●厨ニ病、唸る!
霊峰、富士の麓に広がる、静岡県の山の中。誰もいない森の奥で、巨木相手に拳を振るう青年が一人。
「ふっふっふ……今日も、また一つ、自分の壁を超えられたのを感じるぞ」
自分の拳を軽く撫でながら、青年はどこか遠い目をしつつ呟いている。だが、直ぐに気を取り直し、再び鍛錬を開始した。
「このまま鍛え続けて行けば、俺が邪竜の力を食らう日も近い。その時こそ、至上最強にして最凶な究極の拳……俺の理想とする、邪竜煉獄拳(じゃりゅうれんごくけん)が完成するのだ!」
そう、青年が高らかに宣言し、巨木に蹴りを入れたときだった。
「最強で最凶な拳? 面白いな。お前の最高の『武術』を見せてみな!」
突然、彼の横に、ポニーテールの少女が現れたのだ。
「ほぅ……。この俺の拳……邪竜煉獄拳が見たいというのか? 言っておくが、未完成の拳とはいえ、手加減はできんぞ」
逃げるならば、今の内だ。そう言って青年は少女に拳を繰り出したが、次々に襲い掛かる激しい殴打を前にしても、少女はまったく動じておらず。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、お前の武術はなかなか素晴らしかったよ」
そう言って、手にした巨大な鍵で唐突に、青年の胸元を貫いた。
「……っ!?」
幻武極。『武術』の欠落したドリームイーターの手により、青年は意識を失い崩れ落ちる。その傍らには、いつしか黒く薄汚れた道着を纏った、目付きの鋭い格闘家のドリームイーターが立っていた。
●そして黒歴史は現実に
「我流の拳法を極めるために修行する……。確かに、それだけ聞けばカッコいいかもしれないっすけど……さすがに、これは少し痛すぎるっす……」
その日、黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)よりケルベロス達に語られたのは、武術を極めようと修行を行っている武術家が、ドリームイーターに襲われるという事件の報だった。
「武術家を襲うのは、ドリームイーターの『幻武極』っす。自分に欠損している『武術』を奪って、モザイクを晴らそうとしているらしいっすけど……」
今回の襲撃では、幻武極のモザイクは晴れないようだ。が、しかし、代わりに武術家のドリームイーターが誕生し、それを暴れさせることでグラビティ・チェインを奪おうと考えているらしい。
「出現するドリームイーターは、襲われた武術家が目指す『究極の武術家』のイメージが具現化したもので、なかなかの強敵っす。その、武術家のイメージっすけど……」
そこまで言って、ダンテはしばし言葉を濁した。なんでも、彼の話では襲われた武術家の男は酷い厨ニ病であり、鍛え続ければ漫画やアニメに出て来そうな技を、本当に使えると思っていたようだ。
「そんな人のイメージから生まれたドリームイーターっすから、戦いになると、それっぽい技を使ってくるっす」
敵の格好は、裾の解れた黒い道着。怒髪のような黒髪に精悍な肉体を持ち、戦闘になると竜の影を纏った拳で相手の命を吸収したり、燃え盛る脚から炎を放ったりする他、掌からモザイクの炎で作られた竜を放って攻撃して来たりする。その際、妙に尊大な態度で御託を述べたり、やたら難しい漢字が当てられた技名を叫んだりするなど、襲われた武術家の抱いていたイメージが大きく影響している模様。
「今から行けば、ドリームイーターが里に下りる前に倒すことが可能っす。場所は静岡県の山の中っすね。敵は自分の武道の真髄を見せ付けたいと考えているっすから、戦いの場を用意してやれば、向こうから戦いを挑んでくるはずっすよ」
なんとも頭の痛い敵だが、その実力はイメージに違わぬ強力なもの。決して油断せず戦って欲しいと告げ、ダンテは改めてケルベロス達に依頼した。
参加者 | |
---|---|
ヒスイ・エレスチャル(新月スコーピオン・e00604) |
浅川・恭介(ジザニオン・e01367) |
武田・克己(雷凰・e02613) |
御門・愛華(竜喰らいの落とし子・e03827) |
斎藤・斎(修羅・e04127) |
レヴィア・リヴァイア(海星の守護龍・e30000) |
エング・セナレグ(重装前進踏襲制圧・e35745) |
一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948) |
●厨二暗黒面の権化
鬱蒼と茂る森の中。真昼の陽射しさえも満足に届かない密林を分け入って進むと、少しばかり開けた場所に出た。
渓流を中心に、3方向へ広がる獣道。滝と言うよりは沢と言った方が正しい場所を背に立つのは、遠間から見ても解るくらいに、異様なオーラを纏った男。
「見つけました。貴方の相手は私達です」
邂逅早々に、御門・愛華(竜喰らいの落とし子・e03827)は堂々の宣戦布告。
「貴様が件の武術家と見受けるが、如何か?」
色々な意味で徒ならぬ空気を感じ、エング・セナレグ(重装前進踏襲制圧・e35745)は男に尋ねた。互いに初対面ではあったが、男の方はあまり気にしている様子はなかった。
「ほぅ……俺のことを知っているのか? 貴様達、何者だ?」
両腕を胸の前で組んだまま、微動だにせず男が尋ねる。のっけからの上から目線だったが、今は細かいことを気にしている時間もない。
「俺達はケルベロス。武の道を究める為、是非手合わせを願いたい」
「ケルベロス……なるほどな。だが、悪いことは言わん、止めておけ。……こんな場所で、死にたくないのであればな」
男がにやりと笑う。並の人間であれば勘違いの誇大妄想で終了だが、性質の悪いことに彼は正真正銘のデウスエクス。その尊大な態度も、実力に裏打ちされたものとなれば頷ける。
「ご自分の武道の真髄を見せつけたいのでしょう? ならば、私たちの相手をしてくださいな。皆、腕に覚えはありますよ」
それでも、ここで逃げられては堪らないと、ヒスイ・エレスチャル(新月スコーピオン・e00604)はあくまで戦う意思を崩さずに告げた。その間に、浅川・恭介(ジザニオン・e01367)が周囲の様子を窺ったが、他には誰もいないようだった。
恐らくは、遭遇戦というやつだ。しかし、これはチャンスでもある。要救助者の確保に人員を欠く手間が省けた以上、目の前の敵に思う存分集中できるからだ。厨二病を拗らせた青年には悪いが、ドリームイーターが倒されるまで、眠ってもらっていることにしよう。
「ふっふっふ……どうしても、俺と殺り合いたいというのだな? ……ならば、見せてやろう、我が腕に封印されし、邪竜の刻印の力をなぁっ!!」
そうこうしている間に、勝手に盛り上がった男が両腕に巻いていた包帯を取り去った。その中から現れたのは、紛うことなきモザイクの竜!
「ぐっ……! はぁ……はぁ……ふ、ふふふ……さあ、もう俺自身にも抑えることはできんぞ。我が邪竜の拳を受け……貴様達の魂も、煉獄へと帰すがいい!」
瞬間、男の全身から放たれる圧倒的な威圧感。だが……それを見たケルベロス達の反応は、なんとも微妙なものだった。
「ドリームイーターも色々だね……」
「武術家として強い奴と闘いたいとかは分かるんだが、これはなぁ……」
あまりに酷い拗らせ方に、一比古・アヤメ(信じる者の幸福・e36948)と武田・克己(雷凰・e02613)は、早くもドン引きな様子で冷めた視線を送っている。
なんというか、これはない。強さを求めるのは武術家の性とはいえ、こいつは実際に強くなることよりも、強そうに見せることで自己陶酔しているだけではなかろうか。
「ドリームイーターを呼び寄せるまでこじらせるってすごいですねぇ……。こうはなりたくないね、安田さん」
テレビウムの安田さんに、思わず恭介が同意を求めていた。もっとも、ここで引いているだけでは話が始まらないので、さっさと目の前の敵を倒した方が賢明だ。
「中二病、デスカ。凝った設定を作り、自ら演じ抜くと聞きマシタが……」
「まあ、もしかしたらグラビティに目覚めるかもしれない人ですし……?」
兎にも角にも、今は戦闘に集中しよう。互いに顔を見合わせて、斎藤・斎(修羅・e04127)レヴィア・リヴァイア(海星の守護龍・e30000)の二人は気を取り直して身構える。
厨二病。死に至る病……ではなく、後で思い出して死にたくなる病の権化とも言える存在を前に、なんとも微妙な空気の流れる戦いが幕を開けた。
●竜を食らう者
渓流にを切り裂く風と風。天を貫くような怒髪をした厨二拳士の実力は、なかなかどうして高かった。
飛沫を上げて繰り出される技の数々。その威力は、さながら漫画やアニメの登場人物が、そのまま具現化されたに等しいもの。巨木を薙ぎ、岩をも砕く一撃はまともに食らえば無事では済まない。
「ふっ……やるな。だが、俺が食らえるのが、邪竜だけだと思うなよ!」
不敵な笑みを浮かべつつ、拳を構えるドリームイーター。その腕に刻まれた竜の刻印が赤く光り、凄まじい闘気の奔流として具現化し。
「見せてやろう……現世のあらゆる存在を、命の欠片も残さず食らい付くす技。罷り間違えば、己自身さえも喰らわれるという禁断の拳。名付けて。邪竜吸……ぐほっ!?」
だが、そこまで御託を並べたところで、ドリームイーターの腹を克己の太刀が斬り捨てた。
「隙だらけだな。実戦で、技の名前を叫んでから攻撃できるなんて事はないぞ」
淡々と正論を述べる克己。確かに、彼の言う通り、敵の行動は一つ一つがナンセンス。口では壮大な命の奪い合いをすると言っていながら、無駄な動きが多いのは、他でもない敵の方である。
「ぐぅっ……貴様、この俺の一瞬の隙を突いて攻撃するとは……ただ者ではないな!」
傷口を押さえながら、それでも拳を構え続けるドリームイーター。
いや、お前、どう見ても丸腰の隙だらけだっただろ!
思わず、そんな突っ込みを入れたい気持ちにさせられたが、ここで相手のペースに乗せられるのは拙い。
「ならば、ここからは俺も本気を出させてもらおう。……覚悟するがいい!」
再び迫り来る邪竜の拳。間髪入れず、安田さんが前に出たことで、直撃を食らう者はいなかったが。
「ふははははっ! 脆い! 脆いぞぉっ! こんな木偶如きで、我が邪竜の拳に耐えられると思ったか!」
沢の向こう側に吹っ飛んで行く安田さんの姿を見て、ドリームイーターは勝ち誇ったように笑っていた。
うん、こいつはウザい。何故だか知らないが、妙に他人の神経を逆撫でさせる何かがある。
もう、これ以上は、こいつを調子に乗らせるわけにはいかない。早々に片付けてしまおうと武器を構えるケルベロス達だったが、その中でただ一人、恭介は何やら考え込んでおり。
(「煉獄って清めの炎とかでしょう? 邪竜煉獄……悪い竜をきれいにする……?」)
どうやら、敵の使う拳法の名前が、何に由来するのか考えているらしい。
「なるほど! つまり、邪竜煉獄拳とは、悪い子おしおき拳?」
「ふっ……面白いことを言うな、小僧。確かに、俺の拳は闇を喰らいて闇を薙ぐ拳だ。そういう意味では、貴様の解釈も吝かではない」
拳をさすりながら、再び頭の痛くなるような設定を語り出すドリームイーター。もっとも、それで意識が恭介の方へと逸れてくれたのは儲け物。
「夢を見るのは構いませんが、ドリームイーターとして顕現すると迷惑ですね」
「確かに……。せめて、もう少し現実味のある技なら、まだ見るに耐えることもできますけど……」
半ば呆れながらも、ヒスイと斎は死角からドリームイーターへと襲い掛かる。どう見ても不意打ちなのだが、これは命を掛けた真剣勝負。『死合』の最中に余所見をするような者に対して、卑怯もへったくれもあるものか。
「……ぬわっ! き、貴様達、いつの間に!?」
間合いを一度に詰められ、ドリームイーターは慌てて両腕を交差させて防御の体勢に入った。が、残念ながら、もう遅い。ヒスイの手にした刃が弧を描いて斬り掛かり、炎を纏った斎の拳が敵の顔面を打ち抜いたところで、他の者達も一斉攻撃!
「いくよ、ヒルコ。喰らい尽くして」
竜喰らいの一撃を放てるのは、そちらの専売特許ではない。愛華の拳が敵の拳と激突し、その命を奪って糧と変え。
「邪竜の力を喰いたい? 邪竜じゃないけど好きなだけ喰らってください……幻影の竜を」
恭介が炎の竜を呼び出したところで、安田さんが敵の背後から頭を凶器でカチ割った。
「ぐはっ! な、なんだ、これは……俺の視界に……り、竜が……?」
後頭部に凶器が深々と突き刺さったことで、どうやら敵は、元となった青年の設定にある何らかの幻覚を見ている模様。何を見ているのかは気になるところだが……まあ、ここは聞かないでおくことにして。
「理想の為に努力を続ける……。その心意気は見事……デスガ!」
突き出されたレヴィアのエクスカリバールが、稲妻を帯びて相手の身体を鋭く貫く。強さを求めるのは良いが、デウスエクスは放置しておけない。
「貴様の機動力、まずはそれを封じさせてもらう。自由に動けると思わぬことだ」
テレビウムの彼に味方のフォローを任せつつ、エングの刃が敵を斬る。将を射んと欲すれば先ず馬を射よの諺通り、まずは敵の足を抑えることに専念し。
「さあ、奪ったものを返してもらうよ!」
アヤメの放った竜砲弾が、轟音と共に敵の身体を吹き飛ばした。
「ほぅ……少しはできるようだな。だが、この程度で、俺の中の邪竜を封じられると思ったら大間違いだ!」
だが、それでもドリームイーターは、余裕の態度を崩さない。元より、そういう性格だからなのか、それとも本当に余裕があるのか。
「受けるがいい! 炎獄烈蹴脚!」
空中で身体を捻りながら、ドリームイーターが燃え盛る火炎を伴った蹴りを放つ。三日月の軌跡を描いて繰り出された焔の一撃は、そのまま強力な炎弾となって、ケルベロス達の方へと襲い掛かって来た。
●覚醒! 煉獄の邪竜!
気が付くと、辺りからはそこかしこから、何かの焦げる臭いが立ち昇っていた。
邪竜煉獄拳。厨二病の青年が勝手に作った我流拳法だが、その神髄は邪竜の力を喰らい、煉獄の炎を操るというものらしい。
それだけ聞けば、痛い妄想で済んだかもしれない。しかし、ドリームイーターとして具現化した格闘家の一撃は、今や本当に全てを燃やし、喰らい尽くす、恐るべき武術と化している。
「ふっ……どうした? 貴様達の力は、そんなものか?」
身体の各所を凍結させられ、道着をズタズタに引き裂かれても、ドリームイーターは不敵な態度を崩すことを止めようとしない。実際、そんな彼の言葉が示す通り、ケルベロス達もまた酷く消耗してしまっていた。
「くっ……。私としたことが、戦闘準備の確認を怠ってしまうなんて……」
歯噛みする斎。決して油断をしていたわけではないが、しかし彼女は癒し手の間合いにいながらも、前のめりな攻撃特化の戦闘スタイルで出撃していた。
それは、言うなればメディックが回復を放棄したに等しい事態。足りない部分はテレビウムの彼が補っていたが、それでも1体のサーヴァントだけではフォローできる範囲にも限界がある。
「安田さん……。せめて、もう少しだけ持ち堪えてくれれば……」
恭介の相棒の安田さんは、既にその姿を消していた。度重なる敵の攻撃から味方を庇い続けた結果、いち早く戦線を離脱してしまったのだ。
「さあ、そろそろ遊びは終わりだ。邪竜煉獄拳の最終奥義……冥途の土産に、貴様達にも見せてやろう」
勝ち誇った様子で高笑いをしながら、ドリームイーターは自らの掌にモザイクの炎を収束させて行く。それは、やがて一匹の竜の姿を形取り、咆哮を上げつつ牙を剥く。
「喜べ……貴様達が、我が究極奥義の犠牲者の第一号だ。……食らえ! 奥義・邪竜煉獄波ぁぁぁっ!!」
解き放たれたモザイクの竜。その勢いは留まるところを知らず、周囲の草木を焦がしながら、真正面に立っていた愛華へと迫る。
荒れ狂う猛火の竜が愛華の身体を咥え、燃やしながら噛み砕き、そして大地へと叩き付けた。沢の水が沸騰し、岩塊が悉く砕け散り、大地が抉れて炎は天まで焦がす柱となって木々の梢を焼き払った。
「ふははははっ! 邪竜の力を甘く見るなよ! 貴様達如きの児戯とは、一味も二味も違うのだ!」
火柱を前に、ドリームイーターは自身の勝利を疑っていなかった。が、やがて炎の勢いが終息して行くと、その表情はにわかに信じがたいものを見たときのそれに変わっていった。
「あなたの竜の力は……この程度、ですか?」
愛華は倒れてなどいなかった。全身を焦がされ、衣服の裾は既に焼け落ちていたけれど。髪も頬も煤で汚れ、片腕は完全に力を失っていたけれども。
「貴方の邪竜煉獄拳……この獄竜の腕で打ち破ります。……いくよ、ヒルコ。全てを守る為に、力を貸して!」
その言葉を言い終わらない内に、彼女の左目が赤く染まる。左腕を覆う包帯が弾け飛び、中から現れたのは彼女が喰らいし獄竜の力。
「なっ……! ま、まさか……貴様も、煉獄の竜を食らっていたというのか!?」
驚愕するドリームイーターだったが、正直、もう勝手にやってろという感じである。迫り来る愛華の拳は幾重にも重なり、凄まじい連撃となって襲い掛かり。
「悪戯が過ぎましたね。夢を見るのはお仕舞にしましょう」
「深海より御出でませ。慈愛の刃、海竜の背鰭よ、愚にも付かぬ者共を千々に千切りて散り散らし給え」
ヒスイの織り成す雷が、レヴィアの繰り出す水の刃が、折り重なるようにして敵を穿つ。
「折角だから見せてあげるよ。……ボクの奥義を!」
蹂躙されるドリームイーターに、アヤメがにやりと笑って見せた。そんな彼女に続き、エングと克己もまた一斉に距離を詰め。
「我が体躯は重鈍。されど刃は飛燕の如く!」
高速の突きでエングが敵の体勢を崩したところで、アヤメと克己が大地を蹴った。
「この一太刀で、神すら斬ってみせる!!」
「白雪に残る足跡、月を隠す叢雲。私の手は、花を散らす氷雨。残る桜もまた散る桜なれば……いざ!」
振り下ろされる乾坤の一擲。そして、燐光を舞い散らせる螺旋の拳。
それは、正に究極の奥義と言っても過言でない一撃。自らの追い求めた武の極みを垣間見た瞬間、ドリームイーターは断末魔の叫びさえ上げる暇もなく、真っ二つに両断されて砕け散った。
●厨二の心は永遠に
戦いの終わった山の中。あれから、しばらく探したところで、青年は沼地の畔でブッ倒れているのを発見された。
「ん、無事でなによりだね」
「すまない……俺としたことが、まだまだ修行不足だったようだ。だが、いずれは必ず、邪竜の力を我が物にしてみせよう!」
もっとも、安否を確認するアヤメに対し、青年はあまり反省していそうにないので頭が痛かったが。
「でも、練習すれば結構それっぽい事できますよねえ……」
「ワタシの様な降魔拳士や刀剣士の中には、修行の末に力を手にした者も多く居マス」
実際、ケルベロスには似たようなことをやってのける者も多いと告げる斎とレヴィア。
果たして、この青年が力に目覚め、共に戦う日が来るのだろうか。それは、誰にも解らない。
作者:雷紋寺音弥 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年9月14日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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