散る紅は葉か血の色か

作者:流水清風

 日本という国土の特徴として、よく挙げられるものの1つに四季がある。
 季節によって気候が著しく変化する日本において、秋という季節は過ごしやすいと評される。そのためか、何某かの秋などと色々な例えが並ぶ程だ。
 そんな秋は、木々の葉が鮮やかに彩る紅葉の時期でもある。
 日本列島の中国地方に位置する岡山県の北部。鳥取県との県境に位置する森林公園でも、休日を利用して最盛期にはやや早いものの、色付き始めた紅葉を楽しもうと大勢の行楽客が訪れていた。広い敷地内には遊歩道も設置されており、ペットの入園も可能なため家族の憩いの場ともなっている。
 この平穏な日常の場所が、突如として阿鼻叫喚の惨状と化してしまった。
 何の前触れもなく、園内を散策する人々の前で地面に突き刺さった巨大な牙。それがデウスエクスである竜牙兵に変化したのだ。
「ワガアルジ、ヤーケイロンのノゾミにヨリ、ワレラジゴクガリをオコナう」
「ワレラをゾウオしキョゼツしながら、シヌがイイ」
 紅葉色の鎧に身を包み両手に凶器を携えた竜牙兵が行楽客に襲い掛かる。
 抵抗する術を持たない人々は一方的に虐殺され、園内に静寂が訪れる頃には、紅葉の紅よりもなお鮮やかな血潮が園内を塗り替えていた。

「皆さん、岡山県の森林公園へ急行してください」
 呼びかけに応じ集まってくれたケルベロス達へ、ヘリオライダーの静生・久穏はそう告げた。
「リューデ・ロストワード(鷽憑き・e06168)さんが危惧した事態が、現実のものとなってしまいます」
 予測された紅葉の名所に竜牙兵が出現し人々が殺戮されるというという事態を予知に観た久穏は、ケルベロス達にそれを阻止して欲しいと持ち掛けたのである。
 これを防ぐために、事前に現地に避難勧告を出すことは出来る。しかし、そうすると竜牙兵が異なる場所に出現してしまい、それを予知できる保証はない。
「竜牙兵の出現と同時に皆さんが戦いを挑む方法が、最も被害を抑える方法です。皆さんに負担を強いてしまいますが、どうかお願いします」
 ただし、予め久穏とその知り合いのケルベロスである霧生・彩音が警察機関に連絡を取り、ケルベロスが竜牙兵と戦っている間の避難誘導は委任している。このため、ケルベロスは戦闘に専念できるのがせめてもの救いだろう。
「敵戦力は5体。それぞれが単一ないし二種の武器を複数所持しています」
 竜牙兵の数は5体とやや多いが、出現する箇所は一か所であるため、戦力を分散する必要はない。
 重要なのは、即座に周辺の人々の避難を促しつつ敵との戦闘を開始することである。
「竜牙兵は皆さんと交戦を始めた後は、先に一般の人達を狙ったり、逃亡することはありません」
 敵にとって最も厄介な存在であるケルベロスの殲滅を最優先するということだ。当然だが、避難を促せていなければ戦闘の余波で被害者を出す可能性はある。
「人々の憩いの場であり季節の風物詩を、踏み躙る行為を許すことはできません。皆さんの力で竜牙兵を撃退し敵の目論見を阻止してください」
 四季によってその様相を変えて見せる日本の植物。その風雅を好む久穏は、心なしかケルベロス達に依頼する声に力が籠っていた。
 それは同時に、この国に住む多くの人々の想いでもあるだろう。


参加者
珠弥・久繁(病葉・e00614)
鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)
ラズ・ルビス(祈り夢見た・e02565)
日生・遥彼(日より生まれ出で遥か彼方まで・e03843)
ステイン・カツオ(剛拳・e04948)
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)
禍芋・野鳩(紛い物ハート・e36800)

■リプレイ

●自然公園
 木々の葉が色付き始めたこの時期は過ごし易い気候であるため、休日の自然公園は家族連れなどの行楽客が多く、相応の賑わいを見せていた。
 草花を眺めたり、撮影や写生など芸術の秋を楽しむ者。ウォーキングで軽いスポーツの秋に興じる者。弁当を広げて食欲の秋を満喫する者。楽しみ方もそれぞれだ。
 そんな行楽客の中に、明らかに異質な集団が居た。見た目がバラバラでどういう関係性なのか推測するのは難しい。何故なら、この集団の共通点はケルベロスであるからだ。
 間も無くこの場にデウスエクスの一種である竜牙兵が出現する。その報せを受け、対処するために集った者達だ。
「この紅葉は綺麗だけれど、人払いが遅れれば遅れる程に悲惨な光景になってしまうのね……」
 まだ緑を残しながらも紅葉した葉を見遣り、日生・遥彼(日より生まれ出で遥か彼方まで・e03843)は周囲の人々をいかに守るかを思い巡らせている。
「準備は万端だ。先手を打てないのが忌々しいが、犠牲を出しはしない」
 そんな不安を払拭するように、ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)は普段と何一つ変わらない冷静な口調で言う。
「警察も救急も待機しているんだ。私達がやるべき事をやれば問題は無いだろう」
 感情を表に出さない声音でそう付け足すのは、禍芋・野鳩(紛い物ハート・e36800)だ。
 2人が言うように、既にこの自然公園の外には警察や救急隊員が避難誘導や負傷者の手当てなどを円滑に行えるよう控えている。
「敵の出てくる場所に俺達だけがいるってのが理想だよねぇ。そうもいかないのが辛いところだよ」
 珠弥・久繁(病葉・e00614)がやれやれと溜息交じりに零す。
 予めこの自然公園から人を避難させてしまうと竜牙兵が異なる場所に出現してしまうように、出現が予知された箇所から人払いすると園内の別の場所に現れる可能性がある。そうなるとケルベロス達が園内に散らばらざるを得ず、戦闘初期に数的不利を抱えて凌がなければならない危惧がある。
「ま、なるよーになるさ。オレ達がこの場にいるってだけで十分だぜ」
 直後に控える戦闘への気負いなく、緩々とした風情で佇む鳥羽・雅貴(ノラ・e01795)。
 多くの人々の命運を担っているとは言え、その重みに潰されてしまうようではケルベロスの使命は果たせない。そう言外に語っているかのように、ケルベロスの何人かは平素と何も変わらない様子であった。
(「毛がないと、やはり可愛くないか?」)
 行楽客が連れている犬や猫に目を奪われている霧生・彩音(地球人の刀剣士・en102)に対し、ラズ・ルビス(祈り夢見た・e02565)は熱い想いを込めた視線で凝視している。
「彩音さん、ウチのスームカもどう? ツルツルしてるけど……」
 自身の使役するミミックを紹介するフィアールカ・ツヴェターエヴァ(赫星拳姫・e15338)の片手には缶ジュースが握られており、まるで行楽客であるかのようだ。
 救急箱型のエイドとバッグ型のスームカに足元から見上げられた彩音は、小さな足で器用に動くミミックもなかなかに愛らしいと思いはするが、それを口に出しはしなかった。表情で丸分かりなのだけれど。
 マイペースなケルベロス達の中で、ある意味最もマイペースなのは、ステイン・カツオ(剛拳・e04948)だろうか。
「……もしかして私だけドワーフだったりするのでございましょうか? やめろよ……1人だけ130未満とかやめろよ……。連行される宇宙人みたいな構図やめろよ……」
 他のケルベロスメンバーと自身との身長を比較して、何やら悲壮な呟きを漏らしている。
 半分ほどのメンバーが戦いに臨むとはとても思えない様子だが、そこはケルベロス。公園内に突如巨大な牙が出現した瞬間に、弛緩した空気は即座に消え去っていた。

●無粋なる牙
 巨大な牙は、5体の竜牙兵に変化した。
 竜牙兵自体が血生臭さを感じずにはいられない存在だが、さらに凶悪な武器で武装している事もあり、公園内の風情は台無しであった。
「此処は番犬が任された! ちゃんと護るから、慌てず怯えず離れて待っててくれ」
 待ち構えていただけあって、ケルベロス達は各々の武器を手に迅速な動きで竜牙兵へと攻め寄せる。
 周囲の人々へ避難を促しながら、雅貴は先刻までの雰囲気とは打って変わった鋭い視線で敵に狙いを定め槍を投擲した。
「どうやら、こいつが防衛担当らしいねぇ。まずは、こいつからやるよ」
 敵竜牙兵の見た目は寸分違わぬとまでは言わずとも、一見して判別出来る程の差異は無い。ただし、武装は一体毎に違っているためそれが目印になった。
 久繁が大鎌に死の力を纏わせ振り下ろした敵は、剣を手にオーラを纏った個体であった。
「どこのどなたか存じませんがぶっ壊れやがれくださいませ。紅葉狩りの邪魔でございます。クッソ邪魔」
 とても個性的な口上を上げるステインは、その言葉の始めから終わりまでの間に光の矢を撃ち放っている。予備動作の無いその射撃は、久繁が刃を向けた敵の隣に位置する2振りの剣を構える個体を貫いた。
「分かり易いな。見た目通り、骨ばかりで頭は空っぽのようだ」
 辛辣に敵を評価するティーシャは、自分用に調整されたハンマーを砲撃形態に変形させ、剣とオーラを用いる個体に竜砲弾を見舞う。
「でも油断は禁物よ。竜牙兵とは何度か戦ったことがあるけれど……なかなか手強いのよね」
 一般人を遠ざける殺気を放つために一手を費やしながら、遥彼は敵の動きを注視していた。
 こちらの初手となった雅貴の分裂し降り注ぐ槍を、剣とオーラを有する個体が被弾しつつ隣の個体を庇ったことで、その2体が敵前衛であることは容易に判別された。
 けれど、それはこちらの戦術指針が固まったというだけで優位を確立したという事ではない。
「ケルベロス、コロす」
 両手の剣に星座の重力を同時に宿し斬り掛って来る竜牙兵。
「チキュウジン、ワレラをツヨくゾウオする」
 ほぼ同時に、剣と大鎌を持つ竜牙兵は星座のオーラをケルベロスの前衛へ飛ばしている。
 竜牙兵が本当に愚かであれば、ケルベロス達に応戦する者と周囲の一般人へと向かう者とに分かれただろう。けれど、竜牙兵はケルベロスの撃破を最優先に統一した動きだ。
「デウスエクスは私達ケルベロスが引き付けます。一刻も早くこの場から避難を」
 念の為に周囲への呼び掛けを重ねつつ、ラズは星座のオーラを被弾した味方前衛に薬液の雨を降らせた。
「ジゴクガリのテハジメはキサマらケルベロスドモだ」
 竜牙兵の1体が両手の大鎌から怨念を解放し、前衛のケルベロス達に亡霊の群れが放たれる。
 それによって身体の一部が石化するものの、フィアールカは意に介さず魂を喰らう降魔の一撃を叩き付けた。
「紅葉を人々の血だ赤く染めるだとー!? 染めるのはお前の血なの! ……あ、骨だから無かったの、血」
 戦闘の高揚からか、口調が荒々しくなっている。それ以上に拳の威力は激しく、竜牙兵の身体を構成する骨の一部を砕いていた。
「地獄狩りか。なら、この地獄を狩ってみるがいい」
 ケルベロスとしての使命感によってデウスエクスを討つべく、野鳩は杭に凍気を纏わせ竜牙兵に突き刺す。常に抱く迷いが感情を平坦にし、逆に余計な思考に煩わされることなく戦いに集中できるのは皮肉なものだ。
 ケルベロスと竜牙兵。それぞれが行動した時点では、まだ周囲の人々の避難は完了していない。しかし、戦いに巻き込む心配はなさそうだ。
 眼前の敵を撃破する事に専念できる状況が整った事で、戦いはさらに激化の様相を呈していた。

●砕け散る牙
 苛烈な攻防が展開する中で、ケルベロス達は敵の戦術がバランスの取れたものであることを理解していた。
 個体毎に役割を分担しており、確かに手強い相手だ。
 もっとも、それがケルベロス達を優位に導いた要因となっているのだけれど。
「ハッ! ただのカルシウムの塊のくせに地獄狩りなぞ片腹痛いの! こちとらは生まれ付いてのカーボンナノチューブの骨なの!」
 戦闘の興奮からか、悪鬼の如き形相で哄笑するフィアールカ。繰り出した電光石火の蹴りが、敵の防衛を担っていた個体を遂に打ち砕いた。
「やはり、狩られるのはお前達だったようだな。所詮はさしたる心胆も持たない被造物、ケルベロスに勝る道理などありはしない」
 デウスエクスの侵略から人々を護るという確固たる使命を胸に抱き戦うケルベロスに対し、ただ命令されるがままに暴虐を尽くす竜牙兵。そこには決して越えられない差があるのだと、爆炎の魔力を込めた弾丸を大量に連射しながら野鳩は語る。どこか自嘲めいた響きが含まれていることは、本人以外には知る由はないけれど。
 防衛を担当する個体が倒れた事で、竜牙兵側は戦力的支柱を失ったに等しい。その結果、ケルベロス達の勢いはさらに増した。
「竜牙兵も飽きないね。もっとも、俺の目的を果たすのには、都合がいいんだけどねぇ」
 言いながら、久繁は大鎌を左右の手で2振り構える竜牙兵へと疑似的に再現した病魔を放った。
「誰かの苦しみを、お前がその身で味わうといい」
 かつて治療した病を再現し、デウスエクスを蝕み苦しめる。己の生き様を具現したかのような技であった。竜牙兵を死に追いやった苦痛が想像を絶するものであったことは、想像に難くない。
「この素晴らしい景観を、貴方達のような輩に壊されるのは好ましくありません。エイド、もう少しですから頑張りましょう」
 味方前衛陣を癒しつつ、エイドを激励するラズ。主の期待に応えようとしてか、エイドは竜牙兵に勇ましく喰らい付いた。
 そのエイドに向けられた敵後衛の剣と大鎌を用いる竜牙兵からの攻撃は、同じミミックであるスームカが庇う。
 デウスエクスの役割分担は、言い換えれば平坦な戦術であった。突出した強みが無い為に、ケルベロスを打ち破れずジリ貧でしかない。とは言え、仮にケルベロス達が統制を欠いた戦いを挑んでいたり、不適切な戦術を用いていたなら、結果は異なっていただろう。
 ケルベロスにとって最も危険な要素は行動を阻害する状態異常だが、これはラズと彩音による治療でほぼ無効化できていた。
 それに加えて、今回の戦いに協力するため駆け付けてくれた2名のケルベロスの存在もあった。
「少しでも力になれるよう、全力を尽くします……!」
 鉄塊剣を手に味方を守る姿が頼もしい玄梛・ユウマ。
 治療を手助けしてくれるリューデ・ロストワード。
 攻撃、守り、妨害、癒し。全員の戦闘行為が有機的に作用し、ケルベロスは盤石の態勢を築いていた。
「稚拙な戦術だったな。万能と凡庸は全くの別物だ。お前達はただ思考を放棄していただけの愚物に過ぎん」
 ティーシャの凍結光線に熱を奪われた大鎌2振りを有する竜牙兵は、氷と共にその身も砕け崩れた。
「ケルベロス、コロす!」
 戦局が最早覆し難いと、竜牙兵も理解しているのだろう。せめて一矢報いようとしてか、超重力を宿した刃がケルベロス前衛の中でも倒し易いと踏んだフィアールカへ向かって十字を描く。
「そうはさせねえでございます。最後の悪足掻きを邪魔された気分は、如何でございますか?」
 間に割って入り身代わりに攻撃を受けたステインは、不敵を通り越して嘲りの表情で竜牙兵を罵倒した。
「馬の骨がコラァ! 死に腐れやコラァ!!」
 お返しとばかりに打ち出した音速を超える拳が、竜牙兵の頭蓋を砕き吹き飛ばす。頭部という基盤を失った骨の身体は、バラバラに崩れた。
 敵の前衛と中衛が失われた今、戦局はおろか勝敗が決したと言って過言ではないだろう。後衛から攻撃と治癒を行っていた2体の竜牙兵に残された道は、無駄な抵抗を重ねることしかない。
 比較的軽傷であった後衛の竜牙兵達だが、ケルベロス達の猛攻に曝されてはさして耐えることも出来なかった。
「いい加減、骨折り損と学べば良いものを。……その虚ろな身と心じゃ無理か」
 敵を前に嘲りとも憐れみともつかない言葉を発する雅貴は、一見戦場には場違いなようでその実は僅かな隙を的確に突く。
「地獄狩りの目論見、その身ごと粉々にしてやる。砕け散れ」
 稲妻を帯びた超高速の刺突によって、大鎌を持ちオーラを纏った竜牙兵は脊髄部分を貫かれ、宣言通り粉々に砕け散った。
「ニンゲンからカテを、ゾウヲとキョゼツを」
 最後に残った竜牙兵も、二振りの大鎌でケルベロスから生命力を簒奪することで耐え続けたが、もう後は無い。
「憎悪? 拒絶? ふふ……そんなこと、するわけないじゃない」
 竜牙兵との間合いを詰めた遥彼は、間違いなく笑顔を浮かべていた。しかし、その表情から笑いという善い感情を覚える者は、おそらく居ないだろう。
「貴方を愛してあげる。死は終わりではないの。私の中で、きっと貴方は生き続けるわ?」
 その瞬間を視認することは出来ずとも、竜牙兵は自身が目の前の狂気の笑みを湛えたケルベロスに掻き斬られているのだと理解した。
 意識が死の闇に沈みながら、竜牙兵が抱いた感情はまさしく求めていた恐怖であった。

●紅葉狩り
 ケルベロス達が速やかかつ的確に竜牙兵に対処したことで、自然公園は最小限の被害で済んだ。
「出来れば、今日という日が悲惨な思い出にならないように」
 久繁は損傷をヒールで修復し帰路に付いたが、営業を再開し行楽客に満たされた公園内には、他のケルベロス達の姿があった。
「綺麗ね、スームカにはどんな風に感じるの?」
 公園内を独特なステップで巡るフィアールカの傍らを小さな足を動かし付いて行くスームカにも、色付き始めた木々の葉は美しく見えているのだろうか。
「やっぱ自然の空気は身に馴染むなー」
「素敵な景色ですね……。エイド……エイド?」
 のんびりと自然に囲まれた平穏な空気に浸る雅貴に同意するラズの前で、エイドが何やらちょこまかと動いている。どうやら、落葉した紅葉やどんぐりを拾い集めているようだ。
「可愛い紅葉狩りね。集まったら、私にも見せてね」
 その姿を柔らかい表情で見守る遥彼は、自家製の非常に甘いハニークッキーを口にしている。好物の甘味を味わいながら見る紅葉というのも、乙なものだ。
「やはり秋と言えばこれだな」
 そう言って月見バーガーを咀嚼するティーシャだが、季節はあまり関係なかったりする。
「もふもふが好きと聞いたので」
「別に好きじゃないけど……。まあ、可愛いんじゃないかしら」
 リューデが下宿で飼っている猫や鳥の画像を見せられ、彩音の興味は明らかに紅葉よりも画像に注がれている。
「見事な紅葉、殿方と親密になる好機……。とは申しましても、ケルベロスの男性ってだいたい彼女持ちかガード固かったりするではございませんか」
 ステインに至っては、紅葉狩りとは特に関係ない感想だか愚痴だかを呟いていた。
 ともあれ、この平穏な秋の一日をケルベロス達が守り抜いた。それが事実だ。
「……ふむ。綺麗だな」
 本当にそう自分の心が感じているのか確信できない野鳩だが、この事実が齎す穏やかな一時は、紛れも無い本物であった。

作者:流水清風 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月4日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。