させ、空間内は纏わりつく粘液に満たされていた。
 ふと足を止めたノルに、影が差しこんでくる。
「このワイルドスペースを発見できるとは、まさか、この姿に因縁のある者なのか?」
 声に、そして容姿にノルの挙動が止まる。
 その姿を知っていた。忘れる筈も無いその外観をノルは知っていた。あれはまさか――。
「だが、今、ワイルドスペースの秘密を漏らすわけにはいかない。お前は、ワイルドハントである俺の手で死んで貰う」
 ノルと瓜二つの外見をしたそれは、手に構えた大型ライフルから光線を迸らせる。発射寸前で我を取り戻したノルは、地面に転がり、それを回避。己の得物である銀鎖を引き抜く。
(「その姿を、俺に見せる、のか――」)
 奇しくも『それ』は、己の辛い過去を想起させる外見をしていた。――ダモクレスだった頃の自分に酷似していたのだ。

「ワイルドハントを調査していたノルがドリームイーターの襲撃を受けたようなの」
 ヘリポートに集ったケルベロス達へ仲間の危機を告げるリーシャ・レヴィアタン(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0068)の声には、若干の焦燥が混じっていた。
 襲撃をしたドリームイーターは自らをワイルドハントと名乗っており、『九重連山の中にあるキャンプ場』をモザイクで覆って、その内部で何らかの作戦を行っているようなのだ。
「このままだとノルの命が危険よ。急ぎ、彼の救援に向かってワイルドハントを名乗るドリームイーターを撃破して欲しい」
 今ならば、戦闘開始直後に合流できるはずだから、と前置きをし、リーシャはノルが置かれた状況について言葉を続ける。
「まずはキャンプ場だけど、特殊な空間と化しているわ。でも、戦闘に支障を来すほどではないから、安心してね」
 粘液にも似た何かに満たされているが、動きは阻害しないし、呼吸も出来る。戦闘を含めた様々な活動に問題なさそうだ。
「現れるドリームイーター、ワイルドハントはノルそっくりの――ダモクレスの外見をしているわ」
 とは言え、それは見た目だけの話であり、全くの別人である事は明白だ。心置きなく撃破して欲しいとリーシャは告げる。
「得物は右手に抱えたバスターライフルと、左手に握った短銃。それと、ナノマシンによる治癒も行うようね」
 何処までが機械で何処までがドリームイーターの能力なのかは謎だが、外見に沿った能力を持つようなのだ。
 また、戦闘直後とは言え、幾らかのタイムラグがある為、ある程度の負傷や疲労をノル自身が負っている事が予想される。そのフォローも必要だろう。
「ワイルドハントと名乗るドリームイーターは、ワイルドの力を調査されることを恐れているのかもしれないわね」
 ともあれ、まずはノルの救出、そしてワイルドハントの撃破が先決だ。
 決意に満ちたケルベロス達へ、リーシャはいつもの言葉を告げる。
「それじゃあ、行ってらっしゃい」


参加者
レクシア・クーン(咲き誇る姫紫君子蘭・e00448)
ノル・キサラギ(銀架・e01639)
月見里・一太(咬殺・e02692)
神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)
マロン・ビネガー(六花流転・e17169)
ロア・イクリプス(エンディミオンの鷹・e22851)
フローライト・シュミット(光乏しき蛍石・e24978)
ゲリン・ユルドゥス(白翼橙星・e25246)

■リプレイ

●Hello,byebye――迷子の続き
 未だに夢に見る。
 僕は、まだ、彷徨っている。終わりの見えない、悪夢の道を。

 ヘリオンから着地したケルベロス達を待ち受けていたのは、モザイクの色彩に覆われた世界だった。
「ノルくんを探さないと!」
 光の翼を展開したゲリン・ユルドゥス(白翼橙星・e25246)が焦燥の声を上げる。本当は今にも飛び出したかった。だが、それでは意味がないと自制し、空中待機している。
 視界に広がる景色は、異界と化していた。無論、以前、ここに訪れた事があるわけではない。だが、それでもこの場所がこの世ならざるモノと化している事は理解出来た。
「アイズフォンは……通じないわ」
 フローライト・シュミット(光乏しき蛍石・e24978)のとつとつとした言葉は、残念そうに紡がれる。いくら山奥とは言え、電波が拾えない訳は無いだろう。つまり、このワイルドスペースそのものが通常の世界とは切り離された『何か』なのだろうか。
「こっちだっ」
 ウェアライダーの超感覚故か、それとも親しき友の危機に対する勘なのか。月見里・一太(咬殺・e02692)は西を指す。神白・煉(死神を追う天狼姉弟の弟狼・e07023)も戦いの音を聞き取ったのか。彼の言葉を頷き肯定する。
 二人の伝令に、レクシア・クーン(咲き誇る姫紫君子蘭・e00448)とマロン・ビネガー(六花流転・e17169)は己の翼でふわりと浮遊、ゲリンと共に飛翔する。
「ちゃちゃっと救出して日常に戻してやんねえと、な」
 友人の危機に駆け付けた7人の仲間を頼もしく見ながら、ロア・イクリプス(エンディミオンの鷹・e22851)も駆け出した。
 告白すれば、彼らの心意気が嬉しかった。ノルの為に集まった彼らへ、いつもの友人の頑張りが伝わっているようで、誇らしい気分が胸の内から溢れて来る。
「頼むから無事でいてくれよ」
 願いが届いてくれと、切に祈っていた。

 時は少しだけ巻き戻る。
「――ぐっ」
 自身の肩を抑えたノル・キサラギ(銀架・e01639)からくぐもった呻き声が零れる。己の胴よりも太い樹木の幹に背を預け、激しくなった呼吸を整えていた。
 ぽろぽろと零れる物は、炭化した己の皮膚だったものだ。生命を繋ぎ止める液体が滲み、千切れた服と押さえる掌を染め上げていく。
「死んで貰う」
 ノルを探すワイルドハントの声は何処か嗜虐的に聞こえた。その表情を思い出し、嫌悪で表情が歪む。
(「あんな顔をしていたのか。『俺』は」)
 幾度と想起した過去の自分は、あんな悪鬼の形相をしていたのか。
 光が弾ける。破壊光線は幹を抉り、焦げた臭いをまき散らした。応戦に放つ無数のミサイルはしかし、爆音と閃光を撒き散らすのみ。真っ向から受けたワイルドハントに効果的なダメージを与えられていない。僅かに刻まれた傷を修復しながら、ワイルドハントはノルへと歩を向ける。
 彼のドリームイーターの文言――『殺す』との言葉に嘘は無いだろう。その為に彼はノルを追い詰めている。
(「流石はデウスエクス、か」)
 瞬く間に形勢はノルの不利に陥っていった。未だ、彼が倒れていないのは、その身を付与されたディフェンダーの恩恵、そして研鑚された体力だった。身を包むワークギアもまた、その一役を担っている。
 だが、それが何時まで持つものか。如何にケルベロスが超常存在と言えど、それはデウスエクスも同じだ。ケルベロスはデウスエクスに死を刻印できる牙を持つものの、大多数のデウスエクスに比べれば路傍の石のような存在でしかない。オークや竜牙兵等の力弱い存在ならともかく、一対一でデウスエクスと相対し、勝利する保証などない。
(「――っ」)
 己の首から下げたロザリオを握り、祈りを口にする。だが、その祈りが誰に向けられたものか、そもそも祈りが何なのか、ノル自身ですら、答えを持ち合わせていなかった。

 やがて、ワイルドハントの光線はノルの身体を捕らえる。
「このワイルドスペースで死ねることを光栄に思え――」
 迸る光線はノルの胸――心を貫く。それが定命化したレプリカントに与えられる『死』であった。
 その筈だった。
「ノルっ!」
 呼び掛けは誰のものだったか。
 そして、横合いから飛び出した黒い影がワイルドハントを吹き飛ばす。
「番犬様の御成りだ! 咬まれて砕けろ鏡像モドキ!」
 己に禍々しい呪紋を浮かび上がらせた一太だった。
「追い縋る者には燃え立ち諌め、振り離す者には燃え上り戒めよ。 彼の者を喰らい縛れ―――迦楼羅の炎」
 蒼き無数の炎弾はレクシアの紡ぐ地獄の炎。それを浴びたワイルドハントは踏鞴踏み、攻撃の中断を余儀なくされる。
「ノルさん!」
「――みんな!」
 応じる彼の声は、何処か、震えていた。

●Include――キミがいたから
 その世界で、僕は自身が孤独と思っていた。
 否、孤独だと気付けなかった。僕は孤独を知らなかった。孤独じゃない事を知らなかったから。

「やらせはしねぇ!」
 裂帛の気合と共に、煉が竜砲弾を射出する。直撃受けたワイルドハントはしかし、手にした拳銃の引き金を引くと、応酬とばかりに光線を放って来た。
「ふいー……間に合って良かったよ」
 煉を狙う光線を光剣で弾いたロアが気怠げな声を上げ、ノルに微笑を浮かべる。
「ま、無事で何よりだ」
 軽口にも似た口調が、彼なりの心配だった。
「自分自身に自信が無いから、ノルさんのコスプレをしているんですよ!」
「多分……、それは違うと、思う」
 仲間にオウガ粒子を纏わせながらの口にしたマロンの台詞は何処かズレていて、ノルに緊急手術を施すフローライトは思わず突っ込みを入れてしまう。
「8つに増えた所で、どうだと言うつもりだ?」
 飛んできたワイルドハントの言葉は鋭かった。ああ、そうだろう。仮にも相対する目の前の敵はデウスエクス。ケルベロス8人と互角に渡り合う超常存在でもある。その言葉ははったりではない。
 だが、それでも、とフローライトは睨みつける。まるで、射殺そうとするかのような視線はワイルドハントを捕らえ、放さなかった。
「やっぱりあなたは……ノルに似てるけど、ノルじゃ無い」
 断言した。
 敵はノルの容姿を模倣しているだけ。或いは似通っているだけの存在だ。目に映るそれは、ノルに似ても似つかない存在だと断ずる事が出来た。
 その存在は彼の持つ温かさを有していなかった。だから、否、と言えた。
「そうだ。こいつはノルじゃねーよ」
 光の盾をノルに付与するロアもまた、フローライトの言葉に同意を示す。それ以上の言葉は紡がれなかったが、彼の心境も同じなんだろうと思うと、少しだけ嬉しく思えた。
「キミは過去からきたノルくんなの? それとも未来からきたノルくん? どっちでもないの?」
 流星の煌きを纏う蹴りと共に、ゲリンが問いかける。しかし、ワイルドハントはそれに応じない。
 答えの代わりに向けられたのは、巨大な銃口、そしてそこから迸る熱線だった。
「簡単に通したい一撃ではないですね……!」
 腕を交差させ、受け止めたレクシアが溜め息を零す。ぱりぱりと剥がれる焦げは、纏う衣服が炭化した物だった。覗く白い肌に走る火傷は痛ましく、しかし、それでもレクシアはゆるりと首を振る。
 この痛みは覚悟の結果。自分は皆を守る為に此処にいるのだと微笑すら浮かべていた。
「一人で抱え込むんじゃねーぞ!」
 レクシアへの追撃の光を狼頭のハンマーで受け止めた煉から零れたのは、叱咤のような声だった。誰かが言っていた。ケルベロスの力は加算ではなく乗算だと。個の力ではなく、群れとしての力。それがケルベロスの強さなのだ。
「です! みんなで敵を倒して、みんなで帰るのですよ!」
 マロン本人の意図はどうあれ、彼女の能天気とも思える声は、皆に笑顔を与えていた。
「――なぁ。キサラギさん、あれ、どう見えてるよ?」
 不意に一太がノルに問う。ワイルドハントの姿は彼の写し身。その問いに、返って来たのは一瞬の逡巡だった。
「あれは……『俺』だよ」
 絞り出すような声に、そうか、と淡白に頷き、言葉を紡ごうとする。
「なら、喜べ――」
 言葉は最後まで発せられなかった。ノルの独白が遮ったからだ。
「あれは、俺の悪夢だ。俺だったものだ。俺が最も憎む物で、最も忌避する存在。だけど」
 刹那の間だけ、言葉が途切れた。そこに込められた万感の思いを一太は感じた気がした。
「あれは、敵だ。そして、『俺』だ」
「だったら砕いて終わらせんぞ」
 そして、戦いに勝利した喜びを皆で分かち合おう。
 狼面のウェアライダーはにやりと笑う。その笑みは勝利の確信を以って、形成されていた。

●Hello,World――貴方の価値
 いつだったか、誰かに言った事がある。
 『キミは、一人じゃないよ』って。
 その言葉によって、本当に救われたのが誰なのか。それは、僕だけが知っていた。

 光線が飛ぶ。焦げた臭いが充満する。剣戟が飛ぶ。切り裂く音と血臭が立ち込める。拳が唸る。悲鳴と怒号が飛び交う。攻撃と治癒のグラビティが交差し、その都度、誰かの声が零れる。
 それはワイルドハントの言った通りだった。数の優位はしかし、絶対の優位にはなり得ない。デウスエクスとケルベロス。個々の力量だけを言うならば、その差は大きく、数量はその差を埋める事しか出来ない。
 しかし、それは煉の確信した通りだった。言葉にすれば8対1。だが、8つの個と巨大な1つがぶつかり合うだけの戦いではない。8人が連携する事で、その力は幾重にも重なっていく。
「だから言っただろう?  共に戦う俺達は強いって」
 遠距離回復は苦手と、近距離の回復グラビティを紡ぐロアの言葉はしかし。
「……言いましたか?」
 治癒グラビティを向けられたレクシアは、小首を傾げていた。
「多分……言った」
 盾役を担う三者に緊急手術を施すフローライトの言葉は、ロアに対するフォロー。それ故に、妙に面映ゆく感じてしまう。
 戦いは佳境へと突入した。それは誰の目にも明らかだった。ワイルドハントの呼吸は荒く、その動きは疲労の為か、緩慢になっている。終局の時は近い。その核心を抱いた一太は己が身体から噴き出す獄炎を、鎖へと転じて行った。
「罰に慄け。獄卒の眼が咎を捉え、獄炎の鎖が罪を捕う」
 赤黒い縛鎖がワイルドハントを捕らえ、縛り上げる。
「放せ!」
 悲鳴の如き言葉を遅いと断じた。
「うずうずヒラヒラ、花アタックです!」
 マロンの呼びかけに応え、無数の花々がワイルドハントを覆う。共に出現した幾多の根はワイルドハントを切り裂き、その身体から力を奪って行った。
「いくよ、葉っさん。ちょっと痛いかもしれないけど、ごめんね……」
 侘びの言葉はフローライトから零れる。紫に染まった葉牡丹の形をしたそれに命じる事はただ一つ。我らが敵を屠れ。
「連接棍形態」
 枝葉が伸び、ワイルドハントを切り裂く。零れた呻き声はワイルドハントが奏でたものだった。
「星に、天に、何よりも愛しき貴方に、この歌を捧ぐ」
 讃美歌が響く。歌い上げるのはゲリンだった。それが向けられている先は唯一無二の親友、ノル。そして、その姿を模したワイルドハントだった。
 そして、断罪する。銀色星の十字が裁くのは、他者の過去の姿を歪め、陥れるワイルドハントだと。
「お願い、『銀色星の十字架』!」
 疾走った光はワイルドハントを包み、その身体を焼いていく。
 だが、相手もまた、デウスエクス。ケルベロス達の描く終局を受け入れる理由はない。
「殺す。お前だけは殺すっ」
 大と小。対となった光線がノルを襲う。ワイルドスペースを知ってしまった彼の身体を灼くべき破壊の光はしかし。
「護る戦いはお任せください」
 間に割って入ったレクシアは微笑む。その髪を彩る花の名はトリテレイア。花言葉は『守護』。それが自身の矜持とばかりに咲き誇っていた。
「ここに来てやらせねぇよ。ちゃっちゃっと帰らねぇといけねんだわ。――日常にな」
 続く熱線を受け止めたのはロアだった。軽口と共に展開した光の盾は、友人を侵す力を阻んでいた。
「偽物野郎に引導を渡してやれ!」
 蒼炎が弾ける。飛び出した小柄な体躯の狼は烈火の闘気を纏い、掬い上げるような一撃をワイルドハントに叩き付ける。全身のバネを一手に集めた煉の拳は、その身体を宙へと誘っていた。
「くっ」
 呻きと共に態勢を整えようとするワイルドハント。だが、その動作は酷く緩慢だった。
 ――少なくとも、ノルにはそう見えた。
「なぁ。『俺』」
 そして、彼は語り掛ける。それは物寂しい、決別の表情で紡がれていた。
(「例え、お前が、過去の俺が忌むべきものでも、今、皆が背を支えてくれる。それはとても暖かくて、そしてとても嬉しくて……」)
 大事な人たちがいる。駆け付けてくれた人がいる。残してきた人がいる。出会った人たちがいる。交わった人も、すれ違っただけの人も、誰も彼も、自分にとって大切な、温かい人たちだ。
 だから断言出来た。そうだ、俺は、――独りじゃない。
「今の俺は、お前とは違う」
 研ぎ澄まされた一撃は、ワイルドハントを捕捉していた。倒せない訳はない。あれは他の誰でもない、『俺』なのだから。
「コードX-0、術式演算。ターゲットロック。演算完了。魂を刻め。――ヴェルザンディ・レイド!」
 アームドフォートから放たれた光は、ワイルドハントの身体を貫き、無へと帰していく。光の粒と化していく敵を見送るノルの目は、何処か、寂しげに揺れていた。
「バイバイ、俺の悪夢。もう迷わない。俺は、人間として現在を生きるよ」
 葬送の如く紡がれた言葉は、忌み嫌う自身の過去との決別を意味していた。

●Compile――虹の様な世界で
「あんたがノルか。師団の仲間から噂は聞いてるぜ」
 煉から差し出された手が握手を求めている事に気付いたノルは、その手を取る。温もりも全て、生きているからこそ。――一人じゃない事の証左。
(「ど、どの噂だろう」)
 少年の笑顔にどぎまぎしてしまう。ビルシャナに抱きしめられスクラップにされかけた話題で無ければいいけど、と冷や汗が零れた。
 見ればマロンやフローライト、ゲリンはワイルドスペースの調査を始めている。しかし、ワイルドハントの消滅と共に崩れだしたこの世界。彼らの調査がどの程度、実を結ぶのか。それはノルにも判らなかった。
「ふぃー。疲れた疲れた」
「そうですね。……帰りに温泉とかも、いいかも、ですね」
 そう言えば近くに物珍しい温泉があったはず、とレクシアの提案に、ロアがいいね、と歓声を上げる。
「帰ろう。キサラギさん」
 一太が伸ばす手は温かく。
「ああ。帰ろう」
 ノルは笑う。
 その背後で、モザイクの世界はゆるりと、解けて行った。

 大丈夫。俺は一人じゃない。支えてくれる仲間達の中で、そう信じる事が出来た。

作者:秋月きり 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 5/キャラが大事にされていた 4
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