海の王者、大暴れ!

作者:ゆうきつかさ

●奇妙な夢
「うわあああああああああ!? い、今のは……夢!?」
 目を覚ました子供は、自分が今まで見ていたのが、夢だったのか、それとも現実だったのか、判断する事が出来なくなっていた。
 夢の中に現れたのは、巨大なタコ!
 グロテスクなタコ!
 これで見た目が可愛かったり、美味しそうだったりしたのであれば、タコ焼きにして食べたいと思ったかも知れない。
 だが、何処からどう見ても、グロ。
 そのため、まったく食べたいとは思わなかった。
 それどころか、『食べられてしまう』と思ってしまったようである。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
 そんな中、第三の魔女・ケリュネイアが現れ、手に持った鍵で起きたばかりの子供の心臓を一突き。
 この攻撃はドリームイーターが人間の夢を得るための行為……。
 それによって、子供の『驚き』を具現化したようなタコのドリームイーターが産み出された。
 驚きを奪われた子供は意識を失って崩れ落ち、ドリームイーターが倒されるまで、深い眠りにつくのであった。

●都内某所
「天王寺・ミルキー(文字通りのカウガール・e16361)が危惧していた通り、ビックリする夢を見た子供が、ドリームイーターに襲われ、その『驚き』を奪われてしまう事件が起こっているようです。『驚き』を奪ったドリームイーターは既に姿を消しているようですが、奪われた『驚き』を元にして現実化したドリームイーターが、事件を起こそうとしています。現れたドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターを撃破して下さい。このドリームイーターを倒す事ができれば、『驚き』を奪われてしまった被害者も、目を覚ましてくれるでしょう」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「ドリームイーターは一体のみ。配下などは存在していません。またドリームイーターが現れるは夜の市街地で、被害に遭った子供の家の近所です。ドリームイーターは、相手を驚かせたくて仕方がないようなので、付近を歩いているだけで向こうから現れ、驚かせようとしてくるでしょう。そのため、驚かなかった相手を優先的に狙ってきます。またドリームイーターは真っ黒なスミと、触手で攻撃を仕掛けてくるので注意しておきましょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
「子供の無邪気な夢を奪って、ドリームイーターを作るなんて許せません。被害者の子供が、再び目を覚ませるように、ドリームイーターを倒して、事件を解決してください」
 そして、セリカはケルベロス達に対して、深々と頭を下げるのであった。


参加者
坂口・獅郎(烈焔獅・e09062)
天王寺・ミルキー(文字通りのカウガール・e16361)
荊・綺華(エウカリスティカ・e19440)
盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)
オリヴン・ベリル(双葉のカンラン石・e27322)
デリック・ヤング(渇望の拳・e30302)
ソフィア・ベル(微睡みの魔女・e38689)

■リプレイ

●都内某所
「……タコねー。一体、どんな夢見てたんだ? 随分と不思議な夢を見ていたようだね。まー、夢なんてそんなものなのかも知れないけど……」
 リフィルディード・ラクシュエル(集弾刀攻・e25284)は懐中電灯を照らしながら、ドリームイーターが確認された夜の市街地に向かっていた。
 ドリームイーターは巨大なタコで、触手を使ってあんな事や、こんな事をしているようだ。
 そのせいか、辺りはシーンと静まり返っており、何やら禍々しい雰囲気が辺りに漂っていた。
「グロテスクな大ダコの夢か。よくある悪夢だが、ドリームイーターに目を付けられたのは運がなかったな。ま、俺達がしっかり始末をつけてやればいいだけだ」
 デリック・ヤング(渇望の拳・e30302)が、被害に遭った少年の家を目指して歩いていく。
 事前に配られた資料によると、少年はホラー漫画が大好きで、毎晩眠る前に読んでいたらしい。
 それが原因で変な夢を見てしまい、被害に遭った可能性が高かった。
「タコさん……てっきり、可愛いものかと思っていたのですが……何やらイメージとは違うようですね……」
 荊・綺華(エウカリスティカ・e19440)が、ションボリとする。
 本物のタコを見た事がないため、タコさんウインナーや、子供が描いたタコの絵をイメージしていたのだが、それとは似て非なる存在のようだ。
「……と言うか、タコ焼きにしたくないくらいグロいタコってどんだけだよ!? それって、よっぽどだろ? どう考えても……! ま、まあ……、とにかく! 奴さんがなんかコト起こさないうちに倒してしまいたいな」
 坂口・獅郎(烈焔獅・e09062)が思わずツッコミを入れながら、自分自身に気合を入れる。
 ドリームイーターがどんな姿をしているのか、いまいち想像する事は出来ないが、それでも凶悪なナマモノである事は間違いないだろう。
「タゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
 次の瞬間、地響きを鳴らして、ドリームイーターが現れ、ケモノのような唸り声を響かせた。
「ドリームイーターが現れたようなの」
 それに気づいた盟神探湯・ふわり(悪夢に彷徨う愛色の・e19466)が、警戒した様子で間合いを取っていく。
 ドリームイーターは妖しく触手をウネらせ、ジリジリと距離を縮めてきた。
「きゃー!? タコのお化けー!」
 ソフィア・ベル(微睡みの魔女・e38689)が大袈裟に驚きながら、キープアウトテープを使う。
「ダココココォォォォォォォォォォォォォォ!」
 その途端、ドリームイーターが興奮した様子で、真っ黒なスミをビュビュッと撒き散らした。
「こ、これは予想以上に大きいタコですのね。まあ、でかいイカが実在してるし、タコも、大きいのがいそうなんですけどね。そして、やはり、タコといえば、八本の足……。いかにも、何かありそうですわね……」
 天王寺・ミルキー(文字通りのカウガール・e16361)が、何やら察した様子で口を開く。
「タコォォォォォォォォォォォォォォォォ!」
 ドリームイーターも『こういう状況になったら、分かるだろ!?』と言わんばかりに、距離を縮めてきた。
「タコと言うよりも、ヘドロの塊みたいだね。何だか臭うし……」
 そう言ってオリヴン・ベリル(双葉のカンラン石・e27322)が懐中電灯を照らしながら、ドリームイーターと一定の距離を取るのであった。

●真夜中の市街地
「最近、ドリームイーターの事件もいくつか解決してるわけだけど、『驚き』と『嫌悪』はまだ残っているし、更に『怒り』と『悲しみ』の事件まで出てきた以上、ここで立ち止まっている訳にはいかないと思うのね。だから、ここで退く訳には行きませんわ」
 ミルキーが覚悟を決めた様子で、ドリームイーターを睨む。
 ドリームイーターは興奮した様子で、全身から汗の如く粘液が噴き出しており、色々な意味で禍々しい雰囲気が漂っていた。
「それにしても、でけえな……。しかも、足めっちゃウネッてるし……。こういう場合、驚かねぇといけないんだが、こりゃ思っていたよりもグロいな……」
 獅郎がドン引きした様子で、反射的に後ずさる。
「タゴォォォォォォォォォォォォ!」
 そのせいか、ドリームイーターは、獅郎に興味津々。
 穴と言う穴を穢すべく、ひどく興奮した様子で、触手をウネらせていた。
 おそらく、ドリームイーターにとって、性別は関係ないのだろう。
 そこに穴さえあれば、何の問題もないようである。
「グロイ……と言うか、気持ち悪いと言うか、何と言うか……と、とにかく、大きさと見た目はあれだけど、排除させてもらうよ」
 リフィルディードがドリームイーターに攻撃を仕掛けるタイミングを窺いながら、少しずつ距離を縮めていく。
「タゴタゴタゴオオオオオオオオオオオオオオ!」
 すぐさま、ドリームイーターがケルベロス達を威嚇するようにして、ドップリと濃厚な墨を撒き散らしていった。
「でも、食べたら意外と美味しいかも。見た目がグロテスクなのって、割と珍味だって聞くしね……」
 オリヴンが含みのある笑みを浮かべ、メタリックバーストを使う。
「た、食べるんですか!? 絶対に美味しくないですよ、これ……。絶対にお腹を壊すと思うんですが……」
 綺華が信じられない様子で、ドリームイーターを指差した。
「ダゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!」
 それに腹を立てたのか、ドリームイーターが手当たり次第に墨を吐く。
「何だか、生臭いの……。とっても臭うなの……」
 ふわりが驚いた様子で、その場から飛び退いた。
 それと同時に、先程までふわりがいた場所が真っ黒に染まり、むせ返るほどの生臭いニオイが、もわんと辺りに舞い上がる。
「ナ、ナ、ナジェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!」
 ドリームイーターがダラダラと涎を垂らし、狂ったように触手をブンブンと振り回す。
「何やら悪だくみをしているようですが、そう簡単に捕まるつもりはありません」
 ソフィアが素早い身のこなしで触手を避け、ドリームイーターめがけて、ライトニングボルトを放つ。
「グガガガガガガアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
 ドリームイーターがどす黒い血を撒き散らし、いびつに歪んだ頭を揺らし始めた。
「……チッ! 身体がヌルヌルして殴りづらいぜ。だったら地獄の炎で丸焼きにしてやる!」
 それと同時にデリックがフレイムグリードを放ち、ドリームイーターの身体を炎に包む。
「グギギギギギギィィィィィィィィィィィィィィ!」
 次の瞬間、ドリームイーターが汚物のようなニオイを漂わせ、どっぷり濃厚な墨を飛ばしてきた。

●ドリームイーター
「さすがにこれは食べない方が良さそうだね」
 オリヴンが苦笑いを浮かべながら、ドリームイーターの墨を避けていく。
 テレビウムの地デジも『これ、腐っている』とばかりにゲンナリムード。
 しかも、墨は生臭く近づくだけでもたじろいでしまうほどの臭気。
 近づくだけでも、吐き気を催すほど、ヤバイ状況である。
「これは絶対に食べたら危険、なの……」
 ふわりも納得した様子で答えを返し、ドリームイーターから離れていった。
 だが、ドリームイーターは自らのテリトリーを広げるようにして、大量の墨を吐く。
「とにかく、突撃! ……あっ、でも、やめておこうかな……。臭いがついたら、とれなくなりそうだし……」
 リフィルディードがヴァルキュリアブラストを使おうとして、攻撃する事を躊躇った。
 このまま突っ込めば間違いなく、全身スミでヌルヌル。
 場合によっては粘液まみれになったり、触手を使ってあんな事やこんな事をされてしまう可能性が高いため、近づく事は得策ではないと判断したようである。
 だが、ドリームイーターが虫の息である以上、誰かが攻撃を仕掛けてトドメをさす必要があった。
「そ……それがいいですね……。なるべく近づかず、安全な方法で……」
 綺華も納得した様子で答えを返す。
 多少、時間が掛かったとしても、ヒット&アウェイを繰り返し、確実にダメージを与えた方が、最悪の事態に陥る事も無さそうだ。
「べ、別に変な状況を期待している訳じゃねえけど、それじゃ無駄に時間が掛かるだろ? いや、別にあんな事とか、こんな事とか、心の何処かで期待しているとか、そんな訳じゃなくて……! い、いや、本当に……やましい気持ちで言っている訳じゃないんだが、と……とにかく、早く倒さないと……!」
 獅郎がしどろもどろになりながら、ドリームイーターにスターゲイザーを放つ。
 もちろん、えっちなのはイケナイとは思っているが、まったく想像していないと言ったら、嘘になる。
 だからと言って、そう言った展開を期待している訳ではないが、まったく興味がないという訳でもないようだ。
「……でしたら、時間を掛けずに倒しましょう」
 ソフィアが色々と察した様子で、ドリームイーターに稲妻突きを放つ。
 それに合わせて、デリックが旋刃脚を仕掛け、ドリームイーターの触手を弾く。
「グギギギギィ……」
 そのため、ドリームイーターも文字通り手も足も出ず、悔しそうに唸り声を響かせた。
「正直、あまり触りたくないけどね」
 次の瞬間、ミルキーが覚悟を決めた様子で、ドリームイーターにドラゴニックスマッシュを叩き込む。
「グギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 その一撃を食らったドリームイーターが断末魔を響かせ、最初から何も存在していなかったかのように消えていく。
「……消えちまったか。倒したらタコ焼きにでもしてやろうかと思ったんだがな。いや、あんなグロテスクな奴を食べたら腹を壊しちまうか。まあ、ドリームイーターの元になった夢の主も、そろそろ目覚める頃だな。ま、これでとりあえず、めでたし、めでたしってワケだな!」
 そう言ってデリックがホッとした様子で、被害に遭った子供の家を眺めるのであった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年9月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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