教会の略奪者

作者:森下映

(「ここは……」)
 調査に赴いていたトエル・レッドシャトー(茨の器・e01524)が何かに引き寄せられる様に訪れたのは、住宅地を遠く離れた廃墟の教会。中は秘密の遊び場にでもなっているのだろう、その前にはいくつかの子ども用の自転車が置かれていた。
 教会は異様な姿をしていた。教会であることは分かるが、モザイクに覆われており、中は外からでは確認できない。トエルはやむを得ずモザイクの中へ1人で足を踏み入れた。
 モザイクの中は纏わりつく粘性の液体で満たされているものの、動く事に支障はなく、呼吸もでき、声も出せる様だ。
 トエルは教会の内部を見渡した。壊れた十字架、割れて漂うステンドグラス、上方に浮かぶ長椅子。全てがバラバラにされ、混ぜ合わされた状態になっている。
 そして。
「このワイルドスペースを発見できるとは、まさか、この姿に因縁のある者なのでしょうか?」
「!」
 トエルが振り返った。白い髪、褐色の肌。瞳が薔薇で隠され、翼の焔を持ち、鳥籠と茨で自分自身を拘束され、下半身は絡み合った茨、
「やはり……」
 既に前例はある。『己の暴走した姿』が目の前に現れてもトエルの表情は変わらなかった。これはワイルドハントであり、『自分』ではない。
 しかし、燃え盛る炎の翼はトエルに思い出させる。
 灰になった教会、灰にした自分。
 まだ燻る、過去の裏切り。
 トエルの紫の瞳が見つめる中、ワイルドハントが再び口を開いた。
「今、ワイルドスペースの秘密を漏らすわけにはいきません」
 焔の翼が火の粉と熱を散らして羽ばたかれ、身体がゆらり宙に浮かぶ。
「あなたはワイルドハントである私の手で、死んでいただきます」
 茨と薔薇で形作られた槍がぐるりとひとりでに回転し、その切っ先がトエルに向けられた。

「ワイルドハントについて調査していたトエル・レッドシャトーさんが、ドリームイーターの襲撃を受けたようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)の説明によれば、ドリームイーターは自らをワイルドハントと名乗っていて、『事件の場所』をモザイクで覆い、その内部で何らかの作戦を行っているらしい。
「このままではトエルさんの命が危険です。急ぎ、救援に向かい、ワイルドハントを名乗るドリームイーターの撃破を行って下さい」

 戦闘時、ワイルドハントは稲妻突き、ブレイズクラッシュ、インフェルノファクター、猟犬縛鎖、攻性捕食相当のグラビティを使用する。ポジションはクラッシャー。
 特殊な空間ではあるが戦闘に支障はない。

「敵はワイルドの力を調査される事を恐れているのかもしれません。無事にトエルさんを救い、ワイルドハントを撃破して下さい。よろしくお願いします」


参加者
泉賀・壬蔭(紅蓮の炎を纏いし者・e00386)
藤守・つかさ(闇視者・e00546)
月枷・澄佳(天舞月華・e01311)
トエル・レッドシャトー(茨の器・e01524)
スヴァリン・ハーミット(隠者は盾となりて・e16394)
羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)
ローゼリット・アルングリム(慈愛の揺り籠・e33496)
深幸・迅(罪咎遊戯・e39251)

■リプレイ


「その窮屈な姿……自分で選んだんですか? たまたまなら、運無かったですね」
 淡々と言うトエル・レッドシャトー(茨の器・e01524)の身体の周囲、絡み合う白茨が解ける様に何本もの蔦へと別れ、ワイルドハントへ狙いをつけた。
「何をしようとしてたのか知らないですけど、そんな誰でもないような姿になってまでやる価値あるんですか?」
 途端槍が動き、Rosalesはワイルドハントを捕らえにかかる。ワイルドハントは翼羽ばたき茨を避けた。トエルはすぐに手元へ戻した茨で防御の体勢を取る。が、槍がトエルへ到着するより早く、トエルの前に頼もしい『壁』が現れ、爆発音がした。
「仲間を華麗に護り抜く、コレは紳士らしさの証明だよね!」
 茨の槍を両腕を盾と受け止めつつ、バチンとウインクをしてみせる。焦げ茶と橙に塗り分けられた様な髪にネット仕込みの紳士知識は今日も健在、スヴァリン・ハーミット(隠者は盾となりて・e16394)。
「俺自身が護りたいっていうのもあるんだけどさ! だから……君には悪いけど、俺の目の前で仲間は殺させないよ!」
 隣、おなじみの巻き角に小ぶりな翼、ボクスドラゴンのイージスも、もこもこの羊毛をめいっぱい膨らませ、緑の瞳きりりと肩の盾を前に出して構えている。そして、
「怪我はねぇか、トエル」
 ゆるりと広げられしなやかに動く九尾扇。同じくらい優雅な微笑みを端麗な顔に浮かべて振り返る深幸・迅(罪咎遊戯・e39251)。薄い茶色の長い髪はサイドを残して纏められ、細身ながら頼りなくはない体型は彼の過去を思えば当然ともいえる。
「今の内に体勢を整えて下さい!」
 艶のある黒髪をリボンで結わえ、小柄な身体に巫術士らしい緋袴に白衣、下駄を身につけた月枷・澄佳(天舞月華・e01311)。先の爆発は彼女が起こしたもの。
(「暴走時の姿をとる、ですか。今回の事件は謎な所が多いですが」)
 考える事はまずは後回しと全力で駆けつけた結果だ。そして、
「トエル嬢は無事か……って聞くだけ野暮か」
「小細工をしようって言うならお粗末だよな。モザイクで覆うなんて逆に目につくだろうに」
 顔を見ずともわかる声が続いたかと思うと、見慣れた黒い服に黒髪の毛先を結わえた姿と、新旧二段の腕章をつけた姿が当然の様にトエルの前に出た。
「さて、遠慮なくいかせて貰お……ってなんでそうムッとするかね、このお嬢さんは」
 藤守・つかさ(闇視者・e00546)が言う。
「敵なんだろ? とっとと片付けるぞ」
「言われなくても、もう少し遅かったら同じ姿で返り討ちにしようと思ってました。自分の姿であろうと、敵ならやる事は1つですし」
「それはトエル嬢らしいが……」
 間に合ってよかったと泉賀・壬蔭(紅蓮の炎を纏いし者・e00386)。
「衛生兵も到着だぜ!」
 モザイクの中が輝く様な金の翼とツインテール。黒と赤の配色も美しいゴシックドレスのオラトリオ、ローゼリット・アルングリム(慈愛の揺り籠・e33496)。口は悪いが世の不浄を嫌い他者の幸福を祈る彼女は恐らく、根っからのドクターでもあるに違いない。
(「悪い予感ってヤツは大概当たるモンだ」)
「ワイルドハント。試練をクリアしたらお土産は貰えるンだろうな?」
 心当たりに相手には鎌をかけ、自分には足を引っ張るなと発破をかける。
(「見知った相手の姿、しかも暴走状態の姿で現れるとは、心情的に戦いづらいものがありますね」)
 だが勿論負ける気はない。手にした武器がリボルバーでなくとも、射撃手である事は変わらず揺るがず。槍に紫電を鳴らし、遠目の間合いより淡々と機を狙う羽鳥・紺(まだ見ぬ世界にあこがれて・e19339)。
(「一番やりづらくてお辛いのは、レッドシャトーさんご本人でしょうから」)
 自分が中途半端な気持ちで挑むわけにはいかない。意志灯る藍色の瞳に呼応するように、胸元で水晶の首飾りが輝いた。
「……倒さなければならない者が増えましたね」
 ワイルドハントは舞い戻った槍とともに、モザイクの中を羽ばたいて退がる。
「随分とコソコソするのがお好きと見える」
 扇の影で眼を細めながら迅が言い、
「ワイルドスペースを利用して、君達は何がしたいのかな?」
 スヴァリン、手袋の指先を向けて紳士的挑発。迅はその様子に笑みを零しながら、
「サプライズパーティの予定でもあンのか? 俺らも交ぜて欲しいモンだ」
「ンなら、そろそろ準備出来たンじゃねェか?」
 指のリングへ意識を注ぎ込みながらローゼリットが言った。
「ハロウィンはすぐそこだ、主催者が間に合わねェなンて恥ずかしいぜ?」
 ワイルドハントは何も答えず、体を斜め軸で旋回させる。と、突如巨大に咲いた薄色の薔薇が襲いかかってきた。その前に飛び込み、迅はロングブーツの足を回し蹴る。薔薇は迅の足だけを飲み込んだ。
「ハッ! 効かねぇよ、んなもん!」
 喰らわれた足から徐々に毒が侵食。体が変色していくが、迅の表情は変わらない。
「鬼みてぇな元上官のがテメェよか強くてこえぇよ、俺はな!」
 かつては軍属、戦いも傷も毒も慣れたもの。まるで自分を飾る花の様に右脚を薔薇へ食らわせたまま、迅は扇をそよがせ陣形を見極めると、破魔の力を仲間へ宿す。
(「そうそう攻撃力上げられちゃたまんねぇからな」)
 確実に付呪を破壊できれば、戦闘はかなり有利になるだろう。
「姿盗んで戦力集めて、戦争でも仕掛ける気かい?」
 空中に現れたパネルは瞳と同じ色。イージスから耐性をもらいながらスヴァリンが軽く指を滑らせれば小型のドローンが現れ、治療と防御に散開した。と、
「なぁ、オリジナルが邪魔か?」
 モザイク中を背側へ回りこみ、刀剣の技を雷走る手刀での斬撃に変え、壬蔭が言う。
「暴走状態を模写するって事は強いんだよな?」
 ワイルドハントの拘束は解けないながらも褐色の皮膚は裂け、血が迸った。
「仲間と同じ様なルックスだから攻撃しにくいと思ったか? トエル嬢が此方に居るのに」
 振り向き様ワイルドハントは茨を差し向ける。が壬蔭は一歩早く間合いから退いた。そして、
「『我が手に来たれ、黒き雷光』」
 紡がれるつかさのグラビティは吸い込まれる様に漆黒の巨大な銃器へと装填。同じ状況に身を置いている恋人の事を思わないわけではない。けれどそれはそれ、これはこれとも思う。
 銀の目貫き光る対の革のブレスレット、誓いは確かにここにもあるが、物だけに託すほど弱いものでもなく託しきれるはずもなく。何より彼の魂の、心の強さには絶対の信を置いている。
 ガトリングから撃ち出される黒雷の勢いにつかさの前髪が舞い上がる。銃撃音と雷鳴が混じり合って轟音を作り出し、ワイルドハントを破壊した。
 続き今度は金色の稲妻。茶色の髪を颯爽なびかせ飛びこんだ紺、アスガルドの槍は其れだけで強く、使い手によってさらに力を増すことを証明する様な正確な一突き。黒雷の名残あるうちに紫電もワイルドハントの全身を走る。
(「どんなに強くても」)
 仲間を信じて。紺は槍を引き抜き走り抜けた。
「ケダモノの狩人『ワイルドハント』」
 作り出した依代の向こう、正体を見破ろうとする様にローゼリットの赤い瞳が強さを増す。
「こうやって戦って、負けた相手を仲間に引き入れるのか? 『インストール・アイアンメイデン・リバース』」
 召喚されたのはかの拷問で知られた夫人のアイアンメイデン。それは次々と仲間達をその中へ捕らえるが、
「『大丈夫、痛くねェから』」
 ニッコリ笑うローゼリット。かつての属性を反転、医療道具となったそれは仲間を治療し、耐性を与えた。
「……、」
 対しワイルドハントは焔の翼で自分を包みこむ。熱風がモザイクを伝わり番犬たちを威圧、再び翼が開かれた時には四肢の異常は変わらなくも傷のついた肌は滑らかに、さながら不死鳥の様に力を増していた。だが、
「何故その姿を写し取っているのかは知りませんが、偽りの姿の内側を見せて頂きたいですね」
 ワイルドハントの真上、鳴る神楽鈴。グラビティ・チェインを力に変えて澄佳が蹴り込めば、強化の呪が砕け散る。そして衝撃にワイルドハントが体を折り曲げた隙をつき、トエルが地獄の炎に燃え盛るRosalesの槍様の先端を突き刺した。
 ワイルドハントの炎とトエルの焔が重なり、燃え上がる。決して混じり合う事はなく。


「もう少し阻害をサービスしてもよさそうだな」
 操られ襲いかかる槍をバールで捌きながら壬蔭は片足を踏み出し、拳に大気との急激な摩擦を起こす。
「『vermiculus flamma』」
 ワイルドハントから炎が叩きつけられた。が、壬蔭の拳にも炎が上がり、ワイルドハントを吹き飛ばし、紺も阻害を援護するべくシャドウエルフの力を籠めた弾丸を撃ち振るう。毒を孕んだ黒い影の塊は、炸裂するなり影の色にその皮膚へ沁み込んだ。
「俺から回復行くぜ?」
 声をかけ、体の前に差し出した迅の腕に、影から現れた黒鷲が止まる。
「『要らねぇモン、喰らってきな』」
 バサリ羽ばたく音、広げられた翼はどこまでも続く闇の様に。その影が壬蔭を包み込み『咎』を喰らい尽くした。
「猛禽というのも美しいものだな」
 迅の元に戻る黒鷲、軽く眼鏡を直しながら壬蔭が言う。
「ところで戦争は、いつ頃仕掛けるつもりなンだ?」
 ローゼリットはブレードを走らせ、ワイルドハントの前に滑り込んだ。が、
「暴走の、ケダモノの力を集結させた軍勢の用意をしてるんだよなァ?」
 無論役目は忘れない。リングの指を頭の後ろへ持ち上げ、後方の仲間の前に光盾を作り出す。
「なるほど」
 スヴァリンが大げさに、ぽんと拳で掌を叩いた。
「戦力集めて、戦争でも仕掛ける気かな?」
(「反応はなしか」)
 外周から観察していたつかさは、問いかけで得られるものはなさそうだと感じる。
「ま、それは置いといて」
 キンと研ぎ澄まされる瞳、スヴァリンが指先をくるりと回した。
「『各ドローン同期完了、モード:クラック、アクティブ。侵入経路確保、信号の改竄……』」
 実体のないゴーグルに演算が走る。そして、
「『承認。速やかに実行。君の視線、奪っちゃうよー?』」
 ドローン達が突撃、対しワイルドハントは茨を伸ばし絡めとろうとするが、
「本物に比べて隙がありすぎるな」
 刀の如き鋭利さを帯びたつかさの操る黒蔦が茨と鎖をくぐり抜け、強烈に傷を抉り切った。続き下方を滑り込むように見舞われた鮮烈な蹴りがワイルドハントを襲い、
「何か言いました?」
 交差し駆け抜ける瞬間に言ったトエルに、
「いや……」
 どちらかといえば褒め言葉なんだが。とは言わずにおく。そして、
「!」
 ワイルドハントが激しくもがく。デコイに紛れ後方に回っていたドローンの機械紐が首を括っていた。
「相手は俺だよ」
 スヴァリンが目を見開き笑う。
「紳士たる者、敵の視線を釘付けにしても仕方がないよね」
 怒りに目元の薔薇までが燃え上がった。ギシリ鎖が鳴ったかと思うと一直線にのび、スヴァリンの首へ巻きつく。動じないのは紳士だから、というだけではなく。護る為の戦いは信条、しかも今は、
「イージス、ありがと!」
 戒めを解いてくれた上、彼を守ろうと前に陣取った相棒を始め、仲間もいる。
「『汝、冥府を泳ぐ、熾炎の硬魚』」
 不意に澄佳の周り、風が吹いた。手にした護符が具現化させたのは喰らい力とした死神ザルバルクの魂の一部。掌にのる程の魚達は澄佳の式神となり現実を泳ぎ、炎をものともせずにワイルドハントへ纏わりついては増えていく。
 ワイルドハントは何度となく自分を炎で包んでは、鎖を茨を、槍を操り決して攻撃を繰り返した。その威力は決して弱くはない。だが状態異常を尽くかき消され怒りに支配され、思う様に戦えない。
「おっと」
 頬を傷つけ赤い線を引いた茨の槍を、庇ったつかさまで届かせまいと迅が握り込む。途端槍は棘をも出現させると迅の掌を貫通し、肩や腕までをも刺し通した。
「すまん」
「なんてことねぇよ」
 借りが増えたかとも思うがそんな事をいえば彼はさらに笑うのかもしれない。迅の肩越しに飛び上がったつかさは黒いオーラを拳へ纏わせ叩き込む。炎さえ凍らせるその一撃の隙に迅は間合いを抜けようとするが、ゆらりと後ろへ倒れ掛かった。
(「やべぇかな」)
 遠のく意識に思う。が、何か羊毛に包まれたかの様な温かさの後不意にはっきりした視界には、
「……サンキュ」
 誇らしげなイージスがいた。スヴァリンも治癒ドローンを解き放ち、迅は影から羽ばたき出でたシマフクロウに咎を喰らいつくせと自身を預け、
「もう一押し頼む」
「了解!」
 我慢強い盾役達、壬蔭の声かけにローゼリットも集中を途切らせることなく防御盾を送り出した。壬蔭はそのまま背後に回ると、鋭い貫手でワイルドハントの動きを鈍らせる。
「『戦い争う者の宿命です。どこへ行こうと、決してあなたを逃しません』」
 紺の詠唱。ワイルドハントが慄いた。戦いの最中に散った者の無念の怨嗟が、赤黒くとぐろを巻いたかと思うと敵に襲いかかり翻弄する中を、器用に泳ぎ抜き辿り着く澄佳の熾炎硬魚達。
(「本当に何をしようとしていたのでしょうか」)
 追い詰められる一方のワイルドハントと茨と炎を介して戦いながら、トエルは改めて感じずにはいられない。
「!」
 喰らいつこうとした薔薇へ、ローゼリットがフリルスカートをひらめかせ蹴り放った弾丸がぶつかった。凍りついた花弁がモザイクの中をどこまでも落ちて行く。
「『鍵はここに。時の円環を砕いて、厄災よ……集え』」
 トエルの白い髪がひとりでに切り取られては消え、白銀の茨が現れた。茨を体とRosalesに巻き付かせ、トエルはゆっくりと歩き出す。捻じ曲げられた時間。仲間には恐らく一瞬、ワイルドハントは認識する間もなく、
「消えて下さい」
 茨が突き刺さり鎖が弾け飛び鳥籠が割れた。だがワイルドハントは飛び去ることはできず消えていく。駆け寄ったローゼリットに調べる時間は与えられなかった。
「こじんまりとした所だったのですね」
 モザイクが晴れ元に戻った教会の中、紺が言う。一通り見て回った澄佳は、
「古い教会というだけで、怪しい所もないようです」
「儀式等の形跡は無いか……少しでも情報があればよかったが」
 壬蔭が言った。迅は、
「未収穫でもそれはそれ、ってな」
 トエルを助け出すという目的は果たしたのだから。
 番犬達は教会の外に出る。と、トエルがRosalesに焔を纏わせた。
「あー……気持ちはわからないでもないが、」
 つかさが言った。持ち主がいる可能性もある。トエルは焔を消し、
「消失させれば、これ以上何も起きないかと思ったので」
「ここはもう、大丈夫だろう」
「……そうですね」
 そう言いながらも、トエルは思う。
 ――二度と思い出せなくなるくらい全部、燃やせればいいのに。
 だが、今は。

作者:森下映 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月10日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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