冥府の呼び声

作者:小鳥遊彩羽

「ねぇ、あなた達、怪談話は好きかしら?」
 放課後の学校の、とある教室。持ち寄った菓子類を広げ談笑に興じていた生徒達へ、唐突に掛けられる少女の声。
 少女が纏う異様な雰囲気に、思わず頷いてしまった生徒達を見て、少女はそのまま話を続ける。
 それは、旧校舎の裏手にある、古井戸に纏わる怪談話。
 深夜の古井戸から聞こえてくる少女の声に誘われるまま近づくと、肉の塊のような怪物に手を引かれ、古井戸の底の先にある冥府へと連れて行かれてしまうのだという。
 それを聞いた生徒達は、身震いしつつ互いに顔を見合わせる。
「なあ、それって……」
 本当の話なのかと問おうとした時には、既に少女の姿はどこにもなかった。
 まるで、教室の中には最初から自分達しかいなかったようで。生徒達は怪訝そうに首を傾げる。
「何だったんだ、一体……」
「でも、あんなにも意味ありげに言われると、何か気になるよなあ……」
「えー、マジでー?」
 そうして、他愛ない談笑を続ける生徒達。やがてせっかくだから確かめに行こうかと誰かが切り出すのは、そう時間の掛からない話だった。

●冥府の呼び声
 クローネ・ラヴクラフト(月風の魔法使い・e26671)が予期したことでその兆候を捉えるに至ったホラーメイカーという名のドラグナーによる事件を、トキサ・ツキシロ(蒼昊のヘリオライダー・en0055)はケルベロス達に告げる。
 ホラーメイカーは自らの手で作成した屍隷兵を学校に潜伏させ、その屍隷兵を元に作り上げた架空の怪談話を学生達に聞かせることで、怪談に興味を持った彼らが自ら屍隷兵の居場所にやって来るよう仕向けているのだという。
 既に怪談にまつわる場所を探索して行方不明になった者も出ており、早急に解決する必要があるだろう。
「その噂話というのが、深夜の古井戸から響く、冥府に誘う少女の声の噂話……というものなんだ」
 怪談の舞台は、とある高校の旧校舎。裏庭にある、使われなくなって久しい古井戸に、屍隷兵は潜んでいるのだという。
 怪談話を聞いた学生達が事件現場に足を踏み入れないよう対策を行いつつ、潜伏する屍隷兵を撃破してほしい。そう、トキサは言った。
 出現する屍隷兵は一体で、件の古井戸へと近づけば気配を察して襲い掛かってくる。少女のような声をしているが、見た目は人の身体を繋ぎ合わせたような屍隷兵そのものだ。
 強い力で殴り掛かって来る他、幻覚を見せる眼力を持ち、また、その高い声は不快な音となって襲いかかってくるだろう。
 戦闘能力自体はさほど高くはないため、油断さえしなければ決して負ける相手ではない。
「学生さん達が好奇心に誘われて、危ない目に遭ってしまう前に。……ぼく達が倒さないと、ね」
 クローネがそう、仲間達へ告げると。彼女の腕の中でオルトロスのお師匠が頑張ろうと言うように大きく吠えた。


参加者
ティアン・バ(彼岸の・e00040)
紗神・炯介(白き獣・e09948)
クラル・ファルブロス(透きとおる逍遥・e12620)
楝・累音(襲色目・e20990)
クローネ・ラヴクラフト(月風の魔法使い・e26671)
八坂・夜道(無明往来・e28552)
ベルレッド・クローブ(奥の細道・e37133)

■リプレイ

 戦いの場となる小さな庭を、人工的な灯りが照らし出す。
「怪談話ねぇ……俺はこういう類は余り気にしない性質だが、皆は昔に怪談話や肝試しはしたんだろうかな?」
 学校側から貸出を受けた投光器を設置しつつ、楝・累音(襲色目・e20990)はふと呟きを落とす。
「あたしにはそういう記憶はありませんが、おばけは怖いものだというのは知っています」
 累音の何気ない疑問に応じたクラル・ファルブロス(透きとおる逍遥・e12620)は表情こそ動かないものの、ふるりと肩を震わせて。
「ぼくも、病気がちであまり学校に通えてなかったから……でも、皆でこうやって、夜の学校を探検するのは少しわくわくする、ね」
 クローネ・ラヴクラフト(月風の魔法使い・e26671)がふふ、と笑って続き、傍らのレッドレーク・レッドレッド(赤熊手・e04650)をそっと見上げて。
「レッドは怪談とかは、怖くないの?」
「お、俺様は怪談など……只の作り話に決まっているからな! 怖くなどないぞ!」
 何気ない問いに、注意深く周囲に視線を巡らせていたレッドレークの肩が一際大きく跳ねたような気がして、クローネはぱちりと目を瞬かせた。
(「……あとで、後ろから驚かせてみようかな」)
 そんなささやかな悪戯心が顔を覗かせたりもしたけれど、勿論、やるべきことはしっかりと頑張るつもりで。
 そうして十分な光源が確保された裏庭の一角に佇み、ティアン・バ(彼岸の・e00040)は静かに、胸の内で想いを芽吹かせる。
(「……ドラゴンはきらいだ」)
 配下たるドラグナーも、冥龍の置き土産たる屍隷兵も。
「……きらいだ」
 屍隷兵を造ることも、それを利用して更に犠牲者を増やすことも、到底容認は出来ない――ティアンの心が膨れ上がり、それはか弱き者達を寄せ付けぬ『気』の結界となって戦場を覆った。

「だめだよ。こんな夜更けにうろついちゃ」
 時を同じくして、噂の正体を確かめに訪れた生徒達へ、見回りをしていた紗神・炯介(白き獣・e09948)がやんわりと声を掛ける。先客の存在に驚いた様子の生徒達がふと炯介の背後に目を留め、おそるおそる問い掛けてきた。
「っ、あの、……後ろの人は……?」
「驚かせてしまってごめんね? こう見えて、彼も私もケルベロスなんだよ」
 と、ゆらりと顔を覗かせた八坂・夜道(無明往来・e28552)が微笑んでみせる。
「けっ、ケルベロスさ……、……ゆ、幽霊じゃなくて……?」
 そう言ってから、はっとしたように口元を抑える生徒の一人に、夜道は楽しげに笑みを深めるばかり。白い着流しに白い肌、そして黒く長い髪――その佇まいもどこか揺らいでいるように見えるのだから、幽霊と問われてもおかしくはなかったかもしれない。
 ともかくも自分達がケルベロスであることと、怪談話がデウスエクスによる罠であることを隠さず伝えると、生徒達はすみませんと目一杯謝りつつ素直に来た道を戻っていった。

 裏庭の入り口にベルレッド・クローブ(奥の細道・e37133)の手によってキープアウトテープが貼られ、戦いの準備が完了する。
 屍隷兵が潜む古井戸には極力近づかぬように心掛けつつ作業を行ったおかげで、古井戸は未だ沈黙を保ったまま。
「では、早速……あまり時間を掛けずに終わらせたいものだね」
 ベルレッドが皆へ呼び掛けると、クローネがお師匠と呼ぶ彼女のオルトロスとレッドレークが、いつでも飛び出せるようすぐ後方につく。
 場に走る緊張。ベルレッドは確かめるように皆を振り返り、そうして古井戸へと一歩、近づいた。
 一歩、二歩、果たして、『少女』の声は聞こえるだろうか――そんなささやかな好奇心に応えたのは、絹を裂くような声。
「ャアア、アアァア、ッ――!!」
「――っ!」
 瞬時にして踊りかかって来た黒く巨大な影――屍隷兵に殴り飛ばされ、ベルレッドが地面に転がる。
「来たな。今は使われていないとはいえ、水源という大切なものまで利用するとは、『バチ』とやらが当たるぞ!」
 すぐさまレッドレークが真朱の葛をけしかけて屍隷兵を牽制し、お師匠も十字の剣で斬り掛かる。
「クローブさん、回復します」
「足りないようであれば、私も続くよ」
 クラルが放ったオーラが負傷したベルレッドを包み、夜道も迅速に魔術切開を施し傷を塞いでゆく。手痛い一撃だったが、致命傷までには至らなかったのは、無論盾役として守りを固めていたがゆえ。
「ああ、助かったよファルブロスくん、八坂くんも」
 ベルレッドは衝撃でずれた眼鏡を直し、土埃を払いながら立ち上がる。その間にケルベロス達は素早く布陣し、屍隷兵を囲んでいた。
 自分達の学舎に眠る超常現象に惹かれる気持ちも理解出来なくはないし、好奇心旺盛なのも悪くはないが――実際に『これ』を目にすることで、命まで奪われてしまうのは頂けない。そんな思考を巡らせながら、累音は素早く構えた。
「おぞましい姿だ」
 ただの肉塊にしか見えぬ屍隷兵へ吐き捨て、累音は掌から竜の幻影を放つ。累音の定めた狙いの通り、闇に踊る鮮やかな炎に包まれた屍隷兵との距離を一息に詰め、炯介は指先で気脈を断つと、純粋な疑問を声に乗せる。
「君は、誰で、どこから来たの」
 答えはないとわかっていた。けれど、辿れるものなら知りたかった。誰に知られることもなく、ただ苦しんで死ぬことしか出来なかった『誰か』のことを。
 かつて月喰島で見た光景が、冥龍によって命を弄ばれ、傀儡と成り果てるしかなかった人々の姿が炯介の脳裏を過る。こうなる前に食い止める術はあったのかと考えなくもないが、それで目の前にいる誰かを救えるわけでもない。
「終わらせよう。死んでまで苦しむ必要はない」
 炯介は静かに言い、屍隷兵へとナイフの切っ先を向ける。
「ああ、ティアンたちが、おわらせる」
 揺らがぬ意志を紡ぎ、ティアンは屍隷兵を灰の瞳に映す。すると音もなく現れた半透明の御業が屍隷兵を鷲掴みにし、おぞましい肉塊の口からか細い悲鳴を引きずり出した。
「……ごめんね、安らかに眠らせてあげることしか出来ないぼく達を、許して」
 鼓膜を揺さぶるその声に痛みを堪えるように眉を寄せ、クローネは流れ星の欠片で作られた杖から竜砲弾を放つ。同時に飛び掛かったお師匠が、正義を宿す神器の瞳で屍隷兵を鋭く睨みつけた。
 レッドレークが光り輝くオウガの粒子を、そしてクラルがヒールドローンの群れを飛ばし、仲間達の能力の底上げを図る。
「おばけは怖いですけど、あなたはおばけではなく、デウスエクスですから」
 だから怖くはないと言うように、クラルはどこかぼんやりとしたフロスティグレーの瞳に屍隷兵の姿を映す。
 一方、ベルレッドは屍隷兵へと好奇の眼差しを注いでいた。考古学を嗜む傍ら趣味で怪奇を追いつつ世界を旅してきた彼にとって、この事象はある意味日本の伝統的な怪奇現象でもあった。もっとも、原因がデウスエクスであるならば――厳密にはそうと言えないのは少々残念ではあるけれど。
「巴紋は水を象り、旅路を辿りて門を開く。この手に……刃を」
 詠唱と共に、ベルレッドが巴紋から引き出すのは水の力。右手に構える避雷の杖から放たれた渦巻く水刃が踊るように屍隷兵を斬り裂くのを見やりながら、夜道は鮮やかな色を纏う風で仲間達の背を押した。
「まるで、噂を聞いた人達を怪談の一端に取り込むみたいだね」
 柔らかく微笑んだまま、夜道はでも、と続ける。
「噂を聞いた人がいなくなっちゃったら、怪談は語り継げないでしょう?」

 幾度目かの攻防の最中、屍隷兵が放った光が戦場を覆った。その直撃を受けたクラルが、そして累音を庇うように身を挺したレッドレークが、その身を強張らせる。
「……っ」
 クラルの視界を覆ったのは、『靄』だった。
 いつか初期化した心は像を結ばず、わかるのはそれが襲い掛かってくるということだけ。
 気を取られたのは一瞬で、クラルはすぐに目の前の現実を捉え、真に自由なる者のオーラをその身に纏った。
(「あたしは回復役なのですから」)
 戦う皆が、敵である屍隷兵が、見えてくる。
 一方のレッドレークは、その場を動くことが出来ずにいた。
 執拗に責め立ててくる亡者の群れは、かつて自身がダモクレスだった頃に手に掛けた者達。お前も同じことをしたのだと心臓を抉るように伸ばされる手に、レッドレークは許してくれ、と思わず零したが、
「レッド、大丈夫!?」
 強く耳に響いたクローネの声が、惑う意識を現実へと引き戻した。
「幽霊というのは厄介なものだね、でも、――死に抗うならば」
 夜道の穏やかな声がレッドレークの魂の炎を赤く燃え上がらせ、癒しの力となって全身を巡る。炎が消える頃にはレッドレークの心を苛んだ亡者達の幻影は既にどこにもなく、
「すまない、俺様としたことが」
 レッドレークは緩くかぶりを振ると、真朱葛を解き放った。
「その身を贄と捧げろ! 地徳は我が方にあるぞ!」
 力強く響いた声に応え、埋葬形態へと変じた葛が屍隷兵の足元に忍び寄り、描いた魔法陣の中に屍隷兵を閉じ込める。
「ウゥ、ァ……」
 赤く染まった熊手状の蔦草に引き裂かれて呻く屍隷兵へ、累音が自らの気魂を籠めた刃を閃かせた。
「舞うは青き夢見鳥、お前に掴めるか」
 刹那、刀身より舞い踊った青い炎の蝶が屍隷兵の肩先にふわりと止まる。夢とも現ともつかぬ青い揺らめきに屍隷兵が魂を抜き取られたかのように膝をつき、そこに炯介が手を伸ばした。
「怒りも。呪いも。苦しみも。全て僕が、引き受けよう」
 ただ在るべき場所へと還るだけと、伸ばした掌で肉塊へ触れれば。炯介の銀色の髪に隠された左目からひび割れた肌に文様が浮かび上がった。ひび割れの奥に覗くは体内で蠢く彼の地獄。伝う熱に込められた呪いと憎しみ、そして魂の嘆きを――その全てを己が力とすべく、炯介は掌を握り込む。
 その時、残された力の全てを振り絞るように屍隷兵が鳴動し、放たれた光がティアンを灼いた。
「――、……」
 視えた光景に、ティアンは目を瞠る。
 先を行く、大切な皆の後ろ姿。追いつけなかった、守れなかった、――守られてばかりで、守らせてもらえなかった皆の背中。
 ティアンの胸の内で芽吹く、強くなりたかったという想い。
 ――否、なりたかったのではない。
(「なりたい、今も」)
 ティアンは歯を食い縛り、自ら屍隷兵の懐に飛び込んだ。ともすれば相打ちになりかねない倒錯したその行為も、彼女が持つ攻撃の手のひとつ。
 動きを縫い止められた屍隷兵は、振り上げた拳を下ろすことさえもう出来なかった。
「さて、後は宜しく頼みますよ」
 ベルレッドが雷の杖を翳し、クローネへ力を託す。
 そして、それをしっかりと受け取ったクローネは、凛と詠唱を紡ぎ始めた。
「冬を運ぶ、冷たき風。強く兇暴な北風の王よ。我が敵を貪り、その魂を喰い散らせ!」
 形を為した言葉に導かれ、冬の如き冷たい風が屍隷兵を取り巻くように吹き荒れる。
 一度は死した肉塊へ牙を剥いた『北風』は、その骨も肉も、血も、――魂さえも残さずに貪り尽くして消えていった。

「……大変だったね」
 屍隷兵が消えた場所に立ち、炯介はそっと声を掛ける。
 今回の件を含め、ホラーメイカーによる一連の事件では、既に行方不明者が出ているという。
(「つまり、あの屍隷兵はその行方不明者をもとに作られた、ということかな」)
 行方不明者の事実が確かめられないかと炯介は断末魔の瞳を用いたが、映るものは何もなかった。もし屍隷兵が行方不明者を元に作られたものだったとしても、殺された場所はここではなく、別のどこかなのだろう。
 冥府がどんなものかは知らないが、せめてもう苦しまなくて済むようにと、炯介は静かに祈った。
「デウスエクスの隠れ場所にされるとは、災難だったな、この古井戸も」
 戦いで荒れた箇所を皆でヒールするその最中、ティアンはぽつりと呟く。
 けれど、案外この戦いに纏わる新しい噂が立って、寂しくなくなるかもしれないと思いながら――皆の交わす声に耳を傾ける。
「……ひっ。あ、ああ、八坂さんでしたか」
 クラルの口から上擦った声が漏れたのは、ヒールのほのかな光に照らされて佇む夜道を見たせいだ。
「……少し、ここに残って誰かが来るのを待ってみるのもいいかもね。白い着物姿の幽霊が出るって噂が立ったりして?」
 そう言って、夜道は楽しげにくすくすと笑う。この旧校舎も井戸もいつかは壊されるかもしれないけど、こうした怪談が語り継がれれば、そんな場所もあった――と、誰かの心に残るかもしれない。
「な、何故新たな噂を作ろうとしているのだ。学校の怪談ってそんなに重要なものなのか……!?」
 あからさまに狼狽えるレッドレークにクローネはこっそりと笑って、古井戸の周りに咲いた幻想の花へ指先を伸ばす。
「行方不明になったり、物騒な事件が起こるのは困るけれども。怪談のお陰で人が訪れるようなったら、この古井戸も寂しくなくなる、かな?」
 その時、フロスティグレーの瞳が瞬いた。クローネの言葉は、クラルにとって意外だったようで。
「……古井戸など、また怪談や転落事故等の原因になってしまいそうですし、不安要素は除くべきと思いますが、そういう、ものですか」
「不要な古井戸は撤去するのが一番だけれども、学校の怪談が無くなるのも忍びないな」
 底が見えぬ井戸を覗き込みながら言うベルレッドに、レッドレークが腕を組みながらふむ、と頷く。
「井戸は簡単には埋められないものらしいな。学生達が誤って落ちないよう金網でも張っておいた方が……」
 明かりを掲げて照らしてみれば当然のように古井戸の底は枯れており、冥府への入り口などどこにもなく――そういうものだよねとベルレッドは小さく肩を竦めた。
「何にせよ、訪れても何も起きないと解れば、いずれこの怪談も風に消えるだろう。……物足りないなら怪談話でもしつつ帰ろうか?」
 累音が何気なく落とした言葉に、クラルがぶんぶんと首を横に振る。
「い、いえ、結構です!」
 思い切り慌てているその様子に、累音は冗談だと喉の奥で笑った。

 やがて、裏庭の修復と後片付けを終えたケルベロス達は帰途につく。
「……レッド、おんぶ」
 時刻は深夜。加えてデウスエクスとの戦いの後ということもあり、気が緩んでしまったのだろう。ねだる声に、レッドレークは目を瞬かせて、
「眠くなってしまったのか? 仕方がないな……」
 調査もずっと頑張っていたしと労うようにクローネを背負う。
「……こうして触れていると俺様も安心する。いや、怖いワケでは」
 慌てて取り繕うように言うものの、聞こえてきたのは規則正しい寝息。
 背に伝う温もりと、大切な存在がすぐ側にあることを――レッドレークは改めて実感しながら、クローネを起こさぬようゆっくりと歩を進めるのだった。

作者:小鳥遊彩羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 8
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