鎌倉ハロウィンパーティー~きゃんでぃ☆もんすたあ

作者:綾蝶

●まぁ君の憂鬱
「ねぇお母さん、なんで僕はハロウィンのパーティーに行っちゃいけないの?」
 まぁ君は10月に入ってから、何度この質問を繰り返しただろうか。
 その度にお母さんはちょっと悲しそうな困った顔をして、こう答えてくれた。
「まゆちゃんも、たろ君も幼稚園に通ってるからねぇ。まぁ君は保育園だから、一緒のパーティーには行けないの」
「どうしてどうして?」
 お隣に住んでいる子供達から、ハロウィンに着ていく衣装や、お菓子がいっぱい貰えるという幼稚園のパーティーの話を聞いてから、まぁ君の心はずっとそれに囚われていた。
 だけど、朝も夜も働いて母子の生活を支えるお母さんは、ハロウィンの夜もお仕事で、近所の子供会でのイベントにも連れて行ってあげられないそうだ。
「僕も行きたい~!!」
「ごめんね、まぁ君」
 大好きなお母さんを悲しませたくはない。だからあんまり駄々はこねない。
 お利口さんなまぁ君は、だから黙り込んで、自分のお部屋に戻り、ひとりで玩具で遊び始めた。だけど小さな胸は痛んで、ため息が溢れる。
「……あーあ、僕もハロウィンパーティーに行きたいなぁ……」
 すると、その背後にふっと誰かが現れた。
「ハロウィンパーティーに行きたいの?」
「え? あれ?」
 声に驚いて振り返ると、そこには赤い頭巾を被った一人の少女。
 驚いて返事のできないまぁ君に、彼女は優しく、無邪気に、残酷に囁いた。
「その夢、かなえてあげましょう」
 言うなり、彼女は持っていた大きな鍵でまぁ君の心臓を一突きにした。
「……えっ」
 目を大きく見開いたまま、絨毯の上へと倒れこむまぁ君。そのまぶたがゆっくりと閉じられた直後、その隣に大きなかぼちゃを頭にかぶり、首から下は赤いマントをまいた子供の人影がそこに立っていた。マントの合わせ目から、その下にあるモザイクが見え隠れしている。
 その姿を満足げに見つめた少女は、薄い笑みを浮かべて囁く。
「さあ、あなたも世界で一番楽しいハロウィンパーティーに参加して、あなたの心の欠損を埋めるのです」
 
●ハロウィンの夜にやってくるモノ
「急に集まってもらって、すまないっす。……要するに、今回も事件っす」
 ヘリオライダーのダンテは、集まってくれたメンバーに少し申し訳なさそうな顔をして見せて、それから事件の説明を始めた。
「藤咲・うるる(サニーガール・e00086)さんの調査で、日本各地でドリームイーターが暗躍しているってことが分かったっす。出現しているドリームイーターは、ハロウィンのお祭りに対して劣等感を持っていた人で、ハロウィンパーティーの当日に、どうにも一斉に動き出すようっすね」
 一斉に動き出すハロウィンドリームイーターが出没するのは、世界で最も盛り上がるハロウィンパーティー会場、つまり鎌倉のハロウィンパーティーの会場となるらしい。
「パーティーが始まってからドリームイーターに暴れ回られたら困るっすから、なんとしてでもパーティーが始まる前に撃破してもらいたいっす。パーティー前で忙しいとは思いますが、どうかお願いするっす」
 そう言って、ダンテは今回の敵のことを説明し始めた。
「被害者は、椎名まこと君。通称、まぁ君って呼ばれてる5歳の男の子っす。この子はハロウィンパーティーに参加したくても、家庭の事情で行けなくて寂しい思いをしていたようっすね」
 恐らく彼から生まれたドリームイーターは、同じ年代の子供達が集まる場所で行われるパーティーに出現するだろう、とダンテは言った。
 なので、実際のパーティーが始まる前に、あたかもハロウィンパーティーが始まった様に楽しそうに振舞えば、ハロウィンドリームイーターを誘き出すことが出来るだろう。
「予測された出現地点にいちばん近い幼稚園を使用させてもらって、子供達にも協力してもらうって方法がいいとは思うっすが、子供達を戦闘に巻き込まないように細心の注意を払って欲しいっす」
 まあ皆さんならきっとうまくやってくれますよね、とダンテは頼もしく皆を眺めたあとで、最後に告げた。
「ドリームイーターを倒せば、被害者は目を覚まします。現在、昏睡状態になってるまぁ君の傍で心配で胸が潰れそうになっているお母さんの為にも、ぜひ、このドリームイーターを退治して欲しいっす。そして、皆で世界一、最高に楽しいハロウィンパーティーを楽しみましょう……っす!」


参加者
仁志・一紀(流浪の番犬・e01016)
古鐘・るり(安楽椅子の魔女・e01248)
天矢・恵(武装花屋・e01330)
天矢・和(幸福蒐集家・e01780)
天導・天使(箱庭療法・e02391)
雛祭・やゆよ(オラトリオのミュージックファイター・e03379)
コンスタンツァ・キルシェ(地球人のガンスリンガー・e07326)
スワロ・ラースタチカ(星鱗・e09720)

■リプレイ

●今日は楽しいハロウィンの日!
 くれよん幼稚園の中庭では、楽しいパーティーの準備が整っていた。
 子供達はそれぞれお家から持ってきた可愛らしい仮装姿に着替えており、オレンジや黒で飾り付けられた園の中庭を瞳を輝かせて眺めている。
「それじゃお願いするね」
 パーティー直前、中庭の隅でシルクハットを被って奇術師姿の天導・天使(箱庭療法・e02391)は、くれよん幼稚園の先生方と最後の打ち合わせをする。
 こちらこそお願いします、という園長先生に、天使は金の瞳を細め、ゆっくり頷いた。
 天使の合図を受け、中庭の奥から複数の影がゆっくりと登場する。
 吸血鬼に海賊船の船長、ローブをまとった魔女に赤ずきんちゃん、それから妖狐。さらにはタロット風の教皇と愚者も加わって。
「ようこそ、ハロウィンパーティーへ。一緒に楽しもうね」
 ドラゴニアンの翼を背に、白い耳と尾をつけた妖狐のスワロ・ラースタチカ(星鱗・e09720)が南瓜ランタンを手に、クラッカーを高らかに鳴らす。
 ぱーん、と乾いた音が響くと同時に、園児達ははじけ飛ぶように一斉にケルベロス達に向かって駆けだしてきた。きっと彼らの衣装に、遊んでくれる人がやってきたと認識したに違いない。
 赤色の教皇服で身を包んだ天矢・恵(武装花屋・e01330)は、集まってきた園児を見回すと、笑顔を浮かべて話しかける。
「さあ? ハロウィンの合い言葉はなんだ?」
 園児達は顔を見合わせ、それから負けない満面の笑みで返した。
「「「トリックオアトリート」」」
「良く言えたじゃねぇか」
 教皇は赤い冠を頭上から下ろし、その中に隠してあったお菓子を園児達に見せた。杖のポッキーや猫形の飴にクッキー。園児達は大喜びで小さな手を次々のばす。
「ふふ、可愛いなぁ」
 それを端から眺めるのは肩に子猫を乗せ、愚者に扮した天矢・和(幸福蒐集家・e01780)だ。穏やかな笑みで見つめる先は園児達に囲まれ笑顔になる恵がいる。
(「恵くんにもあんな頃があったなあ」)
 保護者の性で、ついつい過去の記憶を思い浮かべ、微笑む彼のもとにも園児達が集まってきて、とりっくとあとりーとを告げてくる。
「みんな仮装すごいねぇ」
 肩に担いだ袋を下ろし、和もお菓子を配り始める。
 薔薇型の飴、猫型マシュマロ。
「かわいいおかしー」
 女の子が両手でつかんで瞳を輝かせる。和は嬉しそうに頷いた。
「すごいでしょー。全部あのお兄ちゃんが作ったんだよー」
「へぇ」
 感心した様に見上げる園児の視線に気づき、恵は少し頬を赤らめた。
「ねぇねぇ、お姉ちゃんも一緒にお菓子もらいに行こう?」
 繋いだ手を揺らし、園児に誘われたのは海賊船の船長古鐘・るり(安楽椅子の魔女・e01248)だ。
「私は……」
 いいわ、と遠慮しようとして、るりは少し思案する。
 まだ9歳ではあるが、大人びている普段の彼女ならば、ここは自分はお菓子を配りに来た大人側の人間だ、と自制するところ。けれど……今日は。
「……そうね。行きましょう」
 キラリと瞳を輝かせ、彼女は園児と手を繋いで走り出す。
「いい? 私と一緒に根こそぎのお菓子を集めるのよ」
「はーい」
 海賊船のノリノリ船長は部下を得て、お菓子を求める人だかりへと突入していく。
「いいっスねー本場アメリカの祭りを思い出すっス」
 藤籠にキャンディをいっぱい詰めた赤ずきんちゃん衣装のコンスタンツァ・キルシェ(地球人のガンスリンガー・e07326)は、園児達を眺めて懐かしそうに微笑む。それにクールな吸血鬼、仁志・一紀(流浪の番犬・e01016)がお菓子を配りながら、ほう、と応じると、彼女は可愛らしい金髪ツインテールを揺らして、頷きながら語る。
「アタシもゾンビマスクにチェーンソーにフィーバーしたっスよ」
「それは、子供達恐がりそうですね」
 白の燕尾服姿で、手品の用意をしていた天使が、想像して苦笑する。
「ええ、アタシに任せてくれれば園児達をちびるまでびびらせ……」
 ご機嫌に語り続けたコンスタンツァは、そこではたと言葉を止め。
「いや、冗談っスよ。ンな大人げねーことするわけねっす!」
 慌てて大仰な素振りで否定する。納得して笑顔になった二人を見つめ、彼女は自分の荷物に詰め込んだそっちの衣装を思い出す。良かった、こっちにしておいて。
「さあ、よく見ていてね」
 園児達の前にかざすシルクハット。天使がそれを杖をぽんと叩くと、中からはたくさんのお菓子と白い鳩が飛び出してきて。
 お菓子を配り、動物の友で仲良くなった鳩を指先に乗せ、園児達に撫でさせているのを見て、普通にカラフルなお菓子を配っていた雛祭・やゆよ(オラトリオのミュージックファイター・e03379)も我慢できなくなってきて。
 持参してきたギターを取り出すと、園児達に呼びかける。
「さぁ、みんなで一緒に歌うのよさ!」
 テレビで人気のあのアニメの主題歌をつま弾くと、園児達が一斉に駆け寄ってくる。園児に手を引かれ、ケルベロス達も集まり、一つの輪が生まれたそんな時だった。
 空中にふよふよと漂いながら近づいてくる、南瓜頭のソレが遂に現れた。

●南瓜オバケにもハロウィンを♪
「きゃっ……皆、南瓜オバケよ!」
 ソレに気づいたスワロが、お菓子の詰まった南瓜ランタンを派手に地面に転がしながら叫んだ。ランタンから色とりどりのキャンディが辺り一面にばら撒かれていく。
 それを園児達が拾い集めようとする前に、ドリームイーターと園児との間に割り込んだ一紀がソレに笑顔で呼びかけた。
「なかなかその仮装、イカすね坊や」
 喜んでいるのか、ふよんふよんと体を動かす南瓜オバケ。
 オバケだ、オバケだ、と指さす園児達の手をそっと握り、恵は小さな声で彼を幼稚園の建物の方へと誘導する。
 同じく、天使やコンスタンツァも同じように園児を中庭から屋内へと誘導し始めた。
「キミもパーティーに参加しに来たのかな? お兄さんがキャンディをあげよう」
 ドリームイーターと対峙した一紀が、色鮮やかな大きな飴を差し出すと、ソレは両手で受け取り、嬉しそうにくるりと一回転してみせた。
「こっちはどうかしら?」
 部下の園児を、避難の為にやゆよに預け、るりも南瓜オバケにジンジャーマンクッキーを差し出した。オバケは首を大きく傾げ、ふるふると首を横に振る。
「じゃあこれは?」
 金平糖の袋を取り出し、一粒をかざす。小さくて色とりどりの可愛らしい粒はオバケのハートを撃ったらしい。夢中で飛びついてくる。
 るりが驚いて放ったその粒をオバケはぱくりと食べ、続けてまた一粒投げると、またぱくりと食べた。
「上手だねぇ」
 思わずぱちぱちと拍手を送りながら、和がのんびりと言う。
「他にもお菓子があるよ、何が欲しいかい?」
「キャンディ、まだあるわよ」
 話しかけながら、ソレを囲むような位置に立つスワロ。オバケの注意を惹く班が、南瓜オバケを構ってあげているその間に、避難班は園児達を次々と屋内にいる園の保護者達の元へと誘導していった。
 けれど。
「あの子とは一緒に遊べないの?」
 園児の一人がオバケを指さして天使に尋ねて、避難するべき足を止めた。
 注意を惹いているケルベロス達の様子が楽しそうに見えたのだろう。
「私も遊びたい」
「僕も」
 次々立ち止まり騒ぎ出す子供達。
 慌ててやゆよが大きな声で言う。
「ほら! 早く行かないと、南瓜オバケにお菓子をとられちゃうだわさ!」
「つかまったら大変っス! ほら、逃げるっスよ!」
 コンスタンツァも足を止める園児を建物へと促そうと苦労する。
 その騒ぎに、オバケも気づいたらしい。キャンディの魅力を振り切り、園児達の方へと首を向けた。ソレが動き出しそうになった、その瞬間。
「オバケが来たぞ!! 皆逃げろぉ!」
 大きく叫ぶ恵。近くの園児を持ち上げて、建物の方へとだっこで運ぶ。ついでに彼はオバケに向けても叫んだ。
「南瓜オバケ、おまえは隠れんぼの鬼さんだ! 30数えてスタートだ。それ、1、2、3……」
 カウントが始まると、それにつられたように園児達も急いで逃げ出す。やゆよもコンスタンツァも近くの子供達と手をつなぎ、急いで建物に駆け込んだ。
「……16、17、18~っ、……」
「っ!」
 自分も急ごうとして転んだ子供が一人。泣きじゃくるその子も、天使が慰めながら無事に屋内へと移動させ、カウントが完了する前に園児全員が建物内へと避難した。
 そのカウントの間、オバケはというと、注意役のケルベロスに見守られながら、両手で顔を塞ぎ、向こうをむいて待っていた。

●南瓜オバケをやっつけろ
「……25、26、……27」
 なんとなくオバケの為にカウントを続けてあげる恵。
 その間にやゆよは建物と中庭の間にキープアウトテープを貼って、より安全を確保し、恵はバイオガスで周囲を包み込み、天使はサークリットチェインで味方の盾力を増強した。
「28、29、30~!」
 カウントが終わった時、オバケは嬉々として顔を上げ、こちらを振り返る。しかし、そこには園児はもう一人もおらず、代わりに怖い顔をしたケルベロス達が囲んでいるわけで
「……!」
「攻撃してくるかしら……」
 るりは魔導書を手に、南瓜オバケを見つめる。
 オバケは暫く固まっていたが、やがて顔色をみるみる変えた。
 恐らく、かくれんぼなのに隠れていないケルベロス達に怒りを覚えたのであろう。一番近くにいた恵に、それが狙いを定めようとした時。
 古代語の詠唱を終えたるりが、魔導書から光線を発し、オバケにぶつける。続けて、動けぬソレに向け、一志がサイコフォースを発動する。
「!!」
「すまねぇが、そろそろお目覚めの時間だぜ?」
 遊び足らないその様子を見ると、少し可哀想な気もするけれど。
 ソレを倒さなければ、目覚めない小さな男の子がいるのだ。
 ケルベロスから距離を離そうと、南瓜オバケはじりじりと後退を始める。けれど、そこに。
「逃げられないっスよ!」
 エアライドを使って、すべり台の上からひらりと飛び降りたコンスタンツァがその行く手を遮った。
「!」
 更に、そのすべり台の陰、ビハインドと共に敵の死角に潜んでいた和が、連れていた子猫をロッドに変化させ、マジックミサイルを撃ち込んでくる。続けてビハインドも金縛りをオバケに放つ。
 逃げようと身を翻すオバケの正面。そこに構えていた恵が時空凍結弾を命中させ、再びオバケの動きを封じ込む。
「遊びの時間は終わりだ」
「そうだわさ」
 動きを止めたオバケの前にガトリングガンを構えたやゆよが立った。
(「こんな小さな子の寂しさまで利用するなんて……なんだか悲しいだわさ」)
 彼女はぎゅっと唇を噛み、ガトリング連射を放つ。オバケは激しい銃撃の嵐に押され、吹き飛ばされるように高く上昇した。
「……!」
 深いダメージを負ったオバケは、瀕死ながらそれでもマントの間からモザイクを展開しようと、体を大きく揺らす。
 だが、その攻撃も許されない。
 妖狐姿のスワロが、妖精弓を二つ重ねて束ね漆黒の巨大矢をソレに向かって放つ。回復手の仕事を失っていた天使もこの時とばかりライトニングボルトを撃ち込んだ。
「…………」
 ぽてり、と地面に落下する南瓜オバケ。
 ぱくぱく、と口を動かし何かを言うソレに対して、一紀は静かに、優しく告げた。
「悪夢はここで終わりにしようぜ」
「……」
 返事の代わりに、南瓜オバケは黙り込むと、突然ぽんっと変化した。
 残ったものは大きな南瓜のランタン。
 ハロウィンパーティーを飾るに、ぴったりな一品だ。

●パーティーが始まるよ
 オバケが退治されたことを知り、幼稚園の建物から園児達がまた駆けだしてきた。その中には窓越しにケルベロス達の活躍を見ていた子達も多く、ハロウィンの賑わい以上に彼らは園児達に尊敬された。
 海賊船の船長るりの元にも、部下がまた新たな部下を連れてきた。
「まぁ君のところにも行きたいわね」
 部下達にお菓子の略奪法を討論させながら、るりが呟く。
「でも、彼がどこに住んでいるかも分からないしね」
 天使が残念そうに言う。
 けれど一つだけ分かるのは、多分今頃、彼は目覚めているかもしれないということだ。
「パーティーの本番はこれからっスよ」
 たたたっとすべり台の上に昇ったコンスタンツァが、残っていた藤籠にいっぱいのキャンディを掲げて皆に声をかける。園児達が一斉にその足下に駆け寄った。
「持ってけ泥棒っス!」
 彼女は皆を見回して、せーの、と声をかけてから、色とりどりの小さなキャンディを宙にばら撒く。キラキラ光るキャンディを求め、園児達は小さな手をいっぱいいっぱいに伸ばして、それをキャッチした。
 そう今までは仮初めのパーティー。
 鎌倉のハロウィンパーティーの本番はこれからなのだ。
 まぁ君も目覚めて元気になったなら、お母さんと二人、参加してくるかもしれない。そう祈ることしかケルベロス達にはできないけれど。
「ハロウィンに大切なのは、わくわくする心で、彼はきっとそれを十分に持っていたと思うわ」
 スワロは集めたキャンディを渡そうと、自分に集まってきた園児達を見つめながら呟いた。子供達はカッコよくて美しいケルベロス達にすっかり夢中だ。その瞳の純粋で希望に満ちた輝きを、自分達は守ったのだ、そう思う。
「まぁ君をお母さんに返せたんだから、いいよね」
 恵の肩を叩いて微笑む和。恵は肩をすくめ、彼にプレゼントしようと作っておいた菓子を手渡す。
「親父、お疲れさまだ」
「うん」
 菓子を受け取り、和はとても嬉しそうに目を細めた。
 園児達にせがまれて、やゆよは再びギターを取り出した。
 いっぱい遊んで、笑って、少し疲れた子供は居眠りしながら、その音楽の元に集まってくる。
 ケルベロス達は園児達との楽しい時間を充分に過ごしてから、いざ鎌倉のハロウィンパーティーへと向かって行ったのだった。

作者:綾蝶 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 0
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