●百花魁の影映し
疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)がその場所を訪れたのはなんとなくだった。
なんとなくで足を運んだは深山。
わずかに秋の色を纏い始めた山の中を分け入れば、そのうち異質なものが目に留まる。
そちらへ向かえばああ、と声が零れた。
そこにあったのはモザイクの塊。
こういった物がある話はすでに聞き及んでいた。ヒコはこれに寄せられたのかねと小さく笑い零した。
このモザイクの中がどうなっているかは、外からではわからない。
「さぁて、どうするか……ま、こうするしか」
ないよなと零して、モザイクの中へ足を踏み入れる。
外からではわからないのなら、中へ入るしかない。
足を踏み入れた先は、どこか纏わりつくような空気。
「こりゃあまた、面妖な」
視線巡らせれば、その場所は普通ではないことは明らかだった。
木造の小屋が頭上で浮き、木は地上からではなく横から生えて。
てんでバラバラ、ちぐはぐでただ何の法則もなくこの空間に置かれただけの世界。
その様子に目を見ていればふわりと、花の香。それは良く知った梅の香。
其れに惹かれ、ゆるりと視線向ければ歪に生えた木の上に自分と同じ顔をした、けれどその両腕は人のそれとは違うものが興味深げにみている。
「この場所にくるとは物好きだなぁ。それとも何れ繋がる縁でも、お前さん持っているのかい?」
「さあ、どうだろうな」
答えながらヒコはいつでも戦えるように身構える。それが敵である事はわかりきったことなのだから。
それは敵意を抱かれている事をわかった上で楽しげに笑いながらふわりと両の腕――翼を広げ。長い髪をふわりと揺らしながらヒコと同じ場所に降りてきた。
「茶と花を共に語らうのも俺としては面白い。けどしかし。しかし、残念ながらこの場所を知られたからには生かしちゃおけない」
死んでくれるかい? と抗う答えが返るのをわかりきった上でそれは問う。問いながら風に舞った花弁を捕まえ、食み笑むのだ。
その笑みにふと息吐いて、ヒコも笑って返す。
「こっちもやられるわけにはいかないんでな」
それならば、結論は一つ。茶と花を共に語らうも無く、どちらが生き残るか決着付くまで戦うだけ。
それが一層深めた笑みはどこか歪んでいて、とんと地を蹴って梅の香する風と共にヒコへと襲い掛かった。
●救援
ワイルドハントについて調査していた人がドリームイータ―の襲撃を受けたようだと、夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)は集ったケルベロス達へと告げた。
「襲撃を受けたのは、疎影君。疎影・ヒコ君なんだ」
そのドリームイータ―は自らをワイルドハントと名乗っている。『事件の場所』をモザイクで覆って、その内部で何らかの作戦を行っているようなのだ。
「このままだと疎影君は危ない。急ぎ近くまで送るから救援に向かってほしいんだ」
そして、そのドリームイータ―を撃破してほしいとイチは言う。
戦いの場所となるのはモザイクの内側でになる。
そこは特殊な空間ではあるが戦闘に支障はない。
「相手となるドリームイータ―は疎影くんと同じ顔をしていて、髪は伸びてる。それから、その両腕は翼となっているんだ」
その面を映したようなドリームイータ―は花の香りで惑わせ、その翼での攻撃。自らが傷つけば花嵐を纏って傷を癒すようだとイチは続けた。
「疎影君が簡単にやられるとは思わないけど、一人じゃ苦しいと思う。だから皆、よろしく頼むよ」
ワイルドハントを名乗るドリームイータ―の事件はまだ始まったばかり。
どうして出会ったのか。それは敵の姿とも関連があるかもしれないが、今は何より助けに行く事が一番。
イチは急ぎ向かう為に、ケルベロス達をヘリオンへと誘った。
参加者 | |
---|---|
疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998) |
狗上・士浪(天狼・e01564) |
オルテンシア・マルブランシュ(ミストラル・e03232) |
アウィス・ノクテ(ルスキニア・e03311) |
阿守・真尋(アンビギュアス・e03410) |
ルース・ボルドウィン(クラスファイブ・e03829) |
茶野・市松(ワズライ・e12278) |
野々宮・イチカ(ギミカルハート・e13344) |
●歪に笑う
其の身目、その出で立ち。
見様見真似にしちゃ上等だと疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)は、息を吐く。
「だが、それが許されると思うなよ」
「は! そっちこそ他人の庭に勝手に踏み込んできたんだ、文句は言うなよ!」
その言葉と同時に振るう腕は翼。
一歩引くが相手も早い。眼前に迫りかける翼の色――しかし、その攻撃は届かない。
突如響いた音は潰れたような、そんな音に聞き覚えあるはずなのに、その音と相まって合わぬ曲。
しかし耳障りな音に驚いたか夢喰の挙動も乱れ、その間に割って入る影がある。
その影は懐に抱かれる前に胸元を蹴りつけ向き直る。
「こんなことなら、厄除けの守のひとつでも握らせておくんだった……なんて」
そっちの専門はむしろあなたの方と、オルテンシア・マルブランシュ(ミストラル・e03232)は問題ないわねと笑って、でもと少し不服そう。
「つれないわね。未知へ赴くというのなら私に声くらいかけてくれてもいいのに」
その様に瞬いて、ヒコ悪いと苦笑する。
「ほら、護りはちゃんと任されたから。存分に」
「おーおー、ヒコにそっくりじゃあねぇの。あちらさんの方が男前かね」
そこへ明るい声が響く。茶野・市松(ワズライ・e12278)の軽口たしなめるようにのしっと、その頭上へ乗ってきたウイングキャットのつゆは尻尾揺らす。
市松のつゆもまた、ヒコの事は知っているのだ。それに弟分の市松。助けに行ったところでも思いのままに暴走するだろうから、それを止めるのはつゆの仕事。
そして、見知った顔はそれだけでなく。
「おーっす、ヒコ。偽モンに随分気に入られてんじゃねぇか」
狗上・士浪(天狼・e01564)は夢喰から視線を動かし。
「あれが噂ンなってる奴か……確かに似てやがる……まぁ、こちとら全力で邪魔するけどな」
ヒコと視線合えば士浪は掌と拳を音たてて合わせる。
「ヒコ、そこの猿真似野郎は遠慮なくブン殴れ。何なら手伝うぜ」
最初からそのつもりで来てるけどな、と口端あげる士浪に心強いとヒコは返し、阿守・真尋(アンビギュアス・e03410)の漆黒の視線を捕らえる。
すると真尋はふと瞳細めた。
別の姿を真似るだなんて、どういった敵なのか興味はあるけれど、今は。
「ヒコがその似た顔を殴りたいというのなら、協力しない道理は無いわね」
そう言って戦う意志を見せる真尋。
そして明るい声色も響く。
「間に合った? よし、間に合ってるね!」
野々宮・イチカ(ギミカルハート・e13344)は無事なその姿にほっとし、おまたせ! とにぱっと笑み浮かべた。
「イチカ、お前も……ありがとな」
「イチカ、友だちとの待ち合わせ時間には遅刻したこと、ないからねえ!」
と、もういいよとイチカはルース・ボルドウィン(クラスファイブ・e03829)をつつく。
「ヒコよ。存分に殴っ……音割れが酷いな」
ルースは今まで近くの物を殴り、ひどい音を立てていた拡声器のスイッチを切り、嫌な音が良く響いたもんだと感心。
その姿を確認し、アウィス・ノクテ(ルスキニア・e03311)もその音に合わせ奏でていた不協和音を止め、紐を引っ張る。すると耳栓がすぽっと抜ける。
「髪が長くて、手が翼のが敵。同じ顔、同じ姿。コピーして何がしたいのかな」
自分探し? とアウィスはこてんと首傾げる。
「あっルースくん、髪の長くて翼がばっさーってほうです!」
「毛の長い方が敵……毛の長い方が敵……」
ルースはあっちが偽物、こっちが本物と視線をいったりきたり。その様にそうそうとイチカは頷いた。
そしてルースはヒコに改めて視線向け。
「存分に殴って腹の虫を潰すがよい……俺も殴るが」
そう言って、とんとFTC-004 Messiahで地を軽く叩く。
集った仲間達――その存在は心強い。
「仕切り直しだな」
ヒコは一度、瞳を伏せ、改めて己の可能性の姿を真っすぐ、正面から捉えて。
「あの面殴るのに、力を貸してくれ」
その言葉に言ってくれると夢喰は口端あげて笑う。
「人数増えてもやることは同じだ」
ここを知ったからには帰せるわけないだろうと。
●風の香は違う
「それじゃあ、はじめよ!」
キラキラ輝くオウガ粒子。イチカの纏うオウガメタルから放たれる光は仲間たちの力になる。
「友だちの顔されてるとすっごいやりづらいねえ。もし自分の顔だったらへいきではたけるんだけどなあ……」
その粒子を振りまきつつイチカは零す。
敵の夢喰はヒコの顔とそっくり。
その姿の違いから間違えることはないが、やはり少し複雑な気持ちになる。
「本当にそっくりだな、お前さん」
市松はその脚に流星の煌めき、そして重力を乗せて走り込む。
近くに接すれば、その顔立ちも、瞳も、髪の色も同じのように見える。
青い瞳で捉えたその姿は――冗談言いあうような、そんな仲の相手ではない。
「いや、やっぱヒコのが男前か!」
そう言い放ち、足を振り抜く。その様見つつ、当たり前でしょうと言うようにつゆは羽ばたきを前衛の皆へ。
「ま、同じ顔のよしみで相手してやるぜ!」
かかって来いよと市松は挑発し、意識を自分へも向けさせる。
夢喰と向かい合うその様にルースはふと零す。
「テメェの柄した殻を潰す、か……」
一体それはどんな気持ちなのか。そして、そうする意味ははたして何なのか。
「強化された番犬の姿を借りて美味い汁でも吸おうってのか? 笑わせる」
吐き捨てるように紡ぎ、憮然とした顔で続ける言葉。
「俺は渋い汁しか啜ってねぇ」
竜鎚を振りかぶりそれで攻撃する――と見せかけ地を撃った反動乗せ、その柄を支店に電光石火の蹴りを横っ面に叩き込む。
「蹴りかよ!」
「だましは喧嘩の常套手段だろ」
思わずと言ったように零した夢喰の言葉に何のことは無いと言う様に返す。
応援、とアウィスが奏でるのは『紅瞳覚醒』だ。立ち止まらず戦い続ける者達の歌を、Consonoの弦を弾きながら澄んだ声で歌う。
その歌の響きは、前衛の皆へ守りの助けとするために。
心置きなくと想いも込めて。
続けてその歌に合わせるかのように起こるカラフルな爆発。
真尋からの鼓舞は己も含めた前衛の仲間へと向けたもの。その中から飛び出すようにライドキャリバーのタジリタも突撃を。
オルテンシアの掲げた黄金の果実の輝き。その恩恵は守りの助けを前衛の皆に。
その間に視線向けたミミックの従者はオルテンシアの意をよく汲んでいる。
ぽわぽわと生み出したエクトプラズムを武器の形にして夢喰へ。
今は主のかわりに攻撃の時と張り切っている様子。そのカトルの様子にオルテンシアはよくわかってるじゃないと笑み零す。
夢喰の気が逸れた一瞬に、ぶつけた一撃。
殴打されたような衝撃に夢喰はぐるりと視線を向け姿捕らえる。
「――……お前の相手は俺だろう?」
不敵に、冷静に笑ってみせるがヒコの心はそうではない。
それを夢喰は知っているのか、知らぬのか。
「そうだな、最初に仕留めるのはお前だな!」
惑えと笑う。花の香を風の流れに乗せて振る舞うその一蹴を掻き消す姿があった。
割って入ったのは真尋。その身の攻性植物が風切りその香りを振り払う。
「本当に似た顔……そっくりね」
その刹那、改めて捕らえた敵の姿。
夢喰は、敵。姿真似た敵だと解っているものの時折迷いそうになる。
けれど、浮かべる表情は違うものねと真尋はそれを振り払った。
ちっと舌打ちする夢喰の視線は一瞬、戦いの場を撫でる。
「余所見してるたぁ、随分余裕じゃねぇか」
士浪は夢喰の気を引くように声かけて繰り出す一撃は竜砲撃。
衝撃に仰け反る一瞬を、さらに見逃しはしない。
「きみも、だれかの影を――踏む」
つきりとした痛み。それはイチカのうなじから伸びるコード、その先のプラグがささる痛みだ。
そこから注ぎ込むのはかつて目にした統計と膨大なデータから、ひとの得る『憧憬』にまつわる記憶の一端。
夢喰にとってそれはどうとるものなのか。けれど、痛みがあるのはわかる。
動き止まる一瞬。それを見逃さず士浪は走り込み一蹴を。
その衝撃は痺れとなり夢喰の挙動は鈍っていた。それは攻撃の機を奪われることさえあるほどに。
守りも、市松とオルテンシアと、そして真尋とダジリタ。
傷を追えばアウィスが歌い、その傷塞ぎ、眠りに惑わされそうであれば動けるものが取り払う。
それに対し夢喰の取れる事は攻撃と、己を癒す事。
戦いの趨勢は徐々に形になってゆく。
●マガイモノ
夢喰はヒコを狙っていた。それはこの夢喰自身の在り様故なのだろう。
けれど、守って庇いに入りに行くものがいる。だからヒコも自由に戦え、力の限りを振るえている。
そう望んだのだから、皆が今、力を貸してくれているのだ。
澄んだ歌声が響く。
「Trans carmina mei,cor mei……concordia」
強く弱く、響く音は寄せて返す波の様に。
先ほどまで歌っていたものとはいつの間にか、曲が変わる。アウィスの歌声の力は真尋の傷を癒していく。
どうかどうか、貴方の傷を癒したい。この想いよ、歌よ――届いてと願い込めた響きが満ち溢れた。
その響きに真尋はふと、笑み零す。心地よい良き響きと思うのは自分もまた歌を生業とするものだからだろう。
踏み込んだ真尋はブラックスライムの内に夢喰を沈める。
しかし、その中に沈みきらず夢喰は払い出てきた。
夢喰はそこで花嵐を纏う。己の身の傷を癒し、そして受けた束縛を取り払う為に。だが完全にそれらを払いのけられるわけではなかった。
その己を回復する姿に、イチカは次の手を打つ。
「ヤだっていわれてることを続けさせるわけにもいかないからなあ」
ヒコくんの力になるよ! とイチカは対デウスエクス用のカプセルを手元に遊ばせて。
「きみがそれを望むなら! イチカにおまかせ!」
イチカはそのカプセルを夢喰へ。敵の治癒を阻害するそれは夢喰の身を蝕んでいく。
その間に市松は懐から今日のオススメを取り出した。
それは噛めばどんな小さな的でも射貫く事ができるようになる代物というカリカリラーメン。
「カリッと噛み砕け!」
グラビティの力で生み出されたそれは仲間への手向け。
その狙いを鋭く、そして一層確実に近づける為。
それは詰めも近くなったからだ。
すぅと息ひとつ吐いて、練り上げた気を利き手に収束させる。
だんと音たて一際深く踏み込み、神速で詰めた士浪はその手を突き出す。
「荒れ狂え……!」
敵に一撃、掌打を叩き込めば気の流れが夢喰の体内で暴れ回っていた。
一撃打ち込んで、同じ顔でもこれは夢喰。まったく違うものだと士浪は思う。共に戦い重ねたからこそ、言葉に出きずとも感じるものがある。
くそ、と悪態ついて夢喰は花の香で惑わせる。
風待草とも云うその花の香は――ヒコ? と零し。
けれど、その香りの流れの先でオルテンシアは違うわと惑いを払うべく踵を三度打ち鳴らし銀の飾りが輝いた。
この香に覚えはあれど、似たものに誘われる程の弱き縁でもないのだ。
「――ベットは済んだ? 今回は特別、高くつくわよ」
其の姿を真似たのだからとオルテンシアが掲げる白のカード。
夢喰に向けた一撃に続けて、カトルもぴょんと飛び噛み付いてくる。
それを振り払った夢喰へと響く言葉があった。
「命の行動原理はふたつ。『愛』と『恐怖』だ」
その懐へルースは飛び込み穿つ。体幹を砕き思考を折る――この痛みは愛か、恐怖か。
どちらととるかは、聞くまでもないと呻く声に一瞥する。
それに――すでに際まで追いつめている。
ルースはヒコに行けと視線で促した。
そしてイチカがトドメはゆずったげるよ! と笑う。
「借りを作っちまうな」
そうさせてもらうとヒコは言う。けれど、何言ってるのというようにイチカは零す。
「ははあ、貸し? アハ、そんなの必要ないよ!」
だって友だちなんだから!
瞬き、それもそうだとヒコは地を蹴った。
「神降ろせぬ輩が其の面で驕るな」
其の姿で現れたるが、どんな因果か。
それは知らぬ所、わからぬ所。けれど、その姿は少なくともヒコにとってはそうあるべき、為るべき意味を持つものなのだ。
そしてその意味を、在り様を、価値を。
何時か至る事あるやもしれぬ終着点の可能性のひとつ――それを易々と姿映されてはその心は決して穏やかではないのだ。
だからこそ、それは面映した敵の敗因。
『花喰鳥』を、と口開く。
血を蹴り接する。双眸相見える。苔色がぶつかり片方は鋭く、片方は見開かれる。
「『花喰鳥』を舐めるんじゃねぇ」
落し前をつけるならば己の手で。
駆けつけてくれた仲間からの助けと、その想いと。
「同じ姿でもお前は――」
すべてを載せて。
「どうあってもマガイモノだ」
抱く想いの全てを払う様な一蹴はヒコの纏う香と共にある。
夢の中に沈めとヒコは消えゆくその姿に瞳細める。
これは違う。こんなに軽いものではあってはならないのだと目の前から消えることに安堵にも似た感情があった。
最後に消えゆくはその口元。花の香りに紛れて笑みを象るそれだけでは、夢喰が何を思ったのかはわからぬまま。
そして知る必要も無いのだとヒコは思う。
と、どろりとしたようなまとわりつく感覚も消える。
それはワイルドスペースの消失だ。
「ワイルドスペース、消えたね」
「調べるものがないな」
周囲を見回しアウィスは零し、ルースも頷く。何か手がかりがあればと思ったがぱっと見る限り変わった所はなさそうだ。
大事ないかと咄嗟に伸びるオルテンシアの手。
それは触れる前に握り込まれ――その指が鼻先を弾く。
「心配かけた分の支払いよ」
その鼻先をヒコは撫で、安いもんだと笑った。
のだが、しかし。
「じゃあ私はオデコに。私にも心配かけた分の支払い、お願いね」
そう言って楽しげに笑み、真尋は手を狐の形にして弾いて見せる。
「お、デコピン勝負か? よーしこういうのは任せろ!」
笑いながら市松が続き、勝負だとルースに持ちかける。弾く力なら負けないと練習に余念なく、呆れたようにつゆが一声。
何故勝負と絡んでくるのか、そもそもどんな勝負なのか。その流れは不思議ではあるのだが受けて立たぬわけにはと思うルース。
「そういうのは得意だな」
ルースは右手をぐっと握り込む。あきらかに軽くすまなさそうな気配だ。
「判定はイチカがしてあげる! でもイチカも心配したんだよ、ヒコくん」
だから一回とどこか楽し気に。
何だこの流れとヒコは思うのだが、士浪にぽんと肩叩かれくらっとけと言われ。
「じゃあ私も今度はおでこに」
オルテンシアも笑って再度と示してくる。
皆の様子にヒコはしょうがないと笑って、来いと構えた。
無事に終わり安堵したからこその戯れは――心地よい。
さざめいていた心は今、穏やかなものだ。
作者:志羽 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年10月7日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 9
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