鎌倉ハロウィンパーティー~お砂糖とスパイスと

作者:長針

「はあ……」
 暗い部屋の中で、少女は溜め息をつきながら手の中にあるお菓子の包みを見つめた。
 カーテンを閉めてもちらつく明かりと賑やかな声が痛い。誰も彼も楽しそうにしているのに、自分だけがそこにいない。
 一緒に行こう。
 ただその一言が口にできなくて何度も後悔している。今日だけでなく、ずっと。
「今日はお祭りね。それも、とびっきりの」
「だ、誰っ?」
 突然聞こえた楽しそうな声に、少女が顔を上げる。
「こんばんは。今日はいい夜ね。とっても」
 赤い頭巾を被った女の子がにっこりと笑っていた。
「あ、あなたは……?」
「私は貴女の夢を叶えるために来たの」
「私の、夢?」
「そう。みんなの輪の中に入りたい。みんなと一緒にいたい。そんな、ささやかだけどとっても素敵な夢。それを私が叶えてあげるーーこんな風に」
 少女の胸にするりと大きな鍵が差し込まれる。
「えっ……?」
 くすりと笑う声とともに鍵が回され、
「さあ、楽しいお祭りの始まりよ」
 暗い部屋の中で、とんがり帽子と黒いマントを身に纏ったモザイクの魔女がふわりと舞い上がった。

「みんな、聞いて欲しいのです! 藤咲・うるる(サニーガール・e00086)ちゃんから聞いた話なんですけど、ドリームイーターたちが日本のいろんなところでよくないことを起こそうって考えてるみたいです!」
 皆が到着するやいなや、ねむは興奮気味に話を切り出した。
「どうもこのドリームイーターは、ハロウィンに引け目を感じている人たちの暗い心から生み出されたようなのです! ドリームイーターたちは世界で一番盛り上がる鎌倉のハロウィンパーティーに現れるみたいなのです! みんなにはパーティーが始まる前に、このハロウィンドリームイーターをどうにかして欲しいのです!」
 わたわたと手をばたつかせながらねむが説明を続ける。
「ハロウィンドリームイーターはハロウィンパーティーが始まると同時に現れるですよ! だから、パーティーの時間よりも前にパーティーが始まったみたいに楽しくしてたらハロウィンドリームイーターもお誘いに乗ってくるはずなのです!」
 ぐっと胸の前で拳を握りながら、ねむが身を乗り出す。いつもに増して熱が入っている。それだけハロウィンを楽しみにしているのだろう。
「次にハロウィンドリームイーターのグラビティについて説明するです! ハロウィンドリームイーターはモザイクをおっきな口に変えてこっちの武器を使えなくしたり、モザイクを飛ばして悪い夢を見せてきたり、モザイクを使って自分の傷を治したりするみたいなのです! こっちを悪い状態にする攻撃が多いからその辺に注意して下さいです!」
 ふうっと一息ついてからねむが自分の額をぬぐう。
「ドリームイーターをやっつけて、みんなでハロウィンを楽しめるようにお願いするです! ねむもお菓子を焼いて待っているですよ! だから、みんな無事に帰ってきて下さいです!」
 そう言って、ねむはぴょんぴょんと飛び跳ねながら大きく手を振って皆を見送った。


参加者
リーディス・アングレカム(在りし日の幻奏・e00142)
メラン・ナツバヤシ(幼き女王蜂・e00271)
神薙・焔(ガトリングガンブラスター・e00663)
ラミン・ナツバヤシ(ナツバヤシ家長女・e00842)
アリスメア・ノート(は近日公開予定です・e01284)
エル・ベルフォニカ(銀の鈴・e02500)
館花・詩月(咲杜の巫女・e03451)
尾中・水香(レプリカントのグルメ・e04981)

■リプレイ

●いたずらとお菓子は
 月明かりの下で、その宴は開かれていた。
 白い布がかけられた幾つものテーブルの上に並ぶカボチャを使った料理やお菓子。空間を区切る幕には様々な飾りがつけられ、カボチャのランタンが辺りを照らしている。  
「お待たせしました、お嬢様ーーこんな感じでいいかな?」
 黒い猫の耳に燕尾服といった執事姿のリーディス・アングレカム(在りし日の幻奏・e00142)がオバケ型のクッキーと南瓜のマフィンを乗せた皿をテーブルに置く。
「うむ、苦しゅうない。わっちは満足でありんす。皆も喜ぶじゃろうて」
 恭しく一礼するリーディスに、口調をころころ変えながら応じたのは、アリスメア・ノート(は近日公開予定です・e01284)だ。黒い羽としっぽといういかにも悪魔らしい装いの所々に、オバケやカボチャの形をしたアクセサリーが揺れていた。
 今日は楽しいハロウィン。ここに集まった皆も好きな姿に仮装し、宴を楽しんでいる。 
「ら、ラミン姉様、は、恥ずかしいわ」
 金色のハサミをテーブルに置き、血のりの包帯に検査服といった、病院に出てくる幽霊少女のような装いのメラン・ナツバヤシ(幼き女王蜂・e00271)が戸惑いの声を上げる。
「ダメよ、メラン。今あなたは患者さんなんだから。いい子にしてなきゃ、お注射しちゃうわよ?」
 メランにジャック・オー・ランタンをかたどったカップケーキを差し出しながら、やけにセクシーなナース姿のラミン・ナツバヤシ(ナツバヤシ家長女・e00842)が微笑んだ。
「うう……あ、あーん」
 恥ずかしそうにしながらもメランがケーキを口に入れる。
「どう? おいしい?」
「うん……おいしい」
 姉の言葉に、妹が顔を紅くしながら頷く。
「ふふふ、メランが一生懸命つくったものね。それじゃあ、私もいただこうかしら」
 ラミンはメランの頭を撫で、自らもケーキを口にした。
「皆さん、仮装がとても似合ってらっしゃいます。プリンおいしいです。あ、春巻きのおかわりを所望します」
 半眼で周りのテーブルを見回しながら、皿を差し出したのは尾中・水香(レプリカントのグルメ・e04981)だった。黒髪のウィッグに白装束という雪女の姿で次々に料理を平らげていく姿はなかなか壮観である。
「あ、わたくしもかぼちゃプリンをいただきたいですわ」
 水香と同じく料理に舌鼓を打っていたエル・ベルフォニカ(銀の鈴・e02500)がすっと手を挙げる。こちらは赤ずきんの仮装で、横に置いた籠には色とりどりのアメ玉が詰め込まれていた。
「君たちは本当によく食べるな。まあ、僕も気合いを入れて作ってきた甲斐はあるけどね」
 二人に呆れつつも、ぐるぐる巻きのミイラの仮装をした館花・詩月(咲杜の巫女・e03451)が 口元をかすかに綻ばせながら料理を持ってくる。水香とエルは行儀良く手を合わせ、料理に取りかかった。
「パンプキンパイにかぼちゃのマフィン、クッキーにプリン……どれも美味しそうで目移りしちゃうわ、どれからやっつけようかしら……でも、その前にやっつけないといけない相手が来たようね」
 一人だけ席につかず、あちこちのテーブルを回っていた神薙・焔(ガトリングガンブラスター・e00663)が、手近にあったクッキーをひょいと摘みながら肩を竦める。
「――――!」
 とんがり帽子と黒いマントを身につけ、大きな鍵に乗ったモザイクの魔女がふわりと舞い降りる。それと同時に、
「トリック・オア・トリート!!」
 皆は一斉に決まり文句を叫んだ。

●ハロウィンと夜は
 モザイクの魔女が現れた瞬間、幾つもの紙片が宙を舞った。月明かりに照らされた紙片は紙吹雪のようにパーティ会場を彩る。
「ようこそ、パーティーへ。君も月明かりに誘われたのか?」
 静謐に告げた詩月の足下で、今度は地面に描かれた星座が光り、皆を包み込んだ。その傍らでリーディスが大きな棒付きキャンディのように飾り付けたロッドをくるりと回し、籠に入っていたリンゴ味のアメ玉を魔女へと放り投げた。
「ねぇ一緒に君もお祭り楽しもうよ……あ、でも。お菓子があってもイタズラ、だけどね?」
「……?」
 魔女がアメ玉を受け取る。
 それが始まりの合図だった。
「もっとも、あなたはお菓子なんてもってなさそうね。でも、あなたのために用意したパーティだから存分に楽しんで行ってね!」
 騎士姿の焔がテーブルから取り出したガトリングガンをモザイクの魔女へと突きつける。
 騎士鎧の下で地獄の炎がランタンの灯りのように揺れ、
「Was gleicht wohl auf Erden dem Jaegervergnuegen?」
「――――!?」
 ありったけの弾丸が魔女へと撃ち込まれた。保身なきゼロ距離射撃は、跳弾と反動によって焔の鎧に張られた銀紙を吹き飛ばし、それ以上に魔女の身体を激しく食い破る。魔女はたまらず退避し、宙で急転。反撃に出ようとしたが、
「ロキ、今よ!」
「テレちゃん、出番デスよ~!」
 主人の合図に、デコレーションされたプレゼント箱から二体のサーヴァントがびっくり箱のように飛び出す。
「キュー!」
「Pi~!」
「!?」
 ミイラのように包帯を巻いたロキと、画面を激しく光らせたテレちゃんの攻撃に魔女が出鼻を挫かれる。
「メラン、行くわよ」
「はい、お姉さま!」
 同時に頷くと、メランは空高く飛翔し、ラミンは身体に艶めかしく絡みついた黒い粘体を蠢かせた。
「あなたに星が受け止められるかしら? 覚悟しなさい!」
「ブラックスライムちゃん、あの子を丸飲みにしちゃいなさい!」
 彗星のようなメランの蹴りと、ラミンの黒い粘体が魔女に容赦なく襲いかかる。
「――!!」
 強烈な蹴りによって叩き落とされ、黒い粘体が魔女の身体を拘束した。
 魔女が力なく地面に横たわる。だが、それも一瞬、
「――――!!」
 魔女は全身のモザイクを組み替え、拘束を脱し、再び宙へ。一同へとモザイクを飛ばす。
「よろしくおねがいしまあぁぁぁぁあす!!」
 テーブルクロスの下に隠れながら、アリスメアが仮想キーボードの上で激しく指を躍らせ、皆の前にモニターが浮かび上がる。そして、凄まじい早さでモニターに入力されていく文字列はモザイクから有害な情報を取り除き、霧散させた。
「――――。――――!!」
 首を傾げながらも魔女はモザイクを大きな口に変え、解き放った。狼のように口を開けたモザイクは赤ずきん姿のエルに襲いかかるが、
「TRICK or TREAT!!」
「ピィ!!」 
 やけにいい発音の決まり文句とともに、エルのフードの下から相棒のポムが現れる。瞬間、光が放たれ、モザイクを阻む。
「さあさ、いらっしゃいませ。ぶっとばして差し上げましょう」 
 それまでブレスレットに偽装されていた攻性植物が、一輪の白椿を綻ばせながら魔女の身体を絡め取る。
「!?」
 再び拘束された魔女は脱出を試みるが、
「私は雪女……お菓子をくれない人は凍死させたり食い殺したりします……食らいなさい、フロストレー……吹雪攻撃ー」 
 雪女に扮した水香が怪しい台詞を口にしながら、冷凍光線を放ち、魔女を氷漬けにした。
 魔女は動かず、活動を停止したように見えた。
 だが、
「――――!!」
 魔女の身体が激しく明滅し、拘束も氷も全て吹き飛ばした。 
 全身から不気味なオーラを迸らせ、モザイクの魔女が一同を見下ろす。
「……本番はこれから、ですか」
「いいでしょう、まだ腹八分目にもほど遠いですから」
 エルと水香が魔女を見上げ、他の皆も改めて身構える。
 パーティはまだ始まったばかりだった。

●パーティと魔女は 
「ひょおおおおお! マジでドS! でも、そこがたまらん!」
 ハイテンションで仮想キーボードの鍵を打ち込みながら、アリスメアは飛んできたモザイクに向かって何本もの鎖を突き刺し、次々とクラックしていく。しかし、それでもモザイクは流星雨のように降り注いできた。
 何とか攻撃の隙間を縫って、一同は反撃を行うが、
「!!」
 魔女はすぐさまモザイクを組み替え、回復してしまった。  
「これは厄介だね……こうも攻撃が激しいと反撃もろくに出来ない。その上、あれだけ回復されるとね」
「そうですね、わたくしが相手を妨害いたします。皆さんはそこを一気に畳みかけてください」
 油断なく魔女に視線を向けるリーディスに、エルが頷き、前に出た。
「了解したよ。アリスメアさん、もう少し頑張れるかな?」
「味方までドSぅぅぅぅ! でも、頑張る! オレ、頑張っちゃうもんね!!」
 リーディスの穏やかかつ厳しい言葉に、アリスメアが指の動きを加速させる。更に増加した鎖はモザイクの弾幕を僅かにこじ開け、
「私が道を開くわ!」
 その隙に、メランが自らの身をさらしながら魔女へと近づく。
「――――!」
 不穏な気配を感じた魔女がモザイクを大きな口に変え、解き放つ。
「イタズラはもう終らえよう。みんなの笑顔のためにもね」
 リーディスが穏やかに微笑むと、光の幕がメランの身体を包み込んだ。そして、最後の一歩を踏み出す。
 月明かりによって出来たメランの影が魔女の身体と重なった。
「これで、影がさしたわね……慈悲など無いわ、絶望と共に深淵の闇に堕ちなさい!」
 メランの言葉とともに、差した影から無数の漆黒の針が飛び出し、魔女の身体を無慈悲に刺し貫く。
「――! ――!?」。
「ありがとうございます、皆さん。ーー行きます」
 メランの背後からエルが飛び出し、精神を具現化した剣で悲鳴を上げる魔女の身体を切り裂く。
「!?」
 精神に作用する一撃に、魔女が動きを乱した。モザイクはあらぬ方向に飛び、弾幕が途切れた。そこへすかさず魔女へと水香が接近する。
「誰にも邪魔されず、自由で、救われてないといけないんです。何が言いたいかというと、よくも食事の邪魔をしてくれましたね」
 雪女の姿をした水香が相手の腕を絡め取り、高速で演算を開始。最も効率的な方法を算出し、
「……!!」
 がきん、と関節を極めた。そのまま魔女は身動きがとれなくなる。
「ほら、じっとしてて。お注射してあげるから。ちょっと痛いかもしれないけどね」
 ラミンが投擲した注射器が魔女の身体に刺さり、中身が注入される。遅れて魔女が身体のモザイクを組み替えるが、
「!?」
 傷は不完全にしか治らず、ラミンがにっこりと微笑みかけた。
「癒しを邪魔させってもらっちゃった。これであなたのモザイクは使い物にならないわ。後はお願い!」
「――、……!!」
 危険を察知した魔女が空へと逃れようとした、その時。
 張り詰めた糸を鳴らす音が、空高く響いた。詩月だ。彼女は幾度も弓の弦を鳴らし、口を開いた。
「月の元にて奏上す。我は鋼、祝いで詩を覚えし一塊なり。なれど我が心はさにあらず。許し給え。我が心のままに敵を打ち砕かんとする事を」
 朗々と詠じられた詩が終わりを結び、
「!?」
 一際高く響いた弦の音とともに、不可視の一撃が魔女の魂魄を射抜いた。魔女はなんとか宙へと留まるが、そこへ颯爽と赤毛の騎士が駆けつけた。
「まさか、あたしが本当に騎士の真似事するなんてね。まあ、いいわ。なんと言っても今日は――」
 焔が疾走しながら剣を抜き放つ。星の重力を乗せて振りかざし、
「ハロウィンだからね!」
 高らかに叫びながら、魔女を斬り伏せた。
 
●女の子とお菓子は
 魔女が地面へ墜落すると、モザイクの身体が砂糖菓子のように崩れていった。
 その下から何かが出てくる。
「なんだ、ちゃんとお菓子お持ってたのね。いたずらしちゃったじゃない」
 苦笑しながら焔が拾い上げたのは、可愛らしい魔女のぬいぐるみと、ラッピングされたお菓子の包みだった。
 包みを開けると、甘い、それでいて僅かに刺激的な香りがふわりと広がる。
「ふむ、いい香りですね。スパイスクッキーですか」
「多分、手作りね。ぬいぐるみの方も。今日のために女の子が作ってたものかしら?」
 鼻をひくつかせる水香と、小首を傾げるラミン。 
「恐らくは。よほどハロウィンに参加したかったんだろうね。でも、できなくって……」
 リーディスが少し悲しそうにぬいぐるみを見つめる。
「どれどれ……うん、おいしい。でも、ちょっとスパイスが強いかな」
「そうですね。少し、辛いですわ」
 アリスメアとエルがクッキーを食べながら遠くを見つめた。
「あたしもいただくわ。運動したらお腹が減ったしね」
「私も所望します。戦闘は非常にエネルギーを食うので。食べなければやってられません」
「君たち、さっきもあんなに食べてたのに、まだ食べるのか……」
 次々にクッキーへと手を伸ばしていく焔と水香に、詩月が感心した視線を向ける。
「女の子にはお菓子が入るベツバラがあるのよ。問題ないわ」
「さっきもだいたいお菓子を食べていたような気がするけど……いや、いいんだけどね」
 大きな胸を張って主張する焔に、詩月が観念したように肩を竦める。 
 そんな二人のやりとりに、誰ともなく笑い声がこぼれた。
 そして、ひとしきり笑うと、、
「ああ、そうだ。予知によると家もここから近いようだし、これを作った子も誘ってみるのはどうかな?」
「いいですね。こんな素敵なクッキーを作る方なら是非とも参加してもらいましょう」
 リーディスが提案し、水香がクッキーをかじりながらいち早く賛同した。
「それならこのクッキーに合う紅茶も新しく用意しないとね。メラン、手伝ってくれる?」
「はい、もちろん! お姉様!」
 ぽんと手を合わせるラミンに、メランが顔を輝かせて頷く。
「ついでに、この辺の人たちみんな誘っちゃえば~? どうせなら人が多い方が面白いし~」
「そうですね、それは名案です」
 アリスメアの新たな提案に、エルも同意する。 
「皆さん、ありがとう。……これを作った子も喜んでくれるかな?」
 リーディスが頭を下げ、僅かに心配そうな視線を魔女のぬいぐるみに向けた。
「大丈夫。ヒトはきっかけがあれば誰でも素敵になれます。今宵はハロウィンですし、何より――」
 エルがお菓子の包みを愛おしそうに見つめ、
「女の子とお菓子は、お砂糖とスパイスと、素敵な何かで出来ていますから。素敵になれないわけがありませんわ」
 花が綻ぶように微笑んだ。
「そうね。それじゃあ皆を迎えに行きましょうか。あ、ねむさんからもクッキーもらってこないとね」
 焔が促し、皆がお菓子を手に歩き始めた。そこへ詩月も続こうとしたが、ふとテーブルに置かれたグラスが目に入る。
 詩月は吸い寄せられるようにグラスを手に取り、
「綺麗な月と楽しいハロウィンに、乾杯」
 月明かりに捧げるように静かに掲げた後、皆の列に加わった。
 楽しげな喧噪は人々を巻き込み、段々と大きくなっていく。
 ハロウィンの夜は、まだまだ終わりそうになかった。

作者:長針 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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