鎌倉ハロウィンパーティー~夢見るソルシエール

作者:柚烏

 来たるハロウィンに向けて、街は盛り上がりを見せており――其処はどこか心くすぐるような、お祭り前の賑わいに彩られていた。南瓜やお化けの意匠がそこかしこで見られ、鮮やかな橙に紫、黒と言ったハロウィンカラーが人々の心を浮き立たせる。
 ――しかし、素直にこのハロウィンムードを楽しめないひとも、街には居たのだ。
(「何よ、この歳にもなってハロウィンなんて、子供っぽいわ。そんなので喜ぶなんて、幼稚なんだから!」)
 みんながハロウィンを楽しみにして、パーティーの相談をしている時、その少女はつい意地を張ってそんなことを言ってしまった。
(「あたしはもう大人なんだから、パーティーなんてしないのよ!」)
 本当は自分だって、仮装をしてハロウィンパーティーをしたかったのに――つい大人ぶって馬鹿にしてしまって。その一言で引っこみがつかなくなって、少女はパーティーには行かないと宣言してしまったのだ。
「……本当は、あたしだって……ハロウィンを楽しみたかったのに……」
 唇を噛んで少女が項垂れていると、其処には何時しか赤い頭巾を被った少女が立っていた。ハロウィンの仮装かしらと少女が思う間もなく、赤い頭巾の少女――ドリームイーターはその手に持った鍵を、少女の心臓にずぷりと突き刺す。
「……あ……?」
 心臓を穿ったと言うのに、血の一滴も流れないことに少女が戸惑う間にも――ドリームイーターは愛らしい唇を開いて、謳うように囁きかけた。
「ハロウィンパーティーに参加したい……ですか。その夢、かなえてあげましょう。世界で一番楽しいパーティーに参加して、その心の欠損を埋めるのです」
 夢を吸い取られた少女は、意識を失ってその場に崩れ落ちる。そして少女の夢を得たドリームイーターは、彼女の夢を具現化した存在を生み出した。
 現れた新たなドリームイーターは、全身がモザイクに覆われた少女の姿をしており――魔女のとんがり帽子にゴシック風の黒いドレスを纏い、ハロウィンの仮装をしているようだ。
 ――そうして、そのハロウィンドリームイーターは、その場からふっと姿を消した。

「もうすぐハロウィンで、ねむもわくわくなのですが……その裏で、ドリームイーターが暗躍しているようなのです!」
 ちょっぴり夢見るような瞳でハロウィンに想いを馳せていた、笹島・ねむ(ウェアライダーのヘリオライダー・en0003)だったが――直ぐに佇まいを戻して、真剣な表情になって告げる。
 藤咲・うるる(サニーガール・e00086)が調査してくれたのだが、どうやらドリームイーターの暗躍は日本各地で行われているらしい。ねむが予知したのは、意地を張ってハロウィンパーティーへ行けない少女から、ドリームイーターが生まれるというものだ。
「出現しているドリームイーターは、ハロウィンのお祭りに対して劣等感を持っていた人で……ハロウィンパーティーの当日に一斉に動き出すようなのです」
 このハロウィンドリームイーターが現れるのは、世界で最も盛り上がるハロウィンパーティー会場――つまり、鎌倉のハロウィンパーティーの会場となる。
「ですのでみんなには、実際のハロウィンパーティーが開始する直前までに、ハロウィンドリームイーターを撃破して欲しいのです!」
 ハロウィンドリームイーターは、ハロウィンパーティーが始まると同時に現れる。その為ハロウィンパーティーが始まる時間よりも早く、あたかもハロウィンパーティーが始まったように楽しそうに振るまえば、ハロウィンドリームイーターを誘き出すことが出来るだろう。
「おびき寄せの為にも、是非是非みんなでハロウィンの楽しさを演出してくださいっ。それぞれにとびっきりの仮装をして、役になりきって賑やかに振舞うのがおすすめですよ」
 現れるハロウィンドリームイーターは、全身がモザイクに覆われた少女で魔女の仮装をしているようだ。戦いとなれば心を抉る鍵でトラウマを呼び起こしたり、モザイクを飛ばして獲物を包み込むことにより冷静さを失わせたり、催眠状態に陥らせてくる。
「ハロウィンパーティーを楽しむ為、ドリームイーターは撃破してしまいましょう。このアクシデントさえもハロウィンの趣向だと思える、そんな風に解決出来たら素敵ですよね!」
 みんなならきっと大丈夫――そう励ますかのように、ねむはにっこりと微笑んでケルベロス達を見送ったのだった。


参加者
天音・結季(アストレア・e00058)
リディアーヌ・ウィスタリア(スヴニールフイユ・e00401)
ヴィヴィアン・ローゼット(ぽんこつサキュバス・e02608)
春夏秋冬・美良(ジャンクリペアラー・e03627)
天見・氷翠(哀歌・e04081)
ヘラルド・ヴィーク(オラトリオのウィッチドクター・e05041)
シャイン・ルーヴェン(月虹の欠片・e07123)
シェグリット・クロラ(サイレントノイズ・e14669)

■リプレイ

●一足早いハロウィンパーティー
 鎌倉で開かれる、盛大なケルベロスハロウィン。その会場を狙い、現れるのはハロウィンドリームイーター。それは意地を張ってハロウィンに混ざれない女の子の夢から生まれた、ちいさな魔女の姿をしていた。
 彼女は間もなく、やって来るだろう――世界で一番楽しいパーティーに参加して、その心の欠損を埋める為に。
「大人になっても楽しめるのがハロウィンなんだよ! いや、ハロウィンだけじゃない。楽しい事に幼稚なんて考える事こそ、幼稚なんだよ」
 両手を広げて元気一杯に主張しつつ、春夏秋冬・美良(ジャンクリペアラー・e03627)は軽やかにくるりと一回転してみせた。闇色のドレスが豊かに波打ち、弾みで大きく開いた胸元がたゆんと揺れる。美良が想いを馳せるのは、被害者となった女の子のことで――背伸びしたい彼女は、ついハロウィンを子供っぽいと言ってしまい、後悔していたみたいだったけれど。
「意地っ張りになる気持ちは、私にも判るな……」
 そう言って苦笑してみせたのは、シャイン・ルーヴェン(月虹の欠片・e07123)だ。高貴な令嬢である彼女は、幼い頃から胸を張って誇り高く生きていくことを、周囲に期待されていただろうから。でも、と天見・氷翠(哀歌・e04081)は、女の子の心境を思って菫青石の如き瞳を瞬かせる。
「……強がりって、苦しいから……」
 あの子も素直に遊べると良いと、そう呟いた氷翠にリディアーヌ・ウィスタリア(スヴニールフイユ・e00401)は澄んだまなざしを向けて、あどけない相貌に見合わぬ落ち着いた声をかけた。
「でも、ハロウィンはどんな人でも、他人になって楽しむことができます。意地っ張りが、素直になっても、いいですよね」
 うんうん、と頷くヴィヴィアン・ローゼット(ぽんこつサキュバス・e02608)は、夢見るような表情でハロウィンの飾り付けが終わった会場を見渡す。パーティーの開始は未だ先なのだが、彼女たちはハロウィンドリームイーターをおびき寄せて倒す為、一足早くパーティーが始まった振りをするのだ。事前に一般人は会場から避難しており、万が一に備えて対策を考えていた一行は、ほっと息を吐いていた。
「さて……トリックオアトリート、ですね」
 そう言って、とんがり帽子を被る天音・結季(アストレア・e00058)は、黒マントも身に着けて魔法使いの仮装をしたようだ。ハロウィンはお菓子が沢山食べられる至福の日とあって、余り感情を面に出さない結季からも楽しそうな雰囲気が伝わってくる。
「……これであれば鎌を持っていても、違和感は無いだろうか……」
 黒い外套のフードから覗くのは、凍えるように怜悧な美貌。シェグリット・クロラ(サイレントノイズ・e14669)が簒奪者の鎌を持ち、静かに殺界を形成する様子は、正に魂を刈ろうとする死神のようだ。しかしその内面は、非常に真面目で温厚ですらあるのだと、彼の微かな仕草や表情で気付く者も居たかもしれない。
「で、あたしの仮装は吸血鬼! サキュバスなのに吸血鬼とはこれいかに、とは言わないように!」
 一方、美良はドレスの上にマントを羽織って、えへんと胸を張った。ただサキュバスの血がそうさせるのか、所々露出が多く――大胆なスリットからは、すらりとした美脚が覗いている。
「成程……皆、其々に工夫を凝らしているようだね」
 涼しげな声で頷くヘラルド・ヴィーク(オラトリオのウィッチドクター・e05041)は、白衣の医者といった所か。氷翠は、白いクラシカルなメイド服を着たシルキー――幽霊に扮し、シャインはメイドそのものになり切ったようだ。しかし優雅で気品溢れる佇まいの彼女は、かしずくよりかしずかれる方が似合ってしまうのはご愛敬か。
「……あ」
 と、其処で雪女の仮装をしたリディアーヌが、ちいさな声を零した。会場の飾り付けとして隅っこに置かれていたのは、もふっとした可愛らしいペンギンのぬいぐるみで――ペンギンが大好きな彼女は、そっとそのぬいぐるみを手に取って抱きしめる。
「よしっ、じゃあドリームイーターを誘き出すため、本当にパーティーしてるように見せよう」
 和風ゴシックのお人形風のおめかしをしたヴィヴィアンは、ボクスドラゴンのアネリーとお揃いのリボンを付けてにっこりと微笑んだ。そんな彼女が、圧倒的な魅力を振りまき雰囲気を盛り上げる中――一足早いパーティーのはじまりを告げるように、氷翠がぱぁんとクラッカーを鳴らす。
「……それじゃあみんな、今日はよろしく、ね」

●お菓子と歌でお誘いを
「私は、悪戯はしたい派ですゆえ。味は保障します……買った物ですし」
「って、手作りじゃないんだ!」
 ――そんな訳で、先ずは皆でお菓子を食べ比べしようと、其々に持ち寄ったものを交換していったのだが。結季の準備した南瓜のクリーム入りシューを見た美良が、思わずツッコミを入れる。それでもやっぱりお菓子は美味しいもので、リディアーヌは巾着に入れた色とりどりのキャンディを皆へ丁寧に配っていた。
「……有難う……」
 シェグリットはレモン味のキャンディを口に入れ、その間にもシャインが持参したパンプキンマフィンをお皿に載せていく。ヴィヴィアンはお店で売っていたお菓子の詰め合わせと、住んでいる教会で作ってきたスイートポテトを半分ずつ。氷翠は手作りの蝙蝠型チョコと、南瓜のミニモンブランだ。
「んん~どれもおいし~♪」
「紅茶も淹れたから……どうぞ?」
 ヴィヴィアンが幸せそうな顔で頬を緩める隣では、氷翠が全員分の紅茶を準備して淡く微笑む。一通りお菓子を味わって舌鼓を打ったところで、ヴィヴィアンがギターを取り出して演奏を始めた。奏でるのはハロウィンらしい、明るく楽しげな曲で――やがてそれに合わせるように、リディアーヌが透き通るような歌声を響かせていく。
(「歌などには縁はないのですが……挑戦してみるのも良い機会、ですかね」)
 と、其処に結季も加わり何時しか大合唱となって。氷翠は陽気に歌いながら、長いスカートの裾を摘まんでくるくると楽しそうに踊り出した。こうなると、シャインも黙ってはいられなくなり――彼女は宮廷舞踏のような優雅な踊りを、鮮やかなステップと共に披露する。
「お、いいねいいね! あたしも踊ろっと♪」
 知らず知らずリズムに乗って身体を動かしていた美良は、ヘラルドの手を引いてラインダンスを踊り始めた。と、少し離れたところで傍観していたシェグリットまでも、美良は巻き込むことに決めたようだ。
「ほら、あなたも一緒に!」
「……だが、私は、その……」
 どうやらシェグリットは、はしゃいで楽しむ事が苦手の様子。どうするべきか分からず眉根を寄せる彼だが、実は音楽や踊り自体は好きなのだ。ただ、どうにも恥ずかしいらしく、決して人前では披露したがらないのだが――美良は持ち前のノリの良さで、彼をパーティーの輪の中へ引っ張っていった。
「レディからの誘いは断っちゃいけないんだよー? 誘われたらエスコートしながら踊るのがマナーなの!」
 そうなのか、とぽつりと呟くシェグリットは、美良の言葉を素直に信じ込んだようだ。ならばと彼はシャインの手を優雅に取って、慣れた仕草で彼女の舞を導いていく。
「……お二人とも、上手ですね」
 ペンギンのぬいぐるみを抱きしめながら、歌うリディアーヌの相貌も知らず和らいでいって。和やかで楽しいハロウィンパーティーが十分に盛り上がったところで、彼らの近くにふわりと小柄な影が舞い降りた。
「現れたようだね」
 ヘラルドが呟くと同時、皆の表情が一気に地獄の番犬のそれに変わる。賑やかな雰囲気に惹かれて現れたのは、可愛らしい魔女の仮装をしたモザイクの少女――ハロウィンドリームイーターだ。彼女が手にした鍵を魔法の杖のように翻したその時には、皆は既に戦闘態勢に入っていて、遊びの輪に引き込むように包囲を終えていた。
「今宵のパーティーは楽しむべきもの。はた迷惑な仮装は、さっさと脱いで楽しんで貰うとしましょう」
 ――私達も、勿論彼女もと。眼鏡を押し上げて結季が空色のまなざしを向ける間にも、シャインは舞うような動きで敵の背後に迫っている。
「さて、楽しい宴の始まりだ。……私と共に踊ってもらおうか」
 絹糸のような、銀の髪が流星のような尾を引いて。両の手の斬霊刀が涼やかな音色を奏で――白き薔薇の麗人は、その整った唇に涼やかな笑みを浮かべていた。

●招かれざる魔女
「パーティーだもん、みんなで仲良く楽しく、ね!」
 アネリーにぱちりとウインクをしてから、ヴィヴィアンは明るく希望に満ちた唄を歌い上げる。それは聴くものを虹色の光で包み込み、多少のことでは挫けない勇気が湧き出す七色の交響曲だ。そんなヴィヴィアンの歌声と重なるように、氷翠の爪先が浄化の印を刻み――その周りにはきらきらと、宝石のような水滴の幻影が弾けては消えていった。
「彼らが力を貸してくれます。だから安心してください」
 ふたりが仲間たちの耐性を高める中、リディアーヌは小型ペンギン型ドローンによる命中補助を前衛に施していく。身振り手振りで教えてくれる小型ペンギンはとても愛らしく、補助を受けた美良は敵の構造的弱点をすぐさま見抜き、痛烈な一撃を叩きこんでいった。
(「お菓子の食べ歩きは、数少ない趣味でもありますから……そう言う意味でもハロウィンは楽しみ、私でもそう思えます」)
 ――ならばきっと、他の皆はより楽しいのだろう。そんなことを思いながら、結季が魔導書から呼び出すのは混沌なる緑色の粘菌だ。肉体を侵食させながら見せる悪夢は、この奇妙な宴に相応しい極彩色の夢だろうか。
「……!」
 それでもハロウィンドリームイーターは、心を抉る鍵で此方に襲い掛かって来るが――その一撃を浴びた氷翠は微かに苦悶しつつも、両の足に力をこめて踏み止まった。
(「……本当は、楽しみたかっただけなんだよね……。元の女の子共々、心穏やかに……なれたら」)
 其処へ攻撃を遮るようにして、シャインが螺旋を籠めた掌を翳し、敵を内部から破壊しようと動く。その一撃は寸でのところで躱されたのだが――しかし、後方から音も無く忍び寄るシェグリットの影の弾丸は、狙い過たずドリームイーターを貫き、その身を侵食していた。
「…………」
 無言のまま無感情に戦う彼に続き、殺神ウイルスを投射するのはヘラルドだ。アネリーも盾となりつつ魔法箱ごと体当たりを行い、モザイクを飛ばして精神を阻んでくる敵の攻撃には、結季のウイングキャット――エトが清浄な羽ばたきで邪気を祓う。
「さあ一緒に行こう、手と手を取って みんなの気持ちが集まれば、迷いも恐れも吹き飛んじゃうよ」
 心を奮い立たせる旋律を口ずさみながら、桃色の霧を纏わせ傷を癒していくヴィヴィアンは、味方の回復に専念していた。盾となる氷翠も上手く守りを務めていることで、一行は危なげなく戦いを進めることが出来ているようだ。
「……っ……」
 敵の攻撃は単体のみで、その分威力も高かったけれど――それでも氷翠は襲い掛かるトラウマに必死で耐え、炎に包まれる村の光景を何とか振り払おうとした。
「……貴女の夢、きっと叶うよ……大丈夫。だから、もう起きて……一緒に楽しもうね」
 モザイクの向こう側に見える少女の面影に氷翠は語り掛け、アームドフォートを展開させて大剣と化した美良は推力を活かして敵を叩き斬る。
「その程度の攻撃……ならばこれはどうか?!」
 攻撃の軌道を弾いたシャインが、返す刃で二刀の衝撃波を放ち――其処へリディアーヌとシェグリットも、御業の炎弾と古代の石呪を交互に放って獲物を追い詰めていった。
「あなたもモザイクの向こうではなく、此方で楽しめばいいのです」
 時空凍結弾を撃ち込み、四肢が氷に包まれていくドリームイーターを見遣り結季が決然と告げる。向こうは既にトラウマに苛まれ、燃え盛る炎にもがいていたが――危惧していた逃走は図らないようだ。それを確認したシャインは牽制を止め、一気に勝負に出るべく地を蹴った。
「宴も終盤……ラストダンスだ」
 メイド服のスカートがめくれ、その美脚が露わになっても構う事無く。シャインの足は流麗な舞踏のステップを踏み――パーティーの熱狂そのままに、彼女は流れるような太刀筋で苛烈な乱舞を繰り出した。軽やかに見えるも、その一撃一撃は重く、躱しそこなったモザイクの魔女に幾筋もの銀閃がひらめく。
「……また会いましょう、あの世でね」
 涼しげな銀の瞳を、シャインがゆっくりと細めた時。魔女の魔法は解け、悪夢の如きモザイクは此処が現実であると悟ったかのように、その実体を失っていった。

●楽しむ、という気持ち
 そのままハロウィンドリームイーターは消滅するかに思えたのだが、次の瞬間ぽんっとハロウィンの南瓜に変わり、会場の飾りの一部に加わった。その予期せぬサプライズに皆は顔を見合わせ、やがて誰からともなくくすくすと笑いだす。
「……少女の事は、私も気掛かりだが……」
 そう呟きシェグリットは思案するが、ドリームイーターを倒したことで、意識を失った少女も目覚めることだろう。どうやら彼女は鎌倉より遠く離れた場所に居るらしく、実際に会うことは無理そうだが――それでも皆は大丈夫と頷き、少女に掛けたかった言葉を口にしていった。
「イベントは、大人でも張り切ったり楽しむから……。貴女が傷付いたり、寂しい思いはしなくて良いんだよ」
 皆で一緒に遊ぼうと、少女にこの気持ちが伝わるようにと氷翠は空を見上げ、一方でリディアーヌや美良たちは、ハロウィンの飾り付けを直して本番に備えている。
「被害者のあの子も楽しませるように、ね!」
「ええ、楽しむこつは多分、一歩踏み出してみることから……ですから」
 美良の言葉に結季が頷き、伸ばしたこの手が少女に届くようにと願う。シャインは残ったパンプキンマフィンをひとつ手に取り、そっと微笑を浮かべて囁いた。
「よい子にはお菓子を、ってね。意地を張らずによいハロウィンを」
 ――さあ、間もなく本当のハロウィンパーティーが始まる。皆は今日と言う日を目一杯楽しもうと誓い、最後にヴィヴィアンが少女の心にも届くように声を張り上げた。
「さあ、みんな一緒にハロウィンを楽しもう!」

作者:柚烏 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 2
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