松茸狩りが松茸に喰われる

作者:青葉桂都

●青い空の下
 その日、9月の空は青く澄み渡っていた。
 1人の男性が、街からさほど離れていない山を訪れていた。
 厚手の生地で作られた服に身を包み、リュックを背負った30代半ばの男だ。
「今年も松茸が見つかるかなあ」
 赤松の林で、彼は注意深く木々の根本を観察しながら進んでいく。
「去年は竹夫も喜んでくれたし、今年もがんばって見つけないとな」
 ポケットから携帯電話を取り出した。
 待受画面には、まだ小学生であろう少年と、男と同年代の女性が写っている。
 携帯電話をしまって、彼はまた歩き出した。
 しばし後、彼は大きな木の根本にかがみこむ。
 どうやら、目当てのものを見つけたようだった。
 慎重に松茸を掘り出そうとする男は、謎の花粉がそれに降り注いだことにはまったく気づかない。
「うわあああ!」
 数秒の後、彼の悲鳴が山に響き渡った。
 そして、人よりも遥かに巨大なサイズとなった松茸が、軽く跳ねながら山中を動き出す。
 男の体はキノコの胴体部分に半ば埋まっており、ぐったりとしている。
 後には、肩紐が千切れた彼のリュックだけが残されていた。

●厳しい自然と戦え
 集まったケルベロスたちに、土竜・岳(ジュエルファインダー・e04093)は笑顔で頭を下げた。
「松茸狩りの男性が、攻性植物に襲われてしまう事件が起きるんです」
 岳は彼自身の調査を受けて予知された事件について語り出した。
 現場は北陸地方に存在するとある山らしい。
 なんらかの胞子を取り込んだ松茸が、攻性植物に変化してしまったのだという。
「松茸は、ちょうど目の前にいた男性を取り込んで、宿主にしてしまったんです」
 すぐに現場に向かって、攻性植物を倒さなければならないと、岳は言った。
 岳の背後に控えていたドラゴニアンのヘリオライダーが、攻性植物について説明を始めた。
「松茸型攻性植物は1体だけで、配下などは存在しません」
 近距離に胞子を撒き散らして毒に犯す攻撃をしてくる。
 また、地面を侵食して、敵を飲み込ませることが可能らしい。これは遠距離に届き、範囲に影響がある上に催眠効果まで持っている。
 菌糸でレンズを作って光を集め、敵を炎上させる破壊光線を放つことも可能だ。
「それから、攻性植物は宿主となった男性を取り込んで、一体化しています。もし普通に敵を倒せば、男性も一緒に命を落とすでしょう」
 ケルベロスの仕事はデウスエクスを倒すことだ。
 その途中で犠牲が出るのは仕方がない。
「ただし、助けることは不可能ではありません。敵を回復しながら戦えば、戦闘終了後に犠牲者が生存できる可能性があります」
 回復できないダメージを蓄積させながら粘り強く戦えば、それでも敵を倒すことができる。
 とはいえ、もちろん敵を回復しながら戦うことが、ケルベロスたちにとって不利になるのは間違いない。
 無理をする必要はないと、ヘリオライダーは言った。
 なお、現場付近には他に一般人はいない。立ち入り禁止にするよう手配するので、ケルベロスは攻性植物との戦いのことだけ考えることができるはずだ。
「攻性植物を取り込まれた方を救うのは難しいかもしれませんが、助けられるなら助けてあげたいですね~」
 岳が口を開いた。
「無事に片づけば、私たちも山菜取りができるかもしれません。犠牲者の方に代わって、松茸を探してあげるのもいいかもしれませんね」
 そう言って、彼は笑顔を見せた。


参加者
椏古鵺・笙月(蒼キ黄昏ノ銀晶麗龍・e00768)
スノーエル・トリフォリウム(四つの白翼・e02161)
葛籠折・伊月(死線交錯・e20118)
仁王塚・手毬(竜宮神楽・e30216)
浜本・英世(ドクター風・e34862)
天乃原・周(出来損ないの魔法使い・e35675)
鹿目・万里子(迷いの白鹿・e36557)
レム・ベルニカ(睡魔・e40126)

■リプレイ

●秋の山にうごめく者は
 木々の陰で湿った土を踏みしめ、ケルベロスたちは走っていた。
 走りやすいとはいえない、滑りやすい山道だったがケルベロスには関係ない。
「今の時期は松茸の季節ですわね。家が裕福でしたので、子どものうちから食べる機会に恵まれましたが、質の良い松茸はとても美味しくて香りも良いのですよ」
 鹿目・万里子(迷いの白鹿・e36557)の静かな声が、風の中に響いた。
「こうした季節の楽しみさえ邪魔されるとは。攻性植物というのも本当に迷惑なものだね」
 マントをひるがえして浜本・英世(ドクター風・e34862)が言う。
「大切な人を思う松茸狩りの時間を邪魔するなんて……めっ、しないとだね」
 柔らかな表情をちょっとだけ硬くして、スノーエル・トリフォリウム(四つの白翼・e02161)も言葉を発した。
「せっかく見つけた松茸だっていうのに、災難だね……。彼を待つ家族の為にも必ず助け出そう」
 葛籠折・伊月(死線交錯・e20118)が告げると、仲間たちも同意の声をあげる。
「そうだな。男性にとっては災難も良い所だ。無事救出出来ればいいのだが」
「秋の味覚を味わいたい季節に攻性植物は油断できませんわ。早く助けに参りましょう!」
「ちゃんと助けてあげて美味しい松茸を持ち帰らせてあげないとだね」
 英世や万里子、スノーエルが答えた。走る速度がいくらか早くなる。
「作戦は、ヒールをしながら、だんだん敵を弱らせるんだよな。がんばろう!」
 天乃原・周(出来損ないの魔法使い・e35675)が改めて仲間たちに確認する。
「そうじゃな。まずわしらの回復を優先せぬわけにはいかんが、できる限りそうせねば」
 仁王塚・手毬(竜宮神楽・e30216)が頷いた。
「できたら隠れられない場所までおびき寄せて戦いたかったけどね……。航空写真くらいは見つかったけど、あんまり詳しい地形まではわからないな」
 片目を閉じたまま走っていたレム・ベルニカ(睡魔・e40126)が目を開ける。
「ネットも万能じゃないものね」
「敵は人間を取り込めるサイズだ。そうそう見失うことはなかろう」
 仲間たちに言われてレムが頷いた。
 敵と遭遇したのは、それからほどなくのこと。
「……でか」
 椏古鵺・笙月(蒼キ黄昏ノ銀晶麗龍・e00768)が跳ねる松茸を見て呆れ声を出す。
 呆れながらも、笙月は油断なく武器を構えている。
「跳ねるキノコはファンシーかと思いましたが……割とそうでは……ありませんわね」
 万里子が首を横に振る。
 仲間たちも同じく、敵が見えたときには武器に手をかけていた。
 ケルベロスたちに気づいているのかいないのか、松茸は男性を捕らえたまままっすぐ彼らに近づいてくる。
「帝国山狗団が盾、葛籠折伊月! 罪無き命を奪わせたりなど僕の前でさせるものか!!」
 伊月が高らかに見栄をきり、そして戦いが始まった。

●捕らわれた男
 接近した笙月に対して胞子の爆弾が飛ぶが、周のシャーマンズゴーストであるシラユキがかばった。
「助かるざんし」
 笙月はシラユキへと告げて、敵を観察する。
「……うーむ。コレだけ大きいと風味どころじゃないざんしな。味も不味そうなのでありんし」
 キノコの中に埋まっている男にも目を向ける。
 ぐったりしているが、とりあえず生きてはいるようだ。
 観察しながら分身を作り出す間にも、仲間たちは攻撃を行っているようだ。
 万里子がばらまいたオウガメタル粒子による支援を受けながら、周の飛び蹴りや、伊月の砲撃が敵を傷つける。
「おやすみ、いいゆめを」
 レムの言葉が聞こえたかと思うと、光が少し後方から敵を捉えていた。
 他の者たちは、敵や味方を回復している。
 ルーンアックスを構えて接近しながら、笙月は口を開いた。
「あなたは何処の誰ざんしか?」
 問いかける。
 だが、返答はない。
「生きているなら、返事をして欲しいざんし」
 さらに声をかけてみるが、どうやら答えられる状態ではないらしい。うめいたり身じろぎすることがあるので死んではいないのはわかるが、意識はないのだろう。
(「さて、どうするざんしかねえ」)
 生きようとあがいているなら手を貸してやるつもりだったが、そもそもあがくとかあがかないとか以前の状態らしい。
 実のところ笙月自身は彼の生死に対して興味はない。頑張っている仲間に悪いという感情が少しあるだけだ。
 いずれにしても、打撃役である笙月のすべきことは攻撃だ。
 長身の女性と見紛うその姿が、木々の合間に舞い上がる。繊細な外見には不似合いな斧が、松茸の笠の部分をしたたかに切り裂いた。
 攻性植物は攻撃を受けても、あるいは回復されてもまるで意に介することなく攻撃を続けていた。
 ケルベロスたちが立っている足元の土が揺らいだ。地面と接している部分から攻性植物の体が地面を侵食していたのだ。
 中距離で行動していた手毬や英世、レムにボクスドラゴンのマシュが地に呑まれる。
「マシュ! みんな、大丈夫かな?」
 スノーエルは呑まれた仲間たちに声をかけた。
 マシュが翼をはばたかせて飛び出してくる。他の者たちも柔らかくなった地面からうまく跳躍して脱したようだ。
「私は問題ない」
 こともなげに英世が言った。
「すまぬ、わしはやられたようじゃ。少し……めまいがする」
「ボクも~」
 リズミカルに体を揺らしながら手毬が軽く頭を押さえ、レムも顔をしかめている。
「わかったんだよ、手毬ちゃん、レムちゃん。大丈夫、これですぐに治してあげるんだよ。痛いのは最初だけだから、ね!」
 力強く頷いて、スノーエルは治癒の力を持った魔導書を召喚する。
 分厚く巨大なその書物と比べると、スノーエルの頭は小さく見えるほどだった。
 両手で頭上へと持ち上げると、彼女はまず手毬へと狙いを定めた。
「その書は……読むわけでは、ないのか?」
「うん、違うよ! 大丈夫、ちゃんと治るんだよ」
 朗らかな返答と共に、投げた魔導書は手毬の頭部にクリーンヒット。
 衝撃に一瞬だけつんのめった手毬だったが、すぐに治癒の力が彼女をとりまき、消耗した体力を癒すとともに催眠を解いていた。
 そして、スノーエルは次にレムへ笑顔を見せた。
 捕らわれの男は必ず救わねばならないが、そのためには味方をまず守らねばならない。
(「私、絶対にみんなを守るんだよ」)
 そう心に決めて、スノーエルはまた魔導書を召喚し始める。
 手毬も加わって回復をしてくれている。
 ただ敵を倒すだけでも決してたやすくはないが、さらに厄介なのが一般人を捕らえているということだ。
 男を助けるためには、敵をあえて回復しながら少しずつ削っていかねばならない。
 万里子は小ぶりなモンゴル弓を仲間たちがつけた傷跡に向ける。
 亡き夫が残した弓に矢をつがえるが、今回は敵を倒すためではない。
「ご家族の元への元へ帰れますよう、私たちがお手伝いいたいます!」
 言葉と共に、放つのは祝福の力を秘めた矢だ。
 敵と一緒に殺してしまわぬよう、万里子は声をかけながら敵を癒していた。
 英世も仲間たちがつけた傷跡に手を伸ばし、心霊手術を施したている。
「貴方には待っている家族が居るのだろう?」
 彼もまた男に声をかけている。
 だが、万里子にも英世にもやはり答えはない。
「私たちが救出する。今しばらく耐えてくれたまえ」
 そう告げて、英世がさらに回復を施そうとする。
「諦めないでください!」
 万里子も、反応がなかろうと声をかけることを諦めない。
「必ず助けますから!」
 彼女だけでなく、レムも時折声をかけながら攻撃を続けているようだった。
 敵を回復しながら戦えば、当然長期戦になる。
 ただでさえデウスエクスは死ぬ瞬間までまで戦闘能力が変わらない。回復しながらの戦いならなおさらだ。
 強烈な攻撃が彼らを襲い続ける。
 伊月は周を狙う光線の前に立ちふさがった。
 菌糸で作られたレンズから放たれる光は、白い軍服を焼き焦がし、燃え上がらせる。
「周さん、大丈夫かい?」
「ぼくは平気。そっちこそ、大丈夫?」
「ああ、僕もまだまだやれるよ」
 振り向かずに言葉をかわす。
「厳しいときは、シラユキもいるからね」
 頷いたのが、背後にいる彼女に見えているかどうか。次いで聞こえたのは周の鋭い詠唱。
「出でよ、レヴィアタン! その咆哮を聞かせたまえ!」
 魔獣の幻影が咆哮をあげる。
 軍靴についた加速装置を起動して、伊月は幻影を飛び越える。
 この靴に名前を借りたあの子のように……どこまでも遠くへ届けとばかりに伊月は脚を振り下ろした。
 それでも、まだまだ敵は倒れる様子がなかった。

●松茸の散華
 その後も山の中の戦いは長く続いた。
 敵は疲れる様子も見せずに跳ね回っている。
 とはいえ、打撃役の笙月や狙撃役の周を中心とした攻撃は、確実に傷つけている。
「気をつけて、胞子爆弾を作ろうとしてる」
 警告の声が響いたが、しかし突然敵は動きを止め、攻撃が放たれることはなかった。
 おそらくはレムや伊月の仕掛けていた麻痺攻撃が効果を発揮したのだろう。
 2人はさらに、眠りの瞳や携行砲台の砲撃で敵の動きを止めようとしている。
「今のうちに回復するんだよ!」
 スノーエルがオーロラの輝きで傷ついた仲間たちを癒やす。
「はい、任せてくださいね」
 答えながら万里子は敵に回復の矢を放った。
 英世は仲間と敵の負傷状態を確かめる。
「ふむ……今なら攻撃に回れそうだな。とりあえず開いてみようか――元に戻せはしないけれどね」
 マントがひるがえり、青年の周囲に無数のメスを始めとする手術道具が現れた。
 魔術にて操るそれで敵を切り開き、傷つけていく。
 ついでに、捕らわれの男を摘出しようとしてみたが、さすがにできなかった。
「かなり深い部分で一体化しているようだな。倒さなければ取り出すことはできないか」
 ならば、やるべきことは簡単だ。
 たった今、自分がつけた傷を癒すために、英世は心霊手術を行うべく身構えた。
 攻性植物を削っている間に、ケルベロスたちの体力もどんどん削られている。
 伊月やシラユキ、テレビウムの御芝居様やビハインドのチノアは仲間を守ってかなりのダメージを受けている。
 とはいえ、さすがにすべての攻撃をかばいきれるわけではない。
 胞子爆弾を受けたレムが吹き飛ぶ。
 手毬は戦場を舞いながら仲間たちを癒していた。
「とくと見るが良い――」
 攻撃を受ける時を別にすれば、彼女は戦闘の間ほぼずっと舞い続けている。
 本来は竜神へ捧げるための舞は、仲間の命を賦活する。
 人は誰しもその魂に竜を飼うものなれば、竜が昂ぶれば命の輝きは増すが道理。
 レプリカントの少女が受けた傷が、舞を受けて少しずつふさがっていく。
「やれやれ、なかなかに疲れるが――此度は救うために舞うとあらば、力も入ろうというものよな」
 舞い続けながらも、彼女は癒しの技を使い分け、回復役のスノーエルと共に仲間たちを支え続けていた。
 長い戦いも、いずれは終わりが訪れる。
 周は後方から戦場を観察していた。
 笙月をかばったシラユキがとうとう限界を迎えて倒れるが、ざわめく心を抑え込む。
(「冷静に、どんなときも冷静に対処するって教わった」)
 松茸はもうぼろぼろだ。もし本物なら、もう絶対に食べようとは思えない。
 表情のない敵がどれだけダメージを受けているのかは外見から推し量るしかない。予想では……そろそろ、限界を迎えてもいい頃だ。
「たぶん、あと一息だよ! みんな、がんばろう!」
「ああ。もうこれ以上は、誰も倒れさせない――あの人も含めてね」
 仲間たちに声をかけると、伊月が答えてくれた。
 彼の横にいた笙月が鉄扇に御神刀を構える。
「大地に滴り満ルは水ノ龍、天つ風に轟き満ルは雷ノ龍、地を裂き天を覆い渦巻く業火なる火ノ龍」
 呼び声に答えて現れるのは、3体の荒ぶる竜の御霊。
 水雷火が立て続けに攻性植物へと襲いかかり、さらに敵の体を削り取る。
「みんな、あと少し力を貸して!」
 伊月がその後に続き、身の丈近くある剣に炎を纏わせて敵を切り裂く。
 英世や万里子は最後まで敵を癒し続けた。
 スノーエルや手毬が油断せず仲間を治し続けるのも同じだ。
 周の告げたとおり、終わりの時は程なく訪れた。
 仲間たちの攻撃に続き、周が魔術回路が刻まれた絵本を開いて魔獣の幻影を呼び出す。
「レムさん、初依頼なんだろ? ラスト、決めてくれよ!」
「うん、がんばるよ!」
 レムは周の言葉に頷くと、アームドフォートを構えた。
 男からの答えは一度もなかったけれど、レムや万里子が戦いながらかけていた声はきっと届いていたはずだ。
「絶対に、死なせないから!」
 言葉と共に放つ光が攻性植物を貫く。
 松茸の体がほどけていき……そしてついに、捕らわれの男が地面に落下した。

●楽しい山菜取り
 地面に倒れた男に英世や周が駆け寄った。
 ヒールをかけると彼は目を開ける。
「大変だったな、大丈夫?」
「……あり……がとう……」
 弱々しい声で彼は答えた。
「すぐお帰り頂きたいが、松茸狩りも手伝った方が良いのかな?」
「……で、できれば……お願い……ううっ」
 英世の問いかけに身を起こそうとしたが、消耗がひどくすぐには動けないようだ。
「私たちも少し山菜採りをしていくつもりです。多めに採れたらおすそわけしますから、まずはゆっくり休んでください」
 万里子に言われて、男は改めて横になった。
「回復したら、ケアも含めて一緒に山菜狩りや松茸などをするのもよいざんしな」
 笙月が彼を見下ろしてそう告げた。
 ケルベロスたちは手早く戦場の跡片付けや傷の手当などを終える。
「さて……松茸であったか? 儂も山育ち故な、行くなら力になろう」
 手毬の申し出に、仲間たちは頷いた。
「うん、僕も幼馴染たちのお土産に、少しだけ山菜採りをしていきたいな」
「もちろんだよ。ミシェルやラグリマも喜ぶ顔が、今から目に浮かぶんだよ」
 伊月の言葉にスノーエルが頷く。どちらも家族の顔を思い浮かべているようだ。
「欲を言えば、息子も連れてきたかったですけれど……仕方ありませんね。今の時期はツワブキとアケビが旬と聞いていますわ。栗も拾えるでしょうか」
 万里子も周囲をゆっくりとながめている。
 ケルベロスたちは、今度は平和な探索をし始めた。
 レムがランプで照らす木の根元にあるキノコを、周が図鑑と見比べる。
「このきのこ食べられるやつかなぁ?」
「食べられるといいな。師団に帰ったら、みんなにご馳走してあげるんだ」
 2人の足元を、片目をつぶった英世が覗き込む。
「これは食べられるものだろう。さて、どんな風に調理しようかな」
 思案顔をしながら、3人は生えていたキノコを分け合った。
 他の仲間たちも、山育ちだという手毬を中心に協力し合いながら収穫を行う。
 まだ日が落ちるまでには時間がある。
 秋の山を十分に満喫することができそうだった。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月5日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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