
●ある日の地下アイドル
その日、高比良・怜也(饗宴のヘリオライダー・en0116)が行きつけのカフェで見つけたのは、せっせとグッズ作りをしている少女の姿だった。
「精が出るな、お仕事お疲れ」
声かければ、顔上げる少女。愛月・かのん(ドワーフのミュージックファイター・en0237)は怜也の顔見るなり、眉を下げて口開いた。
「あぁ、怜也……。もう、やんなっちゃう。誕生日ライブだからって特別なグッズ用意することになったんだけど、これが妙に手間のかかるものばっかりで」
「へぇ、そりゃ大変だ。つっても、俺が手伝っちゃファンにとってのご利益がなくなるだろうしなあ。と言うか、お前もうすぐ誕生日なのか」
「うーん……そうだけど……」
答えながらも、手はのろのろ動かして。疲れた様子のかのんに苦笑すると、怜也は続けて言葉紡ぐ。
「それなら、俺も何かプレゼントするぜ。ほしいものあるか?」
「えっ? ほんと? あるある!」
それは、ご褒美を期待する無邪気な子供のように。瞳輝かせて声弾ませる少女に、怜也はへらりと笑うのだった。
●アクセサリーショップへ行こう!
「ペットやサーヴァント、ファミリアにつけるアクセサリーに興味あるやついるか?」
ケルベロス達を集めて、いつもの笑顔浮かべて。怜也が声かければ、いつもよりテンション高いかのんがパンフレットを広げる。
「あのね、私のお気に入りのペット用アクセサリーショップがあるの! ここ、犬とか猫とかのアクセサリーやお洋服はもちろん、頼めばサーヴァントのものも作ってくれるのよ!」
パンフレットに掲載された写真は、犬の洋服、猫の首輪、うさぎの耳飾りと多種多様。ふんだんにレース使った華やかなものもあれば、蛇柄のワイルドなものもあり、ジャンルの幅も広い様子だ。
デザインはお店に並ぶものを選んで、サイズをセミオーダー。これで以前頼んだなっちゃん用ネックレスがそれはそれはかわいかったのだと、親バカ全開にかのんは語る。
「お店には、友達連れてみんなで行くって話してあるの。だから、サーヴァント連れてたくさんで行っても大丈夫! ね、みんなで行きましょ!」
「サーヴァント以外にも、ファミリアやペットも大丈夫だぜ。ただし、店内に一緒に入るなら、お行儀よくな」
怜也は語りながら、鼻歌まじりにパンフレットを見るかのんに小さく苦笑した。
「お前の誕生日プレゼント、って言ったのに、ナノナノのアクセで本当にいいのか?」
「いいのよ! 私へのプレゼントはファンからでももらえるけど、この子にあげたいものを頼める人ってなかなかいないんだから!」
それに、なっちゃんと私はいつでも一緒。だからこの子への贈り物は、私への贈り物と同じくらい嬉しい。
花咲くように笑って言った少女は、そこでふと我に返り照れ臭そうにはにかんだ。ぎゅっとその腕にナノナノを抱きしめれば、なっちゃんがくすぐったそうにナノ~と鳴く。
大好きな子へのプレゼント。それを喜ぶ気持ちは、きっとケルベロスにもわかるはず。
「というわけだ。どうせなら賑やかな方がいいからな、大人数で楽しく行こうぜ」
皆で過ごす楽しい時間、それが何よりの祝いになることを怜也は知っている。だから一緒に楽しもうと、誘う声は明るく弾むのだった。
●君のためのひとつを
軽やかなベルの音鳴らしながら扉を開けば、そこは彼らの宝の山。
明るい木目調の店内に所狭しと並べられた棚覗くと、多種多様なアクセサリーが心ときめかせて。
「ああ、いつ来ても素敵!」
頬を薔薇色に染めてかのんが言えば、傍らでは怜也がへらりと笑う。
その横で、リリアは持ってきたロッドをファミリアの姿へと変化させる。現れ主の足元をよちよち歩きでついていくのは、パフィンのハロだ。
さっそく見つけたキラキラ輝くネックレスは首にかけてやり、次にかぶって着られるワンピースを見つければ着せてやり。
「どうしよう……全部似合うかも!」
興奮気味に白百合の娘が叫ぶけれど、肝心のパフィンは興味なさそうにそっぽ向く。
そんなハロを余所に、リリアが次に見つけたのは真っ白のケープだった。
雪のように白くて、ふわふわファーの生地は軽やか。そっとハロにつければ、フードが首元を飾りますます愛らしく見せる。
「まあ、なんということでしょう……! 今までで一番似合うわ!」
まるでハロのためにあつらえたよう、なんて思うのもひいき目ではないはず。ステキなお洋服が見つかってよかったと、笑顔の花咲かせ彼女はレジへ向かう。
これから季節は変わるけれど、寒い日でも暖かく。共に過ごす冬の日を思い浮かべて、リリアは幸せそうに微笑むのだった。
互いのサーヴァントに、互いのプレゼントを選んでもらう。そんな提案を千歳がすれば、つゆも鈴も張り切る仕草。
ぴょんと跳ねて右往左往、鈴が見つけたシルクハットを差し出すと、つゆはそれ被ってびしっとポーズを決めて見せた。それが嬉しかったのか、ぴょんとまたひと跳ねしたミミックがエクトプラズム伸ばしてあれもこれもと翼猫のためのアクセサリーを選んでいく。
野球帽にネクタイ、麦わら帽子。受け取り試着する度つゆがきっちりポーズを取るものだから、市松はそれが可笑しすぎて声上げて笑った。
「バーカ」
野次飛ばせば、次の瞬間彼を襲う尻尾。その動きは無駄なく容赦なく、叩かれた市松が声上げるけれど、つゆは千歳に向かって鮮やかに一礼して鈴の元へ戻っていく。
「なんだよこの扱いの差! 理不尽だろ……!」
不平漏らす主の姿には、千歳も楽しそうに笑った。
そんな傍観者二人を余所に、サーヴァント達は攻守交代した様子。つゆがあちこちの棚を器用に登って探し回り、見つけてきたのは飴玉のようなアクセサリー達。飴玉集めたようなゴムはシャラシャラ音鳴らし、ネックレスについた飴玉模様のビーズがきらり光れば、鈴がエクトプラズムぽんぽん飛ばしてそれを次々身に付けていく。
「とっても嬉しそう、良いわね、鈴」
主の声に、ぴょこぴょこ跳ねて。鈴らしいアクセサリーを的確に見つけてくるつゆのセンスには、市松もひたすらに感心する。
「しっかし、鈴もおしゃれに目覚める年ごろなんかね」
そんな言葉漏らすうち、互いのプレゼントは決まったようで。主へと持ってきたそれを見て、千歳の方は目を丸くした。
「それは……え……え、いいんじゃあ……ないかしら?」
首傾げつつも、鈴が興奮気味だから受け取って。綺麗に包装してもらったプレゼントの、中身は後のお楽しみ。
キソラは、一十と共に自身の箱竜に似合うものを探す。彼女への贈り物は、ご機嫌取り――もとい、歩み寄りのつもりで。
「サキミとの心の距離が……一向に……わかるだろ」
「カズでもソコ気にするんだ?」
笑いながら彼の背中をバシバシ、楽しそうな二人の足元では、当のサキミが迷惑そうな顔をしていたり。
しかしそんな箱竜を甘やかそうと、男二人は棚から次々気になるものを取り出してはサキミの身につけていく。
裾レースの赤いケープは、青い体によく映えて赤ずきんのように。
「ケープ羽織ったサキミサン超可愛い!」
思わずデレデレになった一十は、次はこれとフードのついたものへ着替えさせ。もこもこ毛糸を巻けばぬいぐるみのように、花飾りつき着せればますます愛らしい姿となる。
やがて一十が見つけ出したのは、ビーズ刺繍施したシフォンケープだった。しずくのビーズで作り出した花は光受け輝いて、襟についたファーがこれからの季節も暖かく着られそう。
「ふわふわだしひらひらだしきらきら!」
「流石おとうさん見る目がある! ほらサキミよ、君の好きなきらきらが付いているぞ」
二人のアピールに、サキミはやはり微動だにしない。けれどその顔は真っ直ぐシフォンのケープへ向けられ、逸らす素振りを見せない。
「顔を背けないということは、気に入ったということ! ……なのか?」
「なあにお気に召さねばまた買いに来ればイイ」
二人は笑いながら、選んだケープを大切に抱えてレジへと向かう。それについて歩こうとした箱竜は――小さいけれど確かに一度、嬉しそうにぱたり尻尾を振ったのだった。
エリヤが大切そうに抱きかかえるのは、ファミリアのピーター。もこもこ白毛玉のような体の愛らしい、アンゴラウサギのアクセサリーを求めて彼は店内を順に見ていく。
「うさぎにアクセサリーってどんなのが似合うかな。小さいものだと毛を巻き込んでしまわないかな」
真剣に探すのは、大切な相棒だからこそ。そうしてエリヤが見つけたのは、うさぎの耳通す穴が開いた帽子達。
一つ一つ手に取って、吟味していればそこへ通りかかるのはかのんで。
「エリヤは帽子? とっても似合ってるわね!」
「うん、時計の模様がかわいいよね、不思議の国の童話みたい」
二人微笑み見つめる先では、眠たげなピーターも帽子揺らしてどこか嬉しそう。
その様子をじっと見たかのんは、今度は伺うようにエリヤを見上げた。
「ねえ……そのウサギ、触ってもいい?」
そのもこもこが、あまりに魅力的だったから。告げればエリヤは微笑んで、どうぞと腰落としてピーターをかのんの前へ。
ぱあっと笑顔浮かべた少女は、されるがままのピーターに手を伸ばす。その後、妬いたなっちゃんがナノナノと飛んでくるまでの間は、存分に撫でさせてもらったのだった。
●共に選ぶひととき
「こんな美少女達の買い物に同行できて、嬉しいでしょう、ドミニクさん!」
ふわふわした愛らしい翼猫を抱えて得意げに言うのは、主である灯。その言葉に、ドミニクは大きく頷き答えた。
「おォ、おォ、そりゃもう嬉しいとも! 両手に花たァ、このことだァな!」
予想以上に嬉しそうなリアクション、アナスタシアはそんなドミニクの腕の中へ。あちこち棚を探せば秋らしいものが集められた一角を見つけて、灯の瞳が嬉しそうに輝く。
「あっ、このドングリの鈴が付いたリボン可愛い。こっちのぶどうのチャームのも」
二つとも見せれば、翼猫は嬉しそうににゃーんと声上げて。その反応が可愛らしくてドミニクが高い高いすれば、アナスタシアはごろごろ喉鳴らしてご機嫌の様子。
「もー、すっかり甘えんぼ! 自分で飛べるでしょ!」
そんな言葉でたしなめてから、灯はどちらのアクセサリーがいいかをドミニクへ問う。すると男は、橙の双眸で二つをじっくり眺めて。
「……選べんけェ、いっそ両方買うっちゅーのはどうじゃ。こっちのぶどうのは、ワシが買うたるけェな! 後生じゃけェ、貢がせろください、頼むから」
「……両方? そ、そこまで言うなら買わせてあげましょう!」
そうして二人はどんぐりとぶどうをひとつずつ手に取って、レジへと向かう。
「そーいえばドミニクさん、お誕生日だったそーで?」
灯が尋ねれば、ドミニクは目を瞬きつつもうなずいて。今日のお礼を兼ねて、アナスタシアとお揃いのものをプレゼントすること提案すれば、思いがけない言葉に男は笑う。
「ふふ、ちゃんと人用のお店でです!」
「そりゃ魅力的な提案だァな!」
交わす笑顔、次の約束。そんな二人を見上げて、アナスタシアも幸せそうににゃあんと声を上げるのだった。
あかりの手にする籐のケージの中では、ハチワレ猫のくらがりが興味津々外を見ている。
そんな少女の隣で共に店内を見ていた陣内は、店員に一つ相談をした。
「セミオーダーも受けてくれるのか。……じゃあ、このマサイシュカと共布で猫用のストールなんてのも頼めるのかな?」
布はこれを少し切ってくれればいいと、尋ねれば店員は快く応じてくれて。
店内にあるスカーフを基準にサイズの相談をする間、翼猫は男の肩の上を右から左にちょろちょろ動いて嬉しそうな様子。いつものお揃い、絆の証。あかりもどうかと尋ねれば、彼女はこくりうなずいた。
「ケニアの思い出を片割れと共に、か。素敵。僕も是非乗らしてもらおう」
そうして少女が選んだのは、身に付けていた翠色のカンガ。これを少し切って、小さなリボンが付いた首輪を縫ってほしいと頼めば、やはり店員は笑顔で引き受けてくれる。
大切な布とリボンを切り取って、仕上がりまではしばし時間がかかる。奥へ引っ込んでいく店員を見送った後、あかりはくらがりのケージをそっと開けて、抱き上げた。鼻同士をこっつんこ、おねえさん分の瞳を見つめて、小さな声で囁く。
「……くらがりと初めてのお揃いだね。僕の好きな人と同じ色合いだから、きっと気に入ってくれるよね」
言葉をじっと聞いた猫は、喉をぐるると鳴らして返事のように。
そんなあかりの頭上に陣内の翼猫が飛び移れば、くらがりも心許した様子でぱたと尻尾を揺らした。
一華の持ってきたロッドが変化した姿は、煮干し大好きなぽっちゃり猫。
「突然キッチンで煮干し齧ってたんですよ。ね? ふくちゃん」
出会った時のことをそう語りながら、一華はファミリアを抱き上げる。ずっしり重量感のある体を抱っこするのは大変だけれど、愛があるから頑張れる。
「本当、どこから入ってきたんだろうなあ」
相槌打ちながら、一華を手伝うのは万里。いつも煮干しを齧っているのは幸せそうだしやめさせる気はないけれど、これから入るのは店内だから少し我慢してもらうしかない。
もちもち加減が最高のふくちゃんのお腹について語りながら、二人が辿り着いたのは首輪の並ぶ棚。
「今日はねー世界一かわいい首輪を探すんですよー」
「首輪かぁ……大きいサイズがあるといいな」
太ってるから、とは言わないけれど。
そんな万里の前で、一華は楽しそうに首輪を手に取っていく。
「万里くんどれが良いと思います? わたしヒョウ柄かなぁって」
「えっ、豹柄?」
一華が差し出したのは、確かに全体に豹柄の入った首輪で。
「ふくちゃんも女の子なのにいいのかそれは」
思わず真顔で問えば、笑顔でうなずく彼女。やはり女子は強く在らねば、と言葉添えて、ふくちゃんの首にそれをつける。長さが、展示品では足りないけれど。そこはセミオーダーすれば大丈夫。
「ほら、強そう! えいえいねこぱんち!」
しゅっしゅ、ふくちゃんの手を持ちパンチの仕草。そんな一華は楽しそうで、万里はつい笑み浮かべてしまう。
重たい愛猫のおかげで、彼女の腕っぷしも強くなりそうだけれど。そんなところも、また愛しい。
●この時を思い出に
周囲の賑やかな様に表情綻ばせる朝希の、腕の中では黒い仔犬が尻尾揺らす。
そんな友人をじっと見つめるカトルに気付いて、オルテンシアはそっとため息をついた。
「今日は特別よ」
告げて胸に抱けば、紫のミミックは金鎖をゆらゆらり。その仕草があまりに嬉しそうだったから、二人は思わず笑みを零した。
そして朝希は、カトルに似合いそうな品を見つけては献上する。
「揃って美貌の風の君と従者様は、どんなお召し物がお好みで?」
語りながら差し出される品物はどれもが煌びやかで、上品で、オルテンシアは彼の審美に驚嘆する。
次々差し出される献上品の中から、オルテンシアが選んだのは脚飾る円環。
「脚の円環はうつくしき匣の嗜みよ、なんて」
微笑み手にしたそれは、きっと二人の絆をより強固にするだろう。
「僕のきみはやっぱり格好よくしてあげたいな」
語る朝希が選ぶのは豹柄や蛇柄。野性的なセレクトしつつ意見求められ、オルテンシアはひとつ首傾げた。
「それは……野性的というか、多分に浪漫的というか」
感想告げた後、彼女が提案したのは和柄のスカーフ。唐草や青海波、桜や梅の花模様。黒柴である彼のファミリアには、どれもとても似合いそうだ。
今日の主役の一匣と一匹、選んだのはとびきりかわいい贈り物。
「そういえば桜ちゃん、猫ちゃんが来たんだったね!」
「はい、ノラちゃん、です」
ひなみくの言葉にうなずいて、紹介するのは翼猫。せっかくだから、可愛くしてあげたくて。いつもミミックをかわいく飾っているひなみくならきっと楽しんでくれると思ったと語れば、タカラバコを抱えたひなみくが満面の笑みを浮かべる。
「うんうんっ、もう今からワクワクしてるよ~!」
言って大切な家族連れて歩き出したひなみくは、周囲に興味津々のミミックへ声かける。
「タカラバコちゃんの好きなものを買ってあげよう! なんでもいいよ!」
それ聞いたタカラバコは、あっちこっち品物を探してやがてフェイクペロキャンの首輪を持ってくる。それ見た桜は、自分のことのように嬉しそうに微笑んで。
「まあ、タカラバコちゃんも、首輪ですか? かわいくって、おいしそう!」
帰ったら、つけやすいよう改造してあげる。そう語ったひなみくは、ノラの試着しているアクセサリーにも興味深げに視線向けて。
「……わあ、首輪が桜ちゃん色だ! すっごく似合う! 可愛い~!」
「はい、すっごく、可愛い、です!」
深く頷き合う二人、その前で桜色のリボンの首輪した翼猫が愛らしく鳴く。
本人も気に入ったアクセサリー手に、レジへ向かう。その間にも二人の会話が途切れることはなかった。
クラレットが店内へ入ると、その後ろでノールマンは不思議そうに首を傾げる。今日は君の為のものさがしを。告げるとネモフィラの少女は一瞬戸惑う仕草を見せる。
「いつもお世話になっているお礼だよ。お手をどうぞ、お姫様」
そして店内へノーレを誘えば、彼女のサイズに合いそうなコーナーへ。チアガールにディアンドルに猫耳パーカーに……差し出す服は、全て友人達から案を募った、彼女にきっと似合うもの。
どの服も、受け取り着替え、クラレットに見せてくれる動きは楽しそうで。ふつうの女の子と変わらぬ姿に、自然と笑みが浮かぶ。――ちなみに、髪型はポニーテールが世界一可愛い。
最後に選んだのは、ネモフィラの花のヘアピン。どの服もとても愛らしかったのだけれど、買うのはふだんでも使えるもの。
二連のうち、一つは彼女へ、一つは自身へ。
「良いことはいつだって、君とふたつぶんだ」
紡ぐ言葉は、誓いのように。それ聞いた少女は、綻ぶように笑った。
店の片隅、手にしたネックレスとにらめっこ。そんなかのんに声かけたのは、青い少女だった。
「愛月嬢は、なっちゃん……にあげるもの、決まった?」
「あら、ハンナ! 今ね、二つにまで絞り込んだの!」
言ってかのんが見せたのは、ハート型ビーズが連なるものと、きらめく大きな星のもの。
どちらがいいか、悩みに悩んで。やっぱりかわいいのがいいと、ハートのビーズネックレスを選択する。
そして少女は、ハンナが連れ歩く黒い翼猫に顔を向けた。
「初めまして、よね? ハンナのところにウイングキャットが来てたなんて、びっくりしちゃった」
「ん……最近、具現化してくれたばかり、で。わたし、まもってくれる、から。ありがとう、伝えたくて」
けれど全然目星をつけずに店に来たから、迷ってしまって。そんなハンナにかのんは笑って、それなら全部見ましょと、端の棚から見始める。
背より高い上段の棚も、しゃがまなければ覗けない下段の棚も、細かく目を通して。すると最下段にひっそり、しかしきらり煌めく青色が目に留まった。
「ね……これなんて、どうかしら?」
取り上げインヴィディアに見せたのは、王冠のリング。光放つのははめ込まれたサファイア、所々に十字架があしらわれたそれは、繊細なデザインをしている。
試しにつけさせて、とハンナが頼めば、翼猫は渋々といった表情でゆっくり尻尾を差し出してくる。漆黒の毛並、映える白銀は美しく。
まんざらでもなさそうな彼の様子に、ハンナは良いモノに出逢えたと微笑んだ。
それぞれに運命の一つを見つけ出し、買い求めればラッピングされたものがその手元に。
楽しそうにプレゼント抱えるケルベロス達に、かのんは満足そうな笑みを浮かべる。
そんな少女へ、ピンク色の袋にくるまれたプレゼント渡して怜也が尋ねる。
「どうだ、かのん。今日は楽しんだか?」
「もちろん! それに、こんなにたくさんの人とこのお店に来れて、とっても嬉しいの!」
あちこちに咲く笑顔、それは大好きなあの子へ向ける愛情に満ちていて。
――まあでも、世界で一番かわいいのはうちのなっちゃんだけど!
胸を張って言葉紡ぐ少女は、いつも以上にテンション高く。
生まれたこの日のショッピングは、彼女にとって素敵な思い出になったのだった。
作者:真魚 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
![]() 公開:2017年9月19日
難度:易しい
参加:18人
結果:成功!
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