玉響の涙

作者:小鳥遊彩羽

 それは、月が綺麗な夜のことだった。
 人通りのない路地を、スピードを上げて走り去っていく車の音。後には倒れた一人の女性が残されていた。
「……さ、き……」
 血溜まりの中、絞り出した息に紛れた掠れ声。女性の命の灯火が、誰の目にも留まることなく静かに消えていく。

 ――はずだった。

 暗闇の中、ゆらりと浮かび上がる影。そこに現れた赤い色彩を纏う人魚の死神――エピリアは、今まさに息を引き取ったばかりの女性へ歪な肉の塊を埋め込むと、まるで寝物語を聞かせるかのように、優しく囁きかけた。
「あなたが今、一番逢いたい人の場所に向かいなさい。逢いたい人をバラバラに出来たら、あなたと同じ屍隷兵に変えてあげましょう」
 そうすれば、ケルベロスが二人を分かつまで、一緒にいることが出来るでしょう――。
 エピリアはそれだけ言うと、深海魚型の死神を残し、再び闇に溶けていく。
 次の瞬間、ぴくり、と、女性の亡骸が動いた。

 死神の手により屍隷兵へと変えられた女性は、仄かに月明かりが差し込む中、魚達を連れて家路を辿る。
 その、家には――。
「……お母さん、遅いね……」
 手作りのデコレーションケーキと、誕生日を祝うメッセージカードと。
 その傍らに置かれた写真立ての中で笑う父親にぽつりと語り掛ける、一人の少女の姿があった。

●玉響の涙
「……なんとしても、おとめしなければなりませぬ」
 真剣な面持ちでそう告げた月霜・いづな(まっしぐら・e10015)の傍らで、トキサ・ツキシロ(蒼昊のヘリオライダー・en0055)も静かに頷く。
「エピリアという名の死神が、亡くなった人を屍隷兵に変えてしまう……という事件が起きているんだ」
 エピリアは死者を屍隷兵にした上で、その屍隷兵の愛する者を殺すように命じているらしい。
 屍隷兵へと変えられた死者は知性をほとんど失っているものの、エピリアの甘言に惑わされ、愛する者と共にいるために自らの手に掛けようと移動している。
 このままでは屍隷兵は愛する者を自らの手で殺め、そして殺された者もエピリアによって屍隷兵へと変えられてしまうだろう。
「既に屍隷兵へと変えられた人を元に戻すことは出来ない。……けれど、『彼女』が娘さんをその手で殺めてしまう前に、止めてほしい」
 屍隷兵に変えられてしまったのは、水嶋・智子という一人の女性。そして、彼女が手に掛けようとしているのは、一人娘の咲希だ。
 早くに夫を亡くし、女手一つで娘を育ててきた智子。その日は彼女の誕生日だったが、急な仕事で残業を余儀なくされ――帰りが遅くなってしまった所に、不運にも轢き逃げに遭い、命を落としてしまった。
「皆には、彼女が家へ向かって移動している所を迎え撃ってもらうことになる」
 夜も遅い時間となれば、出歩く人もない。そんな路地の一角が戦いの舞台になるとトキサは続けた。
 敵は屍隷兵となった智子の他に、深海魚型の死神が二体。魚達は智子を守るように立ち回るものの、魚も智子自身も、さほど戦闘力が高いわけでないという。油断せずに向き合えば、決して負けるような相手ではないとトキサは言い、そして最後にこう結んだ。
「皆にとって、辛い戦いになると思う。でも……」
 これ以上の悲劇が起きてしまう前に、どうか彼女を眠らせてあげてほしい、と。


参加者
藤守・景臣(ウィスタリア・e00069)
メロゥ・イシュヴァラリア(宵歩きのシュガーレディ・e00551)
エルス・キャナリー(月啼鳥・e00859)
市松・重臣(爺児・e03058)
月霜・いづな(まっしぐら・e10015)
幸・公明(廃鐵・e20260)
黄瀬・星太(火風・e28582)
黒江・神流(独立傭兵・e32569)

■リプレイ

 まるで、風が鳴いているようだった。
 死神の手によって屍隷兵へと変えられた『彼女』は、その身体を引き摺るようにして、付き従う魚の死神達と共にケルベロス達の前に姿を現した。
「……彼女が苦しむ前に、早く、眠らせてあげましょう」
 藤守・景臣(ウィスタリア・e00069)は静かに呟くと、掛けていた眼鏡を外し懐に仕舞う。瞳に灯る藤色は、想い宿す地獄の炎の一欠片。それは、かつて己の身代りとなって命を落とした、――死神に奪われた、愛するひとの色。
(「むすめさまを、ひとり、のこして。……いかに、むねんなことでしょうか」)
 月霜・いづな(まっしぐら・e10015)の眼差しの先には、一人の少女の母であった屍隷兵。醜く膨れ上がったその姿に、生前の――ひとの面影は欠片もない。
 止めることが出来るのは、終わらせることが出来るのは、自分達だけ。
「置いて行くのはさぞ無念じゃろう。もっと一緒に笑い合うて居たかったろう。……然れども、その身を、その思いを、通す訳には行かぬ。連れて行ってはならぬ」
 死して尚、変わり果てて尚残る娘への想いに、市松・重臣(爺児・e03058)は瞳に無念さを滲ませる。
 普段の豪放磊落で破天荒な姿からは想像もつかないほどの絞り出すような声色は、重臣自身、かつて喪った側であるが故。
 何も知らずに母の帰りを待つ娘。ひとり遺された少女を想って痛む胸に、メロゥ・イシュヴァラリア(宵歩きのシュガーレディ・e00551)は悲しげに瞳を揺らす。
(「……どうして、奪われなくちゃいけないの」)
 助けてあげられないことが、悔しくて悲しくて。だからこそ、何があっても彼女の娘は守るというメロゥの想いは、まるで誓いのよう。
「やはり死神やらなんやらに悪用されたの。……しかも、かなり悪質なことをしているね」
 エルス・キャナリー(月啼鳥・e00859)にとっては、月喰島以来の邂逅となる屍隷兵。エルスに出来るのは、目の前に在る脅威を、これ以上の悲劇が起きないように止めることだけだった。
 ――例え、後で恨まれたとしても。
(「ここで、彼女を倒さなきゃ」)
 人は常に死と隣り合わせで生きている。それは、誰であっても同じこと。
 だから事故によって彼女の命が奪われたのだとしても、黒江・神流(独立傭兵・e32569)にとっては仕方がないと割り切れるものだった。
 だが、それが死神の介入によって歪められ、悲劇が繰り返されるのであれば、看過することは出来ない。
「出来ることは全てやらせてもらおう」
 ケルベロスとして悲劇の連鎖を止めてみせると、神流は銃を構えた。
「智子さんを穢すな。残された人の心の傷を広げようとするな」
 黄瀬・星太(火風・e28582)の胸の内に宿るのは、人として生を終えるはずだった彼女の魂を穢した死神に対する怒り。同時に、星太は屍隷兵への想いも口にする。
「僕を恨んでくれてもいいよ。けど、貴女のことは絶対に止めるから」
 屍隷兵が、深海の魚に似た死神達が、ケルベロスの存在を認識する。放たれた明確な敵意を、ケルベロス達は感じ取る。
 救えない。戻せない。ならば叶えられるものは一つしかなく、故に幸・公明(廃鐵・e20260)は迷いなく告げた。
「――始めましょう」

 刹那、屍隷兵が唸るような咆哮を上げた。
 空気を震わせ脳髄を揺さぶるような衝撃にも表情一つ変えることなく、景臣は指先を伸ばし、小さな紅蓮の火を踊らせる。
(「――死した存在とは言え、実の母親に娘を殺すように仕向けるとは」)
 神経を灼き切り、蝕む炎が弾けると同時。いづなが遣わした半透明の『御業』が、揺らめく魚の片割れを握り潰した。
 エクトプラズムの刀や小槌を手に、縛霊手から抜け出した魚へと踊りかかっていくミミックのつづらの姿をちらりと見やり、いづなは再び、屍隷兵へと視線を戻す。
「だいじょうぶ、ちゃんと、お止めいたしますからね……」
 空を舞う霊力を帯びた紙兵の群れは、重臣と公明の手によるものだ。
「本来のお主に代わり、……大切な希望を、護ってみせよう」
 魚が放った怨霊を盾となって受け、壁となって屍隷兵達の行く手を塞ぐ重臣。オルトロスの八雲が神器の瞳を閃かせると、瞬く間に魚が燃え上がった。
「ハコさん、お願いしますね」
 一方の公明も、傍らのミミックに呼び掛ける。メディックとして立ち回る公明の声に応え、ハコさんもエクトプラズムの武器を振り翳しながら死神達に向かっていく。
 攻撃手として誰かに背中を預けながら戦うというのは、いつもは後方で皆を支えるエルスにとって新鮮で。
 もっとも、どのポジションにつこうとも、勝利というただ一つの結果のために全力を尽くすことに変わりはない。
「かわいそうだけど、倒すよ。あまり苦しませないでさっさと終わらせてあげる」
 それが、彼女にも彼女の娘にもきっと一番良い。そんなエルスの想いを乗せた冬の嵐が、瞬く間に魚達を氷に閉じ込めた。
 ケルベロス達がまず狙いを定めたのは、前衛で盾の役目を担う二体の深海魚達だった。
「誰にも、何も奪わせない。――キミの相手をしてる暇は無いよ」
 そう宣言すると同時に地を蹴った星太が両手に携えた刃を閃かせて怪魚の片割れを斬り刻むと、僅かな隙を突いて骨の尾を翻したもう片方の魚が神流へ鋭い牙を突き立てた。
 神流は受けた痛みをものともせず、素早く引き金を引く。定めた狙いの先はコンクリートの地面。けれど、弾けた音と共に跳ね返った弾丸が、深い傷を負った死神を貫いた。
 ――満ちる空の輝き。降り注ぐ星の瞬きの歌。
 メロゥがひとかけらの言の葉を唇に乗せると、天上にさんざめく無数の星々の光が、屍隷兵の元に降り注ぐ。
「守るべき家族を手にかけてはいけないわ。あなたはそんなこと、望んでいないはずよ」
 声も、想いも、きっと届きはしない。わかってはいるけれど、メロゥは屍隷兵と化した『彼女』――智子へ、呼び掛けずにはいられなかった。
 重ねられた戒めに、屍隷兵は煩わしげに唸るだけ。
「……ごめんなさい」
 助ける術がない。助けられない。人々を守り、救うことがケルベロスの役目であるというのに、ただ一人の命を守れない、救えない――その現実は、メロゥの胸をひどく苛んだ。

 ――遠く聞こえる、パトカーのサイレンの音。
 前もって重臣が連絡を入れていた警察が、事故現場に到着したのだろう。
 そして、人知れず繰り広げられていた戦いも、佳境に差し掛かっていた。
 咆哮を上げながら突進してきた巨躯を下がり藤の鍔持つ刀で受け流し、景臣は射干玉の槍で屍隷兵を貫く。共に屍隷兵の抑えに当たるメロゥが時を凍らせる弾丸を放つものの、それはゆらりと宙を泳ぐ魚の片割れに吸い込まれた。
 重臣が豪快にぶん投げたエクスカリバールを追いかけるように、八雲が駆けていく。口に咥えた神器の剣が腐りかけた魚を斬り裂くと、その衝撃に跳ねた魚を、エルスが放ったドラゴンの幻影が焼き捨てた。
 まずは一体。踊る炎が消えた後には塵一つ残らず、ケルベロス達はすぐにもう片方の魚へと意識を切り替える。
「大丈夫。しっかり」
 公明がマインドリングから具現化させた光の盾が景臣に癒しと守りを授け、ハコさんが鋭い牙でがぶりと死神に喰らいつく。
 獣化した手足に重力を集中させ、素早く地を蹴ったいづなが見舞うのは、高速かつ重量のある一撃。そこにつづらが撒き散らした偽物の黄金が、死神の目を惑わせる。
 夜の闇の中弾けた幾つもの火花は、神流が構えたガトリングガンから放たれたもの。半ば蜂の巣のような状態になった死神との距離を一気に詰めた星太が舞うような動作で両の刃を閃かせれば、バラバラに解体された死神が崩れ落ちて消えていく。
 ただ一人残された屍隷兵が、その時、微かな呻き声を漏らした。
「……サ……、……き……」
 命を、心を、存在そのものを歪められながらも、屍隷兵と化した彼女は、ただ一人の――愛しい娘の名を紡ぐ。
 メロゥが堪えるように眉を寄せる傍らで、エルスが静かに手を掲げた。
「助けるよ、貴女も、貴女の娘さんも」
 それが自分達に出来る、精一杯のこと。例え届かなくとも伝えたかった想いを口にして、エルスはさらに力ある言葉を声に乗せる。
「紅蓮の天魔よ、我に逆らう愚者に滅びを与えたまえ!」
 エルスの言葉に誘われ、世界の隙間に渦巻く虚無の力が悪魔のような黒い炎となって現れる。猛烈な爆発の中に呑み込まれていく屍隷兵へ、メロゥが伸ばした指先は――ほんの少しだけ、震えていた。
(「こうすることでしか、守れないなんて」)
 これが最善の手だとわかっていても、灯る想いに胸が痛む。それでも一度結んだ唇をそっと開き、メロゥは古の言葉を紡いだ。
 指先から放たれた光線が、屍隷兵の身体を石と変える。突如として重くなった腕を力任せに振るいながら、屍隷兵は雄叫びを上げた。
 それは怒りか、嘆きか。それとも、そのような感情すら失われてしまったのか。足が竦み上がるようなその咆哮を、力強く地を踏み締めることで耐えながら、重臣は一息に屍隷兵との距離を詰めた。
「儂の本気を見せてしんぜよう」
 ふ、と吐き出す息ひとつ。渾身の力を込めて繰り出された拳が、空を裂くように唸り屍隷兵へと叩き込まれる。
 ――すると。
「鉄の雨に打たれたことはあるか?」
「これ以上、キミたちにあげる命は一つとしてないよ」
 神流の声と共に、戦場に予め仕掛けられていた幾つもの重火器が照準を合わせ一斉に火を吹き、星太が練り上げた螺旋のエネルギー体を一斉に解き放った。
 屍隷兵に降り注ぐ、まるで雷雨のような強烈な鉄の雨と螺旋の楔。視界が晴れた頃には、その場に蹲り、既にまともに動く力を失くした屍隷兵の姿が残るのみ。
「……いづなさん」
「はい、かげさま」
 景臣が静かに名を呼ぶと、いづなはしっかりと頷いてみせた。
 ――いざや共に参らむ、昼ひなかの天座す霜と呼ばれしや、清き宮の護り部よ。月の姫、月の彦、しろがねの爪牙打ち鳴らせ!
 澄んだ声で紡がれた祝詞に高らかな拍手がふたつ、響くと同時に現れたのは、雌雄二頭の幼い狼。子狼達は銀色の風となって屍隷兵を切り裂き、そして――。
「おたんじょうび、おめでとう、『おかあさん』――、……おやすみなさいませ」
 そうして崩れゆく屍隷兵へ、公明が咄嗟に手を伸ばし、触れる。
(「後のことはご心配なく。……何か、おくる想いはありますか」)
「……、――」
 公明が心を通じて伝えた言葉が、届いたかどうかはわからない。
 けれど、屍隷兵は小さく口の辺りを動かして――そうして、静かに消えていった。

 ――家で一人、母の帰りを待つ咲希の耳に、呼び鈴の音が届く。
「……お母さん?」
 鍵を忘れてしまったのだろうかと首を傾げつつ、玄関に向かう少女。
 その、扉の向こうには――。

 戦いの後、警察によって大体の捜査が終わった事後現場に、ケルベロス達は咲希を伴って訪れた。
 鞄や免許証などの遺留品は神流が見当をつけた戦闘の場ではなく、全て事故現場に残されていた。それにより、智子自身の亡骸がその場になくとも、重臣の通報によって駆けつけた警察には、智子がその場で事故に遭ったことは十分に伝わっていたようだった。
 そして、咲希には、智子は事故の後デウスエクスに襲われて命を落としたのだと伝えた。
 その亡骸はひどく損傷しており、とても見せられるような状態ではないのだと。
 もし現実を受け止められるようならばと、重臣が言葉を選びながら慎重に対話を重ねたことで、共に来ることを了承してくれた咲希であったが、いざ現実を前にすると、やはり平静を保つことが出来ずにいるようだった。
「……お母さん……」
 その場に力なく膝をついた咲希を支えるように寄り添いながら、メロゥは確かな決意と共に想いを口にする。
「あなたのお母さんを奪った人、必ず見つけると誓うわ。何でも力になるから、だからどうか、――生きてちょうだい」
「……っ、おかあさん……!」
 少しでも力になりたいと、その一心で告げたメロゥに、それまで懸命に堪えていた咲希が声を上げて泣き始めた。縋るように伸ばされ手を取り、メロゥは少女を抱き締める。落ち着くまでずっと、そうしているつもりで。
 お母さん、と繰り返しながら泣きじゃくる咲希を見つめ、エルスは思う。
 過去の記憶が薄いが故に、家族を想うということそのものには共感を覚えられないけれど。こんなに想い、想われることは、ほんの少しだけ羨ましい――と。
「必ず、エピリアを倒すから……」
 星太もまた智子の冥福を祈りながら、この事件の元凶たる死神を倒すという決意を新たにした。
「お母さんは、最期まで貴女のことを気にかけていたよ」
 最愛の娘への感謝と、この先の幸いを祈る気持ちを。嘘でも彼女の力になるのならと公明は告げて。
(「安らかに……智子殿」)
 静かに手を合わせた後、咲希が落ち着きを取り戻した頃に、微力ながら支えになれればと重臣は自らのケルベロスカードを託した。

「……お疲れ様です、いづなさん」
 穏やかに微笑みながらいづなの頭を優しく撫でて、景臣はいづなが手向けた花の傍に百合の花を一輪添えた。
(「女手一つで子を育てるのは大変な事。大事な子を遺し、逝くのは悲しい事でしょう。……悔しい事でしょう」)
 最期に娘に逢えなかったことを、恨んでくれて構わない――そう心に思いながら、景臣は智子の魂の安寧を祈る。
「――どうか、安らかに」
 手を合わせる景臣の隣で、いづなも静かに手を合わせながら、僅かに震える声で告げた。
「ごしんぱいは、むようです。きっと、つよく生きてゆけますから」
 頬を伝うのは、普段は見せぬ一筋の涙。きっと最期まで、母は母として娘を気遣い、決して一人にはしたくないと、願っていたはずだ。
(「ねえ、そうでございましょう?」)
 そうしていづなが思い起こすのは、遠くて近い、過去。
 幾つかの船の残骸と共に、壊れかけたつづらに乗って海を流れてきた子犬――だった自分。
 今の家に拾われ、大切にしてくれる家族や仲間と出逢い、こうして生きている自分。
 実の両親の安否はわからない。けれど、幼いながらにその結末を悟ることは、決して難しいことではなかった。
 己に出来ることは、ただ一つ。元気で、そして笑顔でいることだと己に命じ、いづなは袖の内で拳を握り、笑ってみせた。

作者:小鳥遊彩羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年9月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 7/キャラが大事にされていた 1
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