ブリングフォース・ジェムナイト

作者:鹿崎シーカー

「うがあああああああああああああああッ!」
 薄暗い室内に男の絶叫が木霊する。男を包む緑の炎に照らされたショーケース内部、陳列された宝石の数々をのぞき込み、アラビアの踊り子めいた服装の女はしっとりと微笑んだ。
「きらびやかな宝石に囲まれた男って素敵。でも……ねえ?」
 ヴェールの口元に指を当て、のたうち回る男を見やる。燃え盛る人型のシルエットが徐々に巨大化し、悲鳴が低くなっていく。
「やっぱり、宝石は自分を着飾るために使うべきだと思うのよ。無尽の財を体現する威厳のある騎士。この世の何より素敵な魅力……。あなたもそういう風にしてあげる。私好みの英雄に」
 女が妖しく笑った直後、火だるまの男がのけ反った。
「ぐぉおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
 咆哮と同時、緑の炎がまばゆい輝きを放って室内を翡翠色に染め上げる。店内に並べられた宝石に光が反射。そして光が大きく膨らみ消えた時、太い足が床を砕いた。女はその爪先から視線を動かし、目線を上に動かしていく。自分より遥か高い場所にある頭を見つめ、つぶやく。
「……いい男になったわね」
「はっ。恐縮です」
 巨大な騎士が頭を下げた。三メートル近い巨躯を無数の宝石で飾った全身鎧で硬め上げ、右手に同じく宝玉を多数はめた大盾を持つ。きらびやかな装備の巨体に、女は人差し指を突きつける。
「でも、まだよ。武器も鎧も持ってるだけじゃだめ。宝の持ち腐れほど醜いものは存在しないわ。……わかるわね?」
「……と、言いますと?」
 問い返す騎士に、女が艶やかに告げる。
「技を磨きなさい。その武器にふさわしい武術を身につけ、武勲を上げるの。訓練用の人間ならほら、そこら中に歩いてるしね」
「仰せの通りに」
 片膝を突き、再度を頭を垂れる騎士を満足げに眺めると、女は緑の炎に包まれ姿を消した。


「ほう……シャイターンが動いた、とな?」
「正確にはそれが作ったエインヘリアルなんだけどね」
 鋭い目つきの岩櫃・風太郎(閃光螺旋の猿忍ガンナー・e29164)の前で、跳鹿・穫はうどんのスープを飲み干しどんぶりを置いた。
 とある街で、エインヘリアルが暴れ出すとの予知が入った。
 事の発端は近頃現れ活動している『炎彩使い』のシャイターンが一人、緑のカッパー。財力のある男を好むこのシャイターンは、眼鏡にかなった男を殺害・エインヘリアルに導くことが可能なようで、今回は宝石商の男をエインヘリアルに変えたらしい。
 出現したエインヘリアルは魔力が枯渇した状態であり、グラビティ・チェイン収集のために一般人を虐殺している。
 皆には一刻も早く現場へ向かい、このエインヘリアルの撃破してほしいのだ。
 今回の敵は、デパートなどの店が多く立ち並ぶ商業地区の一角。屋外にあるスクランブル交差点で虐殺を繰り広げている。現場は既に混乱しており、襲われた人間たちが逃げ惑っている状態だ。もはや一般人や車は入ってこないだろうが、逃げる一般人は庇う必要があるだろう。このエインヘリアルは自分に刃向う相手を優先して攻撃してくるので、その特性を利用するのも有効だ。
 次にエインヘリアルについて。『ジェムシールド』と名乗るこのエインヘリアルは、その名の通り大量の宝石が埋め込まれた巨大な盾と全身鎧を着込んだ姿をしている。攻撃は盾で殴る程度とバリエーションが非常に乏しい反面、生半可な攻撃は涼しい顔で受けきるだけの防御力を持っている。盾と鎧の防御をいかに突破するかが勝利の鍵と言えるだろう。
「固い相手みたいだけれど、実際のところそれだけだからね。遠慮なくぶっ飛ばしちゃって!」
「然り! 暴虐のエインヘリアル、許すまじ! 拙者達が成敗してくれようぞ!」


参加者
鈴木・犬太郎(超人・e05685)
コール・タール(マホウ使い・e10649)
ナルナレア・リオリオ(チャント・e19991)
岩櫃・風太郎(閃光螺旋の猿忍ガンナー・e29164)
永巽・イヴ(宝石魔術師・e29543)
エナ・トクソティス(レディフォート・e31118)
ブレイズ・オブジェクト(レプリカントのブレイズキャリバー・e39915)
李・風美(胡乱でチャイナな瓶底眼鏡・e40773)

■リプレイ

「ぐへッ!」
 海老反りで吹っ飛び倒れる男性の背を、丸太じみた足が踏む。大量の宝石をちりばめた具足をにじり、ジェムシールドは低く笑った。
「クヒヒヒヒヒ……随分みずぼらしい身なりをしておられる」
 輝くフルフェイスヘルムののぞき穴から、眼光が嘲笑に光る。彼の周囲、スクランブル交差点には人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。彼らの服や持ち物を見分しながら、ジェムシールドは男を踏む足に力を込めた。男の肺が空気を絞る。
「ぐぇッ……げひッ!」
 背骨が軋み、アスファルトがひび割れた。苦悶に喘ぎながら男は地をかき、焦点のぶれだした瞳でつぶやく。
「だ、誰か……助けッ……」
「フヒッ!」
 ジェムシールドは鼻で笑い、さらに足へ力を込める。
「助けなどありませんよ! 大人しく死ぬがよろしい!」
「それはどうでしょう」
「…………はい?」
 足を止め、ジェムシールドが空を見上げた直後、巨大な二本の杭が視界に飛び込む! 高速落下したエナ・トクソティス(レディフォート・e31118)はジェット噴射する巨大パイルバンカーで殴りかかった!
「はあああああああッ!」
「おぉ……?」
 ジェムシールドは足をどけて仁王立ちし宝盾を振り上げる。煌びやかな大盾が二本の杭と正面衝突! 両者の間で金属音と火花を散らした。パイルバンカーを押し込みながらエナは眼下の大盾をにらむ。
「なるほど、自慢するだけのことはある。その守り……どれだけ持つか、楽しみですね」
「おやまぁ。これまた品のない」
 ジェムシールドが盾を引く。飛び出したダブルパイルをステップ回避し、空中でつんのめるエナにシールドバッシュ!
「そらッ!」
 エナが吹っ飛んだ瞬間、追撃に踏み出すジェムシールド直上で風が弾け岩櫃・風太郎(閃光螺旋の猿忍ガンナー・e29164)とナルナレア・リオリオ(チャント・e19991)が姿を現す。風太郎の銃とナルナレアの指先が赤く発光、熱線を放つ!
「イヤーッ!」
「おっ!?」
 着弾したビームが爆発! 爆炎に包まれたジェムシールドからやや離れた位置に着地した風太郎は両手を合わせてアイサツした。
「ドーモ、エイプニンジャでござる。不慮の事故で生まれたとはいえ、何ら躊躇いなく殺戮を働く貴様は許せぬ! 慈悲など一切ないと知れ!」
 風太郎の背後で跳ね起きたエナの手からパイルバンカーが消滅し、代わりに鈍色の斧が出現。それを下段に構える彼女にナルナレアが極彩色のオーラを注いだ。ジェムシールドは首を鳴らすと、鼻を鳴らした。
「ふん……何かと思えばワンちゃんですか。わざわざ殺されにやって来たので?」
「そう思うか?」
 ジェムシールド背後を取った鈴木・犬太郎(超人・e05685)が、タバコを吹かしながら問う。突如響く甲高い音。車の上に立つ李・風美(胡乱でチャイナな瓶底眼鏡・e40773)とブレイズ・オブジェクト(レプリカントのブレイズキャリバー・e39915)は拡声器に向かって叫んだ。
「あーあー。あー、ワタシ胡散臭い見た目アルがケルベロスヨ! 交差点近くは危ないネ! 命は無くしても買い直せないアル! さっさと逃げるヨロシー!」
「慌てず速やかにここを離れろ! 隠れたりするな。離れることが最優先だ!」
「ブレイズ」
「ん? ……おっと」
 ブレイズが飛んできた男をキャッチ。踏まれていた男を投げたコール・タール(マホウ使い・e10649)はオールバックの赤髪をなでつけ、肩越しに言った。
「そいつも頼む」
「ああ。……立てるな?」
 ブレイズに腕をつかんで立たされた男が覚束ない足取りで逃げていく。コールは目をつぶって薄く息を吸い、見開く。全身から真紅の炎じみた殺気が放たれ、戦場を覆い尽くした。両腕を頭上で交叉し、しなを作った永巽・イヴ(宝石魔術師・e29543)が妖しげに微笑む。
「くふふっ……これで十一対一。硬度も透明度もダメダメな宝石で……耐えられるかしら♪」
 宣告を受けたジェムシールドはフルフェイスヘルムに片手を当ててうつむいた。肩が震え、鎧のこすれる音が鳴る。
「クフッ、クフフフフ……何を勘違いしてらっしゃるか! ハハハハハハ!」
 巨躯の騎士は天を仰いで高笑い。
「ハハハハハハ! なるほど、十一! ただ殺されに来たのではないのは認めましょうしかしッ! 数さえいればいいとは浅慮、浅慮の極み! 私を倒すには足りぬ! なぜならば!」
 盾を取り上げ、見せつける。陽光を反射し輝く無数の宝石。
「私は、無敵なのですからッ!」
「言ってろ」
 落としたタバコを踏み付け犬太郎が加速! 釘バットじみてトゲの生えたバールの殴打を大盾が防御し跳ね返す。その脇へ風太郎のレーザーが降り注いだ。鎧に当たり弾ける光線にも構わず風太郎は弧を描くように走りながら銃を連射する。脇から背中へ滑る銃撃!
「イィヤヤヤヤヤヤヤヤヤヤッ!」
 銃撃を浴びながら悠々と笑うジェムシールドが顔を上げた。空高く跳躍したミミックの口から宝石めいた光があふれ、空中に虹の武器を多数生み出す。向かってくる犬太郎のバールを上げた片足で防御しながら盾を空に向けて構えたうなじへエナが斧を持って斬りかかる!
「余所見してていいんですか?」
 振るわれた戦斧が光の尾を引き首筋に激突。鈍い音を立てて跳ね返る斧を肩越しに見やり、ジェムシールドは肘を撃つ。腹にエルボーを食らいふっ飛ばされた彼女をナルナレアがオーラを開いて受け止めると同時に空から武器が降り出した! 雨あられと落下する武器の数々が宝盾にぶつかって消滅していく。全身から炎を噴いた犬太郎はジェムシールドの真横に滑り込み殴打。甲高い音を立ててバールを弾かれた彼を振り子めいて振られた拳が撃ち抜いた。
「ぐッ!」
 打ち払った犬太郎を余所にジェムシールドは最後の剣を防御する。悠然と盾を下した彼は周囲を見回した。いつの間にか立ち込めた、ケルベロスごと戦場を覆う煌めく濃霧。
「……おや」
「魅せてあげるわ。これこそレギオンレイドの輝き……♪」
 艶やかに反響するイヴの声。その瞬間ジェムシールドは気配を感じて即座に反転! 濃霧から飛び出したコールは七色に輝くナイフを片手に疾駆する。霧から飛来するナルナレアの熱線!
「援護します!」
「ああ。……火、水、風、土、そして空。元素は混ざりて星となる……」
 低空ジャンプしたコールの前をふさぐ宝盾! だがコールは瞬く宝石埋まったナイフを迷わず突き立て力を込めた。盾に触れた切っ先が放つまばゆい輝き!
「無駄、実に無駄な事! 私の絶ッ対の盾を破る矛なし!」
「どうかね。いずれにしろ綺麗なままでは死なせねぇよ……ッ!」
 片手で盾にしがみつき、虹のナイフねじ込むコール。その時、ジェムシールド背後の霧から頭を出した風美が両手を突きだす。長いチャイナ服の袖から伸びるガトリングガンが高速回転!
「隙ありやぁぁぁぁあああッ!」
「ムッ!? おおおおおおッ!」
 振り返るジェムシールドを燃える鉛弾の軍勢が打ち据えた。横殴りの雨じみて殺到する弾丸達を弾く宝鎧の下、薄ら笑いを浮かべたジェムシールドは盾ごと体を反転させる。弾かれたように離れるコールをかすめる弾丸! 地を転がる彼に煌びやかな具足が蹴飛ばした。
「がはッ!」
「ッ! 止まれェ! 止まらんかいこのハゲェッ!」
 激昂する風美の機銃掃射を受けつつジェムシールドは霧に紛れるコールへ突進! 盾を振り上げる彼の胴へブレイズがタックルをしかけて妨害。滑空した人魚めいた子竜がコールを霧へ連れ去るのを見、ブレイズは鎧に取りついて叫ぶ。
「風美ィ! 構うな! 撃ち続けろォッ!」
「が、合点承知やァッ!」
 炎弾の雨が襲う中、ブレイズは無骨な装甲の拳を握った。都市迷彩柄を炎で包み、右ストレート! 宝盾に弾かれると同時に左フック、右ジャブを繰り出し腕を展開して出したチェーンソーを振り下ろす。チェーンソーは盾の表面を滑り地面を砕いた。
「クフフフフフフ! 一体なんのお遊びですかな? それッ!」
 シールドバッシュがブレイズを真正面から打ちのめす! ビン底眼鏡を光らせた風美の袖に機銃が引っ込み、二門のミサイルポッドが出現。大穴の照準が連撃を涼しく流すジェムシールドへ向けられた。
「吹っ飛びィやァァァァァッ!」
 風美の気勢と共にミサイル発射! 白煙の尾を引いた二発のミサイルがジェムシールドに直撃して爆発するとナルナレアが霧から跳んだ。立ち上る爆煙めがけて三本のトマホークを一度に投擲!
「レイラニッ!」
 人魚めいた子竜が一声鳴いて泡を撃ち出す。泡弾は回転飛翔するトマホークを追い越し黒煙の中へ。続いてトマホークが突入し、金属音を上げて弾き出される。煙を払いのけながら、悠々と歩み出るのはジェムシールド。鎧を見分しながら息を吐く。
「フゥム……ちょっと遊びすぎました。自慢の装備に汚れが」
「成金趣味に興じるからだ」
 鎧を払う彼に、ブレイズがはっきり言い放つ。
「その装備、装飾品としての価値はあろうが、性能としては如何なものかな」
「斬新な負け惜しみですねぇ。私は無傷ですが?」
「んふふふふふ♪」
 霧から滑るように歩み出たイヴが笑いを含みながら優美に歩く。こぼれる薄いピンクの光をブレイズに向かって吹きかけると、光は凹んだ胸部装甲が再生。身を反らしてポーズを取ったイヴは艶めかしい視線をジェムシールドに投げかける。
「宝石はキレイだけどぉー……同じくらいキケンなモノよぉ? 見惚れるのはいいけれど、溺れるのはだ・あ・めっ。足元掬われちゃうから♪」
「ご高説、痛み入ります」
 手で鎧を払ったジェムシールドは再び盾を持ち上げる。彼はもう片方の手の平を上向け、指先で手招き。
「さあ、そろそろ遊びは終わりです。貴方方もせいぜい全力でかかって来るがよろしい」
「あらあら♪」
 イヴの微笑みに影が差し、同時に腕を振り下ろす。地面に三つ亀裂が走り埋まった宝石が光を放つ!
「じゃ、遠慮なく。この道は、更なる美しさへと至る道……♪」
 イヴがポーズを決めた瞬間宝石が破砕! 光の柱が噴き出し三匹の龍へと変生、咆哮を上げた。
「お行きなさい♪」
 三色の龍がジェムシールドに噛みかかる。宝盾の騎士は地を蹴り盾で最初の龍を殴ってすり抜け、二匹目を跳躍して飛び越えた。アスファルトに伏す龍の幻影を透過したナルナレアが直上のジェムシールドを指さし熱線を発射! 空中で体勢を崩した瞬間襲いかかる三匹目を盾で受け、サマーソルトキックで打ち払う。
「フフ……造作もない」
「そうでしょうか」
 ほくそ笑む彼の背後、跳躍したエナが戦斧を大上段に振り上げた。振り向きざま掲げられた盾!
「どれだけ堅固であっても所詮は宝石。砕けてしまえばそれで終わりです。……Crash」
 戦斧が下ろされ大音声が空気を震わす。盾に激突した斧が陽炎じみて姿を揺るがせた直後、盾に漆黒の亀裂が入った。エナはそのまま鈍色の斧を振り切る!
「はぁッ!」
「ぬぉ……」
 垂直落下しジェムシールドが地面に激突。立ち上がる粉塵めがけて霧からコールと犬太郎が飛び出し疾駆する。エナの追撃を横っ飛びで避け、ナルナレアのトマホークを弾くジェムシールドへ一足先にコールが肉迫、盾に虹のナイフを突き刺した。弾ける虹色の光。盾がひび割れ、黒ずんでいく!
「バカな……割れているのか!? 私の盾がッ!」
「言っただろ、綺麗なままじゃ死なせねえ……!」
「やめろッ!」
 突き出た盾がコールを弾く。吹き飛ばされたコールを受けとめたブレイズは彼を投げ上げて突進! 腕部装甲から飛び出したチェーンソーをうならせ、ナイフが刺さった盾に振り下ろす!
「うおおおおおおおおおッ!」
 大振りのチェーンソーが宝盾を爆砕し鎧の前腕部を切り裂いた。砕け散る装備の破片が全て石炭じみた黒に染まって完全崩壊。砂塵と化した腕と盾を目にしたジェムシールドが悲鳴を上げた。
「ぃッ……ぎぃああああああああッ! 腕がぁぁぁぁッ!」
 絶叫する彼をよそにブレイズはナイフを拾い空のコールへ放り出す。ブレイズの脇をすり抜けた犬太郎はボロボロの二の腕をバールで追撃!
「うおらッ!」
「ぐぁッ!」
 炭化した鎧がさらに砕け、ヒビがジェムシールドの肩まで広がる。バールで殴る度にヒビは拡張。黒ずんで割れる胸部装甲にコールが再度ナイフを立てた。極光とともに亀裂が全身を覆い尽くす! ジェムシールドはコールの腕を片手でつかみ、暴れながら絶叫!
「やめろ、やめろぉぉぉッ! 私の鎧、私の力がぁぁあッ!」
「なにが私の、だ」
 一歩踏み込む犬太郎。地面を砕く足が燃え、肩や胴が火の粉を散らす。
「お前の力なんぞ所詮借り物。武器に頼り切った安い力だ!」
 踏み締めた足で地を破裂させ、一気に迫る! コールは隻腕を振り払って跳躍。真上を飛ぶレイラニをつかみ、つぶやいた。
「行け。目にもの見せてやれ」
 直後、大柄な騎士の腹に爆炎の拳が直撃! くの字に身を折るジェムシールド。
「が、はッ……!」
「これが、本当の力ってやつだッ!」
 右ストレートが振り抜かれ巨体が後方へ吹っ飛ぶ。それを追い風太郎は神速を振るって走り懐から円筒形の物体を引き抜く。瞬時に駆けて距離を詰め、鋭くパンチ!
「この時を待っていたでござる! イヤーッ!」
 物体を握った拳が鎧に食い込む。風太郎が素早く腕を抜いてバク転、距離を取ったその瞬間、全身鎧の穴が白煙を噴いた。
「ぐおぉぉぉぉぉ……ッ!」
 煙を吐き出しながらのどを押さえ、ジェムシールドが苦悶する。風太郎は華麗に着地して声高に叫ぶ。
「虚飾にまみれた重い鎧! それこそ貴様の棺桶にござる! 風美殿ッ!」
「アイヨーみんな目ぇ塞げぇ! 赤字覚悟の大砲火! 釣りはいらんで! 全部持ってきぃ!」
 言い放つ風美の袖が大きく膨らみ大量の銃口がブーケめいて現れ一斉砲火! 大量の煙幕と閃光弾、手榴弾がマシンガンじみて着弾し爆発、視界を光と煙で遮ったところへミサイルや銃弾が嵐の如く吹き荒ぶ! 爆撃と弾けるアスファルトに叩かれながら、弾幕の中でジェムシールドは苦しげにうめいた。
「私は……無敵……私は……」
 爆煙を切り裂き宝石が三つ彼の胸を貫きうがった。血を吐き、たたらを踏む彼を、煙に紛れたイヴが笑う。
「あらあら、ひどい有様ね。でも、それが真実。貴方の宝石、南京玉には程度の価値もないってことね。んふふっ♪」
 崩れゆく鎧に埋まった宝石が眩い光を放つ。光を頼りに煙を抜けた風太郎が懐に入り、巨大な銃口を突きつけた。鎧と銃口の隙間から閃光が走ると共に、風太郎は巨大銃の引き金を引く。
「それは手向けにあ・げ・るっ♪」
「カイシャクしてやるッ! ギャラクシィーブライトォッ! ニンジャッ! スパイラルドライバァァァッ!」
 光の杭がジェムシールドを背中を貫く。同時に巨躯が急速膨張。白目をむいた瞳から太陽じみた光を放ち、ジェムシールドは爆発四散した。

作者:鹿崎シーカー 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月19日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 13/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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