ケモコスは猫メイド、狐巫女、バニーガールが鉄板だ！

■リプレイ

●教会前
「コスチュームプレイ、ねえ……。正直に言えば嫌いではないけれども、彼等程の熱意があるかと言われれば、そこまでもないかな。まあ、放っておくと碌な事にならないし、討伐させて貰うとしようか」
　花凪・颯音（欺花の竜医・e00599）は仲間達と共に、ビルシャナが拠点にしている教会の前に立っていた。
　ビルシャナは信者達を前にして、ケモコスは猫メイド、狐巫女、バニーガールが鉄板だと訴え、信者達と一緒にケモコス三昧のようである。
「やれやれ、人間は随分と変わった趣向を生み出しているのですね。人型のウェアライダー様では駄目なのでしょうか？」
　レオンハルト・シュトラウス（獅子の泪冠・e24603）が、不思議そうに首を傾げた。
　一体、何がイケナイのか分からないが、おそらくビルシャナ達にとっては、重要な事なのだろう。
「おそらく、ビルシャナなりにこだわりがあるんでしょうね。だからと言って可能性を狭めるのはナンセンスですね。折角なんですもの。色々と愉しめた方がイイと思うのですが……」
　フィルメリア・ミストレス（夜の淑女・e39789）がオーソドックスなチャイナドレス姿で、自分の考えを述べる。
　だが、ビルシャナ達は猫メイド、狐巫女、バニーガール以外のケモコスは認めず、自分達の意に反するモノを排除しているようだ。
「……と言うか、着ぐるみこそケモコスの王道ですよ！」
　ロザリア・レノワール（黒き稲妻・e11689）がクマの着ぐるみ姿で、燃えるように熱く語っていく。
　それ以前にビルシャナ達の主張は一貫性がなく、自分達の趣味趣向を最優先にしているような印象を受けた。
「そもそも、この仮想ってケモコスのくくり……なのか？　特にバニーガールは……。まあ、可愛いから良いか……」
　ヴォルフラム・アルトマイア（ラストスタンド・e20318）が、むりやり自分自身を納得させる。
　そう言った意味でも、ケモコスに対するこだわりが薄く、説得力も皆無に近かった。
「……ですが、せっかくなら色々なお洋服を着る方が好きですわっ」
　霧城・ちさ（夢見るお嬢様・e18388）が、キッパリと言い放つ。
　ケモコスについては、初めて知った上で可愛いと思ったが、だからと言って押し付けていい理由にはならない。
「それに、小悪魔白衣がないのって、見る目ないなー！　アンナちゃんも、そう思わなーい？」
　木乃枝・久遠（弁証論治のアンチノミー・e30308）がニヤリと笑って、アンナ・シドー（ストレイドッグス・e20379）が首筋に抱き着くようにして絡む。
「………………」
　それでも、アンナはまったく気にせず、物凄く嫌そうな顔をしながら、久遠を引きずるようにして、仲間達と教会の中に入っていった。

●教会内
「いいか、お前ら！　ケモコスは猫メイド、狐巫女、バニーガールが鉄板！　だからこそ、俺は言いたい、断言したいッ！　それ以外は……カスである、と！」
　教会の中にはビルシャナがおり、信者達を前にして、自らの教義を語っていた。
「成程、確かに貴方達が言う3種は昔から良く見かける気がするね。……けれども、時代は多様化している、鉄板の定義を見直しても良いのではないかい？　犬耳系も結構見掛けたりするし、最近はサーバル（？）とか少し毛色の違った動物達も注目を浴びている様だ。先に挙げていた3種だって王道に入るまで時間が掛かっただろうし、新しい流行を作ってみるのも面白そうだけれどね。……という事で犬耳ロゼの可愛さもお披露目に参りました」
　颯音がボクスドラゴンのロゼに犬耳と着物を着せ、ビルシャナ達の前に陣取った。
　そのせいか、ロゼも何処か誇らしげ。
　『見て、見て』と言わんばかりに、上機嫌。
「そうやってケモコスのバリエーションを増やした事が、今の混乱を招いている！　それが、いかに愚かな事なのか、気づかぬまま……！　俺はその間違いを正したい。ただ、それだけだ！」
　ビルシャナが歪んだ正義感を振りかざし、自らの考えを語っていく。
「だからと言って、私は３種類しか認めないとか楽しめないのは、もったいないと思いますの。それに、こういう時は１種類を推すものだと思いますわ。このビルシャナはケモコスというのはできますの？　すでに鳥みたいで耳をつけるとおかしな感じがしますの」
　ちさがビルシャナに対して、生暖かい視線を送る。
「そんな事はない。ほら、見ろ！　この姿を……！　とっても、可愛いだろ！」
　ビルシャナがウサ耳を装着し、円らな瞳をキラキラさせた。
「かっわいい～！」
　それに合わせて、信者達が『可愛い』を連呼。
　まるで地上に舞い降りた天使の如く、大絶賛。
　だが、そう思っているのは、信者達だけで、ケルベロス達は『えーっと……その……可愛い？』と言わんばかりにゲンナリムード。
「確かに、猫メイド、狐巫女、バニー……どれも素敵ですが、ケモコスの可能性は無限大。その可能性を閉じたところで、明るい未来など待ってません！　このコスだっていいものだと思いません事？」
　フィルメリアがスリットから白い脚を見せ、狐チャイナを一押しした。
「た、確かに、悪くない。悪くないが……実に惜しいッ！　それがチャイナではなく、巫女であれば……俺は何の文句も言わなかったのに……」
　ビルシャナがフィルメリアの生脚をガン見しつつ、自らの迷いを振り払うようにして駄目出しをする。
　信者達も『うーん、惜しい……！』と言わんばかりに、クネクネと身悶えした。
「猫メイドのかまって感。狐巫女の神聖さ。バニーガールの誘惑。それぞれに魅力あると思います。でも、それだけではありません。あなたが知らないだけで、もっと深い世界があるんです。そんな知の探究を遮ろうとするビルシャナは危険です。早く洗脳を解いて、ケモコスの新たなステージを目指しましょう」
　ロザリアが信者達を諭すようにして、語り掛けていく。
「そんな恰好で、何を言っても無駄だッ！　つーか、なぜ着ぐるみッ！　おかしいだろ！」
　ビルシャナがイラついた様子で、破壊の光を放つ。
　だが、ロザリアがクマの着ぐるみにあるまじき身のこなしで、破壊の光を華麗に避ける。
「猫も狐も兎も可愛い。だけど……かっこよさを忘れてはいけない。それを鉄板などと言って視野を狭めるのはもったいないぞ？」
　ヴォルフラムがバーンと翼を広げ、凛々しさと格好良さを纏い、優雅に尻尾を揺らす。
　ビハインドのアレクも従者的な振舞いを見せ、ヴォルフラムをフォローするようにして様々な演出をした。
「格好良さ……か。だが、ケモコスの前では、あまりにも無力ッ！　その証拠をいま見せてやろうッ！」
　ビルシャナが邪悪な笑みを浮かべ、まわりにいた信者達に指示を出す。
　その指示を従って、信者達がヴォルフラムに飛び掛かり、あっと言う間にバニースーツを着せた。
「こ、これは……！？」
　幸いヴォルフラムの肌は、アレクによって守られていたため、あらわになる事はなかったものの、恥ずかしい事に変わりはないようだ。
「ハッハッハッハッハッ！　似合っているじゃないか。……実にイイ」
　ビルシャナが満足した様子で、ウンウンと頷いた。
「自分には良く分かりませんが、それでも熱意があるのだけは良く伝わってきました。でも、その他のケモコスを認めないという事は、結局のところ挙げている3種類のこすぷれが好きなだけですよね。それだったら潔くそれが『好きだ！』と名乗るべきでは？　他を下げて自分が好きなものを持ち上げるって醜いですねー」
　レオンハルトもテレビウムのアルトに猫メイドの恰好をさせ、ビルシャナ達に語り掛けていく。
「だが、それだけイイんだ。ズバ抜けているッ！」
　ビルシャナが動揺した様子で、激しく目を泳がせた。
　『た、確かに……』と答えたい気持ちもあるようだが、信者達の目があるせいで、本音を口にする事が出来ないようだ。
「でも、ほーらほらほら、犬娘も良くない？　ちょーきょーしたいと思わない？」
　久遠が不意打ちを仕掛け、アンナに首輪を嵌め、引っ張って見せつつ、その背中に隠れてラブフェロモンを使う。
「ばっ……こら、やめろ、外せコラ！」
　アンナが物凄く嫌そうな顔をしながら、久遠をジロリと睨む。
「も、もう限界だああああああああああああああああ」
　次の瞬間、信者達が興奮した様子で、アンナ達に飛び掛かって来た。

●ビルシャナ
「もうバニーガールになっているのに、一体何をするつもりだッ！？」
　その巻き添えを食らったヴォルフラムが顔を真っ赤にしながら、信者達の攻撃を避けていく。
「お前達に口答えする権利はないッ！」
　だが、信者達は暴走状態ッ！
　アレクに猫耳をつけると、ヴォルフラムの服を脱がせて、お揃いのメイド服を着せようとした。
「だったら……全部忘れるまで、ブチ殴る……！」
　その間にアンナが首輪を外し、キレ気味になりながら、信者達をバッタバッタと薙ぎ倒し、ビルシャナめがけて八つ当たり。
「ば、馬鹿なッ！　俺の信者がこんなにも呆気なく……」
　ビルシャナが信じられない様子で、げふっと血反吐を吐いた。
「あはは、やきはらえー！　その辺に散らばってるコスプレグッズごと！」
　久遠がシャーマンズゴーストの万業老師の肩に乗り、ワイルドファイアでビルシャナを燃やす。
　それに合わせて、アルトがハンマーをブン回し、ビルシャナが反撃する機会を奪う。
「お、俺は何も悪い事など……ただケモコスを……うぼっ！？」
　ビルシャナが続けざまに攻撃を食らいつつ、自らの主張を叫ぼうとした。
「それ以前に、ビルシャナって、存在自体がケモコスじゃん」
　ロザリアが即座にツッコミを入れつつ、百弾激雷でビルシャナをパリッと揚げる。
「今の私はあの妲己ですからね。やはりコスプレはただ着るだけではなく、きちんとキャラも真似しないと、ですよね。というわけで……死んでくださいます？」
　それに合わせて、フィルメリアが真紅の薔薇を生み出し、舞い散る花弁でビルシャナを包み、マヒ状態に陥らせて命を奪った。
「妙な主張さえしなければ、長生きできたかもしれないのに……。あ、でも、ビルシャナになった時点で、こうなっても仕方がないのかな……」
　颯音が複雑な気持ちになりながら、ボクスドラゴンのロゼと一緒に、ビルシャナの死体を眺める。
　ビルシャナにとっては、望まぬ最後……。
　逆に信者達はビルシャナの呪縛から解放され、ようやく自由の身になった。
「……とは言え、信者さま達はケモコスをしたまま、おうちに帰すのも大変ですわね。これでよければ着替えるですの。懲りてなかったらケルベロスのハロウィン仮装も見に来るといいですわ」
　ちさが色々と察した様子で、信者達に着替えを配っていく。
　信者達は未だに状況を理解する事が出来ず、自分の恰好に戸惑い、恥ずかしそうにしていた。
　それでも、そのままの恰好でいいと言う訳ではなかったため、ちさから気まずい様子で着替えを奪い取っていく。
「……って、あれ？　またこのパターンですか……？　ちょ、ぱんつは……！」
　そんな中、レオンハルトが一部の信者達に抱えられ、そのまま教会を出て夜の闇に飲み込まれた。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2017年9月18日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 2
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