鎌倉ハロウィンパーティー~独りの祭り

作者:幾夜緋琉

●鎌倉ハロウィンパーティー~独りの祭り~
 世の中、ハロウィンムードに盛り上がりつつある、10月下旬。
 とある小学校では、折角のハロウィンだから、と学生達を中心にしてのハロウィンパーティーを準備している。
 そして、そんなハロウィンに向けて、教室で子供達が……。
『もーすぐもーすぐはーろうぃーん♪ ねーねー、はろうぃんって、たのしいんだよねー?』
『そうだよー。かそうして、とりっくおあといりーとっていうとさー、おかしもらえるんだってー』
『おかしおっかしー♪ わーい、たっのしみー♪』
 ハロウィンに向けてのわくわくした子供達の会話の輪……でも、その中に、入れていない少女が居る。
 楽しそうに喋る仲間達の輪の中に入れず、ドアの外からじーっと、羨ましそうに見つめている。
『……いい、なぁ……』
 ……と、彼女がぽつり呟いたその瞬間。
 そんな少女に、そっと近づいてきたのは、赤い頭巾を被った少女。
 顔を俯かせている少女に、フフ、と笑うと、その手に持った鍵で、一突き。
 心臓を穿ち、鍵が体を突き抜ける。
 そして、赤いずきんの少女は。
「ハロウィンパーティーに参加したい……ですか。その夢、かなえてあげましょう。世界で一番楽しいパーティーに参加し、その心の欠損を埋めるのです」
 と言うと、少女は崩れ墜ち……そして、その横に現れるのは、魔法使い風の衣装と、パンプキンヘッドに身を包んだ存在がうまれる。
 その接合部から見えるのは、モザイク……全身モザイクになった、ドリームイーター。
 そしてモザイクドリームイーターは、静かに、動き始めた。
 
「ケルベロスの皆さん、集まってくれてありがとうっす! それじゃ早速っすけど、説明させて貰うっすね!」
 黒瀬・ダンテが、集まったケルベロスにニコニコと笑いながら、今回の依頼の説明を始める。
「藤崎・うるる(サニーガール・e00086)さんが調査してくれたんっすけど、日本各地でドリームイーターが暗躍してる様なんっすよ」
 と言いながら、ハロウィンの映像を見せるダンテ。
「出現しているドリームイーターは、これ、ハロウィンのお祭りに対し、劣等感を持っている人達の様っす。そして彼彼女らは、ハロウィンパーティーの当日、一斉に動き出す様なんっす」
「ハロウィンドリームイーターが現れるのは、世界で最も盛り上がるハロウィンパーティー会場、つまり、鎌倉のハロウィンパーティーの会場に現れる様っす」
「ケルベロスの皆さんには、実際のハロウィンパーティーが開始する直前までに、ハロウィンドリームイーターを撃破してきて欲しいんっすよ!」
 そこまで言うと、ミコトが。
「……それで、そのハロウィンドリームイーターの方の特徴は、どうなのでしょう?」
 と問いかけると、ダンテは。
「皆さんが相手にするハロウィンドリームイーターは、小学生位の少女から産まれたドリームイーターっす。魔法使い風の服装に、頭はパンプキンヘッドの仮装をしているっす」
「そしてこのハロウィンドリームイーターは、パーティーが始まると同時に現れるっす。でもそれは、盛り上がる事で偽装可能っす。つまり、ケルベロスの皆さんで、あたかもハロウィンパーティーが始まった様に、楽しそうに振る舞えば、きっとハロウィンドリームイーターを誘導する事が出来ると想うっす」
「ちなみにドリームイーターの攻撃手段は、モザイクを飛ばして、精神を侵食したり、知識を吸収したりしてくるっす。基本的に遠近どちらでも対応出来る様っすから、注意するっすよ!」
 そして、ダンテは。
「ハロウィンパーティーを楽しむためにも、皆さんで盛り上がって誘い出して、ドリームイーターを撃破して来て下さいっす。という訳で、宜しく頼むっすよ!」
 と、拳を振り上げて送り出すのであった。


参加者
青葉・幽(ロットアウト・e00321)
ヴィットリオ・ファルコニエーリ(残り火の戦場進行・e02033)
星祭・祭莉(ムーンライダー・e02999)
ライカ・アルセ(野性の鼓動・e04599)
舞原・沙葉(生きることは戦うこと・e04841)
狩魔・夜魅(シャドウエルフの螺旋忍者・e07934)
月神・鎌夜(悦楽と享楽に殉ずる者・e11464)
雪村・達也(地球人のモブ・e15316)

■リプレイ

●ハロウィン
 世間がハロウィンモードに盛り上がりつつある、10月31日。
 鎌倉のハロウィンパーティーへと向かうケルベロス達が聞いたのは、ドリームイーターが現れるという話。
 と、ケルベロス達は、それぞれの仮装に身を包み、その会場へとやってきていた。
「うーん……彼女、ハロウィンに対して、一体どんな劣等感を抱いているんだろう……? ちょっと気になるな」
 なので、ヴィットリオ・ファルコニエーリ(残り火の戦場進行・e02033)が、呟く。
 確かに、今回ドリームイーターに狙われたのは、一人の少女。
 ……それも、その元となった少女は、ハロウィンパーティーに混ざれないという少女という。
「全く、ガキの夢を食い物にするってのはいただけないよな?」
「うん。ハロウィンに憧れる思いを利用、あこがれのハロウィンを壊させるなんて……これ以上、その子の思いを弄ばせはしないよ!」
 月神・鎌夜(悦楽と享楽に殉ずる者・e11464)と、ライカ・アルセ(野性の鼓動・e04599)に、暁月・ミコト(地球人のブレイズキャリバー・en0027)も。
「ええ……彼女はきっと、誰かと一緒にハロウィンを楽しみたかった。ただ、それだけの事を、ドリームイーターによって打ち砕かれたのでしょう……それは、絶対に許せません」
 静かに、でも……その拳をぐっと握りしめるミコト。そして更に舞原・沙葉(生きることは戦うこと・e04841)と、狩魔・夜魅(シャドウエルフの螺旋忍者・e07934)が。
「こういうハロウィンのドリームイーターは、ここ以外にも大量に発生すると聞く。ハロウィンとは、そんなにも人の心を楽しくさせ、寂しくさせるものなのか……いや、いけないな。こんな事を考えていてしまっては」
「まぁ、何だ。いろんな所で出てきてるからこそ、一カ所一カ所でしっかりと対処しとかねーとな」
 そして、青葉・幽(ロットアウト・e00321)と星祭・祭莉(ムーンライダー・e02999)が。
「そうね。折角のお祭りを邪魔しようだなんて、無粋なヤカラも居たもんね。お呼びじゃないって、しっかり解らせてやらないと」
「うん。楽しい事は、皆で共有するのが良いんだよ。でもそれを邪魔するなんて、ドリームイーターはきっと友達が居ない悲しい子なんだよ。でも、だからと言って、人の楽しみを奪って良いって事にはならないんだよ。そんな存在になってしまったというのは可哀想な事。引き返せればいいのにね」
「……ドリームイーターの彼女自体は、どこかに居るはずです。ドリームイーターを倒せば、彼女は再び目を覚ます筈です。ですから、ドリームイーターを倒す事が、彼女を救うことになる筈です」
 と、ミコトにヴィットリオが。
「そうだね……その為にも、早々に倒す事にしようか。僕たちが倒さない限り、ハロウィンパーティー自身も開催出来ない訳だし」
「そうだな。大きなイベントだ。ここで失敗すれば、市民の不安を煽ってしまうだろう。戦闘に勝利し、パーティーも成功させる。みんなの不安を払拭する為に、な」
 雪村・達也(地球人のモブ・e15316)も拳を握りしめる……と、それに沙葉が。
「……ハロウィンパーティー。正直、私もどうやってハロウィンを楽しむべきか良く解らない……他の皆の動きを参考にすれば、少しは見えてくるだろうか?」
 ふとした不安。
 そんな彼女の仮装は、魔法使い風の仮装。
 恐らく彼女は彼女なりに、色々と聞いた結果の仮装……周りの皆も、幽は先折れ帽子と黒いローブの魔女だったり、夜魅はドラキュラ、ヴィットリオは吸血鬼の仮装。
 来夏は肩の開いた和服で、九尾の狐ならぬ和風狼女、祭莉は白く背中の開いたカクテルドレスを着て、羽を出した天使の仮装。
 そして鎌夜、龍也、それにミコトは、タキシード。
 それぞれが、それぞれの特徴を生かした仮装に身を包んでいて……そんなケルベロス達の仮装を集めると、それでハロウィンムードたっぷりであったりする。
 皆、力の入った仮装もしくは衣装に身を包んでいる。
 ……そんな中、特に異質なのは、白い布を被った梅太郎のゴースト君の仮装であったりする。
 梅太郎は気づいてないと想っているようだが、鎌夜は……気づいていた。
 まぁ、それはさておきとして。
「さて、と……んじゃ行くぜ」
 と夜魅が拳を振り上げると共に、ケルベロス達は開場前の会場へと向かうのであった。

●楽しむ一時
 そして、ハロウィンパーティー会場の中。
 ちょっと高台にある、DJブースに鎌夜が配置し、会場内には他のケルベロス達が分散。
 みんなが配置についたところで、いざ。
「レッツ・パーリィ!!」
 と、達也の掛け声に合わせて、ハロウィンパーティーが始まる。
 達也は皆の注目集めるようにしながら、お菓子を入れた小袋と、ナイフ型飴細工を二つの手で投げながらジャグリングを開始。
 そして祭莉は、傍らのウィングキャットのデルタさんに。
「デルタさん、頼りにしているんだよ」
 と声を掛け、デルタさんはにゃー、と啼いて、空から監視。
 そして、鎌夜が。
「さぁ、光に焦がれて現れるがいい。その孤独、俺達が埋めてやろう」
 と呟きながら、パーティーのダンスミュージックをかけ始める。
 そんなダンスミュージックに合わせて、それぞれ、踊り始める……その踊りは様々。
「トリックオアトリート、アイスくれなきゃイタズラしちゃうぞ、なんてね?」
 と幽が笑いながら、ダンスミュージックに合わせて激しいダンスを踊るのもあれば、敢えてそのメロディラインに対して、優雅にゆっくりとしたダンスを踊ってみたり。
 祭莉はミコトに。
「ミコトさん、一緒に踊りませんか?」
 と手を差し出せば、ミコトは優雅に礼をして、一緒に踊ってみたり。
 ……そんなダンス・ハロウィンパーティーに、場も当然盛り上がっていく。
 そして、その盛り上がりに誘われる様に……ドリームイーターの彼女が、その会場へと近づいてくる。
 そんなドリームイーターの姿を視認した鎌夜。
 それと共に、曲を……皆と打ち合わせ済みの曲へとシフト。
「お。さー、それじゃオレが歌うぜー!」
 と、夜魅がマイクを手に取り、歌い始める。
 その曲と歌を合図として、ケルベロス達は、周囲を確認……見覚えのない仮装、魔法使い風の仮装に身を包んだ彼女を、次第に、次第に包囲。
 そして……曲が終わると共に。
「まぁ、点数の出るカラオケだったら、平均点だっただろうけどな。さて……あと2、3曲は歌いたかったけど、それは戦闘の後にとっとくぜ!!」
 と言いつつ、マントを脱いで、ドリームイーターに投げつける夜魅。
 それに合わせて、幽、ライカ、沙葉が。
「トリックオアトリート? いえいえ、トリックオアキルって所かしらね!」
 と仮装をかなぐり捨て、戦闘態勢。
「パーティーは一時中断? ……いやいや、寧ろこれからが本番でしょ」
「そうだね。ドリームイーターさん、ハロウィンパーティーをメチャクチャにしようだなんて、許さないよ!」
「そうだ。お前のハロウィンパーティーは、私達が相手になろう」
 そんなケルベロス達の言葉に、ドリームイーターは。
『……』
 魔法使いの帽子の下、ケルベロス達を見据える……その帽子の下にあるのは、モザイクの姿。
 そして……次の瞬間、帽子の下からモザイクを飛ばす。
 精神を蝕む、モザイク攻撃……だが、その一撃は、ヴィットリオのライドキャリバー、ディートが車体でカバーリングし、受け止める。
 そして、代わる代わるにヴィットリオが達人の一撃で、氷を叩きつける。
 その間に幽、ライカ、沙葉、鎌夜、そしてミコト達は、ドリームイーターを包囲完了
「さぁ、行くわよ……!」
 と幽、沙葉が達人の一撃を叩き込むと、ライカが旋刃脚で蹴り上げると、ミコトがフレイムグリードで攻撃。
 そして鎌夜は。
「相手がいなくて困っているようだな、フロイライン? よければ一曲どうだ? まぁもっとも、お前が踊るのはトーテンタンツだがなァ!」
 と達人の一撃を討ち抜いていく。
 ……そんなケルベロス前衛陣の攻撃一巡の後、続くはジャマーの夜魅、達也。
「突き立てろ、獣の牙!」
 と、螺旋掌・獣牙で壊アップを付与すると、達也がマインドソードでプレッシャーを付与。
 ……そして、最後列のメディックについた祭莉に。
「さぁ、待たせたな!」
 と梅太郎がゴースト君の姿のまま、ルナティックヒールでディートを回復すれば、義次も。
「ここにも居たのか……良し、回復は任せろ!」
 と、ヒールドローンで回復。
 そんなサポーターの二人の動きに、祭莉は。
「回復の必要は無いみたいだね? それじゃ、ボクも攻撃するんだよ」
 と言い、彼女もドラゴニックミラージュの炎で、ドリームイーターへ攻撃。
 そして皆が一巡し、次のターン。
 ディフェンダーのヴィットリオが気咬弾で攻撃すると、ディートはガトリング連射でドリームイーターの脚元を一斉掃射。
 続く夜魅がシャドウリッパー、達也がゲイルブレイドでバッドステータスを大量に付与。
 勿論、クラッシャー陣は決して攻撃を緩めず、幽のフレイムグリードを皮切りにして、ライカの禍津降魔衝、沙葉が絶空斬に、ミコト、鎌夜がブレイズクラッシュでダブルアタック。
 少しずつ、確実にドリームイーターの体力を削る……無論、ドリームイーターは、決して怯むこと無く、またもモザイクを飛ばして、ケルベロスに武器封じ。
 流石に、武器封じは厄介なバッドステータスであり、苦戦しかねない。
 でも、そのバッドステータスに対しては。
「デルタさん、回復お願いするんだよ!!」
 と、祭莉の指示に従い、清浄の翼で即座にバッドステータスからキュアしていく。
 その後もケルベロス10人に、ライドキャリバーとウィングキャットが、独りのドリームイーターに集中攻撃。
 ドリームイーターはかなり強力なデウスエクスではあるが……流石に数の差が、実力差をイーブンにする。
 そして……十数分経過し、ドリームイーターの仮装の身体はかなりボロボロになっている。
 そんなドリームイーターへ。
「さぁ、テメェの断末魔で花火を上げようぜ。孤独の闇を晴らす派手な花火をよ!! ほら、合わせてみろや、梅太郎!!」
 と鎌夜が声を上げる……梅太郎はそれに頷き。
「ああ、解ったぜ!」
「その魂に刻んで逝けや。これがインドラの炎って奴だァ!」
 と梅太郎に連携し、帝釈天・雷火を叩きつける鎌夜。
 渾身の一撃が、ドリームイーターに叩きつけられ……そして、幽も。
「リミッター解除! アイスをくれなくても、ブッ飛ばしてやるんだから!」
 と、声を上げてのデモリッションオーバードライブで、渾身の気魄攻撃を叩きつけると、ライカが降魔真拳。
 その一撃に、モザイクを大きく乱すドリームイーター……そして。
「一気にたたみかける……!!」
 と、沙葉の絶空斬が叩き込まれ……ドリームイーターのモザイクは、一気に崩壊していった

●微笑んで
 そして……ドリームイーターは消滅。
 消滅し、そして……跡形として、ハロウィンのカボチャがコロンとその場に転がる。
「……ふぅ、これで終わりかな? この魂、というかカボチャは、やっぱり食べちゃう訳には行かない、よね?」
 とライカの言葉に、ミコトが。
「……ええ。ドリームイーターを倒したのですから、きっと彼女も、程なく意識を取り戻す事でしょう。そんな彼女が、ハロウィンパーティーを楽しめるかは……解りませんが」
 と唇を噛みしめ、ライカはそうだね、と頷いて。
「そうだね。早く戻るんだよ」
 と、その魂を送る様に呟く。
 ……そして、ドリームイーターの気配がなくなり、ほっと一息ついて。
 ドリームイーターを倒したことに、誇らしげに祭莉の周りを飛ぶデルタさん。
「うんうん、よく頑張ったんだよ」
 と褒めて、頭を撫でて上げると、にゃー、と啼くデルタさん。
 そんな祭莉とデルタさんに、くすりと微笑みつつ、沙葉や義次が戦場周辺を、紅瑪瑙の加護とヒールドローンでヒールを行う。
 一通りキュアし終わったら。
「これで良し、っと……これで本来のパーティーも始められるだろう」
「そうだな。それじゃ俺は、次の所に向かわせてもらうぜ」
 沙葉に義次が頷き、義次は次なる戦場へ……そして、それに紛れて、その場を去って行くゴースト君……いや、梅太郎。
「梅太郎、サンキューなー」
 と、その後ろ姿に手を振り、送り出す鎌夜。
 そして……。
「さて、と……それじゃパーティーの続きと洒落こみましょうか」
「そうだな。それじゃああと2、3曲、いってみようか!!」
 幽の言葉に、夜魅がマイクを取り出し、また歌い始める。
 そんな夜魅の歌声を聞きながら、ライカ、幽、祭莉が。
「そうだね。やっぱりお祭りは、皆で楽しまないとね!」
「ええ。折角なんだし、踊って行ってもバチは当たんないわよね?」
「そうなんだよ。ミコトさん、パーティーの続きをしようよ」
 そんな仲間達の言葉に、ミコトは。
「ふふ……ええ、解りました。天使さん」
 ニコッ、と微笑み、手を差し出す。
 そして、夜魅の歌声に合わせながら、それぞれ、思い思いに踊る。
 ……そんな仲間達のダンスを、遠くから見ているのは達也。
「ふぅ……悪いが、コレは外せないんでな」
 と煙草の煙を噴かすのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 6
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