●夢と思わぬ影の襲
夕陽の墜ちた、放課後の高校。
もう、殆どの学生連中は下校し、グラウンドに残る学生も最後のアップをして、帰宅準備をしている。
……そんな中、教室にちょっとしたお菓子を持ち込み、ダベりながら囲んでいるのは女子高校生達。
どうでも良い様な事を笑い合い、会話している彼女達……そこに、音も無く近づいてくるのは、ホラーメイカー。
彼女達は盛り上がり続け、ホラーメイカーが近づいてきた事に気づかなかった彼女達へ。
「……ねぇ、あなた達、怪談話は好きかしら?」
不意に話しかけるホラーメイカー。
彼女の持つ、不気味な雰囲気に、会話していた女子高校生達は突然である事も在り、驚き、思わず、頷く。
……そして、彼女が。
『……あのね。この学校の裏手にある焼却炉。そこに昔何があったか、知ってるかしら?』
当然、彼女達は知らない……そして。
『あそこには、昔生き物小屋があったんだって。どうも、可愛い可愛い兎さんが飼育されていたんだって。でも……その兎さん達を、学校の生徒の誰か、が金属バットで全て殴り殺すという事件があったみたいなの』
「え……い、いやぁ……」
『そして生き物小屋は閉鎖され、今は焼却炉が置かれているって訳』
「……なんで、焼却炉になってるの?」
『そしてね、この事件が起きた三日月の夜、この焼却炉に行くと、焼却炉の中から、殺された兎たちが復讐に現れるって話……なのよね。殺された兎たちは、自分の身体をつなぎ合わせ、人間よりも大きな大きな兎のバケモノになって、ね』
ふふっ、と笑うホラーメイカー……その言葉に恐怖し、周りの女子高生達は悲鳴を上げる。
……と、その言葉の先は何もなく、静けさに包まれ、ホラーメイカーの姿は消失。
そして女子高生達は。
「……ね、ねぇあの話、怖かったね」
「そ、そうねぇ。でも、ちょっと確かめてみたい、かな?」
「え、本当!? で、でも三日月の日って、一週間後だったっけ……? もう、すぐなのよね……」
……と女子高生達は、その恐怖を噂話として、会話に盛り上がり始めるのであった。
「……ケルベロスの皆さん、集まっていただけましたね。では、始めます」
と、セリカ・リュミエールは、集まったケルベロスに一礼しつつ、早速。
「最近、ドラグナーの『ホラーメイカー』が、屍隷兵を利用し、事件を起こそうとしている様なのです」
「ホラーメイカーは、作成した屍隷兵を学校に潜伏させた後、怪談話に興味を持った中高生らに、その屍隷兵を元にした学校の怪談を話し聞かせ、その怪談に興味を持った中高生が屍隷兵の居場所に自分からやってくるよう仕向けている様なのです」
「既に、学校の怪談を探索し、行方不明となった者達も居る様で、早急に解決する必要があります」
「事件の舞台となる学校で、ホラーメイカーが広めた怪談話は兎のバケモノが出るって話しで、この怪談話を探索しようとすると、屍隷兵に襲われてしまう様なのです」
「怪談話を聞いた一般人が事件現場へ現れない様に対策をしつつ、怪談話に扮して学校に潜伏する屍隷兵の撃破をお願いします」
そして、セリカは更に。
「今回、皆さんが相手にするのは屍隷兵のみで、このドラグナーのホラーメイカーは現れません。しかし屍隷兵となっている、兎のバケモノさんはとても巨大で、ズシンズシンと跳ね飛びながら皆さんに攻撃して来ます」
「幾つもの兎がツギハギにくっついた様な奇っ怪な姿をした兎の屍隷兵、攻撃方法もその巨大で丸いからだでコロコロと転がり、潰そうと攻撃してきます」
「又、周囲はすっかり日の落ちた暗闇、更に校舎の裏側の焼却炉の中から飛び出してきますので、初撃は不意打ちの一撃を喰らう事は間違いありません」
「又、高い鳴き声を上げて、催眠効果のある範囲攻撃を仕掛けてくる様です。この催眠効果の高い鳴き声、かなり効果が強力な様なので、喰らったらすぐに回復する様に注意して下さい」
そして、セリカは。
「今回の敵は、学校に屍隷兵を潜伏させてから、人間を誘き寄せるような怪談話をばらまく用意周到なドラグナーの様です。とは言えそれを放置しておく訳には行きませんので、どうか皆さん、宜しくお願いします」
と、頭を下げた。
参加者 | |
---|---|
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612) |
空飛・空牙(空望む流浪人・e03810) |
風魔・遊鬼(風鎖・e08021) |
天宮・陽斗(天陽の葬爪・e09873) |
フリードリッヒ・ミュンヒハウゼン(ほら吹き男爵・e15511) |
天原・俊輝(偽りの銀・e28879) |
一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948) |
ソルヴィン・フォルナー(ウィズジョーカー・e40080) |
●うさぎのはなし
すっかり日も落ちた、深夜の高校。
学生達が居ない筈の深夜、裏手にある焼却炉に出現するという噂のウサギをつなぎ合わせた姿形をしているという屍隷兵。
その屍隷兵の噂話を流し、敢て其処にやって来させる事で、被害に逢わせようという細工をする者、ホラーメイカー。
「いやな敵だね、まったく。ただのデウスエクスなら、からかい倒してやればいいけど……そんな気になれるものか」
とフリードリッヒ・ミュンヒハウゼン(ほら吹き男爵・e15511)が溜息を吐くと、それに空飛・空牙(空望む流浪人・e03810)と天原・俊輝(偽りの銀・e28879)も。
「学校の怪談……にしては時期はずれてんな。それでも怖いものみたさに近づくヒトもいる、か……面倒なこったなぁ……」
「ええ、それも高校生なんて好奇心旺盛な年頃でしょう。怪談の真偽を確かめたくなるのも無理はありませんが……それを利用される訳には行きませんね」
「ああ、そうだな」
笑う空牙、そしてシィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)が。
「そうデース! 怖い話とかいうのは、正直ボク苦手デスけど、頑張るデース!!」
バイオレンスギターをじゃじゃーん、と鳴らし、拳を振り上げるシィカ、そして天宮・陽斗(天陽の葬爪・e09873)が。
「ああ……そうだな。しかし屍隷兵か……」
ぼんやりと呟く一言、それに一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948)とソルヴィン・フォルナー(ウィズジョーカー・e40080)が。
「そうだな。屍隷兵を利用する敵が増えてきたか……悪趣味だし、これ以上が広がる前に元を叩きたいところだけど……」
「んむ。まったくホラーメイカーもウサギではなくデウスエクスを使えば良いものを。新宿だか渋谷に魚っぽいのがうじゃうじゃ泳いどるんじゃろう? ……あ、倒してもコギトエルゴスム化するだけじゃったか! ふははは!!」
腰に手を当てて、大声で笑うソルヴィン。そんな豪胆な心に苦笑しつつ、フリードリッヒが。
「まぁ、何にせよこの子が誰かを傷付ける前に、けりをつけようか」
と言うと、風魔・遊鬼(風鎖・e08021)が。
「……そうだな。まぁ、この事態をこのまま放置しておく訳にもいかないだろう……さあ、行くぞ」
と、漆黒の服を闇夜にたなびかせ、そしてケルベロス達はホラーメイカーが現れる校内へと向かうのであった。
●ウサギは跳ねる
そして、漆黒の闇に包まれている、校舎裏の焼却場。
元々人気が余りない場所ではあるが、更にそれに加えて人気を阻む為に、フリードリッヒの殺界形成が展開され、殺気が渦巻き、更なる恐怖を覚えさせる。
……でも、ホラーメイカーに話を振られた、あの女子高生達は。
『ね、ねえ……怖くない? ねえ、帰ろうよぉ?』
『でもさぁ、面白そうじゃん? ちょっとだけ、ちょっとだけ見ていこうよ』
と、怖がる友人の手を引きながら、その焼却炉に近づいてくる。
「全く、仕方ないですね……」
と溜息を吐く俊輝。
焼却炉への曲がり角の前で、突如女子高生達の前に立ちふさがる空牙。
『きゃぁ、な、何よぉ!?』
と声を上げる女子高生に、空牙は。
「この先、割と真面目にやばいから帰れ。あんま夜更かしすんなよー」
と、手をひらひらとふって追い返すようにするのだが、女子高生達は。
『え、何でよー。貴方には関係無いじゃない!』
『そうよそうよ。それに貴方、この学校の生徒ジャナイでしょー!』
と、ぶーぶと口を挟む。
……気合いが入っているというか、豪胆な女子高生達に対し、はぁ、と溜息を履く空牙。
その後ろから、殺界形成を纏ったフリードリッヒが闇の中からすっ、と出て来て。
「この先の焼却炉に待って居るのは、いるかもわからない亡霊じゃない。ドラグナーの作ったレブナントだ。見つからないうちに早く帰りたまえ」
と言いながら、殺気を更に強める。
流石に至近距離の殺界形成の解放、更にその整った顔立ちから放たれる殺気は、流石に恐怖を増長した様で、悲鳴を上げて其の場から逃げ去っていく。
……そして、他の人気が無いのを確認すると共に、遊鬼が焼却場へと向かう道全てにキープアウトテープを使い、完全封鎖。
「さて、と……例のうさ公が出てくるのはあの焼却炉か?」
と空牙が指を差し、確認。それにシィカとソルヴィンが。
「そうデース! あれがウサギの現れる恐ろしい焼却炉デース!!」
「そうじゃな。中々暗いのぅ。もし灯が欲しい者がおれば貸すでのう。多くあるから気軽に言うてくれ」
と。
……まぁ、基本的に各自灯を持ってきている様で。
「そうかそうか。まぁいい。わしはこの暗視機能付きサングラスがあるから問題あらん……まぁ要らんならそれでもよし! ふはは!!」
大きく笑うソルヴィン……はともかく。
そして、ケルベロス達は一端姿を隠し、その中から姿を現わし、焼却炉へと近づいていく遊鬼と俊輝……と、次の瞬間。
『ウッウッ……』
と、独特の鳴き声を上げたうさぎが、焼却炉の扉をぶち破る様にして、飛び出してくる。
普通のウサギに対し、かなりの大きさをしたウサギは、ちょっと怖い。
そしてそんなうさぎの飛び出し様の、体当たりの一撃。
咄嗟に飛び出した俊輝のビハインド、美雨がカバーリングし、そのまま地面へと押し倒される。
「美雨、大丈夫?」
と声を掛けるが、美雨は……ウサギを押し退けるようにしながら再度立ち上がる。
「こちらロックなケルベロスデース! イェイ! では本日もロックなケルベロスナイトスタートデス! イェイ!!」
とギターを掻き鳴らしながら、即座にウィッチオペレーションを美雨に掛けるシィカ。
そして、アヤメが。
「悪いね……ボクの手で終わらせるよ、御免」
と言うと共に接近。そしてスプリングレインの一撃を叩きつけると、更に陽斗が。
「深淵に眠る荒ぶる魂よ、汝が怒号を焔と化せ!」
と宣言し『天魔灰燼符』を放ち、二人、クラッシャーの攻撃がうさぎの体力を大きく削る。
そして、ソルヴィンが『筋肉健康』で仲間達にBS耐性を付与すると、更に空牙、フリードリッヒが続く。
「そんじゃ……その存在狩らせてもらうぜ? 悪いが悪く思うなよ」
「ああ。さぁ……タネも仕掛けもございますってね!」
と分身の術での自己強化と、『歩くびっくり箱』で攻撃。
……そして最後に遊鬼、俊輝が最後に締めくくるが如く、達人の一撃と、ハートクエイクアローで射抜いていく。
そして次の刻。
うさぎはぴょんぴょんと飛び跳ねながら、ケルベロス達の上にのし掛かり攻撃。
……ズシンズシン、と土煙を巻き上げたり、プップップ、と独特な高い鳴き声を上げて、催眠効果の残る攻撃を仕掛けてくる。
……その催眠効果に惑わされそうな仲間がいれば、すぐにシィカが。
「さぁ、ここからはボクのロックなステージデスヨー! みんな、ノリノリで聞いてくださいデース! イェーイ!!」
と、元気良く『竜姫謳う生命讃美』を奏で、BS耐性を付与していく。
……そして空牙が旋刃脚、フリードリッヒが。
「撃ち抜く!」
と螺旋掌で次々と攻撃、そしてソルヴィンもレゾナンスグリード。
そして、陽斗が如意直突きを放ち、アヤメも。
「お前には、何もさせない!!」
とドラゴニックスマッシュを頭上から叩きつけていく。
強烈な一閃が、うさぎの頭に強烈な一撃。
更に春期がフォートレスキャノン、美雨がポルターガイスト、そして遊鬼が『風魔式斬撃術『爆魔』』で更に体力を削る。
……その後も、跳ね回るうさぎの動きに少々手こずりながらも、大きな動きを抑える。
そして、遊鬼が螺旋掌で牽制し、俊輝がハートクエイクアローを穿つ。
ただ、催眠効果は中々現れず、うさぎは跳ねて暴れ廻り、場を荒らす。
しかし、喰らうダメージはしっかりとシィカが後衛からヒールグラビティを飛ばす事によって、倒れない様に体力を回す。
残る仲間達が攻撃を立て続けに行い、バッドステータスを加速させていき……経過する事、十分。
『ウゥゥ……』
と、何処か苦しげなうさぎの鳴き声。
そんなウサギの鳴き声に、アヤメが。
「そろそろ、ウサギも限界に近づいているみたいね」
と仲間達に声を掛ける。
「そうか……了解」
と頷く陽斗。
接近し、紅蓮大車輪をそのウサギに深く叩きつけると……ウサギは吹き飛び、地面へ叩きつけられる。
そして……。
「御免ね。でも……もうこれ以上苦しませないよ」
と、アヤメが接近すると共に、そこに叩きつけるドラゴニックスマッシュ。
渾身の一撃が、ウサギの身体を貫き通し……そして。
「うむ。そろそろ終わりにするかのう!!」
と筋骨隆々の腕っ節から繰り出す達人の一撃。
その一撃に、ウサギは……地面の上で四散していくのであった。
●夜のうさぎ
そして……ウサギのホラーメイカーを倒したケルベロス達。
……消えたウサギの死体に、ぐっ、と……墓代わりに持ってきた植物の種を握りしめるフリードリッヒ。
「自然に帰る事すら許されないか。ふざけた真似をする……落とし前はつけてもらうぞ、ホラーメイカー」
唇を噛みしめ、呟くフリードリッヒに対し、シィカも。
「そうデース! ぜったいぜったい、死者を利用する屍隷兵は絶対に許せないデスヨ!!」
と言いながらも、屍隷兵ウサギにお祈りを捧げるシィカ。
……そんな仲間達の祈りに、ソルヴィンが。
「しかし、このウサギ達は野生だったのかのう。それとも誰かのペットか、はたまたペットショップから逃げてきたのか、学校飼育だったのかのう?」
と顎に手を当てて考えるのだが……それにアヤメが。
「……確かセリカさんから聞いた怪談話には、飼育されていた兎さんが、学校の生徒の誰かに金属バットで殴り殺された、とか言ってたわよね。そうなると……飼育されていた兎さん、というのが一番近いのかもしれないね?」
「ふむ、そうか……よし、暇じゃし調べるとするかの!!」
と焼却炉のドアを明けて、中を調べようとするソルヴィン。
……でも、当然焼却炉の中には、灰しかない。
ともあれ……。
「まぁ、難にせよ、さっさと大元を倒さなきゃね……という訳で、後片付けをしてから帰りましょうか」
とアヤメの言葉に皆も頷き、そして壊れた所をヒールグラビティで回復。
ちょっとファンシーな焼却炉になるものの、まぁ……それはそれで、いつかはいい思い出になるだろう、という事で。
「これで良いデース?」
「ああ、そうだね。それじゃ、女子高生達が心配してるかも知れないし、さっさと帰ろうか」
シィカに頷くフリードリッヒ。
そしてケルベロス達は、その場を後にするのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年9月22日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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