こってりデカ盛り超級ラーメン誕生!

作者:天木一

 狭い店内にずるずるっと麺をすする音が響く。
「えーっと、ぶたラーメンにしよっかなー、お腹空いてるし、ダブルで!」
 そんな店の席に座った少年が注文すると、店主のガタイの良い男が頷いて素早く大きな丼を差し出した。
「うわーー! すごい! デカ盛りだ!」
 少年は目を丸くして目の前に置かれたラーメンを見つめる。油の浮いたこってりとしたスープの中に少し太めの麺がたっぷりと沈められ、その上にスープを隠すように分厚い焼き豚が何枚も敷かれている。さらに山のようにモヤシが乗せられて威圧感を出していた。
「さっそく食べてみよ! いただきまーす!」
 勢いよく少年が割り箸を使ってずるずるとラーメンを食べ始める。汗を流しながら一心不乱に食べるが、食べても食べても底は見えない。
「これは……強敵だね……!」
 負けじと少年はスピードを上げて麺をすすり、肉を噛み千切り、モヤシで食感を変えて食べ続ける。
 やがて長かった戦いも終わり、丼にはスープだけとなった。
「やったー! ごちそうさまー!」
 やりきった表情で少年が汗を拭い水を飲む。
『じゃあ次はお前がラーメンの具になれ!』
 丼から声がしたかと思うと、麺が飛び出て少年に絡みつく。
「うわっなにこれ!?」
 ずるずると引き寄せられ、ドボンッと少年の体が丼に入った。いつの間にか人がすっぽり入れる程大きくなった丼から逃れようと少年がもがく。
「たすけっ」
『焼き豚にちょうどいい肉付きじゃねぇか』
 頭まで少年の体が沈み口から息が漏れる。
「焼き豚はいやだーーー!?」
 ドスンッとベッドから少年が転がり落ちる。暗い部屋は見慣れた自分の部屋。
「ラーメンは……? んあー夢か~すっごい美味しいラーメンだったんだけどな」
 夢の所為でお腹が空いてきたと少年が起き上がろうとすると、その胸に突如現れた魔女が鍵を突き刺した。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
 鍵を引き抜くと少年は意識を失い崩れ落ちる。それを見届ける事もなく魔女は姿を消し去った。
『へいっラーメン一丁お待ち!』
 そこに代わって現れたのは、高さ3mはあろうかという巨大な丼。その中身はたっぷりのラーメンにデカ盛りの具材が山のように乗っている。具まで合わせれば全長は7mにもなっていた。
『腹を空かした奴に夜食の出前でいっ』
 ラーメンは壁を吹っ飛ばし、月明りの照らす街に飛び出した。

「ラーメン食べ放題……じゃなくて、ラーメンのドリームイーターが現れるの!」
 メティス・メドゥサ(オリュンポスゴルゴン三姉妹・e16443)がケルベロス達に事件が起きると告げる。
「第三の魔女・ケリュネイアが驚くような夢を見た少年から『驚き』を奪い、新たにドリームイーターを生み出して騒ぎを起こすようです」
 詳しい説明は私がと、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が説明を続ける。
「このままではドリームイーターに襲われ人々に犠牲が出てしまいます。そうなる前に敵を撃破し、少年を目覚めさせるのが今回の任務となります」
 今から向かえば敵が暴れ出す前に遭遇できる。そして倒してしまえば少年の眠りは普通のものになる。
「敵は7m程の丼に入ったラーメンです。麺で相手を拘束したり、巨大焼き豚を放り投げ覆いかぶせてしまったり、熱いスープを浴びせたりといった攻撃をしてくるようです」
 ラーメンはこってり系で、濃厚な味わいは食べると癖になる。それを無理矢理食べさせ代償に人をラーメンの具にしようとしているようだ。
「戦いとなる場所は東京にある住宅地で、少年の住まう家の近くを徘徊しているようです」
 既に人々が寝始める時間となっている。外の人通りは無く一般人を巻き込む可能性は低い。
「それと、敵はまず見つけた人を驚かせようとします。そこで驚かない人を優先的に攻撃してくるようです」
 これを上手く利用すれば最初の攻撃対象を限定出来る。
「ラーメンですか、美味しいですが食べ過ぎはカロリーが気になりますね。何よりも具材にされてはたまりません。皆さんの力で敵を撃破し、街の平穏を守ってください」
 説明を終えたセリカは急ぎヘリオンの準備に向かう。
「それだけおっきかったらいくらだって食べられるのー! 想像しただけでお腹が空いてくるの……」
 小さくお腹を鳴らしたメティスは今は我慢と手で押さえる。
「みんなでラーメンを食べに……じゃなくって退治にいくの!」
 早くラーメンが食べたいとメティスがやる気一杯で動き出す。それに釣られるようにケルベロス達も準備に駆けだした。


参加者
マサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)
赤星・緋色(小学生ご当地ヒーロー・e03584)
ユーカリプタス・グランディス(神宮寺家毒舌戦闘侍女・e06876)
メティス・メドゥサ(オリュンポスゴルゴン三姉妹・e16443)
エストレイア・ティアクライス(さすらいのメイド騎士・e24843)
プラータ・ヴェント(浮世の銀風・e25479)
藍川・由衣(普通の女子小学生・e34237)
人首・ツグミ(絶対正義・e37943)

■リプレイ

●夜のラーメン
 夜道を歩いていると、豚骨を煮た独特なスープの香りが漂ってきた。
「らーめんだ―! なんやかんやでおいしく食べればいいんだよね?」
 これから出会う巨大ラーメンを楽しみにして、赤星・緋色(小学生ご当地ヒーロー・e03584)は足取り軽く夜道を歩く。
「時間制限、こってりラーメン食べ放題!! まさに、勝負どころの美味しい依頼なの……じゅるり」
 今からラーメンに魅了されそうなメティス・メドゥサ(オリュンポスゴルゴン三姉妹・e16443)は、いかんいかんと頭を振って一般人が周囲に居ないか確認する。
「皆さんラーメン好きですね。そして食べれるドリームイーター……倒したら消えるなら食べたのも消えるんですかね?」
 そんな疑問を思い浮かべながら、プラータ・ヴェント(浮世の銀風・e25479)も一般人が居ないか反対側を探った。
「わー、ラーメンのお化け? しかもこれ、食べても害はないだなんて一体何がなんだかだよ?」
 あまりにも都合の良すぎる敵にマサムネ・ディケンズ(乙女座ラプソディ・e02729)が首を傾げる。
「んー、オレらケルベロスが食べるからかな?」
 何にせよ敵ならば倒すだけだと、万が一にも一般人を巻き込まぬよう立入禁止テープを張り巡らせる。
「これで一般人を巻き込む心配はありません!」
 一緒に立入禁止テープを張り終えたエストレイア・ティアクライス(さすらいのメイド騎士・e24843)は満足そうに自分の仕事に頷き、後は敵を倒すだけだと気合を入れる。
「ラーメンということはやはり食べられるのでしょうか。ちょっと食べてみたいですね」
 藍川・由衣(普通の女子小学生・e34237)は普通のラーメンを想像してお腹を減らす。
「食べられる敵……とても素敵だと思いますぅ!」
 ワクワクした様子で人首・ツグミ(絶対正義・e37943)がテンションを上げる。
「敵は、エネルギーとして食べたりはありますけどぉ……食事として味わった事はないので、今回すごく楽しみですよーぅ」
 どんな味なのだろうかと想像していると無意識に歩く速度が上がっていた。
「こってりデカ盛り超級ラーメン……ですか。はぁ……。うーん……」
 想像してユーカリプタス・グランディス(神宮寺家毒舌戦闘侍女・e06876)は微妙な表情を浮かべる。
「別にこってり系好きじゃないんですよね……私。超激辛担々麺とかだったら良かったんですが。ま……食べたい人は勝手にどうぞといった感じです」
 興味を失ったように仕事仕事と戦いの準備に移る。その時、豚骨の香りが強くなり道の先の電灯を影が遮った。
『へいらっしゃい! デカ盛りラーメン一丁!』
 威勢の良い声と共に、そこへずるりと巨大な赤い丼がスライドしてきた。それは分厚い焼き豚と山盛りのモヤシでトッピングされた7mにもなる超ド級のデカ盛りラーメンだった。

●豚骨デカ盛り
「ふぁっ? そんなに大きかったら食べきれないよ! 麺は250gまでー?」
 いったい何gあるのだと、緋色は驚きの表情で巨大ラーメンを見上げる。
「大盛りだとは思ってたけど……超大盛りだったの……!? こ、これは……じゅるり」
 驚いたメティスは涎を垂らしそうになりながら溢れる食欲を必死に堪えた。
「巨大ラーメン……」
 目を丸くして口を大きく開けて、プラータは唖然とした様子を相手にしっかり見せる。
「随分と大きなラーメンですねーぇ! 具も巨大ですぅ……食べごたえがありそうで、すごいですよーぅ!」
 素直に驚いた様子を見せてツグミは更にテンションを上げていた。
「聞いていた通りのラーメンのお化けだね、それじゃあお化け退治といこうか」
 敵を見ても平然とマサムネはギターを掻き鳴らし、仲間達を鼓舞するテンションの高い歌を紡いで力を漲らせる。
「メイド騎士、参上です! ティアクライスのエストレイアにお任せあれ!」
 エストレイアは鞘に収めたままの長剣を敵に向ける。すると迸る力が閃光となって放たれ敵を撃ち抜いた。
「神宮寺家筆頭戦闘侍女、ユーカリ。参ります」
 続けて平静としたままのユーカリプタスがスカートの裾を摘み折り目正しく一礼して名乗り、籠手型縛霊手で殴りつけた。同時にゴミ箱の姿をしたミミックのトラッシュボックスもエクトプラズムを吐き出して器にへばりつけた。
『てやんでぃ! 驚かねぇ奴ァスープになっちまえ!』
 器の縁から煮詰めてドロリとした熱々のスープが流れ落ち、近くのケルベロス達を押し流す。庇おうとしたマサムネは勢いに負け電柱にぶつかった。
「こってりですか、ラーメンならさっぱり系の方が好きですね」
 堂々と相手を否定する由衣に対し、太い麺が伸びて巻き付き全身を覆う。そこへナノナノのナノポンが尻尾を突き刺して麺を切断した。
「麺も少し太過ぎでしょうか、食べ難いですね」
 由衣は麺を噛み千切って不満そうな顔を見せ、オーラで自らの体を覆って麺を消し飛ばした。
「さぁ、みんなで張り切って食べるの!!」
 突っ込んだメティスはオリュンポス仕様の巨大杭打ち機に凍気を纏わせて器に突き刺した。穴から溢れ出るラーメンを取って食べながら凍りつかせて温度を下げる。
「おいしそうならーめんだー! いただきまーす!」
 川越市で抽出したグラビティチェインを斧に纏わせた緋色は、地を蹴り塀を蹴って敵の頭上を取り斧を投げつける。回転する斧がモヤシに当たった瞬間、大爆発を起こして具材を吹き飛ばした。それが地面に落下する前にキャッチして口に運ぶ。
「え、皆様食べるんですか? あの、え、ドリームイーター食べちゃうんですか!?」
 その様子に驚いたエストレイアは仲間を凝視する。
「ええとその、いいえ私は遠慮しておきます……」
 どれだけ美味しそうでも敵を食べるのは抵抗があると、敵の器に飛び蹴りを浴びせてひびを入れた。
『食うんなら行儀よく食いやがれ!』
 人よりもドデカい焼き豚が落下してくる。それは押し潰すようにケルベロス達の上に圧し掛かった。
「手の空いたときには攻撃もしておいて! 背中は頼んだよ相棒?」
 起き上がったマサムネの言葉に尻尾を振って返事をしたウイングキャットのネコキャットは、翼をパタパタと羽ばたかせ邪気を払う風を起こす。マサムネは手にしたスイッチを押し、カラフルな爆発を起こして仲間の士気を高めた。
「さあ、ここからです。神宮寺家のメイドとして瀟洒に仕事をこなしましょう」
 続けてユーカリプタスもスイッチを押すと、爆発が更に重なり色鮮やかな煙が闘争本能を湧き起こす。その力で焼き豚を押し戻した。
「ラーメンに襲われるなんて笑い話にもなりませんからね、ここで退治させてもらいます」
 ハンマーを砲に変えて抱えたプラータは、砲弾を撃ち出し敵の器を爆破すると、衝撃に敵の動きが止まった。
「食べやすくするためにー、動きを鈍らせますよーぅ!」
 そこへ勢いよく駆け出したツグミは大きく跳躍して飛び蹴りを浴びせ、器のひびを大きくさせた。
「とんでもなく分厚い焼き豚だね。見てるだけで胸焼けしそうだよ」
 横に転がっているキングサイズのベッドのような焼き豚を見ながら、マサムネは霧を生み出し仲間達を包み込んで仲間を正常な状態に戻した。
『こちとら江戸っ子でい! あっつあつのラーメンをご馳走してやるぁ!』
 器の割れ目から勢いよくスープが噴き出し、ケルベロス達に降り掛かる。
「あちちっ! それは熱すぎだよ!」
 跳んだ緋色は鋭く蹴りつけ汁の出る割れ目を凍りつかせた。
「星々の癒し光よ。ここに!」
 ユーカリプタスは剣を掲げ、宿る蠍座の力を解放して剣舞を舞い空に蠍座を描く。朱い輝きが降り注ぎ仲間達の傷を癒した。
「なかなか美味しいとんこつラーメンなのー!」
 もっと食べたいとメティスは回し蹴りを器に叩き込み、中身をぶちまけそうになるほど傾けて落下してくるチャーシューとモヤシをキャッチして食べる。
 そこへ麺がずずっと捕えようと迫る。
「出されても私は食べませんから!」
 エストレイアは黄金の長剣に炎を纏わせ、麺を斬り払いながら接近し器を斬り裂いた。
「かー! まずは食ってみろ! 話はそれからだ!」
 器が揺れてまた巨大な焼き豚が落とされる。
「このサイズの焼き豚となると、どれだけ大きな豚からカットしたんでしょうね」
 プラータは手にした棍を伸ばして下から焼き豚を突き上げ、落下位置を仲間の横へとずらした。
「焼き豚は……よく味が染み込んでいますが、味が濃すぎじゃないでしょうか」
 その焼き豚を少しばかり切り取って食べながら、由衣は月のような光球を放って仲間の体を活性化させた。
「ではでは! いただきますねーぇ!」
 ツグミはメタルを腕に纏い殴りつけ、器にめり込ませて砕く。そして中から流れ出るラーメンを食らった。

●食べても食べても
『どうなってやがんでぃ! ラーメンを食うなら上に登るか、これで食らいやがれ!』
 麺がツグミに巻き付き縛り上げる。
「味気ないですね……こうすれば少しは食べられるものになります」
 その長い麺の真ん中で味見したユーカリプタスは一味をたっぷり振り掛け、真っ赤にしてから美味しそうに口に入れた。
「残飯処理はトラッシュボックスにお任せあれ。お手の物でございます」
 ユーカリプタスが残りを蹴り飛ばし、トラッシュボックスが蓋を開けて回収し噛み砕いた。
 そこへ焼き豚が上から降ってくる。
「食べもので遊んだらダメだよ!」
 己を信じる心が緋色の拳に宿り、天に放つ一撃が焼き豚を打ち抜き吹っ飛ばした。
「何人前でしょうか、普通のサイズだったとしても食べきれないかもしれません……」
 山盛りの具を見上げながらエストレイアは鞘から閃光を放ち、モヤシの山を吹き飛ばした。
「すごいですねーぇ! こんなボリューム満点のラーメンは初めてですよーぅ!」
 ツグミは光の剣を生み出し、一閃してモヤシの残骸を斬り裂き、返す刃で器を斬りつけた。
『てやんでぃ! 熱々のスープを飲みやがれ!』
「熱すぎると火傷してしまうよ、飲むのに適した温度にしてもらいたいね」
 器が傾きスープが溢れ出すと、マサムネは飛び蹴りを浴びせ、器を反対に傾けさせてスープを零れさせた。ネコキャットは懸命に翼を動かし風でスープを逸らそうとする。
「スープは飲むもので、掛けるものではありませんよ」
 プラータは轟音と共に砲撃を行い、敵のスープを吹っ飛ばし、更に撃ち込んだ砲弾で器の縁を砕き割った。
「食べごろの温度にするの!」
 メティスは杭を打ち込み、内部に冷気を通してスープの温度をどんどん下げていく。そして杭を引き抜いて食べやすい温度になった麺を頬張った。
「こってり系のとんこつスープですね。やはり全体的に味が濃いですね」
 微妙な顔でスープの飛沫をペロリと舐め、戦場を舞うように跳ね回る由衣は、花びらのオーラを散らして仲間達を癒す。
「大きすぎて、食べきる前に伸びちゃうよー」
 斧でラーメンを斬り裂き、緋色は斧を投げつけ大爆発を起こして器を砕いた。ゴロリと焼き豚が転がり落ちてくる。
「食べたくはあったけど、やっぱり食べるなら普通のラーメンがいいな」
 ローラーダッシュで加速したマサムネは、炎纏う蹴りを叩き込んで焼き豚に焦げ目をつけて地面に叩き落とした。
『俺のラーメンが食えねぇってのか!』
 麺が巻き付くように伸びてくる。
「食べ物を足蹴にするのはいい気分ではありませんが、ドリームイーターなら遠慮は無用です!」
 跳躍したエストレイアは流星の如く飛び蹴りを浴びせ麺を打ち払い、仲間に攻撃を届かせない。
「こってりはやっぱりダメですね、さっぱり系の方が好きです」
 相手の自尊心を傷つけながら由衣は跳ねるようにして敵の攻撃を躱し、接近して器を蹴り飛ばした。すると大きく傾き真っ白な器の底が姿を見せる。
「そこが弱点ですか、これ以上ゴミが散らばる前に片付けるとしましょう」
 攻撃を籠手で受け流したユーカリプタスは、間合いを詰めて傾いた器の底に拳を打ち込み、大穴を空けた。
 器が崩壊を始め、落下してくる麺に手を伸ばしたプラータは味見してみる。
「味は良いですどムリヤリ食べさせられるのはちょっとイヤな濃さですね」
 プラータは指鉄砲ポーズを敵に向け、指先から魔法弾を圧縮して撃ち出した。放たれる弾は相手の精神に影響して惑わし、その隙に割れ目から内部に入って具材をぐちゃぐちゃに破壊した。
『好き勝手いいやがって! お代は要らねぇ! 腹がはち切れるまで食いやがれ!』
 麺を四方に伸ばそうとするのを、ナノポンがハートを飛ばして惑わし狙いを逸らした。
「その具も麺もスープも、そして魂までも残さず食べ尽くしてあげますねーぇ!」
 ツグミは鹵獲術士の力と降魔拳士の力を融合し、右手を器に突き立てそこから敵の全てを吸い上げて喰らい尽くす。それを噛み砕くように潰して純粋なエネルギーと化してツグミは己のものとした。
「倒す前に全部食べきる勢いでいただくの!」
 メティスは疾風の如く駆け出し、パーシアスの加護を持って巨大杭打ち機を器に突き刺す。すると穴から熱い汁と麺が勢いよく溢れ出た。現れた麺を取りずるずるっと勢いよく食べ続ける。
 やがて器が完全に崩壊し、ラーメンが飛び散って幻のように消え去った。

●夜食
「これで元通りかなー?」
 少年の無事を確認した緋色は、壊れた家にヒールを掛けて壁を修復した。
「まずまず満足! 次の美味しい依頼を探しに行くの~♪」
 上機嫌にお腹を撫でたメティスは次はどんな食べられる敵が現れるだろうか笑みを浮かべる。
「……と、その前に腹ごしらえするの、勿論、ラーメンなの!」
 メティスはまだまだ食べられると胸を張る。
「みんなでラーメン食べに行こう! オレ醤油とんこつ!」
 それならとマサムネが仲間をラーメン屋に誘う。
「ならお酒も飲んで良いですか?」
 口直しのお茶を配るプラータは微笑んで、仕事帰りの一杯といこうとマサムネと年長者同士で意気投合した。
「是非ともお供します! 皆様が美味しそうに食べているのを見ていたらお腹が空いてきました!」
 元気よくエストレイアが腕を上げて賛同した。
「私は塩とんこつとか、魚介系ののつけ麺とかが好きかな!」
「わたしもさっぱりした塩ラーメンがいいです」
 ラーメンの良い香りの所為でお腹が空いてきたと緋色が元気に加わり、由衣も塩味がいいと横に並ぶ。
「口直しに超激辛担々麺を注文することにしましょう」
 辛さが全く足りていなかったとユーカリプタスは不満そうにラーメンの味を思い返す。
「ラーメンですかぁ……いいですねーぇ! さっきのを味見したくらいじゃ物足りなかったんですよーぅ。喜んでお供しますぅ!」
 運動したら既にエネルギーを消費してしまったと、ツグミは嬉々として賛成する。
 お腹を減らせたケルベロス達は、楽しそうにまだ豚骨の美味しそうな香りの残っている道を歩き出した。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年9月27日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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