婆ちゃんの雛人形

作者:沙羅衝

「えっと……確かこの辺りに……」
 ここは神戸市灘区、六甲山のふもとにある住宅街。近くにはケーブルカーの駅があり、標高は高い。見晴らしは良く、夜には神戸の夜景が常に一望できる。
「あったあった」
 斉藤・耕輔は、押入れの奥のほうからダンボールの箱を見つける。彼はそのまま一階の客間に入り、その箱をテーブルに下ろした。
「良かった。綺麗な状態やわ。確か、婆ちゃんが作ってくれたって、おかんが言ってたっけ……」
 耕輔がダンボールから取り出したのは、30cm四方のガラスケースに入れられた、一対の雛人形であった。大きさはそれぞれ手の平に乗る程度だが、丁寧に作られた作品であった。男雛には笏、女雛には桧扇が握られている。どうやら、全ての装飾品も手作りの様であった。
 ガシャン!!
 しかし、突如としてそのガラスケースは破壊され、衝撃で飛び出した雛人形も、空中で切り刻まれる。
「な!?」
 突然の事に驚く耕輔。
「大切な物のようだねえ」
「どんな気持ちダイ?」
 現れたのは第八の魔女・ディオメデスと第九の魔女・ヒッポリュテ。
「な、何て事を……。これは今度産まれる娘の為に、おかんから譲ってもらった大事な物……。死んだ婆ちゃんの手作りで、二度と手に入らない作品なんや……。お前ら、どないしてくれんねん!」
 耕輔は立ち上がり、二人の魔女に怒りの表情をぶつける。
 どうっ!
 すると、二人の魔女が同時に、耕輔の胸に鍵を打ち込んだ。ゆっくりと倒れる耕輔を見る二人の魔女。
「私達のモザイクは晴れなかったねえ。けれどあなたの怒りと、」
「オマエの悲しみ、悪くナカッタ!」
 彼女達はそう言うと、倒れた耕輔のそばから、ドリームイーターとなった雛人形が出現したのだった。

「さあてと。みんな、仕事やで」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084)が、ケルベロス達に説明を始めていた。
「パッチワークの魔女は、知ってるわな。そいつらがまた動き出したみたいや。
 今回動いたんは、怒りの心を奪う第八の魔女・ディオメデスと、悲しみの心を奪う第九の魔女・ヒッポリュテ。こいつらは、とても大切な物を持つ一般人を襲って、破壊。それによって生じた『怒り』と『悲しみ』の心を奪って、ドリームイーターを生み出すみたいや。
 生み出されたドリームイーターは、二体揃って連携して動いてな、周りの人間を襲っていくタイプみたいや。『悲しみ』のほうが、壊された悲しみを語って、それが理解されへんかったら、『怒り』のほうが殺害する。そんな連携らしいわ。
 二人の魔女はここにはもうおらへん。せやから、この二体の生み出されたドリームイーターを被害が出る前に倒して欲しいっちゅうことや」
 絹の説明を聞き、詳細を尋ねるケルベロス達。絹は頷き、口を開く。
「今回の敵はこの二体のみ。それ以外はおらへんで。んで、この二体は喋れるっちゃあ喋れる。でもまあ、自分の怒りとか悲しみを一方的に語るだけや。会話としては成立せえへんやろな。
 壊されてドリームイーターとして出てきたのは、雛人形。どうやら男雛が『悲しみ』、女雛が『怒り』の担当となったみたいや。男のほうが悲しんで、女のほうが怒ってるわけやな。隊列は男雛が後列で回復メイン、女雛は前衛で攻撃メインや。それぞれ手に持った笏と桧扇で殴ってくるから、気をつけてや」
 絹は、こんなもんかなと言いながら、操作しているタブレット端末をもう一度確認し、ケルベロス達に向きなおす。
「情報によると、今回の被害者の斉藤・耕輔さんは近々娘さんが産まれるらしい。そんで、実家にしまってあったお母ちゃんから譲り受けた雛人形を確認しに来た所を、襲われたみたいや。しかも、その雛人形は彼のお婆ちゃんの手作りやったそうや。
 親から子、孫に受け継がれる手作りの作品や。悲しいし、怒って当然や。そこから生み出されたモンが、暴れまわるなんて許されへん。みんな、頼んだで!」


参加者
源・那岐(疾風の舞姫・e01215)
神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)
黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871)
小車・ひさぎ(オトナモード・e05366)
アーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574)
伊佐・心遙(ポケットに入れた飛行機雲・e11765)
霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)
レオンハルト・ヴァレンシュタイン(ブロークンホーン・e35059)

■リプレイ

●昼下がりの公園にて
 秋の空気を纏った風が高台にある公園を吹き抜けていく。近くにはケーブルカーの駅があり、山の反対方向を向くと大阪湾が一望できた。柔らかな秋晴れの景色に、これが仕事でなければどんなに良いだろうとケルベロス達は思った。
 ケルベロス達は絹から指示のあった場所にたどり着いていた。そこには、何も知らない母親に連れられた子供達が元気良く走り回っていた。
「警察は、未だ到着していないようだな……」
 神崎・晟(熱烈峻厳・e02896)がその様子を見て、動き始めた。晟は既に警察や自衛隊に連絡を入れていたのだが、どうやらケルベロス達が到着するほうが早かったようだった。
「晟さん、あたしも手伝うよ。ほらほら皆! これからここは危険になるぜー。ちょっと離れとってなー」
 小車・ひさぎ(オトナモード・e05366)が親しみやすいイントネーションでそう言うと、子供達はその声に気がつく。
 すると警察車両がちょうど到着し始めた。
「ほら、警察のお兄さんたちが来たよ。避難してね」
 それを見た伊佐・心遙(ポケットに入れた飛行機雲・e11765)が子供達を誘導する。
「では、私達はこちら側を封鎖していきましょう」
 源・那岐(疾風の舞姫・e01215)がそう言って、キープアウトテープを警察が来た反対方向の入り口に張り巡らせていった。
 その時、物音に気がついた霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)が、視線を動かす。その先には二体の人影があった。しずしずと歩き、公園に近づいてくる。
「神崎さん、現れたようです」
 和希が晟にそう言いながら、一般人のほうを見る。子供たちは黒住・舞彩(鶏竜拳士・e04871)の鶏ファミリアに上手く誘導されていたが、完全に公園から退避できていた分けではなかった。
「分かった。では私が少し食い止める。霧山君は他の皆に連絡を頼む。あと……」
「任せるのじゃ。ゴロ太に、アキラ殿のラグナル殿も此方にいるしのう。それに、我とアーティ殿のラブラブ攻撃で一網打尽じゃ」
 晟の意図を汲み取ったレオンハルト・ヴァレンシュタイン(ブロークンホーン・e35059)がそう言って、アーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574)を手招きする。
「呼んだかの。……ああ、そういう事かぇ? おーおー。これは見事な雛人形じゃ」
 アーティラリィはその様子を確認し、どうするかを察した後、敵をひきつけるべくバトルオーラ『神闘気』を纏っていった。

 そのグラビティの集中に気がついたのか、二体の雛人形の姿をしたドリームイーターが公園に入り込み、ケルベロス達に近寄ってきた。
「よよ……。よよよよ……」
 一人前に出る男雛。顔を伏せ、体を震わせていた。
「聞いてはくれぬか……」
「まあ、聞いてやらん事も無いのぅ」
 まずは同調。今子供達の方に行かせるわけにはいかない。先頭のアーティラリィがその問いに返す。
「私は、悲しい……。大切な……モノだったのに……よよよ……」
「そう……だな。悲しいな。次期族長である私は、お婆様から受け継がれた雛人形、どんなに貴重で、大切なものか良く、分かる」
 キープアウトテープを張り終えた那岐が、殺気を放ちながら答えた。すると、那岐にうんうんと頷き、今度は誘導を終えて駆け寄ってきたひさぎに問いかける。
「そなたにも……聞いて欲しい……。私は、悲しい……」
 するとひさぎは、突然顔を手で覆い、しゃがみこみながら言葉を発する。
「そうだよな。……ぐすっ。死んじゃった人の手作り品なんて、もうそれしかない。……大事な、大事な宝物なのに!」
「よよ……よよよよよ……」
 そこには泣き崩れる二つの影。女雛はその様子を見ながら、動かない。
 その様子を見た那岐がゾディアックソード『貫く赫灼のアンタレス』で地面に星座を描く。蠍座の尾の部分まで描ききると、光り輝きながら、前を行く者達に絡みついた。
「竜王の不撓不屈の戦い、括目して見よ!」
 そして、レオンハルトが持っていた扇子をパチンと鳴らし、オウガメタル『紅隈』の力で、動かない女雛を殴りつけた。

●怒りの女雛
『「身」頭滅却すれば、火もまた涼し。燃えるものが残らねば、熱さなど感じないだろう?』
 晟が口から蒼い炎を吹き出し、ラグナルがボクスブレスで追撃する。その炎は女雛を捉え、服を少し燃やしていく。
「よよ……よよよよ……」
 それを見た男雛が、鳴きながら笏を振る。だが、何も起こらない。レオンハルトはその様子を見て、オルトロスのゴロ太を持ちながら言う。
「支援役としてはぬかったようじゃな! お主の癒しは彼女には届かぬゆえに」
 男雛のその力は、後ろに下がっていては女雛に届かないのだ。絹の情報を聞き、いち早くそれを見抜いたケルベロス達は、まずは支援の届かない女雛から狙うという作戦を立てたのだった。
「ゴロ太スラッシュ!」
 ゴロ太の牙が、女雛の服を切り裂くと、女雛は更に怒りの眼をケルベロスに向ける。
「おのれ……許さん! 許さんぞおおお!!」
 怒り狂う女雛。手に持った桧扇で、目の前のアーティラリィの頭目掛けて振りかぶる。
「大切な物を壊して、それを利用して~って、魔女とやらも随分マッチポンプなんじゃなぁ……」
 しかし彼女はそれを難なく避け、すれ違い様に炎を更に与える。
「お待たせ。もう大丈夫よ。……霧山、有難う」
 そこへ、避難誘導を終えた舞彩が戻ってきた。共に戻ってきていた和希が同時にオウガ粒子を放ち、舞彩と自らを覆っていく。
「大切なものを壊されたら、悲しいし怒るに決まってるじゃない!」
 最期に合流した心遙はそう言うと、ぴょこぴょこと跳ねながら色とりどりのドロップスを出現させる。
『あまーい爆弾はいかが?3、2、1…ゼロっ!』
 バリィン!
 そのドロップスは突如破裂し、女雛に降り注ぐ。
「うあああああ! 許さんぞおおおおお!」
 その攻撃に錯乱したのか、女雛は更にわめきながら、桧扇を振り回していく。
「あなたは少し、落ち着きましょうか」
 舞彩がバスターライフル『リストライフル』を素早く引き抜き、凍結光線を射出する。
 ドッ!
 その凍結光線は、既につけられた炎の隙間を縫うように、氷を幾重にも発生させた。
 そして、大山猫の耳を後ろに折りたたみながら、ひさぎが駆ける。
「わこ! 行くぜー!!」
 オウガメタルの名を呼び、ひさぎがその者が創った拳を固め、女雛の頬を殴り飛ばした。すると、女雛はその勢いのまま吹き飛び、地面に叩きつけられた。
「お、おの……れ」
 すると女雛は、怒りの言葉を吐きながら、そのまま消滅していったのだった。

●悲しみの男雛
「受け継ぐこと、それは有難さと重み」
 那岐がゆっくりとした独特の調子で舞う。
『舞え、菖蒲の花、戦友達に力の加護を・・・』
 そのリズムと共に踏み出した一歩から菖蒲の花が舞う。その花は前を行く者に、力を授ける。
「よよ……。よよよよよよ……」
 倒れた女雛を見て、男雛が顔に笏を寄せ、そこに自らの涙を伝わせる。そして、アーティラリィに打ち放った。
 バシィ!
 だが、構えを取ったアーティラリィは衝撃を感じることは無かった。
「レオン殿!」
 薄っすらと目を開けると、目の前にレオンハルトが立っていた。
「お嬢さん、怪我はないかの?」
 アーティラリィのほうを向かず、男雛を見据えるレオンハルトだが、直ぐに膝を付いた。そして何かに逆らうように頭を振る。
「いかん。催眠か! ヴァレンシュタイン殿!」
 ラグナルにタックルを指示し、自らはバトルオーラの蒼い闘氣をレオンハルトに放つ晟。催眠の怖さは知っている。直ぐに解除にかかった。
「おお……アキラ殿。ヘルプ、恩に着るのじゃ。……よし、もう大丈夫じゃ」
 落ち着いた様子で、ゴロ太を見てレオンハルトは頷いた。
「無茶しおって……」
 レオンハルトの様子に安心したアーティラリィは、男雛に向かって拳を握り締めてオーラを纏い、そのままぶちかました。
「よよよよお……!」
 鳴きながらうずくまる男雛。
「あなたはもっと、明るくなりましょう? なんてね」
 舞彩が地獄化した左腕の竜爪を突き刺す。
『爆ぜてくれる?』
 ドォン!!
 派手に爆発した男雛、その爆発と同時に飛び込んだ心遙とひさぎが、飛び蹴りを放つ。そして和希が『レイヴンエッジ』で付けた傷を深いものにしていった。

●失ったものと得たもの
「よ……。よよ、……よ」
 ふらりと立ち上がる男雛。だが、もう既にケルベロス達の攻撃を避ける脚を持っていなかった。
「『悲しみ』なんて、デウスエクスは元々持ち合わせてないような気もするんだけど……」
 ひさぎは男雛の様子を見てふと疑問が浮かぶ。だが、彼を野放しにする必要もない。彼女はその疑問を心に仕舞いこみ、半透明の御業に命ずる。
「八手! 押さえ込め!!」
 その御業は男雛のズタボロの身体を締め付ける。
「さ、出番よ。いけるわね?」
 舞彩はファミリアのメイを、ウェポンエンジン『スーパーメイコッコカー』に乗車させ、一気に射出する。
 スバァ!!
 メイの乗るウェポンエンジンが、男雛の服をこれでもかといわんばかりに切り裂いた。
「よ……」
 だが、悲しみつつも、何とか笏を持ち上げる男雛。
『――動くな。壊せないだろうが』
 和希が蒼い魔法剣を産み出していく。狂気を放つその武器達は、男雛に向かい殺到する。剣は男雛の肩口に突き刺さっていき、そこから呪詛を注ぎ込んだ。
「同じものは二度とは作れん。作った当人がいないのであればなおさらな」
 晟はそう言って、チェーンソー剣『蒼竜之鎖刃【灘】』を少し乱暴な仕草で作動させた。
「ドリームイーターに、文句を言っても無駄だろうがな……」
 晟は静かに、そして振り下ろす。
 那岐がフェアリーブーツ『天鳳「銀」』に、蠍の心臓を表す紅い星を宿らせ、打ち放つ。
「心遙嬢、んしょえーいじゃ!」
 レオンハルトが心遙に言うと、頷いた彼女は妖精弓で素早く男雛の心臓を打ち抜いた。
「よよ……よ?」
「お返しというヤツじゃの? さて、アーティ殿、ラブラブ戦術拳でゆくのじゃあ!」
 レオンハルトはそう言って、『紅隈』に力を集中させながら一気に間合いを詰めていく。
「ら、ラブラブ……とな? まぁ、合わせてゆくぞぃ!」
 少し戸惑いながらも、アーティラリィが頭上のヒマワリに最大限の光を集めていく。
『余を恐れぬのなら、近くば寄って目にも見よ!』
 その光は、強烈な閃光を男雛に打ち付けた。
 ドッ!!
 そして鈍い音が、男雛の腹から響き渡った。レオンハルトの拳が、男雛の背中へと貫通したのだ。
「思い出の品を壊して生まれた感情をもてあそぶ。……趣味の悪い話じゃな」
「よ……」
 ドサ……。
 崩れ落ちた男雛は、悲しみの表情を浮かべ、消滅していった。

「デウスエクス……ですか」
 ケルベロス達は、ドリームイーターを倒した後、被害者である耕輔の家に立ち寄っていた。
 壊れた家や家具をヒールするという目的と、その思い出の品の事を、どうしてもフォローしたかったからだ。
「家は……直しておきました。ただ……」
 那岐は最後に残った、壊された雛人形の破片を丁寧に拾い集め、そのテーブルに並べていった。
「私達のヒールの力では、あのようになってしまう。直る事は、直るがな……」
 晟はそう言って、ヒールで直した壁を見る。その壁からは、おおよそ現代建築では表現できない曲線と、物理法則を完全に無視した装飾が施されていた。
「流石に雛人形をこんな風にするわけにも……ね。どうする?」
 舞彩の言葉に、少し考え込む耕輔。
「そう……ですね。これを修理しても完全に元に戻るという事はありませんし。本来なら私というより、産まれた娘への贈り物と思いましてね。ただ、思い出は、むしろ母にあるのです。私は、男ですから」
 そう言って耕輔は、切り刻まれた雛人形に触れた。その時ひさぎが、部屋の隅に落ちてあった雛人形の女雛が持っていたであろう桧扇を見つけた。
「このお雛様、すっごく丁寧に作られてるよ、見て」
 ひさぎはその桧扇をテーブルに置く。
「ええ、祖母は器用な人でしたから……。和裁はもちろん。洋裁もこなしたんですよ」
 耕輔は少し祖母の事を思い出しているのか、壊れた人形を見ながら、何も喋らなかった。懐かしさと喪失感が、一度に押し寄せているのだろう。
「……直すのならと思って、業者を調べておいたぜ。その辺りを扱っている業者は大阪に多いから……」
 ひさぎはそう言って、リストを取り出した。
「有難う御座います……」
 そのリストを見ながらも、耕輔はまだ悩んでいるようだ。
「こうすけさんの、納得できる形が、一番いいよ」
 心遙はそう言うが、決して簡単ではないだろう。
「何か僕達で手伝えることは、ないだろうか?」
 和希はそう言いつつも、大切なものを奪うことで事件を引き起こした魔女達に対し、強い嫌悪感が浮かぶ。
(「……全く、嫌なことをしてくれる」)
「我はケルベロス、デウスエクスを壊す者。償わせる術もなければ、それを元の状態に修復する術もない、なんともしがたいが……」
 レオンハルトの言葉は、ここに居るケルベロス達の言葉でもあった。
「お心遣い、感謝します。少し、祖母や母の事を考えていました。まだ上手くまとまりませんが、兎に角このままというのも、人形が可哀想です。何処まで修理できるか、まず聞いてみたほうが良いかなと。リストもいただきましたし。動かないと、何も変わりませんから……」
 耕輔はそう言って前を向いた。
「そうか、それじゃあ余も一緒に人形屋に行こうかの」
「え? そんな。そこまでしていただくわけには……」
「良いのじゃ。……そうじゃのう。このままでは余達の心もスッキリせんしの。そう思うてくれ」
 そう言ってにこりと笑うアーティラリィ。
「……有難う、御座います。では、お願いします」

 こうして、ケルベロス達は一つの事件を解決していった。
 新たなる魔女。それは人の心の大切な所をえぐってくる。
 単純な武力だけで太刀打ちできるのか?
 耕輔の実家から出たケルベロス達は、日が落ちようとしている景色を見て、そう思った。
 ただ、こうも思った。
 次のひな祭りを、この一家が、日本中が、笑顔で迎えられますように、と。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年9月17日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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