鎌倉ハロウィンパーティー~憂鬱パンプキン

作者:志羽

●憂鬱パンプキン
 ハロウィンパーティーしよう!
 それじゃあお菓子にお料理はやっぱりあれだよね!
 そうだね、あれしかないね!
 かぼちゃづくし!
 かぼちゃプリンにかぼちゃクッキー、かぼちゃのタルト。
 楽しそうな友人たちの声にそうだねと少女は頷いた。
 けれどその心の内は憂鬱。
 だって、かぼちゃは好きじゃない。苦手なのだから。
「ああ、かぼちゃのないハロウィンパーティーとか、ないかなぁ……ううん、私がかぼちゃを好きになれたらいいのに」
 友人たちの賑やかな声。それは楽しそうで心惹かれるのだが、そこでおいしいねと言われてうんと頷ける自信がない。仲の良い友人たちは、きっとおいしいと言っても自分の気持ちに気付いてしまうだろう。
 そうなると、その場の空気も悪くなる。せっかくの楽しい日なのに、そんなことにはしたくない。
 行きたくはあるが、行きたくはなくて、少女はまだいけるかわからないと返したのだ。
 はぁと、ひとつ溜息落とす。
 その時だった。視界に赤い色がちらついた。なんだろうと視線向けた瞬間に、どすっと体を貫かれるような音。
「ハロウィンパーティーに参加したい……ですか。その夢、かなえてあげましょう。世界で一番楽しいパーティーに参加して、その心の欠損を埋めるのです」
 赤い頭巾をかぶった少女。その手にある鍵が心臓を貫いている。
 少女は何かわからぬうちに意識を失い崩れ落ちた。
 そしてその隣には全身モザイクのドリームイーターが立っている。
 その服装は大きなとんがり帽子に長いローブまとって魔女の様。オレンジ色のそのコスチュームにはかぼちゃモチーフのアクセサリーがたくさんついていた。
 そのドリームイータ―はその場から姿を消す。
 向かう先は――

●ハロウィンパーティーの日に
 藤咲・うるる(サニーガール・e00086)の調査によって日本各地でドリームイーターが暗躍しているということが分かった。
 出現しているドリームイーターはハロウィンのお祭りに対して劣等感を持っていた人。ドリームイーター達はハロウィン当日に一斉に動き出すという。
「てことで、ケルベロスさんたちにドリームイーターの撃破をお願いしたいでーす」
 そう言ったところで、夜浪・イチ(サキュバスのヘリオライダー・en0047)は初めまして、これからよろしくとへらりと笑んだ。
「えーと、ハロウィンドリームイーターが現れるのは世界で最も盛り上がるハロウィンパーティー会場。つまりは鎌倉ー」
 ケルベロスさんたちには、実際のハロウィンパーティーが開始する直前までに、ハロウィンドリームイーターを撃破してほしいのだとイチは告げる。
 そしてハロウィンドリームイーターについて話始めた。
 ハロウィンドリーム―イーターはパーティーが始まると同時に現れる。
「それならハロウィンパーティーが始まる時間よりも早く、あたかもハロウィンパーティーが始まったように、楽しそーに振舞えばハロウィンドリームイーターを誘い出せると思うんだよ」
 というわけで、ここで誘い出しをお願いしまーすとイチはある公園を示す。
 そこはかぼちゃづくしのお菓子や料理を持ち寄ってのパーティーがのちのち開かれる予定の場所だった。
「ここで楽しそーにきゃっきゃしてかぼちゃのお菓子とかおいしく食べてるとハロウィンドリームイーターが混ぜてくれーって出てくるはず」
 いかにおいしそうに、そして楽しそうに。おそらくそこが誘い出しのポイントだとイチは言う。
「現れるハロウィンドリームイーターは、全身モザイクでかぼちゃモチーフのアクセサリーつけた魔女っ子? みたいな感じなんですぐわかると思うよ」
 ハロウィンドリームイーターを倒さなければ、パーティーもできない。
 楽しむためにもしっかりとお願いしますとイチはゆるゆる紡いだ。
「そうそう、そのままパーティーにいっちゃえばいいから、せっかくだし何か仮装していっちゃえばいいと思うよ」
 簡単に猫耳つけてみたり、こった衣装を用意したり。それくらいの時間はまだ十分にある。
「みんなの楽しいパーティーのためでもあるからね、がんばってきてねー」
 それじゃあ行ってらっしゃいと、イチは笑み向けた。


参加者
バーゲスト・ファーニバル(墓下狂葬曲・e00285)
アラステア・ウィールライト(レプリカントの刀剣士・e00742)
疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)
道玄・春次(花曇り・e01044)
オルテンシア・マルブランシュ(ミストラル・e03232)
ゾラ・ラウィーニア(アンビリーバー・e10915)
深宮司・蒼(綿津見降ろし・e16730)

■リプレイ

●前倒しのハロウィンパーティー
 その場所は、すでにハロウィンを楽しむための飾りつけ施された公園。
 該当にはコウモリのマスコットが下がり、ジャングルジムなどの遊具はいろいろなモールで飾り付けられあとは始まるのを待つのみ、といった所。
「俺、こういうの初めてなんだぜ。すげー楽しみ!」
 カボチャランタンを振り回しかけて、おっとと深宮司・蒼(綿津見降ろし・e16730)は抱える。
 ドクロ面を斜めにかぶり、黒いコートで死神風。背負った棺桶はダンボール製で、その中に武器は隠していた。面ももちろん画用紙に自分で描いて、手作り感たっぷり。それが楽しみであることをまた表しているようだった。
 故郷の島ではパーティーとかはしていなかったとうきうきする様子に、似合っているわとオルテンシア・マルブランシュ(ミストラル・e03232)は笑み向ける。
「あ、ちゃんと敵も倒すぞ。色んな人がパーティー楽しみにしてんだもん、めちゃくちゃになんかさせねー!」
 その言葉にオルテンシアはそうねと頷く。
「役目をこなせば、一足早いハロウィンパーティーに預かれそうよ」
 頑張りましょうね、カトルという名のミミックへ視線を向けるオルテンシアは花嫁だ。ちょっと張り切りすぎたかしらとカトルに尋ねる。カトルは濃淡様々なオレンジ色のパッチワークの布をすっぽり被せて南瓜頭巾。
 けれど今日、この中で唯一の華。これくらいはいいわよねと裾を翻す。
 南瓜マフィンと南瓜スコーン。チョコペンで顔の描かれたそれを高々と掲げ。
「南瓜が駄目ならお菓子を喰えば好いじゃない! ――ッてえ愉しめば好いと思うんですけどねえ」
 ピンク猫のフードを被り、バーゲスト・ファーニバル(墓下狂葬曲・e00285)は自前の尻尾に巻いたピンクリボンをチェック。くるくると巻きつけたそれは縞々模様のようだ。そしてエアシューズは猫足を模し、リボルバー銃にはトランプのあしらい。
 おしゃれに飾っている、とアラステア・ウィールライト(レプリカントの刀剣士・e00742)はバーゲストのリボルバー銃から自らの武器へと視線を移した。斬霊刀は今や立派なホウキ仕様。この魔法使いの仮装とあう相棒だ。
「俺の大事な武器が……まあ、しかたがないな」
 そのままの姿ではこの場に共に来ることはできなかったとアラステアは思う。
「武器は素敵な俺の相棒だからな」
 一つ頷いて、アラステアはくるりと皆を見回した。
 目の前歩くはミイラ男。
 ゾラ・ラウィーニア(アンビリーバー・e10915)は中華風の、ゆったりとした服装。上半身は脱いで腰紐で留め、首と目元のあたりを少し包帯でぐるぐる巻き。腰にはランタン、ナイフを攻性植物絡ませ下げてカモフラージュだ。
「ちょっと寒い……」
 上着をダイナミックにはだけて上半身裸。ゾラはヘックシュ! とくしゃみひとつ。
 けれど、この後戦闘があるのはわかっている。体は暖まるかと準備の続き。
 真っ黒ローブの裾を閃かせるのはエスティール・グレイス(影哭・e01562)だ。墓守に扮し、武器はそっと腰元に忍ばせてある。
 その手にはジャックオランタンを模した南瓜味のドーナツ。そこにはピリッと辛いスパイスきかせた物も何個か潜んでいる。
 紫や橙の生地重ねたアラビアン風の、踊り子のような衣装纏う疎影・ヒコ(吉兆の百花魁・e00998)は周囲に絵をかいてご機嫌だ。その気分に合わせるようにじゃらじゃらと身につけた装飾品が踊る。
「南瓜や蝙蝠、とやっぱこれだよな。お化け」
 そうして描かれたものは、確かに南瓜や蝙蝠や、お化けなのだけれども絵心がお留守番していた。
「疎影は楽しそうやね」
 楽しくないわけないという声に笑う道玄・春次(花曇り・e01044)の今日の面は白兎だ。
 物語に出てくる白兎の仮装、その傍らのボクスドラゴンの雷蔵も帽子をかぶり、立て襟ネクタイ付のポンチョを纏う。
 スマートフォンにスピーカーをつなぎ、春次は音楽の準備。流れる音楽はダークだけれど陽気なものだ。
 雷蔵を持ち上げ音に合わせてくるりと回れば、そっちも楽しそうだと笑い声。
 少しばかりこの場所にハロウィンの雰囲気を足して、楽しい時間が始まったと思わせるための、楽しい時間。
「さぁさ、パーティーに遅れてまうよ。 まだの子はこの会場までおいで」
 南瓜お化けや蝙蝠の装飾施した魔導書を手帳に見立て、春次は開く。
 さぁこっちと導く先では明るい声だ。
「Trick or Treat!」
 それを合言葉に持ち寄った菓子を見せ合いっこ。
「パンプキンパイにサラダ。それにかぼちゃクッキーも」
 公園の一角、飾りつけなどの多い場所からちょっと離れた所にあったテーブルに並ぶ色んなもの。
「俺からは煮付けと顔付きの南瓜きんとん」
 地味でも美味いとヒコは言って、そっちのも美味そうだと覗き込む。
「グラタンもあるぜ!」
「まさにかぼちゃづくしね」
 オルテンシアは笑って、どれもおいしそうと零す。
 アラステアはどれから行こうか迷うと言いながら、皆の仮装をひとりずつほめていく。
「うちの旅団の団長手作りのパンプキンスープでよ。うめーんだ」
 お裾分けしたくてと、ゾラは笑ってこれもとマフィンを
「マフィンほしー奴はほら、合言葉! トリックオアー?」
 トリート! と笑い合ってあれもこれもと手を伸ばしあう。
「悪戯しねえので、菓子下さいたんまりと!」
 バーゲストはこっちもあっちもと皆からお菓子を。ひとつもらっては食べ、もひとつ貰っては食べ。
「いやあ強奪も赦されるとは。恵みのハロウィン最高ですね!」
「兎から猫へ、さぁどっちにする?」
 と、差し出したのは南瓜プリンと南瓜モンブラン。
 どちらにしようか迷いうのも本当に良い時間と、笑みを彩る瞳の端にあるものが映った。その視線に、あれもこれもと手を伸ばす食いしん坊やねと笑っていた春次も気付く。
「……ああ、君も宴に誘われたんやね」
 公園の入り口あたりの――新たな参加者。
「お菓子があっても悪戯させて?」
 全身モザイクの、とんがり帽子に長いローブの魔女。けれどそれは全身モザイクのドリームイーター。
 南瓜魔女との、戦うハロウィン。
 trick or trick!
 その言葉が開幕の一声。

●憂鬱な南瓜魔女とパーティーを
 なんて楽しそうなとでもいうのか。
 南瓜魔女はごあいさつとばかりにモザイクを飛ばしてくる。
 その攻撃をゆるりと春次はかわして。
「今宵、一夜だけの魔法を掛けてあげよう」
 皆への援護と魔導書開くと待ちわびたかの様に飛び出すのは、魔女帽子被りステッキをもった白いお化けたち。飛び出すようすに傍らの雷蔵はちょっと驚いていた。
 お化けたちはキヒヒと笑ったり、ベロベロと戯けながら、星の粒を皆へと振りかけていく。傷をも治すそれは、鼓舞でもあった。
 雷蔵はそのお化けたちに負けじと、炎吐いて南瓜魔女を攻撃する。
「あらあらドリームイーターさん。貴女のお菓子はどこかしら?」
 胸元からするりと取り出したシャーマンズカード。オルテンシアはそれより氷結もたらす弾丸を放つ。
 南瓜魔女は凍りついたものを払うようなおどけた動き。
 その間にゾラは黄金の果実宿す『収穫形態』へと攻性植物を変形させる。その聖なる光は、前に立ち攻撃仕掛ける皆へ向けたもの。
 くるくると攻撃受けながらも軽やかに動く。
 ハロウィンを楽しんでいるような動きの南瓜魔女。
「珍しい仮装だな。そのモザイク」
 ヒコは回り込んで、逃げ道を塞いでおいた。
「……菓子ださねぇと悪戯しちまうぞ?」
 向けられた言葉に南瓜魔女の声はないが、まるでケタケタ笑うようにおどけて見せる。
 楽しそうだと思うが戦いはまた別。
「……さぁて、と。討伐もひとつの祭ってか」
 とんと地を蹴って、足に乗せた煌めきと重力。飛び蹴るその瞬間に紫に橙と重ねた色が躍り、南瓜魔女を捕える。
「ん、魔女に箒で逃げられるわけにはいかないんでね」
 その言葉にそうだなと頷き、アラステアは向かう。
 アラステアの相棒は、今はホウキの姿をやめてあるままの姿だ。その素敵な相棒を握りこみ、アラステアは距離詰める。
「あなたの姿も素敵……」
 アラステアは南瓜魔女の姿も皆と同じようにまず褒めた。
「素敵といったら、このパーティー会場も素敵だ。あまり壊したくはない」
 あなたもそうだろ? とアラステアは南瓜魔女に問う。だったらちゃっちゃと終わらせちゃおうかと零して、一気に踏み込んだ。
「俺達の『パーティー』をなっ!」
 相棒に宿る空の霊力。アラステアの切っ先が南瓜魔女をとらえ切り裂いてゆく。
 そこへもう一つ、影が沈みこむ。
「菓子にするにゃあ、不味そうですねえ」
 南瓜魔女に肉薄して、バーゲストはその姿見遣り揶揄する。
 走り込み、振り上げた足は猫脚だ。振り上げられた足は南瓜魔女の体の中心を蹴りぬいた。
 その衝撃に南瓜魔女の動きは鈍った。鈍りつつも仕掛けた攻撃。
 前のめりになるように顔付きだし、口のあたりが大きくなる。そしてがぱっと開かれたそれがバーゲストを飲み込もうと動いた。
 けれど、そこに蒼が割ってはいった。
 食らいつくその攻撃を蒼は受けた。けれどそれは、そんなに大きなダメージではない。逆に間合いは詰められた状態。
 まだ小さな身、その掌に螺旋を籠めて触れた瞬間、南瓜魔女の身が揺れる。
 内側に響く蒼の攻撃。その威力と、そして触れた場所がよかったらしく重く響いた。
「俺達だけじゃなくあの魔女もハロウィンを全力で楽しめるように気合いいれていきたいね」
 そう言ってエスティールは南瓜魔女の目の前へ。
「お菓子かイタズラか。お前はどっちが好み?」
 問いながら、エスティールのその身にある黒い液体が牙をむく。
「……俺は断然後者だな」
 南瓜魔女を丸呑みにするために黒い液体は容変える。
 その攻撃にゾラはやるねと笑う。
「……ゾラとのナイフ捌き対決も負けてられない所」
 次は影を向けようかとエスティールは紡ぐ。
 蒼はいつでも庇いにはいれる態勢保ちながら、螺旋手裏剣を放った。
 螺旋の軌跡を描いて、帯びる力。それは南瓜魔女の身へ深々と突き刺さる。
「南瓜を無理に好きになる必要俺はないと思うけど」
 苦手でも苦手なりに楽しめる方法はあるし、それを知ってもなお共に遊び楽しんでくれる友人はきっといる。
「一番重要なのは自分自身の気持ち、こういうのは特にな」
 目の前の南瓜魔女から少女へ伝わることはないだろうけれど、それでも伝えたかった。
 エスティールは影の如き斬撃を繰り出し、南瓜魔女の傷を開いてゆく。
 その攻撃にゾラは口笛と賞賛を。
「俺も負けてらんねぇな?」
 腰にある惨殺ナイフを抜いて、ゾラは見てろよと踏み込んだ。
「悪い子にはそれ相応のお仕置きをってね?」
 ナイフの刃はジグザグにモザイクを刻みゆく。
「ほなやろか、雷蔵」
 紡ぐ言葉は竜語。その掌から春次がドラゴンの幻影を放つのと、雷蔵がブレスを向けるのは同じタイミング。
 南瓜魔女は炎に抱かれ踊り逃れようとした。
 その炎の中から抜け出たところでアラステアが避けられぬようにと先程と違う技で南瓜魔女を追う。
 雷の霊力を帯びた相棒の斬霊刀は南瓜魔女の服を破り、その身を突いた。
 仲間の攻撃も重なり、南瓜魔女の身は今、動きを留められと攻撃のかけ時。
「……季節外れの梅と散るなんてのも、乙だろ」
 その機を逃さずヒコは羽ばたきと共に飛ぶ。綻んだ梅花が舞う春風の香が深くなれば、それは間合いに入った瞬間。
「東風ふかば にほひをこせよ 梅の花――……忘れるな、この一撃」
 南瓜魔女の懐に深く入り込む飛び蹴りの一撃。
 一歩、二歩と踊るように後ろにすこし下がりながら、南瓜魔女は自らの傷をモザイクで多いじわりと修復してゆく。
 けれどそれは、南瓜魔女が万全な状態になるわけではない。応急処置に過ぎないのだ。
 カトルは財宝撒いて、南瓜魔女を惑わせる。その間にオルテンシアは半透明の「御業」を喚ぶ。御業の放つ炎弾が南瓜魔女を抱き込んだ。
「御伽話のごった煮スープと行きましょうかね」
 笑って、ゆるりとその指先からインクの様に黒い液体零して綴るは『少女狙う黒狼』。地這う爪先は裂かれた空洞満たそうと鋭い爪で南瓜魔女の体躯を食いちぎる。
 最後の項は真赤に染まり、理不尽で残酷な御伽話は傷跡ばかりを深く残して、御終い。
「HappyHalloween! ――本番はどうか好い日を」
 きっと目が覚めたら、と笑う。
 消えゆく南瓜魔女はぼふんと突然大きな音たてて姿を変えた。
 ごとんと落ちるのは大きなかぼちゃ。
 かぼちゃのランタンだった。

●これからが、本番
 公園の飾りつけ、ジャングルジムの一等高いところに大きなかぼちゃのランタン据える。
 そして壊れたところにゾラがヒールをかければ、にょきりと踊る植物纏うようなものに。
「幻想的なのもイイだろ?」
「おお、えぇ感じにハロウィンぽい」
「ちょっとした遊び心ね」
 春次の言葉に笑って、こっちもとオルテンシアはヒールをかける。
「これで皆でハロウィン、できるな!」
 続きをしようと蒼は菓子に手を伸ばす。
 ひとつとったドーナツはピリっと辛さ含んで驚きだ。
「この辺は南瓜味のような気がする……」
 と、悪戯混じりのドーナツをエスティールもひとつ。
 つられるようにバーゲストも手を伸ばせば。
「ンー、口ン中が甘い! こりゃ俺も南瓜の夢見ますねえ」
 ぱくりと食べた菓子の甘さ。バーゲストはけらけら笑ってもひとつと手を伸ばす。
「……俺はあたるか外れるか……」
 ヒコもそれに混ざれば、一口で止まる。ぴりっとした刺激に南瓜きんとんをそっと一口。素朴な味を噛みしめる。
「雷蔵の勘ではどれがセーフやろか……」
 むむ、と面の下で唸りながら春次は雷蔵を抱え上げる。南瓜ドーナツを真摯に見つめる一人と一匹。
「イモの中でも一番好きやけどな。美味しいやん?」
 そう雷蔵に尋ねるも、イモでなくウリ科だと、違うという視線を向けられ、どしたんと春次は首傾げた。
 そんな楽しそうな様子をアラステアは少し離れた所に座って眺めていた。
 こういったパーティーは雰囲気を楽しむもの。
「楽しそうなみんなが、楽しいな」
 これもまた楽しみ方のひとつ。
 楽しい中でふと、オルテンシアは思う。
「……夢を喰まれた少女は目を覚ましたかしら」
 人の好みは人の好みは千差万別。
(「かぼちゃが嫌いでも、パーティーはきっと楽しめるはずよ」)
 少女のハロウィンが素敵なものになるようオルテンシアは願う。
 ハロウィンパーティーは楽しいもの。一年に一度きりのお祭りだ。
 それはこれから、始まるもの。

作者:志羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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