其の身は雷

作者:黒塚婁

●竹林にて
 老人がひとり、一心不乱に槍を繰る。
 一突きで相手の内腑を抉り、仕留める神槍。或いは相手を間合いに踏み込ませぬ無数の乱打。そのイメージは雷。光の如し突撃で、敵を容赦なく穿つそれ。
 ――それを目指して長い時間を槍術に打ち込んできた。実際、老人の動きには年齢を感じさせぬキレがあった。
 そんな彼の前に、どこからともなく現れた少女。彼女は老人に驚く間も与えず、一方的にこう言い放つ。
「お前の、最高の『武術』を見せてみな!」
 すると、老人の意志を無視し、彼は少女へと攻撃を仕掛けていた。いずれも必死の槍撃、回避すら難しい一撃であった。
 確かに少女は回避しない。だが本物の槍を彼女は生身の腕や掌ですべて受け止めた――しかし、痛ましい傷は一筋もつかぬ。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はそれはそれで素晴らしかったよ」
 少女――幻武極は不敵な笑みを浮かべ、手にした鍵を老人の胸へと突き出した。
 倒れ込む老人と入れ替わりに、ひとりの武人が立ち上がる。その身は雷光に包まれており――男は無造作に一歩踏み込む。
 幻武極の横を烈風が駆け、竹藪を走り抜けた雷撃の後、竹の焼ける臭いが立ち上る。
 怯むこともなく、笑みを浮かべた少女は新しく誕生したドリームイーターに囁く。
 ――さ、お前の武術を見せつけてやりなよ。

●雷槍
「やっぱりいたか、槍術を扱うドリームイーター」
 ラティクス・クレスト(槍牙・e02204)がそう感想を零す。
 何故にそんなに嬉しそうなのか、敢えて問わず――雁金・辰砂(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0077)は他のケルベロス達を見た。
 幻武極とは、武術家の『武術』を奪い欠損を埋めようとしているドリームイーターだ。
 ひとり人里離れた場所で修行する武術家が襲われ――その武術では彼女の欠損は埋められぬ代わりに、武術家のドリームイーターを生み出して暴れさせようとするのだ。
「出現するドリームイーターは、襲われた武術家が目指す究極の武術家のような技を使いこなす。よって、かなりの強敵となる――人里に到達すれば被害は甚大となろうが、今ならば間に合う。迅速に討伐してもらいたい」
 件のドリームイーターは、槍術家。
 槍の形状から察するに、突きに特化した矛をしている。
 常に雷光を纏ったような大男で、簡易な鎧を纏っている。
 それが繰る槍は雷のごとく、相手を穿ち、貫く――老人が目指した武の体現だ。
 戦場となるのは竹林。それなりに竹が生えているため、槍術家に優位性があるようにも思えるが――。
「貴様らが邪魔と思えば、簡単に切り拓けるだろう……まあ、それは相手も然りであるが」
 戦い方に口は挟まぬ、と辰砂は言う。
 結論として、戦場の地形は戦闘に支障を来さぬということだ。
「最高の武を披露したいというのだ、相手になってやるといい――遠慮はいらぬ。己の武は雷と称する傲慢、打ち砕いてやれ」
 辰砂の言葉を余所に、楽しそうな相手だなとラティクスはやはり笑みを浮かべるのだった。


参加者
蛇荷・カイリ(暗夜切り裂く雷光となりて・e00608)
古鐘・るり(安楽椅子の魔女・e01248)
ラティクス・クレスト(槍牙・e02204)
マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
ミレイ・シュバルツ(風姫・e09359)
シャルフィン・レヴェルス(モノフォビア・e27856)
加賀・深雪(銃火器大好き狐っ娘・e37056)

■リプレイ

●開
「武術を奪って欠損埋めようだなんて物騒な話だねまた」
 マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)が肩を竦めた。
「竹取物語のように可愛い姫がでればいいのだが、出るのはいかつい鎧の大男か……」
 浪漫も何もないな、シャルフィン・レヴェルス(モノフォビア・e27856)はぼやきの語尾さえゆっくり消えていく。
 安定した戦場を作るため竹をいくつか切って、これで終わればなあと彼はやる気の感じられない溜息を吐いた。
 愛する人の、よく慣れた言動に、マサムネは困惑と愛情の混ざったような笑みを浮かべる――だが、よくよく人となりを知っていてもなお見逃せぬことはある。
「……相変わらずシャツがダサいなシャルフィン」
 さんまと書かれた松茸の絵がプリントされたシャツを来た婚約者は、そうかな、と素知らぬ顔だ。
 ――そんなやりとりはさておき。
「オレと同じく雷槍使いときたか……今回は本当に面白い戦いができそうだ」
 ラティクス・クレスト(槍牙・e02204)はしみじみ――或いはほくほく、と言った様子でひとりごつ。
 そうね、蛇荷・カイリ(暗夜切り裂く雷光となりて・e00608)が愛用の木刀を手に頷く。自信から発せられる霊力を変換し雷とする彼女にとっても、興味深い相手であった。
「前回の任務も幻武極が生み出した槍術家のドリームイーターだったわ」
 奇縁ね、古鐘・るり(安楽椅子の魔女・e01248)がそう零すのを、加賀・深雪(銃火器大好き狐っ娘・e37056)は純粋に頼もしく聴いた。
 未熟な自分が何処まで貢献できるのか不安を抱えつつも――橙色の瞳で、しっかり前を見据える。
 戦場も、仲間の闘志も準備は整った、と冷静な青い瞳で一瞥し、ミレイ・シュバルツ(風姫・e09359)が竹林に向き合う。
「雷槍の使い手よ。あなたが最強というならば、わたし達ケルベロスが相手になる」
 漆黒の大鎌を構え、彼女は虚空に向かって声を張る。
「『風姫』ミレイ・シュバルツ。あなたの雷槍でわたしの風刃を貫けますか?」
 正々堂々とした名乗りに、応えるのは幽かな笹の葉の音ばかり。
 静かにその時を待っていた機理原・真理(フォートレスガール・e08508)が、ふとプライド・ワンへと視線を向けると、彼女の相棒はヘッドライトを黄色くしていた。
 何かの気配を察したのか――否、彼女にも解っている。
 肌に刺さるような闘志。殺気に近いが、それよりも率直な戦意がぴりぴりと静電気のように伝わってきた。
 やがて姿を現したのは、鎧姿の武人。上背があり、長い柄の槍を持ち歩く姿だけで随分と威圧感がある。顔はモザイクで見えないが、その身体は絶えず帯電し、淡く光っている。
「叢雲流『槍牙』ラティクス・クレストだ。同じ槍使いとして、ちょっと手合わせしてくれよ」
 にやと片頬をあげ、ラティクスが雷神の名を冠した直槍を構える。
 そのやや後方で、マサムネが朗々と声をあげる。
「オレ達はお前と戦うためにやってきた。前に立って戦う仲間たちを癒やすのも立派な戦いだよ」
 最強、なるものが何も武術だけではないと。告げ、笑みを向ける。
「癒し手がいるから仲間だって安心して戦えるってものだ。オレは前線に立つ仲間を信頼しているから――婚約者で恋人だっている、ねぇシャルフィン?」
 シャルフィンは曖昧に頷く。これは気恥ずかしいからだろう。
「俺は正真正銘のサボり魔だぞ。まぁ、そんな腑抜けに負けるようではお前はさらに腑抜けだったという事だ……相手になろう……とても不本意だが」
 面倒くさい、そんな内心を隠さず、
「ふむ、そっちが雷と名乗るなら俺は……木偶か唐変木あたりだろうな」
 妙に自信満々に自己申告する――内容もそうだが、着ているシャツの所為で締まらない。
 まあ、それでもケルベロスであるからには――武器を持つ姿は、相手の戦意を高める程度の圧がある。
 雷、ね……好戦的な赤い瞳でじっと敵を観察したカイリは、間合いを測るように木刀を構え、
「誰が雷ですって? いいわ、あなたがその腕に自信をもつというのなら……私だって、初めから限界飛ばしていくわよ!」
 挑発混じりに、言い放つ。その身体は淡い光を纏い始める。
 開戦を告げるは、ラティクスの一声。
「さぁ、楽しい時間といこうじゃねぇか!」

●雷
 一斉に各が意志の儘に動き出す――中で、真理とミレイはあくまでもドリームイーター――雷槍の動きを見極めるべく、手始めに相手の攻撃を誘うように、距離を詰めた。
 ――であるというのに、存在感のある武人の姿は、一瞬で消えた。否、見失った。
 眼前に刻まれたのは、残像の如く残り尾を引く稲光。消すためにミレイは、目を瞬かせる。
「っ、速い……」
 だが、感覚で捉える。予め張っていた螺旋の力を纏わせた鋼糸に、手応えを感じたのだ。
 そのまま赤い花が咲く――事はなかった。雷が一瞬で対象を破壊するように、それはグラビティの力すら打ち破って、突き放つ。
 正面より応じるは真理。
 ヒールドローンの警護を受けながら、アームドフォートで槍ごと抑え込む。
 主を援護すべく、炎を纏ったプライド・ワンが横からドリームイーターへと突進する。
 二人が率先して雷槍の攻撃を受け止め、ひととき出来た間に、二筋の雷が追う。
「あなたの雷なんて静電気レベルじゃないの?」
 比べてみろと言わんばかり、口元に笑みを浮かべたカイリが、上段に振り上げた雷を纏う木刀を振り下ろす。同時、ラティクスの超高速の槍が下段から迫る。
 雷で覆われた敵の身体が、二人の雷で、更に強く光った。
 放電するように、雷が解き放たれる。それは特殊な攻撃などではなく、ただの所作であった。槍を回転させることで近くにいるケルベロス達を振りほどき、一足で距離を取る。
「千里眼の如く狙え!」
 仲間を鼓舞すべく、マサムネが高らかに歌う――Audientis gratias ago! 最後に感謝を発した時、ネコキャットが彼らの頭上で羽ばたき、邪気を払う風が笹の葉をさらさらと鳴らした。
 そして案ずるようにシャルフィンに視線を送れば、彼は気怠げでありながら、既に簒奪者の鎌を放っていた。
 ぼんやりしているようで、その軌道は的確に武人の首を掠めて彼の手元へ戻る。それを再び受け止める時も、特別視線で確認することもない。
 ただ、その成果は今ひとつ。狙いは確かだが、仕留めるには遠い。
 がらんと空いた背から、神槍「ガングニール」のレプリカを召喚したるりが、それを手に距離を詰めた。
 小さなかけ声と共に、鎧纏う足を縫い止める刺突。狙い通り、それは鎧を貫通し、雷槍の足を穿った。
 だが、所詮は玩具同然の不完全なレプリカ――自身が放った一撃にすら、耐えきれず砕け散る。
(「この槍を自分のものにしたい。神槍の再現度を高めて槍術も修得する――もっと上手に操りたい……!」)
 槍は砕けども、その一撃は確かに効いた。
 あの傷を起点に、仕掛けていけば良い――。
 優位な位置へと移動しつつ、深雪は仲間達の戦いを見つめる。
 直接敵と競り合う者、際どい攻撃を仕掛ける者――自分がどこまでできるのか、力になれるのか、不安もある。
「まだわしは日の浅い若輩者……だがわしができることをやっていくのじゃ……!」
 銃を構え、機を探る。
 その視界が不意に、周囲が暗くなった――ように思ったのは、無数の雷が武人の頭上に並んだからだ。
 稲光を繋げたような眩い帯は、ひとつひとつが槍の形をしている。
「皆は私が守るです……!」
 その下へと一房の赤い髪が揺らし、駆けたのは、真理だった。アームドフォートを両腕のように広げ、チェーンソー剣を盾のように構え、立つ。
 凄まじい風圧がその身を撃つ。
 轟音が全ての音を奪い、何かが焦げたような臭いが周囲に立ちこめ、身体を貫く強い衝撃――だが、この程度で膝をつく真理ではない。
 マサムネから送られる桃色の霧を背で受け止めながら、その視線は敵をひたと見据えていた。

●穿
 雷槍という武人のドリームイーターは直線的な動きが殆どで、それを読むことは難しくなかった。
 だが、そこは雷を自称する使い手――立ち塞がる障害を破壊し、躱そうとする敵を瞬く間に追い詰める、力と速さを持っていた。
「目で見て簡単に避けられるものじゃないわね」
 とは、るりの談。確かに、完全回避は難しい。
 雷槍が一歩踏み込む。両手で構える矛を、片手にして間合いを伸ばす。
 ミレイはそれを大鎌を盾に仰向けに躱す。靡く髪の先が斬られ、舞う。だが彼女は顔色ひとつ変えず手元を手繰る。
「これは、避けられる? ……旋風、鎌鼬」
 全身を囮にした、死角からの捉えられぬ一撃。
 るりが序盤に削った足を重点的に狙い、その動きを鈍らせる――深雪の周囲に無数の狐火が浮かび上がる。
「わしの本気受けてみるかえ?」
 問いかけと同時、狐火が次々と雷槍へ放たれる。機関銃の如き狐火の雨、それが起こす風に、水色のリボンが揺れた。
 しかし狐火の弾幕を、それは潜り抜け飛び出してきた。
 待ってたわ、言い放ちカイリが横から斬りつける。空の霊気を纏う木刀が足下を薙ぐように――更に、ラティクスが正面から詰めた。彼の槍が狙うのは、膝。
 推進の最中、足下へ打ち込まれたそれは、不可避な挟撃であった。
 だが、雷槍は槍を大地に突き刺し跳躍することで、被害を最小限に留めて見せた。
「跳ぶのもありか」
 あの重みでよくやるなあとラティクスは素直に感心したように呟く。実際、ドリームイーターであるそれに実質的な重量は然程なさそうであったが。カイリは逆に――それは足に相当ダメージが蓄積しているのでは、と見た。どちらかというと受け止める防御が多い雷槍が、こんなにも明確に逃げたのだ。
 だが、二人を振り切って終わり、ではない。雷槍の着地点、炎の龍が顎を開いて食らいついてゆく。
「槍だけで戦うのは私の全力じゃない」
 静かに告げ、るりは魔導書を閉じる。
 炎に巻かれて体勢を崩したそれの頭上へ、唸りを上げる刃が迫る。プライド・ワンと共に、一気に駆け抜けてきた真理が斬りつける――鎧の一部に亀裂が走るが、まだ浅い。
 それは一気に身体を起こすと、突進し真理の刃を弾きながら、至近距離から槍を突き出す。互いに、弾きあうように距離が空く。ぶつかった雷に軽いしびれを感じても、ネコキャットが吹き飛ばしてくれた。
 八人から追い込まれても、それはすぐに仕切り直す。ケルベロス達に向けられる鋒に、揺らぎはない。
 その様を前に、マサムネは目を細める――。
「戦うのが好き? 昔はオレもそうだったんだよ、もうそんな血なまぐさい自分忘れちゃったけどね」
 スイッチを押す。仲間を鼓舞する爆風が笹の葉を激しく鳴らす。
 先陣切って刃を交わすばかりが戦いではない――視線を大切な人へと向け――案の定、ちょっと離れたところで一休止とっている相手へ、声をかける。
「ほらほらシャルフィンサボらない!」
「はいはい……この一撃を受けてみろ」
 気合いを入れ直し、やる気を人差し指に溜め、雷槍に向ける。放たれた弾丸は強烈に、それの手甲を打ち砕く。
 相手の攻撃の苛烈さは変わらないが、守りは脆くなってきている――確信しても、ミレイは気を緩めることはない。
「まだ、ここからが本番――呑め、大蛇」
 仲間に、自分に、敵に向けて短く言い放ち、地を蹴った。

●破
 再び、雷光の槍が居並ぶ――事前の動きからそれを悟ったラティクスは、盾になろうとする真理より先に踏み込んでいた。
 ――この技を、破る。
「貫け《雷尖》!叢雲流牙槍術、壱式・麒麟!」
 闘志を雷に、纏うは穂先のみにあらず。
 身体も闘志の雷によって刺激することで、高まっている。雨のように降り注ぐ無数の雷の中、彼はほぼ真っ直ぐ駆け抜ける。
 いくつかは当たったのだろう。肩や背に灼熱を感じつつも、変わらぬ姿勢で詰め寄ったラティクスは、腰元から一気に腕を前へと振るう。
 突き出した矛は、武人の肩を打ち砕く。正確には鎧を砕いたのだが、その向こうは虚空のようになっていた。
 いよいよ、追い込んだ――確信しつつも、マサムネはあくまでも援護に徹する。
「お前の武術が雷とするならオレ達八人は風だ。まさに風神雷神の戦いってね?」
 歌い、奏で、風を送る。
 仲間を信じて勝利を委ねる、開戦前に放った言葉を実証するように。
 そう、様々な戦い方がある――見晴らしの良い場所に身を沈め、深雪は深く息を吐き、集中を高める。彼女の攻撃はなかなか相手を捉えられない――だが、せめてこの一撃は。
 攻撃は無駄がなく直線的だと断じたのはミレイだった。深雪はそれを思い出し、砲撃形態に変形したハンマーを構える。
 竹の数で距離を測り、タイミングを待つ。
「せめてこの一撃で、隙を作るのじゃ……!」
 思いを込め、放った竜砲弾――。
 それは地を蹴った雷槍の身体を捉える。相手は怯まず駆け抜けようとするが、僅かに速度が緩んだ――その足元から、マグマが噴き出す。
 仕掛けたシャルフィンがあれ、と他人事のように驚く。
 だが、敵の足は瞬間完全に止まった。
 すかさず仕掛けたのは、るり。
「貴方が雷だと言うのなら! 雷を喰らい稲妻を握り潰す様に討つのみッ」
 私が目指すのは完全。それは神に匹敵する力――例え己が振るう神槍が贋物であったとして。こんな紛い物に、負けはしない。
 焼けてボロボロになった足の装具を、斜めに振り下ろした最後のガングニールが破壊する。
 しかし、実態のない足で、それは地を蹴った。
 槍を失ったるりは、無防備な状態で覚悟を決めたように相手を見ている。
「速く正確な一撃。だからこそ、動きを予測できた」
 冷徹な一声が、背後から響く。同時に雷槍の動きは、ぎこちなく止まる。
「これが、わたしの風刃。格上を引きずり下ろすための弱者の牙、です」
 敵に合わせて竹林に張り巡らせた鋼糸。小柄なるりには掛からず、それが前へと踏み込んだことで、発動する。
「裂け、彼岸花」
 螺旋の力を纏った糸が、四方から相手を縊る。
 血肉の通う相手であれば、さぞ鮮やかな朱が咲いただろう――ミレイはそれを惜しみつつ、容赦なく糸を引いた。
 鎧は数えきれぬほど蜘蛛の巣状の疵を走らせ、そこから細かな稲光が零れ出す。
 それをより大きな雷光が穿つ。
 雷そのものとなったカイリが、地を蹴り長く跳躍し、飛び込んだのだ。
 私の雷の疾さ、強さ、熱さ――貴方のソレを全て私が飲み込んで、喰らい尽くしてやるんだから!
「我が雷で、全ての敵を塵へと砕くッ! 白光にッ、飲み込まれろォッ!」
 咆哮と共に、大振りに振り上げた刀を袈裟斬りに一気に沈める。
 雷を霧散させるより巨大な雷。
 それは彼女の言葉通り、小さな雷を消し飛ばしたのだった――。

作者:黒塚婁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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