
『今日こそ……先輩に……。先輩……。ありのままの僕の事を好きだと言ってくれた先輩……今日こそ、告白、してみせる!』
やや華奢な体つきの少年が、駅前と思しき場所で待ち合わせている。彼の顔立ちは、男というより可憐な少女を思わせた。
『そうさ……僕は、男……なんだから! って、先輩!?』
『こうはい、くんっ♪ お待たせ』
待ち人たる先輩が現れた。少年よりも背が高く、やや肩幅も広いが、まるでモデルを思わせる女性らしい肌と体型と、自信にあふれた整った顔。
すぐに二人は腕を組んだ。
『さ、今日はどこ行くの?』
先輩がそう問いかけた、その時。二人の姿は消えた。
『喝ッーーー! この装束に異議あり!』
野太い声とともに、声の主は手元の機械を更に叩き壊す。
『二人がデートを待ち合わせる様子』、それは暗く、やや広い室内のスクリーンに映し出されていた映画の映像だったのだ。そして声の主が映写機を叩き壊した事で、スクリーンは真っ白に。
誰かが電灯をつけると、その場所には十数名が集まっているのが明らかに。
彼らは『異様』だった。十数人のその集まりは、全員が例外なく『甲冑』に身を包んでいたのだ。
『おいお前! 今の貧弱な後輩の服装をどう思う! あれでも男と言えるか!』
映写機を壊した、声の主……鳩のような頭部を持ち、胴体は西洋甲冑を着ているビルシャナが、手近な信者に問う。
『言えません! あんな貧相な姿は、男に相応しくありません!』
『ならば、何を着るべきか!? 何をまとうべきか!?』
『甲冑です!』
『そうとも! 男なら甲冑! 甲冑こそが男の正装であり、勝負服! あのような府抜けた服を着るからダメなのだ!』
返答に満足げなビルシャナは、傍らに置いていた全身鎧、その胸当てと兜とを掲げた。
『どうだカッコいいだろう! この場にいる男どもよ、世にはびこる貧弱男子共に甲冑を着させて、女子にモテモテにさせてやろうぞ!』
ビルシャナに合わせ、信者たちも鎧の一部や兜を掲げる。
『甲冑こそが男の勝負服! 我ら甲冑共同体!』
甲冑集団は声高らかに言い放った。
「……っつーか、自分も男ッスから、甲冑とか鎧とかをカッコいいって思う気持ちはあるッスが……さすがにこれはねーッスわ」
ダンテが君たちを前にして、あきれ顔を浮かべている。
以前に、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)らが、『くノ一はセクシー系忍装束以外認めない』というビルシャナと戦い、その信者を解放した事があった。
今回のビルシャナは、『甲冑姿こそが男の勝負服であり正装。それ以外許さない』という者たち。なので、無理やり甲冑を着せようとしている。
「んで今回、閉鎖されたどっかのTV局の倉庫を見つけ、撮影用の鎧がたくさん放置されてたから、それを……ってな感じみたいッス。信者連中は全員が西洋甲冑または日本の武将の甲冑に身を包んでて、男女や年齢などはわかりませんッス。ビルシャナは鳩の頭の貧相な奴が、後ろの方でやはり鎧着て立ってるッスね」
ビルシャナ閃光とビルシャナ経文、清めの光を用いるそいつは、騎士が着るような豪奢な鎧を身に付けて、後ろの方に立っているという。ビルシャナの配下となった人間には、ビルシャナ以上のインパクトある主張を行い、ビルシャナの教義から目を覚まさせなければならない。でなければ、ビルシャナのサーヴァントのままだ。
「信者連中は、武器は持ってないスね。あくまで鎧にこだわってるようで。顔も完全鎧のヘルメットで隠してたり、面頬で隠してたりしてて、できるだけ露出はしてないっぽいス」
言う事も、とにかく鎧カッコいい、甲冑最高、今年のモードはアーマーにすべきなどと言っており、全く聞く耳持たない。加えて、レプリカのものもあるらしいが、彼らまたは彼女らが着用している鎧は、ほぼ全てが金属を用いた、かなり重いものらしい。なので、おそらく中の人間は若く、壮健で体力のある者、筋力のある、逞しい肉体を持つ者じゃないか……と、ダンテは指摘した。
「ただ、面頬が取れかけたら必死こいて付け直したり、西洋甲冑の兜のフェイスガードも開きかけたら閉じたりと、素顔見られる事を隠してたっぽいス。そのあたりに、何か突破口があるんじゃあないかと」
また、武器も持たず、動きも正直遅い。説得に失敗し戦いになったとしても、ひっくり返せば戦闘不能にできるかもしれない……と、付け加えた。
「もっとも、ビルシャナの鳩野郎は別ッスが。そいつも西洋の金属製の甲冑に身を包んでるッスが、かなり大柄で軽快に動けるみたいッス」
場所となる部屋は、当然ながら人は他に居ない。元は会議室か何からしく、戦うのに困らない広さとのこと。
「つーわけで皆さん。この甲冑を押し付ける変な連中を、どうかぶっ飛ばしてやって下さいッス」
ダンテの言葉に、君たちは立ち上がった。
参加者 | |
---|---|
![]() エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486) |
![]() 天矢・恵(武装花屋・e01330) |
![]() アニエス・エクセレス(エルフの女騎士・e01874) |
![]() 機理原・真理(フォートレスガール・e08508) |
![]() レオン・ヴァーミリオン(リッパーリーパー・e19411) |
![]() 結城・勇(贋作勇者・e23059) |
![]() 瀬入・右院(夕照の騎士・e34690) |
![]() 禍芋・野鳩(紛い物ハート・e36800) |
●防具・ゲット・オン!
「甲冑か、いいよね」
倉庫内に響くその声に、信者たちは振り返り、ビルシャナは声の主を凝視。
「俺も昔は甲冑派だったんだけど……」と、声の主……白い髪と色白の肌を持つ、丁寧な物腰の美少年は、更に言葉を続けた。彼の名は、瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)。
「けど、今はもうそんな時代じゃないんだ。白兵戦と同時に、IT戦を制さないとダメってわかった……!」
『?……その言葉はいかな意味がありや?』
ビルシャナが訊ねる。
『そうだ、白兵戦はともかく、IT戦とは?』『漢ゆえに戦いに赴くのは理解できるが、コンピューターといかなる関係があると?』
「それは……」
右院の神妙な顔に、全員が注目し、かたずをのむ。
『それは……』
「……生活してて、不便なんだ。慣れてなければ、スマホ着信してもすぐ取れないし」
『……なに?』
「コンビニの端末とか、銀行のATMとかも、うまく操作できない事がよくある。そういうときに、後ろに人が並んでいて、もたもたしてると絶対格好悪いよ」
『……だから、貴殿は何を言っている』
ビルシャナの問いかけに、
「だから、甲冑のIT戦対応に関して、だけど。あと、格好悪いで思い出したけど」
右院は話を続ける。
「外出時のトータルコーディネートも困るんだよね。カバンや時計はどうするの? って、結構おしゃれの範囲が狭まっちゃうんだ。選択肢の一つではあるけど、少なくとも……」
手堅いデート服、とは言い難いね。
彼のその言葉に、
『喝ァーーーーーツ! 貴殿よ、甲冑男子を舐めてるのか!』と、論理性に欠けた、反論になってない反論を返すビルシャナ。しかし信者たちの何人かは、
『確かになあ』『俺もスマホ扱えなくてな』『つーか、甲冑の他のおしゃれ、したことあるか?』
など、信義に反するような事を口にしている。
「まー、なんだ。僕も甲冑そのものは好きだけど……」
そんな中、右院の後ろから出てきたレオン・ヴァーミリオン(リッパーリーパー・e19411)が、のんびりとした口調でそれに参加。
「『機能美』としては好きだけど、『強い男』アピールなら……『逆効果』というか……」
『なんだと?』
ビルシャナと信者たちが、『逆効果』という単語に反応する。大勢ににらまれるも、レオンはそれをさらっと流した。
「戦時なら、いいだろう。けれどね、戦う必要なんてない、平和な場所で、自分だけ守りをがっちり固めてる奴って、世間でなんて呼ばれてるか、知ってるかね?」
『?』
「……それはもはや、ただの『臆病者』だ」
『なっ……臆病者だとぉ!』
予想通り、激昂するビルシャナに信者たち。
そこに、
「まあ、お待ちになって、レオンさん。その言い方でしたら、反感を買いましてよ」
「とはいえ、甲冑男子は最近の流行りでない、という点に関しては、事実と言えるかもしれませんが」
二人の女性の声が。
●カブト防具
『貴様ら、何者だ!』
「エニーケ・スコルーク(黒馬の騎婦人・e00486)と申します。こう見えても『騎士』を務めております、お見知りおきを」
一人は、黒馬の頭部を持つ獣人。頭髪は灰色、肌は黒く、その体つきと口調は繊細な女性らしいそれだが、同時に野生の馬が持つ力強さをも内包していた。
「私も騎士です! 名前は、アニエス・エクセレス(エルフの女騎士・e01874)です」
もう一人は、エルフ。女性用の騎士鎧の胴部分に、はちきれんばかりの両胸を収めている。
「それで、今の流行りは甲冑男子ではありません。そう……『刀剣男子』です! 女子は刀剣男子に夢中なんです!」
ビルシャナや信者らがひるむくらいに、アニエスはまくし立てた。
「……それで、私としては副長の愛用とした打刀はもちろんですが、その脇差も良いんですよ。トンボを切ってしまう実直な剛槍も捨てがたいですが、特に短刀がいいんですよ。あの冷静沈着なところが……」
「アニエスさん、その辺で」
暴走しかけたエルフの騎士を、馬頭の騎士が抑える。
「私としては、皆さんの鎧甲冑に対する拘りと、憧憬の意思が感じられて……嬉しく思いますの」
エニーケのその言葉に、誇らしげになる信者たち。
「でもね……」と、エニーケは続ける。
「鎧甲冑を、モテ期を成功させる道具か何かと勘違いしてもらっては……それらを着こんで、戦いに赴き散っていった、全ての兵士たちに対して、恥ずかしいと思いませんか?」
『そ、それは、その……』
信者らの何人かが、狼狽える。
「自身の身を、壮麗かつ荘厳に包み込む重い感触は、緊張感漂う『戦場』において、唯一の安らぎと言えたでしょう。世界中が刮目している、戦いに従事しているケルベロスの私も、その一人ですわ」
エニーケは、自身が着ている鎧を見せつけた。メイド服の上から着こむそれは、馬の意匠が施され……幾多の戦いを越えた存在のみが得られる『凄味』めいたものを漂わせている。
「貴方方に、それを着こむ覚悟がおありでして? そして……そこの鳥頭は、その鎧に、『自分の命』を託せますのかしら?」
挑発的に言い放つエニーケ。その言葉の前に、僅かな沈黙が流れた。
●アイアンでなくメタルな甲冑
『ええい、うるさいうるさいうるさい! 甲冑を着こめば問題ないのだ! それも頑丈な甲冑なら特にな!』
答えにならない答えでもって、反論したつもりになる ビルシャナ。しかし……、
「スーツの方が、格好良いです……」
女性のその声、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)とともに現れし、新たな人影。
「だな。斯くあるべし! 確かに俺も勇者としちゃ、甲冑姿ってのは嫌いじゃあねぇが……ま、ひとつ現実を教えてやるとするかねぇ。なあ?」
結城・勇(贋作勇者・e23059)、精悍な体つきの青年が、隣の男に語り掛ける。
「そうだな。……というか、何か匂わねぇか。密閉された空間てのは、ずいぶんとムレてくるもんじゃあねぇのか」
語り掛けられた彼、天矢・恵(武装花屋・e01330)の言う通り。甲冑を着ている信者たちからは汗臭さにも似た、臭いが漂っていた。
「……甲冑、か」
そして、それを見ているのは。全身を機械鎧で完全武装している、禍芋・野鳩(紛い物ハート・e36800)。
「甲冑とはまた違うが全身を武装している身。この者たちに言いたいことは色々とある」
他の三人を差し置き、ずいと近づいた野鳩は……。
『な、なんだ!』
信者たちを、気押した。
「甲冑を着た状態で、先輩とやらと腕を組んだ場合……夏場なら直射日光で熱された甲冑は先輩は火傷してしまうのではないか? 甲冑のままでは触れれば相手を傷つけてしまう……それでいいのか?」
『え?』
予想外の問いかけ。更に彼女からは畳みかける。
「話を聞いていれば、相手のことを何も想定しておらず、己の軟弱さを隠す為だけに甲冑を着ているように見受けられる」
『なっ……』
図星を突かれたかのように、狼狽える信者たち。
『ふざけるな! お前の姿も甲冑と同じじゃないか! ならばお前も臆病者だ!』
「おやおや、さっきの僕の問いかけと同じだねぇ」と、レオン。
「いや……レオン殿の言われる通りだ。確かにそうだ。いずれは……今のままの自分を、受け入れねばならない」
否定の反論が来ると思いきや、肯定の言葉。それにどよめく信者ら。
「ならば私が、先に手本を見せるべき、だな」
そう言うと、野鳩は除装した。全身武装型のアームドフォートを解除すると、蛹のような鉄の塊から出てきたのは……逞しくも麗しい、蝶のような美女の姿。例えるなら、鍛えてしなやかな身体を手に入れた、女騎士や戦士のよう。
「…一応体は鍛えているつもりだが、どこか変だろうか? 性差によって説得力がなかっただろうか?」
『おお……』『これは……』『強そうで……可憐だ……』
信者たちの視線と賛同の言葉が、野鳩の返答に。
それに従い、数名の信者が……自身の装甲を脱いだ。
『甲冑は魅力的だが……これを着っぱなしは良くないよな』
『ああ……俺は亀やカタツムリじゃない。あの女騎士みたいに……俺もなりたい。あと付き合いたい』
そして、効果のほども。それは野鳩に、僅かにだがある感情を覚えさせるものだった。
『照れ』という感情を。
●ザ・防具マン
『なっ……おい! 貴様ら! 何を篭絡されてるのだ!』
ビルシャナが、焦ったように喚き散らす。
「野鳩さん、格好いいよね」と、今度は真理が野鳩の横に。
「みなさんも、甲冑より『スーツ』を着た方が格好いいと思います。ご存知ですか? 背広を着る時に、首に絞める『ネクタイ』。……あれは『剣』の名残、らしいのです」
『そうなのか?』『知らなかったな』『確かに、剣のような形はしてるよな』
ビルシャナの喚きを無視した信者たちは、真理に注目。
「そして、多くの男の人は『スーツ姿』で、毎日戦ってるです……。つまり、スーツこそが、戦場に向かうための、現代の甲冑。重くて鉄臭い甲冑より、今風なスーツ姿の方が、絶っ対に、格好良いのですよ」
『そんな事は無い! 甲冑の方が……うげっ』
まだ心変わりしない信者の何人か、その一人に対し、勇がその胸倉を掴んだ。
「そりゃ、甲冑そのものが格好いいだけであって、着た奴も格好よくなるわけじゃねぇんだぜ? あ?」
凄味をきかせた声色とともに、勇はオウガメタルで自分の身体を装甲で覆う。それにおののく信者に対し……そのフェイスガードを強引にひっぺがした。
『なっ!?』
そして、にやりと意地悪く微笑んで見せる勇。
「残酷な常套句だってあるじゃねぇかよ。鎧を着た男は格好良い、ただし……『イケメンに限る』ってな?」
そう言って、勇は信者を解放する。
「で? お前はイケメンか? 違うんなら、そんな鎧、脱いじまったほうがかえってモテるぜ?」
「そうです」と、再び真理。
「男の人がジャケットをバサッて着るところとか、私はすっごく格好良いと思うのです。見てみたいのですよ」
真理の言葉を後押しするかのように、彼女のライドキャリバー『プライド・ワン』が近づいてきた。それには、多くの男性用スーツが積まれている。
『…………』
結果。
またまた数名が、鎧を脱いだ。
『貴様ら……許さん、許さんぞーっ!』
ビルシャナが見苦しく喚き散らすが、残る信者はあとわずか。
が。そこに、なにやら甘く良い香りが漂った。
「そのままじゃ食えねぇだろ。不便じゃねえか?」
その香りの源は、恵……赤毛の精悍な男がこの場所へと押してきた、ワゴンから漂っていたのだ。そしてワゴン上には、種々様々なスイーツが並んでいた。
「これらは、秋の新作スイーツだ。栗やサツマイモや、洋ナシなど、秋の味覚をたっぷり使って仕上げた、俺の自信作だな」
『な、なにを……』
混乱する信者らは、甘いその臭いを嗅いで、さらに混乱。
「こいつは、『洋ナシのタルト』に『スイートポテト』。甘い匂いが最高だろう? こっちは、栗を使った『モンブラン』。栗きんとん風の日本のと、本場スイスのとを組み合わせた、栗感満載の一品だ。こいつあ『ダックワーズ』。フランスの焼き菓子で、メレンゲとアーモンドの生地にクリームを挟んだ代物だ。今回はマロンクリームとサツマイモクリームを挟んだのを用意した。こっちも香りがたまらないだろう?」
返答は無いが、ごくりとつばを飲む音が聞こえた気がした。
「……そんな密閉された鎧を着こんで、汗臭く不衛生な状態になってるんじゃないか? 耐えなくとも良い、解き放たれて良いんだぜ。そんなもん着て格好つけるより、俺のスイーツ食ってハッピーになる方が、よっぽど魅力的ってもんだ。どうだ?」
恵の問いかけに、やはり返答はない。が、行動を以て返答する者が。
残りの信者のほとんどが、鎧を脱ぎ捨てたのだ。
残るは、ビルシャナと……三人の信者のみ。
『……そんなくだらない事で、我々をたばかるつもりか!』
『そうだ! われらが甲冑の強き事、巌なる事、貴様らに教えてやろうぞ!』
『いざ!』
そう言いながら、三人は突撃した。
●斡旋ぶる防具
突撃するその三人に対し、ケルベロスたちは身構えたが……。
「手加減して攻撃……する事も無さそうだねぇ」
レオンが進み出ると、掴みかかる信者に対し足払い。
『え……うわっ!』『って、危ないっ!』『おいどけ!』
一人がこけると二人目も連続して、ドミノ倒しがごとく仰向けに倒れてしまった。
そして、二人ともじたばた。その様子はひっくり返って起き上がれない亀のよう。
「重い板金の甲冑着てるしねえ。さーて……どうする?」
ニヤリ……と、意地の悪い笑みをビルシャナに向けるレオン。
だが、三人目がそうなるまいと迫るが、
「おおっと、鎧を着てても……」
勇がそいつに足払いして、頭を鷲掴みにすると……、
「これじゃあ恰好つかねぇよなぁ!?」
そのまま、床へと叩き付ける。
『ぐわあっ!』
悲鳴とともに、気絶する三人目。
そして、それを見たビルシャナは。
『貴様ら全員、殺してやる!』
叫び、閃光を放った。
「うわっ!」
「おおっと!」
それを勇は交わすが、その後ろのアニエスと右院はかすってしまった。が、それと入れ違いに。
「行って、『プライド・ワン』!」
『デットヒートドライブ』、真理のライドキャリバーが、炎とともに突撃した。それをもろに食らったビルシャナは、後方へと弾き飛ばされる。肉の焼ける嫌な臭いが、辺りに立ち込めた。
しかし、ビルシャナは焼け焦げた姿でもなお立ち向かい、突進した。
『まだだ! まだ、終わらん!』
「いいや……」
その突進の前に立ちはだかるは、恵。
その手には、いずこから召喚した、一振りの刀が。それを構える恵。
「!」
空気から、音が放たれた。『斬』という響きの音が。
突進した恵の、刀剣による一閃。それが……ビルシャナを甲冑ごと、切断した。
「『斬華一閃(キリバナイッセン)』。これで……終わりだ」
崩れ落ちたビルシャナの身体は、なおも燃え続けていた。
●ちょー温泉し、防具まん
「すいません。自分たち……」
事後、正気に戻った信者たちが、頭を下げる。
「ま、そもそも服で男の、人の価値が決まるものじゃねぇだろ。そいつを学べただけでも僥倖じゃねえか?」
恵の言葉に、レオンも頷く。
「まあ、見てくれが重要ってのは大事な事だけど、自分がどうありたいかは、自分で選んだ方が良い。それが……生きるための義務と権利だ」
右院は、先刻の紳士的な振る舞いが消え、はあーっとリラックス。
「ところで、そんなに鎧がお好きなら着付をみっちり教えてさしあげますわ! ほら……遠慮なさらないで、ね?」
エニーケが、信者たちに提案。彼女とともに真理も、
「重い甲冑を着てたら絶対汗臭いのです。ちょっと並んでください、綺麗にするですよ」
遠慮する信者たちに、迫る彼女たち。野鳩はそれを、どうしたものかと悩みつつ見つめていた。
作者:塩田多弾砲 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2017年9月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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