ずんだずんだ!

作者:天枷由良

●布教
 夕暮れ時の廃れた倉庫。
「よいか皆の衆」
 全身をふわっふわの羽毛で包む異形――ビルシャナが、十人の信者に語りかけていた。
「人間の一生は有限。即ち、口にする食物の量も有限。なれば限りある食事、一分とて無駄には出来ぬ。余計なものを食んでいる暇はない。我々は全てを至高の一品に捧げ、命ある限り食べ続けるべきなのだ」
「ははー!」
 信者たちは頭を垂れ、教祖ビルシャナに謝意を示す。
 紛うことなき異形の姿も、教義に侵されつつある身では気にならないらしい。
「……では用意せよ。我らの、至高の一品を」
「ははっ!」
 厳かな物言いに素早く反応した信者が、何やら箱を漁る。
 そこから取り出したるは――。
「教祖様。これこそ我らが全身全霊を注ぐべき……『ずんだもち』にございます」
「うむ」
「作りたてでごさいます」
「うむ」
 仰々しく頷いて、ビルシャナは鮮やかな緑の塊を頬張った。
「……うむ、この甘さ。豆と餅の調和。やはり、ずんだは餅に絡めてこそ。これぞ生涯を捧げるに足る、我が悟りの境地である。さぁ皆も食せ。而して、ずんだもちと唱和せよ」
「ははーっ!」
 また一礼してから、信者たちも塊を口に運ぶ。
 そして唱える。
 ずんだもち。ずんだもち。ずんだもち。ずんだ、ずんだ、ずんずんずんだ……。
「宜しい。なお篤く敬え。さすれば皆々悟りの境地に至り、濁世に遍く一切衆生は等しく救済されるであろう。ずんだもちによって、な」
 もっちゃもっちゃと口を動かしながら、ビルシャナのありがたいお話は続く。

●ヘリポートにて
「悟りを開いてビルシャナとなった人が、自身の信者を集めているわ」
 ミィル・ケントニス(採録羊のヘリオライダー・en0134)は少し困惑した様子で、ケルベロスたちを見回す。
「ビルシャナの布教活動は頻発しているけれど、これまでと少し違うのは、件のビルシャナが元は別の――『六道衆・餓鬼道』と呼ばれるビルシャナの信者であった、というところね。餓鬼道は『生きることは食す事、命ある限り思う侭に喰らうが正しい在り方』との教義を広めているらしいわ」
 そのため、今回の事件を起こすビルシャナは餓鬼道の教義をベースとした『命ある限り、ずんだもちを食い続けろ』との題目を掲げている。
「とんでもない話だけれど、ビルシャナにかかれば凄まじい説得力を持ってしまう。既に影響を受けて信者になっている人がいるようだから、彼らをインパクトのある主張で正気に戻してから、ビルシャナを撃破してくれるかしら」
 布教は廃れた倉庫で行われており、ビルシャナは十名の信者に囲われてずんだもちを食べ続けている。
 その様子は極めて幸福そうで、ずんだもちが全員の大好物であることは疑う余地もない。ずんだもちを貶めるような主張では、信者も目覚めてくれないだろう。
「気になるのは、ビルシャナの『ずんだは餅に絡めてこそ』という部分ね。確かに有名なのはお餅かもしれないけれど、ずんだ料理は他にもたくさんあるじゃない。その辺りを信者の皆さんに猛アピールして――それこそ、目の前で作って食べたり食べさせたりすれば、ずんだもちしか食べれない教義なんて、きっと投げ捨ててくれると思うわ」
 そうして正気に戻ったなら、後は散り散りに逃げるだろうから放っておけばよい。
 しかし万が一、解放できなかった信者がいた場合。彼らはサーヴァントのようにビルシャナを守って、ケルベロスの攻撃を阻んでくる。ビルシャナ自身は後衛から狙い定めて攻撃するようなので、非常に面倒な状況となるだろう。
「最終的にビルシャナが撃破できていれば、作戦は成功になるけれど……できる限り、全員の解放を目指してほしいわ」
 頑張ってちょうだいねと、ミィルは説明を締めくくった。


参加者
フィオリナ・ブレイブハート(インフェルノガーディアン・e00077)
瀧尾・千紘(唐紅の不忍狐・e03044)
シィ・ブラントネール(絢爛たるゾハルコテヴ・e03575)
浅葱・ミク(クルーズナビゲーター・e16834)
リリー・デザイア(耽美なりし幻像・e27385)
ヒメル・カルミンロート(セブンスヘブン・e33233)
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)

■リプレイ

●突入
「お餅わけてくださいなー♪」
 廃倉庫の入り口から、瀧尾・千紘(唐紅の不忍狐・e03044)の朗らかな声が響く。
「な、なんだ貴様ら!?」
「あぁ! そんなに身構えないでください。なにやら風のたよりに、ずんだ餅愛好家の集いがあると聞いて駆けつけましたの」
 千紘もずんだ餅大好きなんです♪ と、少しばかり媚を売るような仕草で語れば、緑の塊を貪り続けているビルシャナたちは簡単に警戒を解いた。
「教祖様、どうやら入信希望者ですぞ!」
「うむ。ずんだ餅を崇め奉るなら拒む理由なし。さぁ食せ。命ある限り食せ」
「わぁ、よろしいんですの?」
 では早速と、生来の人懐っこさを頼りに距離を縮めていく千紘。
 しかし、餅には手を伸ばさず。
「とっても美味しそうなずんだ。私もこのお餅のように、ずんだに包まれたい。そしてずんだにも、包まれる喜びを感じさせたい……」
 うっとりとした目で語り続けて、取り出したるは。
「――はい。焼きたてのふわふわで包みました、ずんだあんぱんですわ♪」
「なん、ですと……?」
 暖まりかけていた空気が、にわかに凍りつく。
「……異教徒か? 異教徒なのか? 寂滅するか?」
「違うわ! ワタシたちは――!」
 懐疑の視線を向ける信者たちに、シィ・ブラントネール(絢爛たるゾハルコテヴ・e03575)と、ヴディアウルガゥア・ゲヴゥルタリバェル(悪魔的な何か・e33997)が勢いよく進み出た。
 その傍らには執事然としたシャーマンズゴーストのレトラと、いつの間にやら用意された椅子やらテーブルやら食器やら調理器具やら。
「ワタシたちはずんだの更なる可能性を伝える……そう! ずんだ愛の伝道師よ!」
 ヴディアウルガゥアと腕組み、踊りだしそうな調子で言い放たれたシィの台詞が、おんぼろ倉庫で反響を繰り返す。
 信者たちは呆然と佇むしかなく。今のうちにと説得材料を拵え始めた仲間たちを、リリー・デザイア(耽美なりし幻像・e27385)は椅子に腰掛けてのんびり待つことにした。

●調理
 ずんだの作り方は難しくない。
 基本的には枝豆を茹でて、さやから取り出し、薄皮を取り払って潰すだけ。
「ただ、この工程がちょっと面倒なんだよね。ずんだ餅は美味しいけど」
 ぼやきつつ、瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)は枝豆を一つ摘んで指先に力を込める。
 にゅるん、と薄皮が剥けて、豆がすり鉢の中に落ちた。
「でも出来合いは邪道だからね」
 仕方ないね。一言呟くたび、増えていく豆。
 あまりにも単調な作業。そのうち右院は、近頃足繁く観覧に通った舞台を回想し始めた。
 それは奇しくも、ずんだに関わり深い伊達政宗を題材の一部としたもの。
「おかげでずんだ餅の作り方まで覚えちゃって……そんなのより関が原の戦いの正しい段取りでも覚えたほうがテストでいい点取れるのに、なんて思ってたんだけど」
 大凡、そうした知識は意図しないところで役立ったりするものだ。うんうんと頷き、右院はひたすら豆を剥く。
 その隣で。
「……なぜ焦げる」
 フィオリナ・ブレイブハート(インフェルノガーディアン・e00077)がウイングキャットのスクーナーと顔を並べて、炭化した何かと睨み合っていた。
 そばにあるのはパンの袋。どうやらトーストを作ろうとしていたらしい。
「ただ焼くだけだろう。……ただ焼くだけのはずだ」
 深紅の眼差しは真剣そのものだったが、唸ったところで解決の見通しは立たず。
 フィオリナは早々に単独作業を諦め、見知った顔に助けを求めた。
 応じて来るのは、テレビウムのぷろでゅーさーを連れた浅葱・ミク(クルーズナビゲーター・e16834)。鮮やかな緑色がたっぷり入ったボウルを手にしていたミクは、自身の調理と並行して、フィオリナの補助もテキパキとこなす。
「――はっ!」
 さすがにこの辺りで、信者にも色々と察する者が出た。
「や、やはり異教徒だったな!? 何をするつもがぁっ」
「はーい。我慢のできない悪い子はこちらに」
 声を荒らげる一人の信者(男)を捕まえて、千紘はマントを被る。
 可愛らしい娘子とまさかの急接近に赤面する信者(男)。そのあんぐりと開いた口目掛けて、千切ったずんだあんぱんを突き出す千紘。
「な、ななな」
「大丈夫。誰も見ていませんよ、誰にも見えていませんよ。はい、あーん♪」
「あ、ぐ……す、据え膳食わぬは男の恥……」
 信仰心は容易く投げ捨てられ、信者(男)はパンを頬張った。
「……ふわふわじゃあ……」
「美味しいですよね? だけど食べ物は、他と比べられるから美味しいと感じられるのです」
 ずんだ餅だけを食べ続けていれば、いずれ美味しいと思う気持ちも忘れてしまう。そうなればいずれ。
「あのように哀れな、哀れなビルシャナとなってしまうのです!」
 力説する千紘。
 信者(男)は夢見心地な表情で聞き入り、それからもう一口あんぱんをねだり。
 口に入れてもらうと満足して、早くも倉庫から去っていった。
「……あら、ちょろいもんね!」
 一連の光景をつぶさに見ていたヒメル・カルミンロート(セブンスヘブン・e33233)が、既に完全勝利を確信した様子で笑う。
 しかし彼女の前に、ずんだはない。あるのはトマトソースにチーズ、それから卵に牛乳、バターなどなど。
 それらを溶かしたり伸ばしたり混ぜたり固めたりと、一心不乱に調理するヒメル。
 一方。
「さぁ、美味しく茹で上がるのよ!」
 此方は大鍋を前にして飛んだり跳ねたり、レトラを連れて踊ったりと忙しないシィ。
 鍋の中では彼女の動きを再現するように大量のパスタが泳ぎ回る。それを一本すくい上げて口に運べば、シィは星をぶち込んだみたいに両目を輝かせて、ヴディアウルガゥアに熱い眼差しを送った。
 それを合図にヴディアウルガゥアが持ち上げたフライパンには、少し黄味がかった緑の、とろみがついたソース。
「これって愛の共同作業よね!」
「そうだな」
 恥ずかしげもない台詞に恥ずかしげもない態度が返り、シィはきゃっきゃと騒ぎながらざるを上げ、湯切りした麺を恋人の手に託すのだった。

●実食
 それから程なく。
 レトラが最後のカップに紅茶を注ぎ終えて、食卓は完成に至った。
「なんということだ……」
 ずんだが餅以外に利用されている地獄絵図を眺め、思わず呟く信者。
 その前にフィオリナが両腕を突き出す。
「まずはこの辺りからどうだ」
 二枚の皿上には、クリームチーズとずんだ餡を乗せたクラッカーと、同じくずんだ餡を塗り広げたバタートースト。
「朝食やティータイムにどうだろうか。これなら誰でも作ることができるだろう?」
「誰でも……?」
 信者は首を傾げる。はて、調理(の大部分)に手伝いを要していたのは、何処の誰だったか。
「……そもそもこれ、調理工程なんてあってないもがぁっ」
「はーい。空気のよめない悪い子はこちらに」
 異を唱える信者がマントで覆われ、物陰まで拉致されていく。
 助けにいくべきか。逡巡できたのはほんの僅かな間で、残された信者たちはすぐさま眼前の危機に向き合わされた。
「食べないのか? ……ずんだ餅もいいが、これなら身近なもので手軽にずんだを味わえると思うのだが」
 誰も食べないのなら仕方がない。フィオリナは椅子に腰を下ろすと、クラッカーを口に運ぶ。
 そしてまだ湯気立ちのぼるカップを手に。アフタヌーンティーというには些か遅すぎる時間帯だが、何処か気品を感じさせるフィオリナの所作は暫し、信者たちの目を引いた。
「気になるのでしたら、どうぞ召し上がって下さいね!」
 ミクも呼びかけ、ずずいとグラスを突きつける。
「これは……」
「ずんだシェイクです! ずんだが餅だけなんて、あまりにも視野が狭いです! ずんだの可能性はもっともっと広いのです!」
 これもびっくりするぐらい美味しいですよ、と熱心に語るミク。
 しかし語り聞かせたところで食指が動くわけもなく。埒もあかないので、適当な一人に照準を合わせて飲み干させる。
 トドメは満面のミク☆スマイルと、丁寧なレシピ解説。
「作り方は簡単、冷凍枝豆と牛乳とバニラアイスを混ぜてミキサーにかけるだけ! お好みでホイップクリームをトッピング♪」
「わぁ、でもさっぱりして意外と飲みやすい! これは忙しい朝でも作れちゃいますね!」
 一気飲みでおかしくなったか、信者はテレビコマーシャルみたいなリアクションを見せてから明後日の方向に走り去っていった。
「はい次の方どうぞ~」
「やめろ! 我が信者たちを悪道に陥れるな!」
 ビルシャナがばっさばっさと羽を振り乱して抗議するが、ミクも他のケルベロスたちも一切聞く耳は持たず。
「早くもメインディッシュよ!」
 声高に叫ぶシィと、ヴディアウルガゥアが見せつけるのは、なんともお洒落に盛り付けられたずんだクリームパスタ。
「お餅と違って喉に詰まったりしないお年寄りにも優しいずんだスパゲティ! オレンジピールも加えた可愛い彩りで、撮りたがり写りたがり見せたがりのSNSから離れられない若者需要にも対応! もちろん味も一流の一品よ!」
「枝豆も添えて、見た目を綺麗に。ソースはずんだの優しい味を生かすために甘すぎないようにしてある。糖質の多いずんだ餅と違い、腹持ちもいいからダイエットにも良いだろう。自信を持ってお勧めさせてもらう」
 どうだと言わんばかりのヴディアウルガゥアに、シィから黄色い声があがる。
 食べる前から胃もたれしそうな状況に信者も辟易しきりだったが、そこで棒立ちになる彼らを悪魔の囁きが襲った。
「……例えば、転んでうっかり口にしてしまう、とか。たまたま手を前後に動かしたらば、何かが引っかかって口に入る事故が起きてしまう、とか」
 そんなことあるか! と、反論しようとした矢先、物陰に連れ込まれていた信者が「もうお婿にいけない!」と両手で顔を覆いながら逃げ出していく。
「貴様、何をした!」
「何って、揚げたてカリカリのずんだカレーパンを食べさせてあげただけですわ」
 素知らぬ顔でマントを翻し、舞い戻ってきた千紘は囁き続ける。
「不慮の事故なら仕方ありません……ずんだ様もきっと許して下さいます……さぁ、うっかりしてしまうのです……」
 その妖しげな声に、残る七人の信者たちは互いを見合い、頷き。
 そして不慮の事故を起こし始めた。
 ある者はクラッカーの山に顔をつっこみ、ある者はわざとらしくひっくり返した皿からトーストを頬張り、ある者は口でこそ嫌よ嫌よと言いながら、どう見ても自分の意志でパスタを啜る。
「やっぱりちょろかったわね! でもずんだだけにこだわるのはもったいない!」
 こっちもいかがかしらと、ヒメルが広げたのはピザ風の餅と、まさかの餅ケーキ。
「ずんだと餅が合うのは、餅が組み合わせ次第で何にでも化ける万能選手だからよ!」
 それそのものが自分の手柄であるように胸を張って、ヒメルは「食べたかったら食べてもいいわ」と言わんばかりの大威張り。
 信者は食べたかったので食べた。数分前までずんだ餅ばかりを貪り続けていた口に、トマトソースは強烈過ぎた。
 三人ほどが口の周りを真っ赤に染めながら逃げ去っていった。勿論赤色はトマトの赤である。
「……そろそろ食後のデザートはどうだろう」
 消え行く背中を見送って、右院がおもむろに大きなグラスを取り出した。
 それは底から口に向かって急激に広がっている。
「うん。これだけで実に美しく特別感に溢れているよ」
 しげしげとグラスを眺めて、右院は言う。
 あ、これパフェだ。
 容器の形から信者たちにもそこまでの想像はついたであろうが、そこまでしか想像はできなかっただろう。
「まずはコーンフレークを入れます。それからクリームチーズ&豆腐で作ったペーストで下の層を作って――」
 この辺で信者がずんだを噴いた。脳みそが緑色の彼らに、豆腐ペーストなんて存在はもはやデウスエクスみたいなものだ。きっと。
「さらにみつ豆や寒天、白玉を乗せて……ここで、主役のずんだが登場! 氷と土と雪の色だった世界に芽吹きの緑が降臨!」
 よかった。ずんだ入れるんだ。誰とはなしに、そんな感じの安堵が漏れた。
「あとはお好みでホイップやら黒蜜や蜂蜜をかけて……完成! 作り置き出来る材料でパパッと出来る最強の朝食です。これもSNS映えするよ~」
 もう正気に戻っている雰囲気の女性が一人、早速スマートフォンを取り出して撮影を始めた。
 パフェより自分の顔がメインの被写体になっていそうな角度だったが、満足気に倉庫を後にするところへ野暮は言うまい。
「あとは……ずんだロールケーキなんてものもありますよ!」
 生クリームに砂糖とずんだを混ぜて作ったクリームを、市販のシートスポンジに満遍なく塗って巻くだけ!
 またも簡潔明瞭な解説を添えたミクから皿を受け取って、フィオリナが自分の作ったずんだトーストも一緒に運んでいく。
「真に『ずんだ』を愛するなら、どんな料理にも『ずんだ』を使うくらいの本気度が必要ではないだろうか」
 なんとも堅物じみた説得だが、反論できる余地もなし。
 残る三人のうち、一人がケーキ&トーストを食い尽くす。
「真にずんだを愛するなら、どんなずんだでも腹に収めるくらいの度量が必要ではないだろうか」
「よく言った。そしてよく食べた。お前こそ真のずんだ愛を持つものだ」
 フィオリナが信者の肩を叩く。それで納得したらしく、真のずんだ愛に目覚めた元信者は夕日に向かっていった。
「……さて、これまでの皆の話でわかってもらえたかしら?」
 すごく勿体ぶった仕草で信者の前に出て、ヒメルが語る。
「ずんだと餅、共に無限の可能性を秘めているのよ。それを一つの組み合わせにこだわり、新たな可能性に目を瞑るのはただ死を待つのと変わらないわ! ハズレはハズレでそれもまた一つの真理。無駄な事なんて何もない。人の一生は有限だからこそ、命ある限り更なる至高を求めていくべきなのよ!」
「……ずんだ餅だけを食べ続けるのは至高でなく、むしろ高みに上ることを諦めた愚行と……」
 なんだかとても良いこと言われた気がしたのか、信者の一人がピザ餅を手に取り、彼方に消えていく。
「く、くそ……教祖様! 私は裏切りません! 私は――」
「あのさぁ」
 ずっと様子を伺うばかりだったリリーが、最後の信者に向けて言う。
「そもそもずんだ自体が微妙じゃない。塩茹でしなさいよ」
「な……なんだと!」
 激高する信者。リリーはリリーで「分からず屋には多少の痛い目見てもらいましょうか」と、やる気を見せてしまっている。
 手加減するつもりとも口にしているが、そんな準備ができているようにも見えない。
 咄嗟に右院が竿竹で打って、外に運んでいった。

●その後
 信者を失ったビルシャナは、抵抗むなしく倒された。
 残った料理はケルベロスで美味しくいただきました。

作者:天枷由良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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