鎌倉ハロウィンパーティー～パーティの裏方へも愛を

■リプレイ

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　日々、デウスエクスとの戦いを繰り広げているケルベロスたち。しかし、今日は普段とは少し装いが違う様子。
「はろうぃん　ってのは良くわかんねーが。要は祭りだろ？　楽しみを壊そうってのは、良くねえな」
　紅・桜牙（紅修羅と蒼影機・e02338）は赤いタキシードと自前の角で悪魔紳士のような服装で何かを作る様子。
「和菓子といえば、団子だろーが」
　桜牙が作っていたのは団子。団子は白玉粉を水で練って、茹でて作る和菓子。彼の言うとおり、確かに和菓子というと団子のイメージの人は多いだろう。
　そんな隣では、和装な二人が一緒に団子作りをしていた。こちらはオレンジ色のお団子。白玉粉にかぼちゃを混ぜているようだ。
「……むむ。ただ捏ねるだけに見えて、綺麗に作るのは意外と難しいですね」
　隣のフローネ・グラネット（紫水晶の盾・e09983）の様子を参考に、見よう見まねで団子を丸めていくミチェーリ・ノルシュテイン（フローズンアントラー・e02708）。
「こうするのですよ」
　そんなミチェーリに優しく手取り足取り教えてあげるフローネ。
「ふふ。そう、力を入れて……大丈夫、良い感じですよ」
　二人で仲良く団子を作っていく。そんな二人の服装は、新撰組のダンダラ羽織姿。さらに二人とも髪の毛を後ろで結って男装風。
「トリックオアトリート！　作り方を教えてくれるおもてなしを期待」
「はい、どんなおもてなしがいいですか？」
　シーレン・ネー（黒豹・e13079）はお手伝いに来てくれたコックさんから、かぼちゃ餡子を使った『かぼちゃのどら焼き』を教わりながら作る様子。
　そんな、お菓子を作ったりしていいる様子を見ながら、飾り付けをしているのは小倉・奈菜菜奈（アイドルの穴・e13958）。
（「うまくいけばうまいお菓子が食べられるかもっすね。ぐふふ」）
　出来上がるお菓子を見ながら、そんな事を考えている様子。
「和風の仮装という事でウィリアム殿は岡っ引き等が似合いそうだがどうだろう？」
　皆が思い思いの仮装をしている中でウィリアム・シュバリエ（ドラゴニアンの刀剣士・en0007）は甚平姿。そんな普通（？）な姿に提案をするアベル・ウォークライ（ブラックドラゴン・e04735）。
「それも面白いでござるな」
　とても楽しそうなウィリアム。もっとも、パーティーが始まれば、頭にかぶりものをするつもりのようだ。
　そんなアベルは巨大お化け提灯の仮装をする予定。
「こんな仮装でいいのかなあ？」
　その隣では、大きめのカボチャをくり抜いたような衣装を胴体に試着しているのは大原・大地（元守兵のチビデブドラゴニアン・e12427）。丸い身体に似合った仮装が可愛らしい。
「ハロウィンですか」
　そんなハロウィンの準備を見ながら無表情で呟く鋼牙・天子（レプリカントの鎧装騎兵・e13997）。日本のハロウィンは子供よりも大人の方が楽しそうにしている……そんな感想を抱きながらも、ボクスドラゴンの着ぐるみを着ている天子は楽しそうに見えるのだった。
　そんなケルベロスたち。皆で、思い思いのハロウィンパーティーの準備をしているようにしか見えないのでした……。

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　そんな楽しそうなパーティー準備中のケルベロスたちだが、実はこれもデウスエクスを倒すための作戦の一つ。
　今回現れるのは、ドリームイーター。それも、ハロウィンパーティーに参加出来ないという想いから生まれたドリームイーター。それを誘い出すための準備なのだ。
　そのために、出来るだけ楽しそうに振る舞う必要がある……が、演技というよりは本当に楽しんでいるようだった。
　ある程度準備をしてきたとはいえ、和食でも和菓子でも、料理というのは手間がかかる。それをお手伝いしてくれるのはミリム・ウィアテスト（ブラストトルーパー・e07815）。
「先日の一件でお菓子を貰った恩返しってやつだね！」
「うむ、感謝するでござる」
　そんな屈託のない笑みを浮かべるミリムに笑顔で感謝するウィリアム。
「味見は重要だよね」
　そんな鍋でじっくり煮込んだカボチャの煮付けをつまみ食いする大地。
「煮込み加減はいかがかな？」
　そんなつまみ食いも楽しみの一つ。
「美味しいです」
　言葉よりもなによりもその大地の美味しい笑顔が教えてくれるのでした。
　そうして、出来上がったカボチャの煮付けも、皮を目と口に見立てて並べれば、見事なハロウィンカボチャになるのでした。
　そんな隣では大地が手際よく料理を作っていた。カボチャをつぶして砂糖をバターを加えて混ぜた後、四角を作って小麦粉などで作った衣で包んでフライパンで焼けば、出来上がるのはカボチャのきんつば。
「上手に出来たかな？」
「美味しいでござるよ」
　出来上がったきんつばをつまみ食いするのはウィリアム。さきほどのお礼という感じの美味しい笑顔。
「いつも和菓子を食べてますが、何故そんなに好きなのですか？」
「色々理由はあるでござるが……」
　誉めてもらって嬉しそうな大地と楽しげに話をするのでした。
「一緒に作るのもパーティーの楽しみの一つだと思うがどうだろうか？」
　そんな歓談中の、ウィリアムと大地に声をかけるアベル。用意してきた練り切りの材料で一緒に作ろうとのお誘い。
「はい」
「是非とも」
　大地は相変わらず緊張気味な声だが快諾する二人だった。
「後は茹でるだけですね」
　フローネとミチェーリが仲良く作った団子を二人で茹でる。お湯の中で楽しく踊ったカボチャ団子を茹であげて、出来上がったお団子に海苔を使って飾り付け。できあがるのは可愛いハロウィンお化けのお団子なのでした。
「フローネのは可愛いく出来ていますね」
「ミチェーリのも可愛いですよ」
　出来上がりに満足そうな二人なのでした。
　そんな隣ではお手伝いに来てくれたゼルガディス・グレイヴォード（白馬師団平団員・e02880）たちと一緒に、シーレンがカボチャ餡のどら焼きを作っていた。
「美味しく出来たかな？」
　そんなシーレンの仮装は和風の烏天狗。
「すごいのだな」
　ゼルガディスと共に手伝いに来てくれたビーツー・タイト（火を灯す黒瑪瑙・e04339）が、その手捌きに感心している。
　そんな二人の仮装だが、ビーツーはヴァンパイア、ゼルガディスは裾長のローブを着た魔法使いなのでした。
　アベルは料理が得意なわけでも手先が特別器用なわけでもないが、それでもレシピを見ながら試行錯誤を繰り返す。
「何とか……カボチャの見た目に近づいただろうか？」
「上手でござる」
　多少不格好ではあるが、カボチャに見える練りきりを作り上げたアベル。その隣では外見に似合わず器用にハロウィンおばけの練りきりを作っていくウィリアム。
「器用だね」
「下手の横好きでござるよ」
　謙遜するウィリアムだが、素人してはかなり上手な部類だった。
「一個くらい食べてもいいっすよね……？」
　そんな出来上がる練りきりに、こっそり手を出すのは大きなナノナノ……の仮装をした奈菜菜奈。微妙につまみ食いしやすい場所に置いてある練りきりを一口でパクリ。
　お茶が美味しく感じそうな強めの甘さが口いっぱいに広がる。
「どうでござるか？」
　それは、つまみ食いもパーティーの一つと思っているウィリアムが用意していた物。
「うん、美味しいっすよ！」
　そんなつまみ食いというか味見をしてくれた奈菜菜奈の笑顔に満足そうなのでした。
「お菓子は他の人が色々作っているようですから、普通のハロウィンに合った料理をお願いします」
　お菓子作りは、それだけで楽しいもの。しかし、パーティーがそれだけでは寂しい。天子はコックの皆さんにお願いし、さらに洋菓子に見えないようにチェックをしてくれている。
「任せてください」
　そんな天子の依頼に嬉しそうに料理を作るコックたち。豆腐をおばけに見えるように飾ったり、おでんの具をハロウィンっぽい見た目にしたりと流石の技量だ。
「これくらいじゃ足らねえな！」
　そんな隣で桜牙の団子もどんどん作っていく。豪快に山盛りの団子がパーティーを楽しげに飾り付ける。
「うん、美味しいね」
　そんな山盛り団子に思わず手が出るシーレン。
「気が早いな」
　そんなつまみ食いにワイルドに笑う桜牙。ついでに、自分の口にも一つ放り込み、出来映えに満足する。　悪魔紳士の作る団子というと、何かの絵本にでも出てきそうな光景なのでした。
　そんなひたすら団子を作る彼の相棒であるビハインドのレインディは、会場の飾り付けをお手伝いをしているのでした。
「皆が頑張ってくれるからこそパーティーに笑顔が溢れる。まさに縁の下の力持ちだな」
「ありがとうございます」
　そんなアベルの言葉に、本当に嬉しそうにお礼を言うコックたち。ドリームイーターが来るのはパーティーが始まってからだろうが、早めに一般の人たちには避難してもらう。
「それでは、お先に失礼します」
　そう言って、先に会場を離れるコックたち。万が一にも一般の人を危険に晒さないための対応だ。
「洋菓子も良いが、こういう行事で和菓子ばかりといのも新鮮な気がするな」
　ゼルガディスがどら焼きの仕上げに、竜の焼印を付けながら呟く。
「これからは増えるかもしれないでござるよ」
　そんな言葉に答えたのはウィリアム。
「ほう、そうなのか？」
　ビーツーは暖かい煎茶の準備をしながら答えを促す。
「ケーキのような形の和菓子があるのでござるが……」
　　せっかくだからと、和菓子の良さを解説するウィリアム。
　そんなケーキのような和菓子の意味はアレルギー。小麦粉も卵も乳製品も使用していない和菓子はアレルギーでケーキを食べられない子にも食べてもらえるという長所があるのだ。
　そんなウィリアムの話を笑顔で聞いているシーレンだった。
「ウィリアムさんは、和菓子等のお菓子に造詣が深そう、他の蘊蓄とか聞いてみたいね」
　和菓子を作りながらシーレンはウィリアムに話しかける。
「そうでござるな……」
　そんな他愛のない話……だけど、もしかしたら一番楽しい時間かもしれない、パーティー準備という時間を楽しむケルベロスたちであった。

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「それじゃあ、始めましょうか」
　皆の準備を終えたところで、飲み物を手に乾杯の準備をする。全員が緑茶なのがちょっと珍しい光景かもしれに。
　皆、思い思いの仮装がとても賑やかな雰囲気。さらに、並んだ料理とお菓子が完全和風なのも面白い。
「それじゃあ、ハッピィハロウィン！」
　フローネのかけ声と同時に乾杯すると、どこからともなく嫌な気配が漂う。
　最初にドリームイーターに気づいたのは奈菜菜奈だった。
「よっしゃっー、敵が来たっすよ！」
　はしゃぐナノナノ……じゃなく、ナノナノの仮装をしている奈菜菜奈。
「あ、あれ、足はもつれて……　ほぎゃーっす！」
　しかし、大きな声で仲間に知らせるも、ナノナノの仮装だから、足は一本足。なので見事に転がってしまった奈菜菜奈。
「現れたようだな」
　お化け提灯の中から、地獄の炎で衣装を一瞬で燃やし尽くし現れるアベル。
「ハロハロハロォ～」
　そんなドリームイーターもモザイクの上にカボチャの乗ったケーキの着ぐるみを着ているのだから、動きはよろよろ、よちよち。着ぐるみから出ている手足がモザイクになっていなければ、ハロウィンの着ぐるみと言っても差し障りが無さそう。
「ハロウィンナンテ、コワレテシマエ！」
　しかし、そのモザイクからは破壊衝動が溢れ、着ぐるみの隙間からモザイクのお菓子を飛ばして攻撃してくる。
　そんな暴れるドリームイーターの行く手を遮り現れるのは新撰組……ではなく、ミチェーリとフローネ。
「せっかくだから、言わせてもらいましょうか」
「そうですね」
　二人で呼吸を合わせる。
「我ら新撰組！」
「御用改めである！」
「手向かいすれば斬る……です！」
　見事に息の合った名乗りを決める二人。
「ハロハロオオオオ！」
　そんななりきりで楽しそうな二人の姿に逆上するドリームイーター。モザイクを乱れ飛ばしながら襲いかかってきた！　戦いの開始だ！

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「食えねー菓子なんて投げてよこすんじゃねえってんだ、コノヤロー！」
　モザイクがかかっていて分かりづらいが、投げているのはお菓子のように見える物。
「今回は、別の紋章の方がよかったかもしれねーが、これしかねーからな。コード、竜鱗起動」
　そんなモザイク攻撃に対して紋章の力を解放する桜牙。
『貫かれぬ盾。切り裂かれぬ鎧。固き意志と不倒の誓い。コード、ドラコンスケイル起動します』
　同時に鱗のようなエネルギーシールドを展開し攻撃を防ぐ。
「これで守る！」
　さらに、激しい攻撃を防ぐのは大地の巨大な盾。通常の二倍ほどに巨大化した盾でモザイクを弾き飛ばす。
　二人の防御に対して、出来た隙間に現れるのは天子。
「倒します」
　クールに無表情にアームドフォートを構え、そこから一糸乱れる主砲の斉射。
「ハロハロォ！」
　激しい砲撃でさらに歪むドリームイーターの仮装。その歪み加減がまるで顔のようになり不気味さを醸し出す。
「小倉奈菜菜奈１７歳っす！」
　セリフと同時に奈菜菜奈が放つあふれる力に一瞬、くらっとするドリームイーター。
　そこへ両端に刃の付いた鎌を回転させながら距離を詰めるアベル。
「これでどうだ」
　全身を地獄の炎で包んだアベルが放つ炎撃。
「ハロロァ！」
　本来の衣装なら燃え尽きそうな一撃だが、形を残しているのは、その衣装もドリームイーターの一部なのだろう。
　激しい攻撃を繰り出すドリームイーターだが、それでもテーブルにだけは攻撃をしなかった。それは、歪んでも料理を作る想いから生まれたからだろうか……。

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　仮装はかなり壊れボロボロになったドリームイーター。それでもモザイクを飛ばし反撃を繰り出す。
「接近して殴る方が、今回は都合がいいからなっと」
　竜鱗で攻撃を防ぎながら懐にもぐり込み、着ぐるみごと強烈な一撃を叩き込む。
「ハロハロ！！」
　一撃で右側に着ぐるみが歪む。
「もう一撃、いきます！」
　さらに反対側から大地が構造状の弱点を見抜き、そこへ打撃を叩き込む。
「ハロロォ！」
　右に左にと連続で攻撃を受け歪むドリームイーター。
「トリック＆トリート！　もっとも私のトリックは、いたずらでは済みませんよ！」
　ミチェーリがバトルガントレットの掌底部に冷却機構を展開、そのまま手の掌でドリームイーターを掴む。
「震えることすら、許さない……！」
　同時に冷却機構を機動、ドリームイーターの熱を奪っていく。
「トリック＆トリート！」
　そこへビームシールドをランス状に全面に集中させたフローネ。
「これが、私達のおもてなしです！」
　そのまま突撃し、ランス状のビームシールドを叩き込む。
「グググ……」
　一瞬の沈黙の後、ビームシルドが消滅しドリームイーターの中央に見事な大穴が開いた。
「フフフフフアアアア！」
　そのまま、穴の周囲が花火のように小さく弾けながら消えていき……そのまま跡形もなく消滅した。ケルベロスたちの勝利だ。

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　今頃はドリームイーターを生み出す結果となったパティシエも目覚めているだろう。
「後でパティシエさんにお土産を持っていってあげようね」
　そんなシーレンの優しい気遣い。
「それでは、メインのハロウィンパーティーに行きましょう」
「そうですね」
　凛々しい新撰組の仮装からフローネとミチェーリは別の仮装へと着替える。
「残った料理も、持っていくでござる」
　幸いな事に料理は全部無事だったし、それを見越しての用意もしてあったから、皆で手分けして本来のハロウィンパーティーに持っていく。とはいっても、かなり量があるから半分くらいはお持ち帰りのお土産になるかもしれない。
「これからが本番だね」
「ああ」
　そんな訳で、今はせっせと荷物や料理の移動中。そんな中で大地がウィリアムの運ぶ料理を見て、少し笑顔。
「そんなに和菓子いっぱい、食べ過ぎて虫歯にならないように気を付けて下さいね」
　ウィリアムが運んでいるのは、見事に和菓子ばかり。大地の作った『カボチャのきんつば』にシーレンたちの作った『かぼちゃどら焼き』、ミチェーリとフローネが作った『ハロウィン風お月見団子』、桜牙の作った『山盛り団子』、アベルの作った『ハロウィン練りきり』と山盛りだった。
「……う、うむ。そうでござるな」
　そんな大地の指摘に、少しに恥ずかしそうなウィリアムなのでした。
　ともかく、ドリームイーターの驚異は去った。ケルベロスたちはこれから始まるハロウィンパーティーに胸を踊らせるのでした。

作者：雪見進	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2015年10月31日 難度：普通 参加：8人 結果：成功！
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