貯水槽に眠る少女

作者:ルクス

●放課後の教室で
 秋も深まるある日、夕焼けが校舎を照らす中、二人の少女が話しをしていた。
「ねぇ、チカ。最近学校の水ってマズくない?」
「え? 私は別に感じないけど。陽子ちゃんそんなに学校のお水飲んでるの?」
 まぁ、学校の水が素晴らしく美味しいはずも無い。言った本人にとっても、どうでも良いような他愛の無い噂話だ。だが、そこに一人の少女が近づいてきて声をかける。
「ねぇ、あなた達、怪談話は好きかしら?」
 頷いた少女達に彼女が語る話は、聞き流すにはおぞましすぎる話しだった。
「あのね、この学校の屋上に大きな貯水槽があるのは知ってる? あの水槽でね、昔溺れ死んだ子がいたんだって。そしてそれから貯水槽は開かなくなって、その子は、今でもそこに沈んでるらしいの。でも、夜の12時に貯水槽の蓋をノックすると、その子が出てきて、連れて行くんだって。冷たい水の底に、一緒に居てくれる子を……」
「ちょ、それ気持ち悪いよ!」
「い、今でも沈んでるって……」
 身震いして顔を見合わせる二人。そして詳しく話を聞こうと顔を上げたその時には、すでにその少女の姿はなかった。
 2人はしばらく見つめ合っていたが、今の話しは無視するには気味が悪すぎた。そして、どちらからともなくこう言うのだった。
「ねぇ、確かめに行ってみない?」

「ドラグナー『ホラーメイカー』が、屍隷兵を利用して事件を起こそうとしています」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は集まったケルベロス達に説明を始める。
「ホラーメイカーは、作成した屍隷兵を学校に潜伏させた後で、怪談に興味のある中高生にその屍隷兵を元にした学校の怪談を話して聞かせて、その怪談に興味をもった中高生が屍隷兵の居場所に自分からやってくるように仕向けているようです。既に、学校の怪談を探索して行方不明になった方達もいますので、早急に解決する必要があるでしょう」
「夏は終わっても、怪異は、無くならない……」
 今回の事件を予期した祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)は、終わる事なき怪異を呪うように呟いた。
「えぇ、ですが今回はイミナさんの予期があって助かりました。敵の行動もほぼ予期通りです」
 セリカの説明によると、今回ホラーメイカーが広めた怪談話は、深夜の12時に学校の屋上の貯水槽をノックすると、水底に沈む少女が現れて貯水槽に引き込まれると言う内容らしい。
 事件現場に出現するのは屍隷兵のみで、ドラグナー・ホラーメイカーは居ない。
 現れる少女型屍隷兵は1体だが、少年型の配下を3体連れている。少女は黒く濁りきった毒水、相手の防具を腐食させる腐食球、自分達には癒やしを敵には痛みをもたらす汚水球、を使用し、配下は少女を守ろうと動きながら肉弾戦を仕掛けくる。配下はトップレベルのケルベロスなら一対一で戦える位の強さだ。この配下の妨害にどう対応していくかが戦いの鍵になるだろう。
 また、貯水槽は屋上に直接据え付けられているので周辺で闘っても足場の心配は無い。ノックをするとゆっくりと蓋が開き、少女達が這い出してくる。その間に戦闘準備を整える事は出来るが、不意を突くのは難しいだろう。
「ノックする時間は午前0時と言う指定ですので、あまり早く行くと屍隷兵が配置されていない可能性があります。ですが、そのくらいの時間には少女達もやってくるのでは無いかと思われます」
 セリカは難しい時間制限を申し訳なさそうに告げる。
「それでも、たわいない放課後のおしゃべりが、惨劇に繋がるのを放置してはおけません」
「怪談話を聞いた一般人が事件現場に現れないように対策しつつ、怪談話に扮した学校に潜伏する屍隷兵の撃破をお願いします」
 そう言ってセリカは深々と頭を下げ、ケルベロス達を送り出したのだった。


参加者
ユージン・イークル(煌めく流星・e00277)
御神・白陽(死ヲ語ル無垢ノ月・e00327)
佐藤・みのり(仕事疲れ・e00471)
アニエス・ジケル(銀青仙花・e01341)
霖道・悠(黒猫狂詩曲・e03089)
祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)
明空・護朗(二匹狼・e11656)
クララ・リンドヴァル(鉄錆魔女・e18856)

■リプレイ

●小さな勇気
 草木も眠る丑三つ時、の少し前。深夜零時に近い時間に、学校に入ってくる少女達の姿があった。ホラーメイカーによって学校に誘われた知佳と陽子の2人である。貯水槽の秘密を確かめようと、少女達は怖がる気持ちを抑えながら、手を繋いで屋上を目指していく。すると、どこからともなく不気味な声が聞こえてきた。
「……苦シ……許サナ……オ、オォオ前達モ……仲間、ニ……」
「「ひっ!」」
 慌てて見回すと、屋上に続く階段の踊り場に人影がある。黒髪で、白装束の、少女の人影が。そしてその人影は、前髪や服の裾から、ポタりポタりと、水を滴らせ、ゆらゆらとゆっくりと階段を降りてくる。
「「キャーー!!」」
 少女達は慌てて逃げ出すが、陽子は腰が抜けてしまったのか転んで走れなくなる。すると知佳は陽子の手をギュッと握って、人影の方に向き直る。
「ね、ねぇ、貴方が貯水槽の女の子なの? だ、だったら、もうやめようよ。こんな事続けても、誰も幸せになれないよ。私、ちゃんとお墓参りするから、ね、もうやめよう」
「う、うん、そうだよ。ちゃ、ちゃんと、じょ、成仏しようよ、ね?」
 陽子も知佳の勇気に励まされたのか、立ち上がって一緒に説得をし始める。すると、人影は、ゆっくりと前髪をかき上げて……。
「……ワタシは、くだんの少女ではない……」
「怪談の正体はデウスエクスなんです。あぶないので、アニエスたちにまかせてほしいです」
 祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)が脅かして追い払う事を諦めると、アニエス・ジケル(銀青仙花・e01341)が階段の上からテレビウム『ポチ』と一緒にトテトテと降りてきて説明をはじめる。どうやらデウスエクスの侵略を怪談という形で誤魔化す事は出来なかったようだ。
「ここハ、これカ、ら、すごーくアぶな、い。居ル、のは、ワるい子ダー、け」
「死にたくなかったら帰りなよ。結果が知りたいっていうならあとで教えてあげるからさ」
 霖道・悠(黒猫狂詩曲・e03089)と明空・護朗(二匹狼・e11656)もボクスドラゴンの『ノアール』やオルトロス『タマ』を連れて現れ、説得に加わる。
「え? ……あの? え?」
「……で、デウスエクス? ……あ、もしかして何かの番組??」
 だが、少女達は突然の展開に頭が着いていかないのか全く要領を得ない。そこに佐藤・みのり(仕事疲れ・e00471)と御神・白陽(死ヲ語ル無垢ノ月・e00327)が降りて来て、彼らはケルベロスである事、そして今回の噂の正体はデウスエクスの罠であり、この先は危険である事を説明する。
「私が学生の時もホラー系の噂は色々ありましたから、興味を持つ気持ちはわかります」
「だが、これはデウスエクスの罠だ。この先は俺達が対処する。お前達は帰るんだ」
 みのりと白陽の説得を受け、貯水槽の秘密を後で教えてくれるよう護朗にお願いをした上で、少女達は引き返す事になった。
「この手の事件、事件のたびに行方不明者が出ているんですよね……。早く解決しませんと……」
 彼女達が引き返していく姿を屋上から見やりながら、クララ・リンドヴァル(鉄錆魔女・e18856)が呟く。事件が起こるたび、確実に屍隷兵は産み出されているのだ。
「それにしてもホラーメイカー……次から次へと気味の悪い話を思いつくものです」
 クララが続けて呟くと、ユージン・イークル(煌めく流星・e00277)はウイングキャット『ヤードさん』を抱きしめながら青ざめた顔で貯水槽を見る。予定通りなら、そこには既に屍隷兵が沈んでいるはずなのだ。冷たい水底で、ノックの音を待ちながら……。

 ケルベロス達が屋上に集まり、キープアウトテープや照明で戦場の準備を整えると、更に青ざめたユージンがヤードさんとともに貯水槽の蓋へ向かう。そして、その姿をやはり蒼い顔をして、護朗がやたらと武器を持ち直したり掌を拭いたりしながら見つめている。
 下からの明かりに照らされた貯水槽は、まるで地獄の釜のよう。これをノックした時、ひょっとすると噂が本当で、水底の少女が、彼を引き込んでしまうのでは……。思わずよぎる想像にユージンは身を震わせ、ヤードさんが心配そうに鳴く。
 だが、ユージンはかつての怖がる事しか出来なかった子供では無い。それにあの少女達も勇気を見せたのだ。ユージンは震える手を押さえ込むようにギュッと握りしめ、力強く貯水槽の蓋をノックする。すると『ゴォン……。ゴォォン……』とまるで古い寺の鐘が鳴るような音が響き渡る。その不気味な音に護朗は思わず後ずさり、ウイングキャットのタマに少し呆れられている。
 そして、ゆっくりと貯水槽の蓋が開き、中から4つの人影が現れる。
「“不変”のリンドヴァル、参ります……」
「……仄暗い水の底へ還るがいい。……ワタシは祟り、其れを促す」
 クララが長手袋を着けながら告げ、イミナも呟きながら杭を取り出すと、屍隷兵達は耳まで裂けた口でニヤリと昏く笑う。……戦いが、始まった。

●染み渡る毒
 少女屍隷兵は長い髪と制服から水を滴らせながら、みのりにどす黒い毒水を投げつけてくる。その威力もさることながら、染み込んでくる毒はかなりの強さを持つようだ。
 すぐさま悠が、自分は前衛にライトニングウォールを施しつつ、ノワールにみのりへ属性インストールを行わせる。だが、ライトニングウォールで白陽とタマにBS耐性の付与が成功したが、属性インストールでは付与は出来なかった。ノワールはともかく、悠は使役持ちで列回復、更に前衛が6人と、かなり付与の可能性は低そうである。だが、一旦付与されれば効果は絶大。どれだけ速く付与しきれるかが勝負の分かれ目になりそうだ。
 悠の支援を受けた白陽は少年屍隷兵に桜花剣舞を放つ。幻影の桜吹雪の中、白陽の姿がかき消えてただ斬撃の跡が屍隷兵達に残される。しかし、その痛みを感じないかのように少年屍隷兵達がみのり、ユージン、悠に殴りかかる。
「さ、させません!」
 だが、みのりへの攻撃はアニエスが防ぐ。怪談が苦手なアニエスだが、味方を守る覚悟は十分だ。そしてユージンは自身への攻撃を見事に受け流してみせる。
『おいで、グラリナ。今日の遊び相手はあの人ですよ。』
 ユージンが体勢を崩した屍隷兵に、みのりが毒に身を蝕まれながらも【肉喰い山鼬】をけしかけると、地気を纏うオコジョが屍隷兵の肉を食いちぎるが、マズそうな顔をして吐き出して消えていく。しかし、毒の影響はかなり大きく、アニエスに庇われていなかったら倒れていた可能性があるほどだ。
 その顔色にクララが真剣な顔をして、すっと帽子を被り直しながらエレキブーストで、みのりに回復を施すと、イミナもみのりに分身の幻影を纏わせ、そんな彼らをイミナのビハインド『蝕影鬼』と護朗のタマがしっかりと護る。
『あなたに、ちいさなちいさなこのうたを』
『痛いの痛いの、飛んでいけ』
 続いてアニエスが治癒を願う祈りとともに、魔力を歌声に込めてありふれた小さな歌謡曲をやさしく歌い上げると、護朗は幼い頃に耳馴染みの言葉を唱える。するとその言葉への祈りと憧憬が、ただの言葉を言霊に変えた。そして2人の声は癒やしの光になっていき、みのりの傷と毒が癒えていった。ポチも2人に合わせた応援動画を映して回復を支援する。
 みのりの顔色が良くなってきた事に安堵しながら、ユージンはクラッシャー達への攻撃を防ぐ為、ファナティックレインボウで屍隷兵の意識を引きつける。気味の悪い手応えに身震いをしながらも、しっかりとヤードさんに清浄の風の指示を出す。
 だが、少女の毒は未だ残り、少年屍隷兵も健在。長い戦いになりそうである。

●続く戦い
 少女屍隷兵が腐食球をイミナに投げればユージンがすかさず庇う。焼けただれるユージン。だが再び放たれた悠のライトニングウォールがユージンと蝕影鬼に耐性を与える。少年屍隷兵達が蝕影鬼とタマ、そしてみのりに噛み付くが、みのりへの攻撃はタマが庇う。
 そしてそこに出来た隙に白陽が背面から月光斬で切りつける。切りつけられた少年屍隷兵が振り返った時には白陽は既に二段跳躍での立体機動で距離をとり、周囲の異常を確認していた。その視界に、校門脇の2人の少女が映る。屋上の戦いに気がついてケルベロス達の勝利を祈っているらしい。白陽は小さな笑みを浮かべると、再び死地に舞い戻った。
『もう一歩進んで、わたしを喜ばせておくれ』
 クララが戦場を赫々と染め上げる怪光球を前列に投げると、不規則な明滅が髄の奥底に眠る闘争本能を刺激し、急速且つ激烈な効果を齎し、癒しと共に攻撃力の増強を付与していく。その光景に護朗が少し怯えたような目を向けると、クララは「まぁ……どうかなさいまして?」と微笑んだ。
 護朗が微妙な表情のまま、タマに護られつつメンタリックバーストで更なる付与を図ると、支援を受けたみのりが達人の一撃で少年屍隷兵を大きく切り裂き、ユージンがヤードさんと共に獣撃拳と猫ひっかきで追撃をかける。
『…弔うように祟る。祟る。祟る祟る祟る祟る祟る祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟……封ジ、葬レ…!』
 そして、攻撃に転じたイミナが蝕影鬼と共に少年屍隷兵に肉薄し、呪力を込めた杭を深々と打ち込むと、痛みなど感じないはずの屍隷兵が苦痛に身を震わせながら崩れ落ちた。
「……繰り返される怨讐の杭を、身に穿ち、祟る……」
 まるで、嘗てこの呪術で生け贄に捧げられた者達のように……。
 取り巻きを倒したイミナを少女屍隷兵が睨み付けるが、アニエスがその視線を遮るように立ちはだかって稲妻突きを撃ち込むと、ポチも続いて凶器攻撃で襲いかかり少女の気を引く。

 最初の1人目は早々に倒せたが、ここから先は厳しかった。
 少女屍隷兵は毒と少年屍隷兵の回復を交互に行うようになり、毒も前衛中衛に集中させる。少年屍隷兵も攻撃より呪言葉での回復をメインに行い始め、徐々に防御力を向上させていく。だが、それでもケルベロス達は崩れない。
『日の力でボクらは輝くのさっ☆』
 ユージンが父の残した符から『北風を食らうもの』の名を持つ火葬ダモクレスの残霊を召喚すると、その翼から放たれる光が味方の傷と毒を癒していく。
「大丈夫。こう見えてもお医者さんなんですから」
「妹に庇われっぱなしにはいかないだろう!」
 そしてクララが更なる治癒と強化を施せば、護朗も時折間近に迫る屍隷兵の姿に身震いしながらもそれに続く。タマはそんな2人を小さな背に庇い勇敢に戦い続ける。
「わ、わ。いそぎ、回復します……!」
「ピコピコ」
 アニエスとポチは時に回復を、時にガードを行いつつ、少女の気を引く為に最前線に立ち続け、敵の攻撃を引きつけていく。
「……死神どものデスバレスよりも冷たい死の淵へ、凍てつけ」
 そんな彼らの稼ぐ時間の中、イミナが氷結の螺旋で敵を凍てつかせれば、蝕影鬼が影より凍結部分を狙い、白陽が流水斬で敵の守りを打ち砕くと、みのりのガトリング連射が少年屍隷兵を乱打する。そして、遂に悠とノアールの施すBS耐性が皆に行き渡った時、勝負の行方は決したのだった。

『にゃあ、お。』
 ちりん、と。悠の掲げた鈴が鳴く。此れは、彼等への合図。何処からとも無く出でる陰。翳。影。徐々に形を成す黒、数多。にゃあみゃあ。幾重となり響く、鳴声。数多の影より生まれた黒き猫。それは少年屍隷兵の足元に、絡み憑く。遊んで、構ってと。無邪気な殺意に彩られた黒影の調べが途絶えた後、そこに屍隷兵の姿は無かった。
『おいで、グラリナ。次の遊び相手はあの人ですよ。』
 そして、みのりが再びクレジットカードを使って【肉喰い山鼬】を呼び出すと、地気を纏い輝くオコジョは最後の少年屍隷兵の首を噛みちぎり、不味そうな顔をして消えていく。
 最後に残された少女屍隷兵は、浮かべていた歪んだ笑みを消し去って、毒球をクララに投げつけるが、「本が濡れちゃう……」耐性が施された上で回復が集中できれば、いかほどでも無い。
「死を撒くモノは冥府にて閻魔が待つ。潔く逝って裁かれろ」
 そして、白陽が自身と世界の境界を取り払い、起源である“虚無”を呼び覚ますと、死の具現となって少女屍隷兵に触れる。すると、屍隷兵は自身が死体である事を思い出したかのように倒れ、ゆっくりと消えていく。
『死は尊くあるべきもの――いつか終わることだけは世の全てに平等だ』
 白陽の無現・境界識により少女屍隷兵は消え去り、戦いは終わりを告げた。

 クララが長手袋を脱ぎ、ふわりと落とすと、その動きにつられたように、ユージンと護朗が大きく安堵の息をついて座り込む。2人とも怖がらないと言うのは無理であったが、恐怖に打ち勝つことは出来た。優秀な相棒あっての事ではあるが。

●終わる怪談?
「毎日忙しくて、参っちゃいますねぇ」
 みのりが月も高く昇った空を見上げながら、戦闘の跡を片付けていく。戦いがあっても、日常は続いている。明日の出勤は少々つらそうである。

 白陽が校門を見ると、まだ少女達は祈っていた。少女達に白陽が手を振ると、それに気がついた少女達は、嬉しそうな笑みを浮かべて、ケルベロス達に一礼をして去って行った。
「アニエスは、みなさまの笑顔がすきなのです」
「ピコピコ」
 アニエスも少女達に気づき、無事に助けられた事をポチと喜ぶ。白陽もまた小さな笑みを浮かべると片付けを手伝い始めた。

「……水に纏わる怨念は澱んだモノが多い。……安らかなはずが無いからな」
「「…………」」
 ユージンと護朗も片付けを行いながらイミナの言葉に耳を傾ける。怖いなら聞かなければいい気もするが、聞かないと返って怖くなるのも常である。
「……もっとも、今回のは怪談であるが……屍隷兵を作り出すに至って、元の人間を溺死させたのならば……」
「「ギエエエー!!」」
 叫び声を上げるユージンと護朗を、ヤードさんとタマがやれやれと顔を見合わせて呆れている。

「……洗浄した方が、いいのでしょうか」
 その後ろで、クララは首をかしげつつ、巨大な貯水槽を見上げていた……。

「ヤーれや、レ、めンどうだ、ゼ」
 悠もじゃれついてくるノアールの相手をしながら片付けとヒールを行い、ふと月を見上げて気怠げに息をつく。また暇持て余すひとり。と、いっぴき。次は何が起こるのやら。

 一つの事件が終わり、小さくも得がたい平穏がもたらされた。これはそんな物語。

作者:ルクス 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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