●悲しみと怒りより生まれた夢喰い
コレクションというものは、人によって様々なものが対象となる。
よくあるのは、ぬいぐるみ、切手、メダル、模型……などなど。
そんな中で、女子高生、森山・美奈は密かに幅広くキーホルダー集めをしている。ご当地ものから、マスコット的なものまで幅広い。
「今日も新しく買って来たよ」
帰宅した彼女が新しく買って来たのはもこもこした毛玉のようなものと、工具の形のもの。可愛らしいものから、地味に実用性があるものまで、幅広い種類がキーホルダーの醍醐味と森山はにこやかに笑う。
お気に入りのキーホルダーを手に取り、眺めるのが楽しい時間。
守山がそれらを見つめていると……。突然部屋の中に2人の人影が現われた。
1人は赤い帽子の人馬。そして、1人は骨とマントのみを纏う露出度の高い女性。いずれも胸元にモザイクが見える。前者は第八の魔女・ディオメデス、後者は第九の魔女・ヒッポリュテと呼ばれる、「パッチワークの魔女」達だ。
そいつらは森山がキーホルダーを大切にしているところを見て、あろうことか、キーホルダーの身を纏めて破壊し始めた。
「あっ、ああっ……」
これまで集めてきたキーホルダーが切り裂かれ、粉々に。思いもしない状況に、森山が嘆き悲しむ。そして、それはすぐに怒りに変わって。
「何をするのよ、やめて!」
しかし、魔女達はニヤリと微笑み、手にする鍵でそれぞれ森山の心臓を貫く。この行為は魔女……ドリームイーターが人間の夢を得るための行為。
森山は目から光を失い、倒れていく。その身体には外傷は全くない。
「私達のモザイクは晴れなかったねえ。けれど、あなたの怒りと……」
「オマエの悲しみ、悪くナカッタ!」
2体の魔女がそう言うと、現われたのは巨大化したキーホルダーのようなドリームイーターが2体。1体は金属でできた何か、もう1体は何かが描かれたプレート型。いずれも、モザイクに覆われて何かはわからない。
それらはふわりと宙を浮き、外へと飛び出していくのだった。
ヘリポートへとやってきたケルベロス達。
なんでも、パッチワークの魔女がまた動き出したという情報を耳にしていたのだ。
「面倒な相手が活動を始めたね……」
リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が首を振る。また、一般人が犠牲となってしまう為、いち早く対処せねばならない。
今回動いたのは、怒りの心を奪う第八の魔女・ディオメデスと、悲しみの心を奪う第九の魔女・ヒッポリュテの2体だ。
この2体の魔女は、とても大切な物を持つ一般人を襲い、その大切な物を破壊し、それによって生じた『怒り』と『悲しみ』の心を奪って、ドリームイーターを生み出すようだ。
「生み出されたドリームイーターは2体1組で行動し、周囲の人間を襲ってグラビティ・チェインを得ようとするようだよ」
今回の場合、プレート型、悲しみのドリームイーターが『物品を壊された悲しみ』を語り、その悲しみを理解できなければ、金属型が『怒り』でもって殺害するらしい。
戦闘では、怒りのドリームイーターが前衛、悲しみのドリームイーターが後衛で連携して戦闘を行うようだ。
「2体のドリームイーターが周囲の人間を襲って被害を出す前に、このドリームイーターを撃破して欲しいんだ」
現われたドリームイーターは2体のみ。配下などはいない。
言葉を喋るが、それぞれ自身の悲しみを語ること、怒りを表現すること以外はできないようだ。
この夢喰いはキーホルダーであることを活かした攻撃を行う。伸ばした鎖による縛り付け、プレート部、金属部での叩きつけ、相手の武器にキーリングを絡めた攻撃阻害の3種だ。
「現場は、栃木県某所の住宅地で起こるようだね」
夕方、被害者宅周辺を夢喰いは浮遊して移動する。見つけた者へと悲しみと怒りをぶつけて殺害しようとする為、出来る限り早く阻止したい。
説明を終えた彼女は視線を手元に落とす。そこには、ナノナノのキーホルダーが握られていて。
「大切な物を目の前で破壊されるなんて……、言いようのない感情を覚えてしまうね」
被害者は自宅の自室にて倒れたままだ。ドリームイーターを倒した後で目覚めるはずなので、出来ればフォローをしてあげて欲しい。
「それでは行こう。ドリームイーターの討伐を。よろしく頼んだよ」
参加者 | |
---|---|
篁・悠(暁光の騎士・e00141) |
ギルボーク・ジユーシア(十ー聖天使姫守護騎士ー十・e00474) |
ビーツー・タイト(火を灯す黒瑪瑙・e04339) |
風魔・遊鬼(風鎖・e08021) |
トープ・ナイトウォーカー(影操る戦乙女・e24652) |
峰雪・六花(ホワイトアウト・e33170) |
愛澤・心恋(夢幻の煌き・e34053) |
真田・結城(白狼・e36342) |
●大事な物を砕く夢喰いに……
現場を目指し、空を行くヘリオン内部。
「……酷い話だ」
銀色に一房だけ赤い髪が交じったウェアライダー、篁・悠(暁光の騎士・e00141)は、素っ気無く感情を吐露する。
「人の感情を狙う魔女たち……怒りと悲しみとは、他のとは自らそれを作り出しているという点で違いますね」
礼儀正しい人派ドラゴニアンのギルボーク・ジユーシア(十ー聖天使姫守護騎士ー十・e00474)もまた、これまで以上に許しがたい相手だと拳を震わせる。
(「もし、ヒメちゃんからの贈り物がそんな目にあったら」)
それが破壊されようものなら、ギルボークも被害者と同じ感情を抱くだろうと考える。
「しかし、形あるものいつかは壊れる……。大事にするという事は物も、思いも守る事なのでしょうね」
「大事なもの、壊されちゃったら……。怒りたくもなりますし、悲しくも……なります」
そんな彼の言葉に、長い黒髪に一人静の花を咲かせたオラトリオの峰雪・六花(ホワイトアウト・e33170)はゆっくりとした口調で喋り出す。
「知りたいからといって、人にそんなことをさせるなんて……。ひどい、ですね」
自身の想いを語る六花は、少しずつ表情を陰らせて。
「大切な物を破壊されたら、それは悲しい事ですね……」
書物に視線を落としたままの文学少女、愛澤・心恋(夢幻の煌き・e34053)も仲間達の意見に同意する。
「ドリームイーター、ひいては魔女は酷い事をするものです」
「人の大事なものを、破壊するなんて許されるわけがない!」
そこで、黒に統一された衣装を纏う狼のウェアライダー、真田・結城(白狼・e36342)が声を大にする。
「物を集めるというのは楽しいものだよな。きっと、美奈殿にもこだわりの品などがあるのだろう」
犠牲者である森山・美奈は、集めていたキーホルダーを台無しにされたという。勝色……暗い藍色の鱗を持つ竜派ドラゴニアン、ビーツー・タイト(火を灯す黒瑪瑙・e04339)が被害者の少女の心境を慮る。
「ましてや、壊されたときの感情を利用するなんて、万死に値する」
結構キーホルダーが好きだと主張する結城も、その気持ちに理解を示す。普段は怒らぬ彼だが、この状況には怒りを露わにしていた。
「……実に胸糞の悪い連中だ」
軍服姿なのも手伝って、やや堅物な雰囲気を持つトープ・ナイトウォーカー(影操る戦乙女・e24652)。早いところ、本体の居所を突き止めたいと彼女は苛立ちを見せるが、まずは……。
「……思いを壊した代償は、高くなければな」
現場に到着したらしく、ビーツーはゆっくりと立ち上がる。
それに続き、他のメンバー達もまた降下の準備を整えるのだった。
●悲しみと怒りと
夕方、栃木県某所の住宅地に降り立ったケルベロス達。
元凶となる敵への怒りを秘めたまま、彼らは被害者の少女の感情より生み出されたドリームイーターの姿を探す。
一行は有翼種族とそれ以外の2班に分かれ、それぞれ捜索に移る。
被害者宅周辺を歩く地上班。
すでに仲間と連絡先を交換していた心恋は、すぐ携帯を使えるようにと構えながらも探索を続ける。
結城もまた、周囲に注意しながら歩く。壊れたキーホルダーなどが落ちていないかなども、彼は気に掛けていたようだ。悠はそんな仲間から孤立しないよう索敵を行う。
全身黒ずくめの螺旋忍者、風魔・遊鬼(風鎖・e08021)は飛行する仲間との連絡係を担う。現状、まだ双方に発見の知らせはない。
一方、飛行班。
六花は念の為にと交換していた携帯を手にして、鶴を思わせる翼を羽ばたかせる。
「誰かを襲う前に見つけたいところですが」
ギルボークもあちらこちらに視線を走らせている。ビーツーもまた地上班からの連絡を気に掛けつつも、住宅街を見下ろす。
その近くで、光の翼を広げていたトープが何かを発見した。
宙をわずかに浮かんで進むのは、プレート型、金属型、2体の巨大なキーホルダーだ。
「敵、確認しました」
遊鬼は直接携帯で伝える他、予め決めていたブロックサインで敵出現、そして距離と方角を示す。
じゃらり、じゃらり……。
キーチェーンを揺らす2つのモザイクは身体を回転させるようにして、周囲に人がいないかと見回している。
人々が帰宅する時間帯だ。そいつらは目ざとく、帰宅中の学生を見つけて……。
「壊されて、悲しい……」
プレート型が呟く声は、被害者の慟哭。パッチワークの魔女によって集めていたキーホルダーを破壊されてしまった悲しみ。
学生達がそれに戸惑っている間に、金属型が怒気をはらんだ声を上げる。
「これ以上、壊さないで!」
怒気をはらむ声で叫ぶ金属型。そいつらはだらりと下げていたキーチェーンを伸ばし、相手を絡め取ろうとしてくる。
「待ていッ!」
響く声と同時に何かが一閃する。この場に飛びこんだギルボークが手にした刀で叩き落としたのだ。
一方で、声の主である悠はアルティメットモードとなる。
学生達はそれに励まされつつも、合流してきたトープに促されて避難誘導していく。
「悲しい、悲しいよ……」
「……そうか」
「壊されるのはとっても悲しいこと……ですが」
後方に位置するビーツーは表向きプレート型の声に賛同を示すが、前に出てきた六花は首を横に振る。
「今回、六花は守らなきゃいけない、ので……その悲しみには、賛同しません」
彼女は仲間の前で身構え、夢喰いに言い放つ。
「……あなたたちが、奪ったものでしょう?」
しかしながら、夢喰いはそれに対する反応を見せず、悲しみと怒りの声を繰り返すだけ。
「かような理不尽、許されるモノではない……心を弄ぶ愚かな行い、人それを『玩弄』と言う!」
凛然と神雷剣を構えた悠は、仲間と共に夢喰いへと応戦を開始するのだった。
●キーホルダーの夢喰い
「悲しい……」
「もう、怒ったんだから!」
キーホルダー型のドリームイーター達はそれぞれの感情の言葉を繰り返し、キーチェーンを伸ばしてくる。
「ピスケスよ、輝け! 勇者の戦いに勝利を!」
先んじて悠は地面に双魚宮の紋章を浮かび上がらせ、仲間を光で包みこむ。
そこに伸びてきた、2つのキーチェーン。
1つは心恋の体を縛りつけ、もう1つはテレビウム、メロディの持つ凶器に絡みつく。
「強くないかもしれませんが、護る事なら……わたしにだって」
身体を縛られた心恋は自分達の背後にカラフルな爆発を起こし、自身と味方の士気を高める。
そこで、ビーツーがアイコンタクトでボクスドラゴンを見つめると、その白橙色の炎を纏うボクスは火山の属性を傷つく仲間へと注入していく。
ビーツーもまた守護星座を描いて回復を行うと同時に、仲間の耐性を高めて支援していた。
そうして、仲間の支援と敵を抑えを行うメンバーの横から、攻め行くメンバーの姿もある。
バスターライフルを構えたトープが金属型を狙い、凍結光線を発射する。
所々に凍りつかせたその敵へ、ギルボークも攻め込む。
「手早く数を減らしませんとね」
相手は2体。まずは金属型を倒すべく、彼は雷の霊力を纏わせた斬霊刀を鋭く突き出す。
「…………」
続けて、後方からドラゴニックハンマーを砲撃形態とした遊鬼が無言で砲弾を放つ。
遊鬼の一撃によってわずかに怯む金属型へ、眉を顰める結城が手にする模造刀で緩やかな斬撃を見舞い、敵の態勢を崩そうとした。
前線に立つ六花もそれに合わせ、氷騎の白弓から発した矢で敵の構造的な弱点……キーチェーンと本体の繋ぎ目を破壊すべく射抜いていく。
「なんで、こんなことするの……」
「いや、いやああっ!!」
それでも、ドリームイーター達は悲しみと怒りの言葉を繰り返しながら、突撃態勢を取り始める。
「皆様を庇ってあげてください」
六花が呼びかけると、テレビウムのスノーノイズが身を張り、画面から閃光を放つ。
それに気を取られたのか、夢喰いは金属、プレートの本体部分の殴打の矛先をスノーノイズに定めていたようだ。
攻撃直後のタイミングを見た悠は、ファミリアロッド「過ぎ去りし時の欠片」を使い魔の姿として。
「ジャスティーン、GO!!」
「きゅきゅーッ!」
額にVマークがついたモルモットのような使い魔は一声鳴き、金属型の夢喰い目掛けて飛びかかった。
「許さない……!」
怒りの声を上げる敵はさらに、ケルベロスへとキーチェーンを振り上げてきたのである。
2体のドリームイーターは、攻めの姿勢で襲い掛かってくる。
攻撃と狙撃、波状攻撃のように突撃とキーチェーンの攻撃を繰り返すが、連携は取れていないようにも見えた。
それを抑えるテレビウムのメロディ、スノーノイズをメインに、心恋もまたチェーンに絡まれて。
「回復の役目は、任せてください……!」
彼女は自身や仲間の為にと、息を吸ってから歌い始める。
「貴方だけに捧げる詩……身も心も、私の歌で癒します」
それは、想いを込めた歌。彼女の歌声は傷つくメンバーの傷を癒していく。
ビーツーはボクスに回復専念で立ち回らせながらも、彼もまた仲間に癒しをもたらすべくオウガ粒子を振り撒く。それは仲間を回復するだけでなく、感覚を研ぎ澄ましていく。
そうして、援護を受けた前線メンバーは攻めの姿勢を崩さず、金属型へとグラビティを繰り出す。
「霊子よ、我が手に集え。彼の者を切り裂く刃となれ」
圧縮した霊子によってトープは仄かに光る非実体の剣を生成し、金属型目掛けて刃を振り下ろす。
刃はその身体を通過しただけのようにも見えたが、夢喰いは身悶えて苦しむ。
「ぜったい、ゆる、さ……」
怒りの言葉を繰り返していた金属型。その体がモザイクに包まれて消えてしまう。
「なんで、こんなことするの……?」
悲しみの言葉を繰り返すプレート型。オウムのように覚えた言葉を繰り返すそいつは六花に狙いを定め、彼女の手にする氷騎の白弓にキーリングを絡ませる。
六花はやや使いにくそうにしながらも、妖精の加護を宿した一矢でプレート型を射抜こうとしていた。
敵はあと1体。数で勝るケルベロスが攻勢を強め、徐々にドリームイーターを追い込むこととなる。
相手の護りが崩れたと見たギルボークは斬霊刀に空の霊力を纏わせ、刃を振り上げた。仲間が攻撃を繰り返すことで、キーチェーンやプレートに亀裂が入っており、彼の刃がそれを斬り広げていく。
それによってプレート型のキーチェーンが力なく垂れ始めると、「ユウ」と「ユウキ」達が動き出す。
敵の周辺を観察していた遊鬼が氷結の螺旋を夢喰いに向けて浴びせかければ、敵の行動阻害に動いていた結城が時に力を解放する。
「これが、本気の力です。……行きます。……狼牙斬・爪牙!」
模造刀に霊力を込め、結城は敵を斬りつけていく。その度に狼型の霊力が敵を襲う。
徐々に力を失っているのか、プレートのモザイクが大きくなった敵へ悠が仕掛ける。
「ジャスティーンよ! 勇気の雷鳴を呼べ! 天動雷激――ッ!!!」
呼びかけに応じた使い魔は雷をチャージし、物理法則を無視した動きで突撃していく。
「もきゅきゅーーーッ!!」
チャージした極大の雷撃を夢喰いへと浴びせかけると、夢喰いはじゃらりと音を立てて地面に落ちる。
「かな、し、い……」
そして、敵の体がが大きなモザイクに包まれ、何もなかったかのように消え去った。
「成敗ッ!!」
「きゅきゅッ!」
悠は得意げに、使い魔と共にポーズをとって見せたのだった。
●戻らぬ物、大切な想い
徐々に日が暮れ行く住宅地。
戦場跡となる場所で、ケルベロス達は修復作業に当たる。
ビーツーがゾディアックソードを操り、守護星座の力で破壊された道路を元に戻して行き、悠はエネルギー光球で細かい部分を調整する。
その間、遊鬼は戦闘中に引き続き、何か夢喰いが残した印が残されていないかと探していたが、これといった物は見つけられなかったようだ。
メンバー達はその後、自宅で倒れる女子高生、森山・美奈の様子を確認しに向かう。
「…………」
目覚めた彼女は改めて部屋の惨状を目の当たりにし、放心してしまっていた。
「コレクションとは、『また新しく集め直せばよい』というものでもないからな……。心情はお察しする」
トープが最初に、傷心の美奈へと声をかける。そばで、悠がホットドリンクを差し入れていた。
「大切な物は、取り戻してあげたいです……」
「できるなら、キーホルダーの補修を手伝わせて貰えないか?」
伏目勝ちの心恋が壊れたキーホルダーに視線を向けて呟くと、トープがそんな提案を行う。
どのみち戻らないからと考えた美奈が小さく頷くと、応じたトープが散らばるそのコレクションを集め始める。
一つ一つ直すには数が多いと判断し、心恋がすっと息を吸い込む。
「何もかも 騙してしまえ それが為人(ひととなり)の証明……」
心恋は歌声を響かせて、この場の修復作業を始める。悠も守護星座を描いて破壊されたキーホルダーを補修していた。
ビーツーは工具を用意し、比較的被害が軽微なものに物理的な修理を試みる。細やかな手先での補修に、彼は夢喰いとの戦い以上に苦戦していたようだ。
結城がエネルギー光球で直したキーホルダーの1つを美奈へと手渡すと、ギルボークが語りかける。
「このコレクション達、キーホルダー……」
そのキーホルダーは確かに形を取り戻していたが、幻想交じりになってしまっていた。結城は直した他の物を箱に詰めていく。
「目に見える鍵はぶら下げられていなかったようですけど、また違った、目には見えない鍵がついていたように僕は思います」
仲間達が修復を始めるものの、ギルボークは小さく唸る。こういったものは、直したからよしというものではないと。
「ドリームイーターを倒したことで、それがあなたのもとに戻ってきていればいいのですが……」
「…………」
俯く美奈は決して満足気ではない。どんなに直しても、キーホルダーは元の形には戻らないし、戻らぬほどに壊されたものだって少なくないのだ。
(「そこに込められた想い……。形あるものも素晴らしいですが、そこに気づいてくれれば……」)
彼女がギルボークの主張を得心するには、しばしの時間を要するようだ。
「気休めだが……、もしよければ」
悠はそんな美奈へとキーホルダーを差し出す。
「……ありがとうございます」
受け取った彼女は少しだけ表情を和らげ、大切そうに自身の机に飾っていたのだった。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年9月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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