怪奇譚『ツギハギ』

作者:飛角龍馬

●ツギハギ
 夕暮れ時の陽が廊下を暗く影を落としていた。
「ねえ、貴方達」
 不意に背後から声がして、放課後の会話に興じていた中学生の男女が驚いて振り返った。
 黒のフードを目深に被った見慣れない少女が、影の中に立っている。
「怪談に興味はある?」
 闇を湛えた目に見据えられて、少年と少女が思わず頷いてしまう。
「……この学校に立ち入り禁止の旧校舎があるのは知っているわね」
 黒のフードを被った少女――ホラーメイカーは、その名の通りに怪談を語り始めた。
 夜の旧校舎には、動物の死骸を繋ぎ合せた化け物『ツギハギ』が出没するという。
「以前、旧校舎では色々な小動物が飼われていたの。それが一夜にして惨殺されるという事件が起きた。飼育小屋も襲われて、朝には辺り一面、血の海だったそうよ」
 奇妙なことに、動物達の死骸は頭や手足など、どこか一部が切り取られていた。校舎裏で飼われていたという猫も、首なしで発見された。『実験』の材料にされたんだ、と生徒の誰かが言い出した。
「それから暫くして、当直の先生が見てしまった。それは飼われていた動物達が奇妙に繋ぎ合わされた大きな化け物で……頭は皮を剥がれたモルモット、体は汚く毛が逆立った猫、背中には鳥達からむしり取って繋ぎ合せたボロボロの羽、爪は刃物のように鋭く、白濁した目のウサギ達を引き連れて……」
 旧校舎が立入禁止になったのは実はそのためだと、ホラーメイカーは話を締めくくった。
 少年と少女は思わず顔を背けていた。
「まさか、そんなことあるわけ……」
 恐怖に駆られた少年が反論しかけ、そして絶句した。
「嘘……」
 少女も信じられないというように呟く。
 目の前にいたはずの黒フードの少女が、跡形もなく消えていたのだ。
 少年は怖れを振り払うように首を振って、力強く頷いた。
「ああ嘘だ。嘘に決まってる。確かめに行ってみようぜ。化け物なんて出るはずないんだ」

●イントロダクション
「ドラグナーのホラーメイカーが事件を起こそうとしています」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)がケルベロス達にそう告げた。
「ホラーメイカーは作成した屍隷兵を学校に潜伏させ、生徒を襲わせるつもりのようです。目をつけた生徒に怪談を聞かせ、興味を持った彼等が現場に足を踏み入れた際、屍隷兵に殺させるという手口ですね」
 今回は、とある中学校に通う少年と少女が標的になっているのだという。
「怪談の舞台となっているのは、中学校の敷地内にある、立ち入り禁止の旧校舎です。夜になると、惨殺された動物達が繋ぎ合わされた『ツギハギ』が出るとかで」
 怪談は怪談として、それを元にした屍隷兵が旧校舎に放たれているのは事実だ。
「このままでは、怪談を聞かされた生徒二人が犠牲になってしまいます。彼等が被害に遭わないよう対策した上で、動物型の屍隷兵『ツギハギ』を駆逐して下さい」
 怪談を確かめにやってくる生徒二人については、危険に巻き込まれないよう、何らかの対応が必要だろう。
「ツギハギとその配下は、夜、旧校舎内の中庭で獲物を待ち構えているようです」
 旧校舎自体は廃墟の学校といった様子で、侵入も、中庭に出るのも、そう難しくはない。
「戦闘になると、ツギハギは毒の爪で切りつけてくるほか、味方の腐敗を促進して強制的に傷を埋めたり、足をすくませる叫び声を放つ模様です。配下は、屍隷兵のウサギが四体。こちらは爪で傷口を悪化させる斬撃を放つ他、跳び上がって毒を持つ前歯で噛みついてくるので注意して下さい」
 ホラーメイカーは現場に姿を現さず、屍隷兵に一般人を襲わせることを旨としているようだ。人的被害を出さずに屍隷兵を倒しきるのが、今回の目的となる。
「怪談は作り話だとしても、動物を元にした屍隷兵が作られたのは事実です。被害が出る前に、どうか対応をお願いします」


参加者
ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)
ギヨチネ・コルベーユ(ヤースミーン・e00772)
エルモア・イェルネフェルト(金赤の狙撃手・e03004)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
クーゼ・ヴァリアス(竜狩り・e08881)
櫂・叔牙(鋼翼骸牙・e25222)
日野原・朔也(その手は月を掴むために・e38029)
アルシエル・レラジェ(無慈悲なる氷雪の弾丸・e39784)

■リプレイ

●戦いの舞台へ
「オレ達はケルベロスだ! こっから先は任せてくれ!」
 夜の旧校舎正門前で、提灯を腰から提げた日野原・朔也(その手は月を掴むために・e38029)が、やってきた中学生の少年と少女に事情を説明していた。
「そんなこと言って、お前も噂を確かめに来たんじゃないのか?」
 相手を年下と見た少年が半信半疑に返し、どう話したものかと朔也が頭を抱える。
 苦笑しながらノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)がフォローを入れた。
「ゴメン、今回はちょーっとガチっぽいんだ。ここは私達に譲ってくれないかな?」
 朔也の説明を引き継ぎ、要点を押さえて話していくノーフィア。話の締めくくりに、ケルベロスカードもあるよ、と二人に見せた。
「この先は危険でございます。我々に任せて、どうぞお引き取りを」
 話すべきことは話したと判断したギヨチネ・コルベーユ(ヤースミーン・e00772)が丁寧に告げる。巨漢と呼べる彼に見下ろされ、少年と少女は気圧されたようだった。
「ねえ……もう行こうよ」
「ああ、帰ろうぜ……」
「頑張れ男の子ー。彼女を無事に帰宅させるのは君の役目だ! なーんて」
 気をつけて帰ってねー、と手を振って送り出すノーフィア。ボクスドラゴンのペレも応援するようにパタパタ羽ばたいた。
 後ろでやり取りを見ていたクーゼ・ヴァリアス(竜狩り・e08881)は軽く一息。
「ひとまずは作戦通りか」
 ベルトで固定した照明に視線を落とす。腕組みしながらクーゼは独りごちた。
「屍隷兵……本当に、悪趣味な話だ」
 時を同じくして。
「死者の冒涜……許すことは、できませんね……」
 櫂・叔牙(鋼翼骸牙・e25222)は、念のため旧校舎の周りを見回っていた。ネックライトが地面を照らしている。
 そのうちに背後からライトとエンジン音がゆっくりと近づいてきた。
 プライド・ワンに乗った機理原・真理(フォートレスガール・e08508)だ。
「見たところ異状なしですね」
「こちら、も……。問題はない……ようです」
 そのまま正門前に行き着くと、既に中学生達を追い返したケルベロス達が待っていた。
 合流し、校舎への侵入を試みる。派手にガラスの割れている窓があったため、中に入ることに苦労はなかった。
 廊下ではエルモア・イェルネフェルト(金赤の狙撃手・e03004)とアルシエル・レラジェ(無慈悲なる氷雪の弾丸・e39784)が仕事を終えて待機している。先に校舎内に入り、正面扉をはじめ、出入りできそうな箇所にキープアウトテープを張り巡らしていたのだ。
「わたくしにかかれば、キープアウトテープもこの通り。我ながら見事な張りっぷり、芸術的ですわ」
 仕上げとばかりに今しがた侵入に使われた窓も封鎖し、アルシエルが胸を張る。
「それにしても、いかにも怪談の舞台にされそうな旧校舎ですわ。手入れくらいするべきでしょうに」
「同感ですね。ひとまず上手く行ったようで何よりですが」
 微笑するアルシエルは、自分とそれほど年齢も変わらない中学生達の行動に呆れを覚えていた。
(「全く理解できないな。人ってどれだけ好奇心旺盛なんだろう。命の危険と天秤にかけてみるべきだろうに」)
 埃の積もった暗い廊下を歩きながら、真理が言う。
「学校の怪談って、ちょっとワクワクする感じではあるですが……それが本当に危険なものになっちゃったら駄目なのですよ」
 中庭への扉はすぐに見つけることができた。
「この先でございますな。参りましょう」
 ギヨチネにクーゼが首肯し、覚悟を秘めた面持ちで言った。
「ああ、終わらせてやらないとな。これ以上の悲劇を作り出す前に」

●戦闘
 吹き抜けの中庭は粘つくような空気に包まれていた。
 腐臭が漂い、薄雲が月明かりを隠している。
「なるほど、見た目は概ね予想通りかな」
 待ち構えていた獣型の屍隷兵がのそりと現れるのを前に、アルシエルがさらりと言った。
 ツギハギにされた巨体が、皮の剥げたモルモットの口から腐った息を吐く。猫のものらしき前足を持つ四体のウサギは、虚ろな目をしたまま前歯を剥いた。
「素体にされた骸達へ。剣と月の祝福を」
 ノーフィアが二振りの剣を掲げて告げる。
「状況開始。出力リミット、ミリタリーまで解放」
 叔牙の背中に龍の両翼と見紛うばかりの蒼く輝く機械の羽が広がった。そこから空気中に熱が放たれ、叔牙がオーラを立ち上らせる。
「眠りに就いている所。叩き起こされたのは、気の毒ながら……生者を、手にかけさせは……しない!」
「ああ、止めてみせよう。なんとしても」
 月光の如き光を湛える斬霊刀を手にクーゼも構えを取る。
 獣達が襲いかかってきたのは同時だった。
「まずはこれで」
 アルシエルが縛霊手を掲げると、溢れ出した守護の紙兵が前衛を取り巻いた。
 ギヨチネ、真理、クーゼの三人が敢えてツギハギの前に出て攻撃を誘い、ツギハギの体力さえ奪う叫びに身を晒す。
「作戦通りにお願いするですよ!」
「ああ、任された!」
 真理がアームドフォートの砲口をウサギ達に向け、背中合わせになった朔也がバスターライフルの狙いをツギハギに定める。同時にトリガー。朔也の光弾を受けたツギハギがわずかに衰弱を呈し、飛び掛かるウサギを真理がビームで迎撃した。
「犠牲者を増やすつもりでございましょうが……思い通りにさせるわけには参りませぬ」
 ギヨチネがハンマーを手に飛び上がり、ケルベロス達が瞬時に距離を取る。
 腕を痺れさせるほどの一撃に地面が円形に抉れ、衝撃と同時に紋章が展開。ウサギ達を跳ね飛ばしつつ呪詛を刻みつけた。
「お前の相手はこっちだ!」
「これくらいの攻撃、では……!」
 暴風にも似たツギハギの毒爪をクーゼが剣を以って受け止め、そのすぐ後ろで叔牙が跳ねてきた別のウサギを跳躍して回避。宙を舞う態勢から星型のオーラを蹴り飛ばした。直撃を受けた矮躯が地面を転がり、泥と化して消える。
「ウサギ狩りだなんて、趣味ではないのですけどっ」
 襲い来るウサギを捉えたエルモアが至近距離でバスターライフルを放ち、蒸発させた。
「こいつは頼みましたですよ」
 跳んできたウサギにガチガチと腕を噛まれながらも、真理は力任せにそれを振り払い、ツギハギの前に飛び出していく。
 プライド・ワンが炎を纏いながら放り出されたウサギを跳ね飛ばし、
「というわけで、君の相手はこっちだよ」
 地面を転がるウサギにノーフィアが重い直剣を振り下ろした。魂を喰らう一撃に両断され、捕食される屍隷の獣。その感覚にノーフィアが思わず眉根を寄せる。
「うーん、いまいち。新鮮さがちょっと」
 屍である獣に恐れはないらしく、味方や体の欠損も意にかけず更に飛びかかってくる。
「此処を通りたくば、この楯を壊して御覧なさい」
 毒爪による裂傷を胸部に負ったギヨチネが、毒にふらつきながらもツギハギの前に立ちはだかる。九曜とペレが自らの属性をインストールしてギヨチネの傷を癒やし、漆黒の竜――シュバルツがボクスブレスをツギハギめがけて噴き出した。
「こいつは痛いぜー!」
 エクスカリバールから無数の杭を出現させた朔也が、モルモット型の頭を殴り飛ばす。
 宙を跳んで襲い来る最後のウサギに、アルシエルは冷たく一瞥を送るのみ。
 作戦通りにクーゼが割って入り、攻撃を肩代わりしながら反撃する。
 ウサギが一閃を身に受けながら宙返りして着地した瞬間、
「後方不注意、ですよ」
 地面を踏みしめ、真理が薙いだチェーンソー剣がウサギを真っ二つに切り裂いた。

●終焉
 悲鳴じみた金切り声を挙げるツギハギの体が溶け崩れ、全身の傷口が埋まっていく。
「酷いものですわね……」
 エルモアが両手の砲火器の狙いを定めたまま呟いた。
「これほどの姿になり果ててまで、戦い続けるのでございますか」
 高く跳び上がったギヨチネが虹を纏いながら急降下蹴りを巨体に叩き込む。着地と同時に来た鋭い毒爪の反撃に、精悍な肉体が深く切り裂かれた。アルシエルがすかさず気の力を飛ばして刻まれた裂傷を塞ぐが、完全な解毒までは望めない。
「どうしてこんな酷い事……本当に必要があったの?」
 ガトリングガンが悲嘆を叫ぶように轟き、銃撃を続けながらもエルモアは胸に痛みを覚えていた。叫びを挙げながらも醜悪な巨体は動きを止める気配がない。
「意外にしぶといなぁ……!」
 ノーフィアが十字切りでツギハギの体に深い傷を負わせるが、それでも尚、敵は鼠でも捕えるように爪を振るってくる。
「そのような動きでは……仕留めることなどできはしない……」
 目標を逸らすかのように目の前に現れては跳躍して、ツギハギの視界から離れる叔牙。
 そこにプライド・ワンに飛び乗った真理が疾走してくる。座席を踏み、跳んだ。
 スピンしたプライド・ワンがツギハギの右前足を轢き潰し、同時に真理が降下。チェーンソー剣を振り下ろして羽を切り落とした。ツギハギはひるまず真理が着地した瞬間を狙って毒爪を振るう。受傷部から内蔵機関を覗かせながら距離を取る真理。
「流石にダメージは重なるね」
 アルシエルが味方を見渡して言う。
 護りを担う数名は、戦闘開始時からウサギの攻撃も引き受けつつ、可能な限りツギハギの猛攻の前に身を晒していた。当然、ダメージは蓄積する。
 九曜がギヨチネを癒やすのを見て頷き、アルシエルは告げた。
「日野原はクーゼを。あとはこちらで引き受ける」
「分かった!」
 優先順位を判断、アルシエルが的確なヒールをかけていく。
「戌神護法・破邪顕正符……!」
 朔也が破邪の呪が記された御札に力を込め、それを阻止しようと迫ったツギハギの爪を真理がチェーンソー剣で受け止め、言葉をぶつけた。
「相手はこっちなのです!」
 破邪の符で傷を癒やされたクーゼが斬霊刀を手にツギハギに打ち掛かり、
「……捉えた……!」
 叔牙がドラゴニックハンマーからの噴射で加速。懐深くに入り込んで全力で振り抜いた。
 不快な音をたててツギハギが大きく仰け反る。
 畳み掛けるケルベロス達。
「ゆっくり休んでくれな。もう頑張らなくていいからさ」
 朔也がバスターライフルから冷気を帯びた光線を射出、ツギハギの胸と前足が凍結する。
「ここで終わらせてやる」
 ツギハギの前に踏み込んだクーゼが刀の柄に力を込めて、
「瞬き、穿てッ! 七の型、瞬華瞬刀ッ!」
 剣閃の花が咲いた。
 九重流双剣術七の型、瞬華瞬刀。神速の一閃に魔力で生成した太刀筋を加え、斬撃の弧が幾重にも生じる。ツギハギの体に一瞬で深く無数の裂傷が刻まれた。腐敗を促進させて傷を癒そうとするツギハギだが、最早、無残に溶け崩れていくばかりだ。
「我、流るるものの簒奪者にして不滅なるものの捕食者なり。然れば我は求め訴えたり、奪え、ただその闇が欲する儘に――」
 ノーフィアの詠唱に合わせて、ツギハギの足下に魔法陣が出現。黒い球体の重力場が生成される。
「美しくありませんわ。こんなツギハギ、美しくありません!」
 生物をベースにした屍隷兵という存在、その運用法。醜悪極まるそれらが許せないとエルモアが首を振り、ツギハギを見据えた。
「カレイド、散布――!」
 六機のカレイドが浮遊。エルモアが左肩の主砲とバスタービームを射撃体勢に。
「敵機動解析・照準多重捕捉」
 同時に叔牙の前腕、肩、そして背部が開き光学攻撃用励起体が露出。相互に結びつくような電磁的な音と光を放ちながらその瞬間を待つ。
「カレイドシューター!」
「光条嵐舞……撃ち貫く!」
 エルモアが連射するビームを滞空するカレイドが反射。四方八方からツギハギの体を穿ち抜き、叔牙の光学励起体から飛んだ無数の光条が舞うようにツギハギの急所を撃ち貫く。
「――――奪え、ただその闇が欲する儘に」
 ノーフィアの手を握りしめる動作に合わせ、ツギハギが跡形もなく圧壊した。

●弔いの庭
 月を覆い隠していた雲が途切れ、合間から月明かりが差し始めていた。
「終わったね―。ペレもお疲れさま」
 さらさらと夜風が髪をなでていくのに任せながら、ノーフィアがペレに笑いかけた。
「無事に済んだね。皆、問題ないか」
「私は大丈夫なのですよ」
 傷ついた腹部から機械が露出していたが、クーゼの視線を受けた真理はさらりと応じた。
「ギヨチネさんも大丈夫かー?」
 周囲の戦闘で破損した箇所をヒールし終えて戻ってくるなり、朔也が言った。
「お気遣い、痛み入ります」
 敵の攻撃を受け続けたギヨチネは流石に疲労の色も濃く、座り込んでいたが、アルシエルのヒールで動けるようにはなっていた。
「日野原さんも修繕、お疲れ様なのですよ」
「大して壊れてもなかったしなー」
「壁が壊れるか、ガラスが割れたりしていた程度でしたからね」
 言いながら、アルシエルが戻ってくる。
「悲しい存在でしたわね」
 中庭の中心では、エルモアが見送るように空を仰いでいた。
 里親として猫を飼いはじめて一年半が経つ。猫や他の動物をベースにした屍隷兵との戦いが辛いものでなかったと言えば嘘になる。
 クーゼもまたエルモアと同じように空を仰ぎ、静かに瞑目していた。
「せめて、安らかに眠ってくれ」
 その足元で、シュバルツも静かに目を閉じていた。
「日野原さんはなにやってるですか」
「お墓作ってやりてーなと思ってさー」
 土を集めて小さく山を作る。
 笹を口に運びながら、九曜も興味深げにその作業を眺めていた。
「あー、でも花がねぇや」
「これを……」
 叔牙が一輪の白菊を即席の墓に手向けた。
 死者を冒涜する者を許しはしない。叔牙が思いを込めて祈りを捧げる。
「必ず……叩き潰して、みせるので。どうか、二度目の死は。安らかに……」
 朔也もまた静かに手を合わせた。
 それがたとえ形だけの墓だったとしても。
 せめて、安らかに眠れますようにと。

作者:飛角龍馬 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月3日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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