暑いのなら服を脱げ!

作者:飛翔優

●続く残暑への対処法
 少しずつ涼し気な秋の兆しに染まり始めているけれど、まだまだ残暑の厳しい地方もある日本。
 街の各所で空調設備が馬車馬のように働く中、外れにある一軒家は川のせせらぎが聞こえるほどの静寂に抱かれていた。
 その家は窓も扉も開け放たれ、大自然の空気を余すところなく受け入れる。
 主たる鳥人間ビルシャナのもとに集うのは、10名ほどの男女であった。
「諸君、8月はすでに過ぎ去った。しかし、まだまだ残暑は色濃く残るだろう。しかし、消してクーラーなどに頼ってはいけない! なぜだかは、わかるな?」
 一人の男が答えた。エネルギーの使いすぎにより世界は疲弊している、少しでも消費量を減らさなければならないと。
 一人の男が答えた。人は自然に帰るべきだと。
 一人の女が答えた。クーラーなどに頼らず、服を脱いで過ごすべきなのだと。
「その通り! 服などを着込んでいるから暑く感じる。暑ければ脱げばいい、限界まで! そうすることでクーラーなどに頼らず生活することができるのだ!」
 わっはっはと笑うビルシャナに、同意していく信者たち。
 暑さを吹き飛ばすほどの笑い声が高く遠く響いていく……。

●ビルシャナ討伐作戦
「いるんだな、そういう奴らも」
「はい。ですから……」
 神居・雪(はぐれ狼・e22011)と会話していた黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)は、足を運んできたケルベロスたちと挨拶を交わしていく。
 メンバーが揃ったことを確認し、説明を開始した。
「鎌倉争奪戦の際にビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ていること、知ってる方もいると思うっす」
 今回はその、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破することが目的となる。
「今回の悟りを開いたビルシャナが布教しようとしている信条は、暑いのなら服を脱ぐのが一番、と言うものっすね。このビルシャナが配下を増やそうとしている所に乗り込むことになるっすよ」
 ビルシャナの言葉には強い説得力があるため、放っておくと一般人は配下となってしまう。しかし、その主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が配下になることを防ぐことができるかもしれない。
「防ぐことができなかった場合、ビルシャナの配下となった人達はサーヴァントのような存在として戦いに加わってくるっす」
 ビルシャナさえ倒せばもとに戻るため救出は可能だが、戦闘における不利はまぬがれないだろう。
 続いて……と、ダンテは地図を広げ、ビルシャナが潜伏しているという一軒家に丸をつけていく。
「ビルシャナはこの一軒家のリビングで、人々を相手に演説を行っているっす。窓も扉も開け放たれているっすから、簡単に乗り込んでいくことができると思うっすよ」
 そして、まずは信者たちへの説得を行うことになるだろう。
「総数10名。内訳は男性7名女性3名っすね」
 うち、男性2名はエネルギーの使いすぎが云々……と言う理由で、空調の利用を抑えられるだろうビルシャナの主張に惹かれている。
 女性3名は女だって服を脱いで涼しく過ごしたい! 世の中の風潮が変われば女性も限界まで脱いでよくなる! と考えて主張に同意している。
 残る男性7名は、信条の趣旨に概ね賛同しながらも、大本は不埒な感情から来ているようだ。
「この情報を元に、説得内容を考えて欲しいっすよ。最後に、戦闘能力について説明するっすね」
 ビルシャナは1体。
 炎などで相手をじわじわと弱らせ倒すという方針で戦ってくる。
 グラビティは3種。一人を焼き払う孔雀炎、複数人を威圧するビルシャナ閃光、複数人のトラウマを呼び起こす浄罪の鐘。
 一方、戦うかもしれない10名の信者たちの戦闘能力はとても低く、ともすれば命を落としてしまうかもしれない。また、ビルシャナを護るように立ち回ってくるため、純粋に邪魔な存在となるだろう。
「以上で説明を終了するっす」
 ダンテは資料をまとめ、締めくくった。
「人々はビルシャナの影響を受けているっすから、理屈だけでは説得することはできないかもしれないっす。だからどうか、インパクトのある演出を考えて欲しいっすよ」


参加者
ゼルガディス・グレイヴォード(白馬師団平団員・e02880)
レスカ・シリウス(デレデレナックル系お姉さん・e03020)
伊庭・晶(ボーイズハート・e19079)
サロメ・シャノワーヌ(ラフェームイデアーレ・e23957)
ティーフォリア・ルキアノス(サキュバスの巫術士・e28781)
リシュティア・アーキュリア(サキュバスの螺旋忍者・e28786)
鬼灯・こよみ(カガチの裔・e39618)
望月・理央(梨園の猟犬・e40334)

■リプレイ

●暑さから逃れるためとはいえ
 まばゆき陽射しに抱かれて、地面が熱を放ち続けている残暑の頃。風にも乏しい汗ばむような街中で、ティーフォリア・ルキアノス(サキュバスの巫術士・e28781)が呆れた様子でつぶやいた。
「脱ぐといいって……なんなんだろうね、この皆で露出しようぜ! な教えは……? 暑さで……あ、いや、ビルシャナは大抵頭おかしいや」
「けど、一般人の方はまさに頭やられたのか? って言いたくなる教義よねぇ。暑いんなら服を拭って安直すぎよね」
 リシュティア・アーキュリア(サキュバスの螺旋忍者・e28786)も肩をすくめ、ビルシャナが一般人を集めているという家屋に視線を向けていく。
 開け放たれている大窓から、リビングと思しき場所に集っている彼らが見えた。
 ビルシャナは何も着ておらず、集まっている10名の一般人もどこか薄着に思える光景。見つめたまま、ゼルガディス・グレイヴォード(白馬師団平団員・e02880)はため息一つ。
 ケルベロスならば温熱適応があるため服などを着るほうが快適だけれど、一般人にそう言っても仕方がない。ならば、どう声をかけるべきか。
 各々が説得に向けて様々な思いを巡らせていく中、レスカ・シリウス(デレデレナックル系お姉さん・e03020)は頭の後ろで手を組み小首を傾げていた。
「うーん、暑いからとか変な理由なんざつけなくても、脱ぎてぇ奴だけ脱ぎゃいいと思うんだけどな?」
 胸を、お尻を抑えきれていないチューブトップブラにホットパンツ。そんな格好の彼女を、果たして人はどう評価するのだろう?
 いずれにせよ彼らは突入する。
 ビルシャナの魔の手から一般人を救うため。
 ビルシャナの教義が誰かを傷つけてしまう、その前に……。

●服を脱ぐこと、それが……
 防犯など全く意識されていないリビングに、望月・理央(梨園の猟犬・e40334)がいの一番に飛び込んだ。
「何奴!?」
 ビルシャナの声とともに、視線を向けてくる一般人。そんな中次々と侵入を果たしていく仲間たちを感じながら、理央は一般人たちに声をかけていく。
「あー、お前らちょっといいか?」
 聞く耳を持つような様子はなかったけれど、襲い掛かってくる気配もまたなかったから言葉を続けた。
「まあ男性も女性も聞いてほしーんだけどよー。……まず女性、お前らあれか、ひょっとして恥女か!」
 違う、と3人の女性が声を揃えた。
 ただ涼しく過ごしたいだけだとも反論してきた。
 正面からは受け取らず、理央は更に重ねていく。
「大体な、女性が肌を見せるのははしたない以前に、日本だと昔からすっげぇ気を使われてたんだぜ。江戸は混浴とかあったらしーけど、そんなに脱ぎたいんならちゃんと許可されてるところでやれ!」
 返答は求めず、続いて男性へと向き直った。
「次に男性のお前らな。いーか、男でも裸見せてセクハラって訴えられるんだぞー、つーかオレ通報する。親族とか家族とか、知り合いとかに知られてみろって。露出で捕まりました! なんて恥ずかしくてもうどこにもいけねーぜ?」
 知らん、と声を揃えたのは5名の男性。
 世の中を帰れば問題ない、と告げてきたのは2名の男性。
 恐らく前者が不埒な目的、後者が自然環境を考えている者たちか。
 レスカは女性たちのもとへと向き直り、背中の炎を滾らせていく。
「あたしは脱いだほうが暑いって言われてるんだぜ! どうだ!」
 ポーズを取り、筋肉を見せた。
 全身から湯気が立ち上っているかのような、そんな暑苦しさがそこにはあった。
 もっとも、女性たちの反応は変わらない。
 ただ、素敵……と、どことなく瞳を輝かせているようにも思われた。
 そんな視線を受け止めながら、レスカは言葉を締め括る。
「だったら色々と要素を付け加えず脱げばいいだろう。脱ぎたいなら変な理由付けてるんじゃねぇ!」
「……そうだね」
 言葉が終わるのを待ち、サロメ・シャノワーヌ(ラフェームイデアーレ・e23957)が女性陣へと歩み寄った。
 爽やかな微笑みを浮かべながら、女性たちの瞳を真っ直ぐに見つめていく。
「脱ぎたがりとはエキセントリックなレディだね。暑いから脱ぐというのは理にかなっていると思うかい?」
 マントを軽くはためかせ、肌を覆う白い袖を示していく。
「でもね、暑いからこそ着るのもまた理にかなっているんだよ。例えばロングスカート、直射日光を浴びないことで涼しくなれるのさ」
 けど、と一人の女性がつぶやいた。
 日本の暑さは湿度を伴う。
 木陰に避難しても中々涼むとは行かないように、内側に熱がこもりやすくて衣服で解決とは中々いかないと。
 ふむ、と、サロメは顎に手を当て考える素振りを見せた。
 だから伊庭・晶(ボーイズハート・e19079)が代わりに前に出て、様子を見守っている男性陣に視線を向けていく。
「女子の着てる服は何も暑さ寒さのためだけじゃないぜ?」
 女が服を脱げないのは、世の風潮のせいじゃない。
「ほら、奴らの中にもあんたらが脱ぐのを楽しみにしてる奴らもいるじゃん」
 けど……と一人の女性が口を開く。
 それは覚悟してる。今は、差別を是正することが必要。とある海外の大都市のように、男がシャツを脱いでもいいのなら女がシャツを脱いでもいい、そういう風にすべきだと。
 晶は、正面からは答えない。
「後は……そうだな。バストラインや腰のくびれ、足の太さや長さ、自分に足りない部分をカバーするコーディネートもあるだろう? 何より、見られることに無頓着になったらオバサンの始まりっていうし」
 ただ、クーラーボックスを開き、アイスを取り出した。
「ま、アイスでも食べて落ち着こうよう。脱げば暑くないビルシャナと信者諸君はいらないかもしれないけどね」
 女性たちは視線をそらす。
 今まで言葉を投げかけられた果てに落ち着いたほうが良いとは思ったのか、ケルベロスたちとビルシャナを交互に見つめ始めていた。
 恐らく、他の一般人への対応次第で彼女たちの動向も決まる。
 それがわかっているからか、ビルシャナも彼女たちへの干渉を行う気配はない。
 ケルベロスたちはビルシャナの動向を気にしつつ、残る7名の男性陣へ――。

 ほぼ全員の意識が7名の男性陣へ向けられた時、バシャッ! と大量の水が何かにぶっかけられる音がした。
 全員が視線を向けた先、水浸しのビルシャナとバケツ空のバケツを携えているティーフォリアの姿がある。
 ビルシャナが呆けたように視線を巡らせる中、ティーフォリアは告げた。
「暑い暑いって言ってるから涼しくさせたんですー」
 こうやって氷入りの水をかければ涼しくなると、新たなバケツを取り出していくティーフォリア。
 反応は概ね芳しくはない。
 怯えている様子もある。
 今後の仲間たちの言葉に差し障りが出るかもしれないと、ティーフォリアは再びビルシャナに氷入りの水をぶっかける。
 何をされたのかをビルシャナが理解する前に、エネルギー問題を考えているらしい2名の男性へと視線を向けた。
「それにさ、エネルギーがどうとか言ってるんなら、今みたく水打ちかけたりとかすればいいじゃん。うちわや扇子で仰げばエネルギーとか言わなくていいでしょうに……ぶっちゃけ服を脱ごうが暑いものは暑いし」
 それに、と肩をすくめていく。
「服脱いで過ごしたら火照ってきて暑さ倍増するわ。自分の部屋にひとりきりではならまぁ、そう変わらないけど」
「他にも、問題はある」
 落ち着いた調子でゼルガディスが切り込んだ。
「未だ虫の季節……肌の露出はそのまま虫の餌食になるんじゃないか?」
 蚊や蜂など、より気をつけなくてはならなくなる虫は多い。
「それに、服で防いでいた僅かな刺激物にも無防備となるだろうから、怪我をし易くなるだろうな……感染症や破傷風などの対策は万全か?」
 2名の男性は口ごもる。
 今なら……と、鬼灯・こよみ(カガチの裔・e39618)が前に出た。
「夜は寒い日も増えましたし、これからは日中だって寒い日が増えてきます。そういう時は、主義を曲げて服を着こまれるのでしょうか? まさか、暖房に頼るわけではありませんよね。エネルギー問題を気にされているようですし……」
 む……と2人の男性は言葉をなくす。
 すかさずこよみは水浸しのビルシャナを示した。
「そもそも皆さんに、薄着を推奨していながら彼自身はあのように羽毛に守られています。自分が冬場でも大丈夫だから、無責任なことが言えるのではないでしょうか?」
「そうじゃな、説得力がないにもほどがあろう」
 うむ、と頷いていくゼルガディス。
 視線を2名の男性へと戻せば、たしかに……と頷き離れていく様子を見せた。
 女性陣へも伝わったか、少しずつ距離を取っていく気配がある。
 後は、未だ残り続ける5名の男性だけ。
 リシュティアが、カメラ片手に歩み寄った。
「そうねー、だったら……」
 一枚写真を取った上で、本格的に言葉を投げかけていく。
「服を脱げばいいと言ってるんだから、きちんと実践しないと……と思いました。服を脱げばいいって広めるためにも。こう、ビフォー・アフターって感じに撮りますから、さあさあ一糸まとわない姿に、どうぞなってくださいな」
 5名の男性が顔を見合わせていく。
 すかさずリシュティアが攻めて行く。
「あ、ちゃんとそのままで拡散させてもらいますから。……まさか、言った本人が率先してやらないなんてことはないですよね?」
 もちろん、との声が唱和したのは五秒ほどの時間が経った後。
 むしろ見てくれとばかりに、5名の男性は一斉に服を脱ぎ始めた。
 想定と少し違う状況に思考を巡らせているリシュティアを前に、まだ足りないと判断したか、下着も勢いを付けて脱ぎ去った。
「……うわぁ」
 リビングに立つ、全裸の男たち。
 見せつけるかのように、腰を突き出している男たち。
 ティーフォリアがリシュティアの肩に軽く手を載せ、盛大なため息を吐き出した。
「あー……脱ぐにしても最低限でもいいから隠しておきなよ? ……っていうか処置なし、ね。……ま、幸いな事もあったけど」
 視線をそらす先、ドン引きして逃げ出していく3人の女性たち。
 リビングに残ったのはケルベロスたちと5名の男性、ビルシャナだけと相成った。
 これ以上の言葉はないと踏んだのか、ビルシャナは胸を張っていく。
「わけの分からぬ間に色々と進んだが、これだけ残ってくれたのならば問題ない! さあ、世界に脱衣を広めるため、水をかけられた恨みを晴らすため、お前達に教義を刻んでやろうぞ!」
 頷き、ビルシャナを護るように移動していく全裸の男性たち。
 ケルベロスたちも一度集合し、戦うための陣を組み始める……。

●服を脱いだビルシャナと5名の信者たち
「お嬢さんたちを危険に合わせるわけにはいかないね。ひとまず、彼らを眠らせよう。そのためにも……」
 サロメは歌う、高らかに。
 天真爛漫な少女に振り回されて抱いた恋心に戸惑う青年の歌を。
 軽やかなる音色は気分を高揚させる。
 リズムに乗りながら、テレビウムのステイが凶器片手に飛び出した。
 迎え撃たんと両手を広げた全裸の男をを、レスカの鈍色の超重槌がかっ飛ばす!
「あたしのパワー相手に、そんなんで立ち向かうんじゃねぇ!」
 数こそ5人と多いものの、信者たちの力量は低い。
 ビルシャナとの戦いに割り込まれる事を嫌い、ケルベロスたちは瞬く間に気絶させ部屋の端へと転がしていった。
 早々に片付ける事ができたからか、ほぼ無傷のビルシャナによる横槍も大きなダメージとはなっていない。
 万全の状態で理央はビルシャナへと向き直る。
「さ、後はあんただけだ、覚悟しな! この公然猥褻鳥!」
「そうならないようにするのが私の教義だ!」
 反論を聞きながら距離を詰め、握りしめたスマートフォンで殴りかかる。
 翼が間に割り込んだ。
 そのまま翼の付け根をぶん殴った。
 くぐもった声を漏らしながら、ビルシャナは炎を滾らせる。
 孔雀の羽根のように広がっていく炎を見つめながら、ゼルガディスが理央と立ち位置を入れ替えるかのようにして正面へと踏み込んだ。
 身構えた直後に襲い掛かってきた炎を身に受けながら、刀を赤熱させていく。
「男性女性関係なく、限界まで脱いではダメだろう……」
 小さなつぶやきと共に、炎を切り裂きビルシャナを後方へと退かせた。
 後は追わずとどまるゼルガディスの体に暖かな力が流れ込む。
「あなたの言葉が届かないのと同じように……その呪詛も私が祓います」
 担い手たるこよみあ祈るようにゼルガディスを治療し、戦況を確認し始めた。
 守りは信者に任せる算段だったのか、ビルシャナはケルベロスたちが攻撃を重ねるたびに動きを鈍らせている。
 反撃の力だけは本物で、信者たちを倒すまでにケルベロスが負ったダメージもあるけれど……。
「……大丈夫、こちらが優勢です」
 ケルベロスたちの優位は変わらぬと、仲間たちを癒やすための軽やかなステップをふみ始めた。
 散りゆく花びらに癒やされながらも晶が横合いへと踏み込んでいく。
「くらえ!」
 振り向く暇を与えず蹴りを放つ。
 脇腹を捉え壁へと蹴飛ばした。
 大きな音を立てて激突していくビルシャナを熱き炎が抱き始めていく。
「ほーら、熱くなれよ~!」
 とうの昔に水は蒸発したか、ビルシャナの羽根が少しずつ焼け焦げていく。
「もう服と言わず、すべて裂いちゃえ」
 諸共、リシュティアの竜巻が斬り裂く、その時まで。
 竜巻に囚われたビルシャナは、声を漏らすこともできずに天井へと飛ばされた。
 天井に激突し落下してくるビルシャナに狙いを定め、サロメは黒色の魔力弾を生成していく。
「さ、終わらせてしまおうか」
 微笑みながら解き放ち、ビルシャナの中心を貫いた。
 一度だけ小さくくぐもった悲鳴を上げた後、ビルシャナは数多の羽根とかして消滅し……。

 戦いが終わり、静寂が訪れる。
 晶は深い息を吐き出し、仲間たちへと向き直った。
「無事に終わったね。お疲れ様」
「はい、お疲れ様。怪我などはないかな?」
 小首をかしげ、サロメが仲間たちを見回していく。
 後に残るような怪我はないとの報告がなされる中、こよみが小さな息を吐き出した。
「それでは、ひとまず片付けを行いましょう。それから……」
「あ、彼らの介抱はゼルガディスにお願いできるかな? オレも手伝うから」
 部屋の片隅に倒れている、5名の元信者たち。
 一糸まとわず気絶している元信者たち。
 女性陣に手伝わせるわけにも行かないだろうという理央の提案に、ゼルガディスは頷いていく。
 もう、服を脱ぐことを教義とするビルシャナはいない。
 彼らも、犯罪的な行為を主張することはないのだろうから……多分、きっと……。

作者:飛翔優 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年9月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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