地揺らす怪力無双力士

作者:天木一

 土俵の上に立派な体つきの2人の力士が対峙している。
「はっけよい、のこった!」
 行司が声を掛けると、土俵で2人の力士が凄い迫力でぶつかり合う。
「がんばれー!」
 それを夢中で少年が応援すると、巨体が衝突する衝撃波が周囲の観客を吹き飛ばし、突っ張りがビームを放って壁に穴を空ける。
「ええ!? ビーム出てる! すげーなにこれ!」
 その驚きの声が届いたように片方の力士が褌を引いて土俵の外へと投げ飛ばした。力士の体が空高く宙を舞い観客の上に落下した。
「わーーーすげーー!」
 興奮した少年は歓声と共に腕を振り回す。
「ごっつぁんです!」
 すると力士と目が合い、返礼にと力士が四股を踏んだ。ドゴンッと土俵が陥没し衝撃波が走る。
 そしてゴゴゴゴゴゴゴと地が揺れ、立っていられない程の揺れが起き、座布団が舞飛び建物が崩れ始めた。
「うわーーー! シコふみで地震がおきたー!?」
 少年が慌てて逃げようとする。だがもう一度力士が四股を踏み地揺れで少年が転んでしまう。その上に屋根が落下してきた。
「助けてっわぁーーー!!」
 バッと少年が飛び起き周りを見渡す。そこは見慣れた暗い自分の部屋だった。
「さすがにお相撲さんでもシコふみで地震は起きないよなぁ」
 昨日相撲をテレビで見たから変な夢を見たと、少年が照れ笑いを浮かべていると、その胸に鍵が突き刺さった。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
 突如として現れた魔女が鍵を引き抜く。すると少年は意識を失ったベッドに崩れ落ちた。魔女は現れた時同様に何の前触れもなく姿を消した。
 それと同時に少年の隣に現れたのは夢に現れた力士。
『はっけよい……っ!』
 床に手をついた力士は勢いよく窓を突き破って外に飛び出し、着地と共に地を揺らして夜の闇へと消え去った。

「力士の姿をしたドリームイーターが現れ、町で暴れようとしているようです」
 マロン・ビネガー(六花流転・e17169)がこれから起きる事件をケルベロス達に告げる。
「第三の魔女・ケリュネイアが少年から『驚き』を奪い、それを元に新たなドリームイーターを生み出しました」
 隣で資料を配るセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が説明を始めた。
「ドリームイーターはグラビティ・チェインを奪う為に人々を襲います。被害が出る前に皆さんの手で敵を倒し、眠ったままの少年も助けてあげて欲しいのです」
 今から現場に向かえば人が襲われる前に到着でき、敵を倒す事で少年を目覚めさせる事もできる。
「ドリームイーターは大柄な力士の姿をしています。見た目は普通の力士のようですが、その戦闘力は夢の中でイメージされたもので、四股を踏むだけで地震が起きるような超人的なものになっています」
 ベースは相撲取りの動きをして、それに超人パワーが付与された戦い方をするようだ。
「現れる場所は東京の郊外にある住宅地です。道を通る人を待ち構えて、地を揺らして驚かせてから襲い掛かるようです」
 襲われた人はあっという間に力士のパワーで圧殺されてしまう。
「もし驚かない人が居た場合、その対象から優先して狙うようです。その性質を上手く使えば敵の攻撃対象をコントロールできるかもしれません」
 驚きから生まれた為、そのような性質を持つようになっているようだ。
「お相撲さん同士が戦うのを見るのは楽しいかもしれませんが、その力が一般人に向けられるとなれば止めなくてはなりません。このドリームイーターを倒し、人々を守ってください」
 セリカがお願いしますと一礼し、ヘリオンの出発準備に取り掛かる。
「お相撲さんですか……どれだけ食べればあれだけの体になるのでしょうか……」
 そんな疑問を思い浮かべていたマロンは我に返ったようにケルベロス達と視線を合わせる。
「お相撲さんが戦うのは土俵のはずです、それ以外で闘われては迷惑ですから私達で被害が出るのを阻止しましょう!」
 マロンの言葉にケルベロス達も頷き、それぞれ戦いの準備に動き出した。


参加者
稲垣・晴香(伝説の後継者・e00734)
ルーチェ・プロキオン(魔法少女ぷりずむルーチェ・e04143)
マリア・テミルカーノヴァ(祈る医学生・e05708)
アンジェラ・コルレアーニ(泉の奏者・e05715)
マロン・ビネガー(六花流転・e17169)
アンナ・シドー(ストレイドッグス・e20379)
ウェイン・デッカード(鋼鉄殲機・e22756)
浜咲・アルメリア(捧花・e27886)

■リプレイ

●相撲取り
 夜も遅い時間。既に人々が寝始めた静かな住宅街の夜道にケルベロスが降り立つ。
「今日の相手はRIKISHIですね、日本の国技SUMOUと戦うのが楽しみです!」
 笑顔でルーチェ・プロキオン(魔法少女ぷりずむルーチェ・e04143)は相撲っぽい張り手をしてみせる。
「力士さんです! 立ち合いに張り差しで相手の動きを封じて、まわしを取って一気に……あ、本場所は終わってました」
 力士と聞いてマロン・ビネガー(六花流転・e17169)は先日TVで見た、大好きな相撲の取り組みを思い出して興奮する。
「アメイジングなスモウレスラーですか、正直やばそうな予感がします」
 マリア・テミルカーノヴァ(祈る医学生・e05708)は歩くだけで家を踏み潰すような力士を想像する。
「その身体からどんなパワーが出てくるのか、この身で体験してみたい、です♪」
 楽しそうに笑うアンジェラ・コルレアーニ(泉の奏者・e05715)は、力士との戦いに心躍らせ足取りを軽くする。
「世界中に似たような格闘技はたくさんあるけど、やっぱり日本の『相撲』は特に有名なのよね。その力強さや独特の神性は、私達プロレスラーから見ても魅力的だわ」
 力士の姿を思い浮かべて真っ赤なリングコスチュームを纏った稲垣・晴香(伝説の後継者・e00734)はうっとりする。
「相撲とプロレスのスーパー異種格闘技……燃えるわね」
 その熱闘を想像した浜咲・アルメリア(捧花・e27886)はワクワクと待ちきれない子供のように楽しそうにする。
「曰く、掌から光線を出す。曰く、空を自在に飛行する。曰く、大地震の震源になる」
 相撲を知らぬウェイン・デッカード(鋼鉄殲機・e22756)は言葉通りの敵を思い浮かべる。
「天変地異を操る敵……リキシ。強敵だね」
 力士とはとんでもない存在だと無表情のまま真剣に対処法を考えていた。
「……おお、知ってる知ってる、どっかで聞いた。リキシつったらアレだよな……『――空中戦である』つって」
 偏った常識を持つアンナ・シドー(ストレイドッグス・e20379)は、今回の敵力士の能力に頷き納得していた。
 2人がそんな勘違いをしながら道を歩いていると、その先に堂々と巨漢が待ち構えていた。身長は2m、体重は200㎏を超えるだろう。素肌に廻しだけを身に着け、頭は艶々した髪を丁髷に結っている。それは正に力士の姿だった。

●大一番
「勝負でごわす」
 力士はここは通さぬと仁王立ちして威圧すると、大きく片足を持ち上げ四股を踏んだ。すると地面が揺れ地震が起きて周囲が震える。宙に浮いていたウイングキャットのすあまは毛を逆立てビククッと落下した。
「ワウ、ワンダフルジャパニーズスモウレスラー、アメイジング!!」
 揺れを怖がってしゃがみ込んだマリアは、大きな声を上げて力士を見上げた。
「大きいです! まさに巨漢力士です……!」
 その迫力に呆然とした顔をマロンが見せる。
「インパクトではどこかの伝説的力士の銅像と良い勝負です!?」
 そして巨体から彷彿とさせる力士を思い浮かべた。
「……これは、確かにある意味理想の力士、かも」
 圧倒されたように晴香はじりっと後退し間合いを空ける。
「そ、その程度で驚かせたつもり?」
 平然とした態度を作ったアルメリアが力士と向き合い、オウガ粒子を周囲に放って戦闘態勢を取る。
「わー、すごーい」
 ウェインはまるで教科書を読む小学生のようにたどたどしく台詞を述べた。それを聞いたアンナがごふっと笑いを堪えるように咳をする。
「アンナ、笑うなら自分が驚いて……」
 じーっと見つめるとアンナは口を押えたまま顔を逸らし敵に視線を向けた。
「おー……すげーけど……なんだ。飛ばねえのか……」
 無表情ながらもがっかりした雰囲気を出したアンナは身軽に敵に向かって跳躍する。それを迎撃しようとした力士にアンナそっくりのビハインドが苦鳴を上げて金縛りを掛け、動きが止まったところへアンナはフードのケモ耳を揺らしながら虹色に輝く蹴りを顔に叩き込んだ。
「何かと思ったらRIKISHIさんでしたか。ここは日本ですから、それほど珍しくもないですよね!」
 驚いてない事をルーチェは相手に向かってアピールする。
「はっけよい!」
「のこった!」
 魔法少女に変身したルーチェと力士が正面から突っ張りを放ち、両者がぶつかり質量で負けるルーチェが後ろに吹き飛んだ。
「なるほど……噂に違わず、物凄い大きい身体、です。力も凄そう、です……が、その上で体の小さいわたしが勝ったりするのが、はたから見てもきっと面白い、です♪」
 挑発するようにアンジェラが笑みを浮かべて腰を落とした。
「それじゃ……はっけよい、のこった、です!」
 それっぽい相撲の立合いを真似したアンジェラは軽く跳躍すると、相手を見下ろす位置から勢いよく体当たりをぶちかました。強い衝撃を受けながらも力士は一歩も引かずに受け止め、アンジェラの体を叩き落とした。
「私はプロレスラー稲垣晴香、場外戦だけどいざ尋常に勝負、よ!」
 堂々と名乗った晴香は、勢いをつけてドロップキックを胸に叩き込んだ。分厚いゴムのような感触が足に伝わる。
「その身のこなし、名のあるレスラーとお見受けする。だがプロレスより相撲の方が格上でごわす!」
 力士は胸を張って押し戻し突進して晴香を撥ね飛ばした。
「スモウレスラーは強そうですね、皆さん気を付けて!」
 すぐにマリアは魔力を遠隔操作し、戦いの間を開けぬよう晴香の打撲を治療する。
「魔法(ちからわざ)のHARITEをお見舞いします!」
 飛び上がったルーチェは張り手を叩き込んで、敵の顔に真っ赤な手形をつけた。
「福祉大相撲のちびっこVS関取みたいな図に……あ、違いましたはっけよいのこったですね!」
 今は相撲を眺めている場合ではないと、マロンは雪のようなオウガ粒子を周囲に放って仲間の超感覚を呼び起こした。
「どすこい! どすこい!」
 攻撃を受けても揺るがず力士が突っ張りながら前進して間合いを詰めてくる。
「なるほど確かに、狭い土俵の上なら、小さいわたしはひとたまりもありません、ですが、広い戦場なら全然へっちゃらへびゅっ」
 アンジェラは軽やかに攻撃を回避しようとしたが、その太い腕に足を掴まれてもう一度地面に叩き伏せられた。すあまは翼を羽ばたかせ風を起こして治療に移る。
「……こ、これは相撲ではありません、ですから、まだ負けではありません、です!」
 ミスを誤魔化しながら翼を広げ高く跳躍したアンジェラは、虹を纏いながら急降下して蹴りを顔面に浴びせた。
「悪いけどスモーとやらに付き合う気はないんでね」
 接近したアンナは伸びてきた腕を蹴って攻撃を逸らし、素早く背後に回り込んで膝裏を蹴って姿勢を崩した。
「懺悔の時間だ。はっけよい、のこった」
 その隙に駆け寄ったウェインは勢いのまま高速の拳を叩き込み、その勢いが消える前に素早く駆け抜け距離を離す。
「悪いけど、相撲には付き合えないし、一撃で山を砕く(らしい)張り手とまともにやりあう気はないよ」
 そして振り向くとその背後に力士がついてきていた。
「まだ土俵内でごわす」
 ほんの数歩で間合いを詰めてウェインを至近距離から突っ張りビームで吹き飛ばす。
「ケルベロスなんてやっていると、ビーム位では何ともないわね」
 乱舞するビームをすれすれを躱してアルメリアは真っ直ぐに飛ぶと、蹴りを顔に叩き込み敵をよろめかせた。
「相撲には無い頭上からの攻撃です!」
 跳ねるように塀を蹴ったアンジェラは頭上を取り、星型のオーラを纏った足で力士を踏んづけた。それを追うように力士は突進する。
「SUMOUなら転べば負けでしたね」
 横に飛び退いて変化したルーチェは出足を払い、相手にたたらを踏ませた。
「おおっと変化して攻撃を逸らしました、ここでさらに追い打ちの足取りです」
 実況するようにマロンは喋りながら、ライフルを構え冷凍光線を撃ち出して敵の脚を地面ごと凍らせていく。
「変化は弱者の兵法でごわす。横綱相撲に奇策は不要」
 足を無理矢理引き剥がして持ち上げると、四股を踏みアスファルトを砕き大地を揺らし、衝撃波はケルベロス達を吹き飛ばした。
「オウッまた揺れています!? ジャパニーズスモウレスラーはすごいパワーですね!」
 マリアは薬液を空から雨のように降らし、仲間達を癒していく。
「体格差はあっても……正面からぶつかるっ!」
 突っ込んでくる力士に、晴香はカウンターでラリアットを叩き込んだ。
「ぬぅおおお!」
 力士は痛みを気合で無視して突っ張りを返した。
「癒せ、《枸杞》。叢雲流霊華術、壱輪・芍薬」
 アルメリアは氣を薄紅の芍薬の花として形成し、晴香の元に咲かせて穢れを浄化する。
「おい、チョコだ」
 呼び掛けたアンナは、傷ついたウェインの口に気を浸透させたチョコレートを放り込む。
「甘い……」
 甘味が広がり内から生命力を漲らせる。
「次行くぞ」
 言葉短くも互いに疎通し、アンナが動き回って敵の目を引きつけ、その隙にウェインが飛び込む。
「――空中戦だ」
 ウェインは蹴りを膝に叩き込み、更に反対の脚で脇腹を蹴ってその反動で間合いを離れた。

●決まり手
「横綱相撲を披露するでごわす」
 力士は頭から突進してくる。
「ヨコヅナの使うという時間停止は使わないの?」
 そう尋ねながらウェインは竜の幻を生み出し、吐き出す炎を浴びせた。続いてビハインドは周囲の砕けたアスファルトの礫を飛ばす。
「へぇ、リキシってのはそんな事までできるのか」
 跳躍して避けたアンナは虹を纏い、顔を蹴りつけて視界を塞ぐ。
「押し切らせないわ」
 その隙にアルメリアは白銀の鋼で覆った腕を振り抜き、思い切り力士を殴りつけた。更にすあまが爪で顔を引っ掻く。
「ふんっ」
 顔から血を垂れ流しながらも、力士は突進を止めずに纏めて撥ね飛ばした。
「やっぱボディの厚みが違い過ぎ……なら、対巨漢の鉄則は、足殺し!」
 晴香は振り下すような鋭いローキックを叩き込んで力士の体をよろめかせた。
「貴方のSUMOUはそんなものですか? 私を驚かせるには全然足りませんよ!」
 挑発しながらルーチェはツッパリを浴びせてると、くわっと力士が四股踏みで地を隆起させ断層にルーチェを呑み込んだ。
「地球を砕いても、私たちがまた繋げてみせます!」
 回復を絶やさぬようマリアが薬液の雨を降らして治療していると、光差す空に虹が掛かる。
「上からの攻撃には手も足も出ませんか? では一方的にやらせてもらいます、です♪」
 空に舞い上がったアンジェラはその虹を通るように力士に向かって蹴りを叩き込んだ。だが力士はその一撃を食らいながらアンジェラの脚を抱え込み、地面に投げ落とした。
「ぶぎゃっ」
 潰れたような声をアンジェラが漏らす。
「ああっと?! アンジェラちゃんが上手投げで土をつけられたです!」
 マロンは色鮮やかな花々を召喚して力士に纏わりつかせ、甘い香りで包んで神経を麻痺させ動きを鈍らせる。そして花々に七色の『名も無き花』が1つだけ舞い落ち、一瞬にして全ての花がその種に変化した。
「これがSUMOUと魔法少女の力を合わせたTATSUMAKIです!」
 覆うアスファルトをルーチェは両腕の肘から先を内臓モーターで高速回転させて吹き飛ばし、2つの竜巻を起こして力士を呑み込みその巨体を宙へを吹き飛ばした。
「正面からの力比べは負け、です。ですが、勝負はこちらの勝ち、です!」
 電柱を蹴り上げり翼を羽ばたかせたアンジェラは高く飛び、反転して一気に降下しオーラを纏って流星の如く体当たりをぶちかます。
 きりもみしながら力士は落下するが咄嗟に手からビームを放って姿勢を変え足から着地した。
「まだ……まだ土はついてないでごわす!」
 足を震わせながらも意地で力士は膝をつかない。
「……思っていたよりは大丈夫そうな攻撃だね。なら一気に決めてしまおうか」
 全身のリミッターを解除し銀色の粒子を纏ったウェインは加速する。エグゼキューターによる射撃で力士に青白い十字架を浮かび上がり、それを追尾する矢のような飛び蹴りを叩き込み、全方位から連続して蹴りを浴びせた。
 続いてアンナも飛び蹴りを浴びせるが、その足を掴まれ放り投げられる。
「力はすげーけど、そう何度もやられてたまるかよ!」
 投げられたアンナは回転して電柱に着地すると跳び戻り、鋭い回し蹴りを側頭部に叩き込んだ。
「フィニッシュといくわよ!」
 背後から晴香が組み付き腰に腕を回し相手を持ち上げようとする。それに対して腰を落として力士が抵抗した。
「のこったのこった! 土俵際の勝負です!」
 間合いを詰めたマロンは剣に霊力を帯びさせて振り抜き、すれ違いながら胴を斬り裂いた。
「相撲とプロレスの決着を見せてもらうわ」
 その横からアルメリアは飛び蹴りを浴びせ、重心を上げさせた。
「力を合わせれば、アメイジングなスモウレスラーにだって力負けしません!」
 マリアは晴香の背中を押すように魔力を叩き込んで晴香に活力を与える。
「こういう相手を投げ切ってこその必殺技、よねっ!」
 ぐっと足腰に力を入れて踏ん張り晴香は重い巨体を持ち上げた。そして後ろにブリッジするように相手を投げバックドロップを叩き込んだ。すると土のついた力士の体は霧散して消えてしまう。
「決まり手は……居反り、です! しかし礼をする前に消えてしまったです……」
 興奮したマロンの実況が終わり、決着となった。

●相撲
「大丈夫みたいね」
 晴香がベッドに眠る少年を確認していると、その瞼がゆっくりと開いた。
「あれ? 確か相撲の夢を見て……」
「その夢に現れた力士が現実でも現れたの」
 アルメリアが事情を説明すると、少年は目を見開いた。
「ええ!? ビームを出す力士なんてマンガみたいなのが現れたの?」
「……え、本物の力士は飛ばないしビーム出さないし地震を起こしもしないの……?」
 少年から現実の力士の説明を受けたウェインが表情を変えぬまま驚く。
「マジかよ……空も飛ばないの?」
 今日一番驚いたとアンナもまた力士のイメージが崩れ落ちていった。
「本物の力士さんはきっともっと格好良い筈なのです」
 実際の相撲こそが至高であるとマロンが力説すると、少年もうんうんと頷き相撲話で盛り上がる。
「今日は日本のSUMOUを楽しめましたね!」
 瞼が重くなった少年に別れを告げて部屋を出ると、ルーチェは楽しそうに相撲体験を思い返す。
「ずいぶんと汚れてしまったので、シャワーでも浴びたい、です♪」
 何度も投げられた自分の服を見て、アンジェラは帰ろうと仲間に声をかける。
 行事の恰好に着替えたマリアは、割れた地面にヒールを掛ける。そして周囲が均されたのを見渡し。
「ごっつぁんでした」
 相撲の終わりはこの一言でと、マリアが締めくくった。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。