怒りと悲しみのゾンビーズ

作者:森下映

「お、俺のゾンビコレクションがああああああ!!!」
 男は絶叫した。彼にとっては突然怪しい2人の女が部屋に入ってきたことよりも、その女達が次に行った行為――何年もかけて集め続けたゾンビ関連のグッズ――ゾンビ映画のDVD、ポスター、フィギュア、ゲーム、エトセトラエトセトラ――が滅茶苦茶に破壊され始めたことに対する嘆きの方が、まずは勝ったに違いない。
 しかし直後、男はこの惨状を引き起こした張本人達へ怒りの矛先を向ける。
「よくも俺の大事なゾンビ達を……許さねええええっ!」
 思わず拳を振り上げた。だがその瞬間、2人の女に同時に心臓へ鍵を突き刺され、男はバタリとその場に倒れた。
「私達のモザイクは晴れなかったねえ。けれどあなたの怒りと、」
「オマエの悲しみ、悪くナカッタ!」
 第八の魔女・ディオメデスと第九の魔女・ヒッポリュテがそう言うと、傍らに2つの影が現れた。よくみるとそれは2体のアメリカのゾンビ映画のモブキャラにいそうなゾンビ型のドリームイーター。
 1体はフーディーを着てキャップを後ろ向きにかぶった青年風、もう1体は警官風。
 そして青年ゾンビは怒りに雄叫びを上げ、手にした鉄パイプを振り回しながら、警官ゾンビは悲しみにぶつぶつ呻き続けながら、連れ立って外へ出ていった。

「パッチワークの魔女がまた動き出したようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)の説明によれば、今回動き出したのは怒りの心を奪う第八の魔女・ディオメデスと悲しみの心を奪う第九の魔女・ヒッポリュテ。
「この2体の魔女はとても大切な物を持つ一般人を襲い、大切な物を破壊し、それによって生じた『怒り』と『悲しみ』の心を奪ってドリームイーターを生み出すようです」
 生み出されたドリームイーターは2体一緒に行動し、周囲の人間を襲ってグラビティ・チェインを得ようとする。
「悲しみのドリームイーターが『物品を壊された悲しみ』を語り、その悲しみを理解できなければ『怒りのドリームイーター』が殺害するとのこと。
「ドリームイーター達が被害を出す前に、撃破をお願いします」

 ドリームイーター達は、被害者のアパート付近をうろついている。
 戦闘になると青年ゾンビはクラッシャー、警官ゾンビはスナイパーとして戦い、青年ゾンビはエクスカリバール片手装備相当、警官ゾンビはリボルバー銃片手装備相当のグラビティを使用。加えて2体とも噛みつきやひっかきといった近接攻撃も行ってくる。

「ドリームイーター達を倒せば、被害者の方も目を覚まします。どうか、よろしくお願いします」


参加者
藤守・つかさ(闇視者・e00546)
市松・重臣(爺児・e03058)
深宮司・蒼(綿津見降ろし・e16730)
薬師・怜奈(薬と魔法と呪符が融合・e23154)
レイヴン・クロークル(水月・e23527)
宝来・凛(鳳蝶・e23534)
トープ・ナイトウォーカー(影操る戦乙女・e24652)
朝霞・結(紡ぎ結び続く縁・e25547)

■リプレイ


「魔女達の共同作業ですか……」
 エレガントな服装の上に白衣を羽織り、ヒールで闊歩。薬師・怜奈(薬と魔法と呪符が融合・e23154)。
「怒りと悲しみ、両方を同時に得るには手っ取り早いのだろうが……ここまで直接的とはな」
(「早々に所在を突き止められればよいのだが」)
 こちらは<疾駆者>の名を持つ使いこまれた編み上げの軍靴で。軍人らしい姿、褐色の肌に銀の髪が映え、軍帽の下には尖り耳が覗く。トープ・ナイトウォーカー(影操る戦乙女・e24652)。
「まぁ、どちらにせよ阻止致しますが。あら、」
 怜奈が人影に目を止め、
「この付近で戦闘が予測されていますわ。避難願いますわ」
 こうして2人が念の為見回っている間、他の番犬達も敵の気配を探っていた。
「ん~……その魔女って奴ら、わざわざ人の好きなもん壊して回ってんの? 何かデウスエクスの割にやることセコくね?」
 島育ち、屈託のない物言いはいつも皆を和ませる。小ぶりな角に翼と尻尾、前腕を護る鱗に爪は名前の通りに蒼蒼と。大綿津見の加護を祈る古風な和柄の服装はまさに彼の為のもの。深宮司・蒼(綿津見降ろし・e16730)。
「人の夢や心を踏み躙り利用しようとは許し難いのう」
 一方同じドラゴニアンでも長身の62才。とはいえ精神年齢は蒼と大して差がない可能性も否定できない。市松・重臣(爺児・e03058)。そして、
「あれ、どうしたのミュゲちゃん」
 朝霞・結(紡ぎ結び続く縁・e25547)は藤守・つかさ(闇視者・e00546)の漆黒の濃淡が美しい執事服の影、しがみついているテレビウムのミュゲを見つける。
「お化けが怖いらしい」
 レイヴン・クロークル(水月・e23527)がミュゲを抱き上げた。それでもまだぷるぷるしているミュゲに、
「大丈夫だよ、ミュゲちゃん! 一緒に頑張ろうね?」
 結が言い、ボクスドラゴンのハコも回りを飛んで励ます。と、
「気になることでも?」
 何か考えている様子のつかさにレイヴンが言う。つかさは、
「ああ。臭いとか、どうなんだろうと思ってな。 ……何かおかしかったか?」
「いや、そんなことは、ない」
 そこを気にしているのかと笑いを噛み殺すレイヴンである。
「殺気フィールド展開完了ですわ」
 怜奈達が戻ってきた。
「サンキュー、怜奈さん。見回りもありがと! トープさんも!」
 蒼が言う。トープが軍帽を少し下げてみせた。
「周囲にもう人気はなさそうやね。おおきに」
 宝来・凛(鳳蝶・e23534)も礼を言い、ウイングキャットの瑶も尻尾をゆらり。
「それにしてもゾンビとは……いや、趣味は十人十色じゃからな」
 髭を生やした顎を撫で、重臣は一人頷くと、
「何としてでも生き残り――悪夢は此処で断とうぞ!」
 この爺、ノリノリである。その時。
「ハチ、爺児、来たで!」
 凛が刀を抜く。例の酔っ払いが如き歩き方で近づいてくる、2つの影があった。


 白い顔には紫斑が浮き、首や手足はありえない方向に曲がっている。腐臭はない様だ。
「なあ……なあ……聞いてくれ……」
 警官が、銃を両手でいじくり回しながら喋り始めた。
「俺の……俺の……大事なゾンビコレクションが……壊されたんだ……うっ、うう……」
 涙の代わりに腐った体液の様なものが滴る。
「うっ、うう……わかってくれるだろ、この悲しみ……うっ、」
(「本心としては解る部分もあるんじゃが」)
「諸行無常、形ある物は壊れると云うじゃろう。泣いて八当たりして何になろうか」
 重臣が言い、
「ゾンビの人形だろ? そんなんがそんな大事なのか? 何が悲しいのかよくわかんねーや」
 蒼が言った。すると、
「な……ん……だ……とおおおおおお!!!」
 青年の方が鉄パイプを振り上げ殴りかかってきた。謎のダッシュ力はまさにゾンビ。あっという間に距離を詰めてきたが、
「ゾンビ如きに殺られては自宅警備員がすたるわ!」
 重臣はカッと赤い目を開きつつ、勇壮な翼で威嚇しながらの踏み込み応戦。鉄パイプとバールが激しい金属音を立てたかと思うと、ものすごい勢いで連続の打撃と攻防が繰り返される。度々重臣も傷つくが足元は揺るがず、精神力だけで黒鎖を操り、守護陣を描き出した。トープは2人の動きを注視しながら、警官へ掌を向ける。
「本当にゾンビ映画やゲームの様ですわね」
 指先に符をはさんだ怜奈が言えばたちまち風景透ける御業が降ろされた。
「ゾンビとか得意ではありませんので、早目に御退場願いましょうか」
 トープの撃ち出した吹雪の螺旋と怜奈の差し向けた御業の巨大な手が同時に警官へ向かった。警官は顔を上げないまま人間業とは思えない不可解な横っとびで回避を試み、かつ裏へ返るように曲がった肘先から明後日の方向へ引き金を引いた。
「うお! まてぇーーっ!」
 庇いに走る蒼。警官は結局逃れられず御業に捉えられ、螺旋に凍らされ、さらには八雲の神器の瞳に火を点けられる。と空気を斬る音に、バネが入ったような細い脚で黒猫の尻尾なびかせ走っていた結の猫耳がいち早くピクリと反応した。だが自分の役割が先と結は九尾の扇に問いかける。
(「力をかしてなんだよ」)
  応え扇に宿るあやかしが陣形をそより囁いた。同時結の瞳に一撃を耐える覚悟が宿る。しかし、
「させねぇっ!」
 蒼が結の前へ飛び込み、蒼い服の向こう赤い血が飛沫いた。自分を庇っての傷、気にならないわけはないが再び耐え、結は仲間の陣形を見極めると破魔の力を付す。ハコは水竜らしい空気抵抗を感じさせない姿で泳ぐ様に接近、警官へ氷雪のブレスを吐きかけた。
「蒼くん!」
「気にすんなって!」
 蒼が胸の前で印を結ぶと目の錯覚の様に姿がだぶる。そこへ降り注ぐ大量の紙兵。
「ミュゲ、気をつけろよ」
 地獄を隠した腕に装着した縛霊手から加護の形代を散布したレイヴンが、ミュゲに声をかけた。近くに行く必要はないが今後の危険を伴う攻撃、ミュゲは気丈にパラソルを振ってみせると、強烈な閃光を放つ。
「うう……う、う、」
 警官は眩しさに身体を丸めた。片方の眼球がぶらりと垂れ、ダメージは負った様だが錯乱はみられない。つかさはそれを見届けつつグラビティを変換する。
「『我が手に来たれ、黒き雷光』」
 縦に空間を斬り裂く様に起こるいくつもの黒い雷の筋は、漆黒のスイッチへと集束。手首の黒革に目貫された銀が光り、黒手袋の指がスイッチを押した瞬間、
「ギャアアアッ!」
 感電した青年が棒立ちになり、重臣はその隙に間合いを抜けた。凛も牽制を任せられることに感謝しつつ瑶と警官に狙いをつけ、盾役の為にもと迅速な撃破を誓う。
「どんな形であれ――大切なもんを滅茶苦茶にされた時の思いは、うちも良う知っとるよ」
 引き換え右目に傷を残し、焔燻らせ戦っている。けれど、
「よくも人の心まで壊す様な真似してくれたね。絶対許さへんから!」
 髪に咲く椿は潔き凛そのもの、それを柄に持つ羽織翻し瑶は一度高度を上げると、鋭い爪を伸ばして急降下。その下凛の黒髪が舞い上がる。現れた化身達の炎に煽られて。
「悪趣味な夢喰の手先は焼き尽くしたる……ゾンビは火炙りが定番とかいうし、丁度ええやろ!」
 さぁ――遊んどいで。
 紅い胡蝶が一斉に飛び立ち、瑶の爪が警官の顔面を猫らしい動きで強烈に引っ掻いた。灰すら残すなとの令の通り、蝶は警官の身体中業火の花を咲かせてゆく。
「ググググ、グアアアア」
 それを見てか青年は歯をむき出し、涎をだらだらと垂らした。かと思うと鉄パイプを回し始め、
「なんだあれ、すげー速さ!」
 蒼が目を丸くし、つかさは眉を顰め気味、
「円盤投げかっての……」
「グアアアアーー!」
 高速回しからのぶっ放し。しかしたんと地面を蹴って、唐草模様に赤紐凛々しく八雲が、鉄パイプへ体当たり。
「八雲ようやった!」
 重臣が声をかけ、ミュゲがすぐに動画を流す。そして青年の前、漆黒の執事と白狼が立ち塞がる。
「お前の相手は俺らだよ」
「まずは俺達と遊んでもらう……と、ゾンビに言葉が通じるのだろうか?」
「さあな」
 瞬間青年の懐、空の霊力を宿したオーラ纏う黒靴でつかさが蹴りを食らわせ、
「ゾンビに効くかは知らないが……少々、痛いぞ」
 追いすがるレイヴンの獣化した腕の毛並みは耳や尻尾と同じ色に煌めき、変化の合間、一瞬白革に銀も垣間見え。頭から殴り倒せば、後ろへよろけた青年の帽子が落ちた。
「うぇっ、グロっ!」
 思わず蒼が言う。髪は抜け変色した頭皮には血管が透け、所々中身さえ見える。
「って、んなこと言ってる場合じゃねぇよな! 『霧幻の壱式……捕らえろ、朧月!』」
 大海原に立つ様に、全ての波が彼の味方をする様に。空気中の水分が海月の姿をした霧の式鬼となり、その触手が青年を絡め取る。と、
「ウッ、ウッ、ウグエエエエ!」
 警官が叫び背中を大きく反らせ、拳銃は口に咥えてブリッジに。回復行動らしいが、
「詳しい訳ではないが……何か違わないか?」
 そう言ったレイヴンに肩をすくめるつかさだった。


「!」
 襲いかかってきた青年の気配に、トープが軍靴のつま先で飛び退いた。
「ゾンビ化はしないだろうが……噛まれて気分の良いものではないからな」
「あちらはあの格好で口で撃つ方がさらに正確とか……どういう事なんですの?」
 憤慨気味に言う怜奈にそやねと笑い、凛は構えた刀を振り切る。瑶の珠繋ぎのリングが銃を縛りつけ、警官が時ごと凍りついた所を、トープが放った炎龍の幻影が飲み込んだ。そして、
「『エルバイトシュトゥルム』」
 怜奈が優雅な手つきで電気石へ秘薬を垂らす。極限増幅された静電気が巻き起こった突風に乗って放たれ、
「ウギイイイ!」
 ブリッジで逃げる警官を追い詰め、直撃した。が、警官はさらに高速で移動する。
「グゴオオオオ!」
「させぬわ!」
 重臣が遮りブリッジの腹を踏みつけた。警官は仰向けにつぶれたかと思うと重臣の足にしがみつき、牙を突き刺す。
「誰も倒れさせないんだから!」
 結は手の上に月の様な光球を作り出すと、重臣へ思い切り投げた。ハコも警官へブレスを見舞い、
「かたじけない! じゃが……遅かったかもしれん」
「爺児?!」
 凛が驚く。振り返った重臣の顔は既に屍の様相。
「せめて完全に屍人となる前に、道連れにしていこうぞ。『儂の本気を見せてしんぜよう』」
「爺児ーーーー!」
「凛よ! 八雲を頼んだぞ!」
「やのうて……手に持っとるのパイナップルやよ……果物の」
「わん」
「ぬ?!」
 見れば片手にぱいなつぷる。しかし無事に爆発し、辺りは炎に包まれて――。
「ふう、少々焦ったわい」
 警官は跡形もなく、笑う重臣だけが立っていた。
「さて……」
 気を取り直してトープがペネトレイターを青年へ向ける。
「あとは貴様だけだ」
「そうですわね」
 怜奈も貴石を口元に当て、
「そろそろ終幕に致しましょうか」


「遅いんだぜっ!」
 蒼が鉄パイプの前に飛び込んだ。状態異常の付与に増大、攻守の連携と戦闘は終始危なげない。蒼は下がろうとした青年の腹を巨大な両剣の様な二枚刃の手裏剣、島渡で切り破る。
「やっぱグロい……」
 腹からぼたぼたと中身を垂らす姿はアレだがそれはそれ。間髪いれずに妨害役ながら高命中、黒いバスターライフルを遠目で構え、つかさが光弾を発射した。
「『黒き雷に恥じぬ様に』」
 レイヴンの短かな詠唱は、言わせれば此方の台詞と返されるだろう、相棒への。スローモーションの様にポジションを変えていく間に左眼の地獄から溢れる焔が弾丸と変化、両手の漆黒と白銀のリボルバーに装填される。焔の残滓残る白雷は彼を遠くに連れていきそうに神々しく全身を迸り、だからこそ言葉にも意味はあるのだと。解き放たれた弾丸は電磁砲の如く空間を斬り裂き、青年に空を仰がせた。
「今回復するね!」
 言った結に、ミュゲと重臣がそれぞれ『らしい』合図を送り、ミュゲは動画を流し、重臣も力強いオーラを溜めて回復を担う。
「此処は朝霞殿に任せようぞ!」
「了解です、だよ! 『凍てつく刃、断ち切る華となって、そこに』」
 皆を癒す為に使ってきたグラビティを今は戦いの薄刃へと変換する。守る意味では同じ事。魔力に銀のロケットが浮き上がり、青白い華の様な刃が結の全身から放たれ、青年を引き裂いた。続き怜奈の御業が放った炎弾にゾンビは激しく燃え上がり、
「消え失せて貰うで!」
 弧を描く斬撃となった凛の一閃がに捕らえられた。そして、
「『霊子よ、我が手に集え。彼の者を切り裂く刃となれ』」
 トープの両手に仄かに光る非実体の剣が生成される。動く屍を斬るにも恐らく相応しい。片側にフェイントの一回し、鉄パイプを避けて胸へ突き刺すと、みるみるうちにゾンビの眼が黒くなり、身体が溶け出し、溶け落ち、消えていった。


「お疲れさん」
 つかさが言う。
「お疲れ様でした、なの! ハコもお疲れ様!」
 結はハコをぎゅっ。
「よく頑張ったな、結もハコも……どうした、ミュゲ?」
 つかさが抱きついてきたミュゲを抱き上げてあやす。その様子に微笑むレイヴン。
「頑張ったご褒美にコンビニで何か買ってやるよ。あー……蒼と結もな?」
「良いの? なら中華まんかおでんがいいな! さすがにこの時間だと寒いね!」
「じゃー俺、肉まんがいー……」
「あれ、蒼くんおねむ?」
「んー……そんなこと……ねぇ……」
 結に言い返しつつも蒼は目を擦っている。怜奈は、
「私はお風呂に入ってサッパリしたいですわね。雰囲気だけでもまだ気持ち悪いですわ」
「いや風呂は売ってないが……さっぱりする飲み物くらいなら奢ってやれるぞ?」
「十分ですわ」
「そういえば被害者さんのコレクション」
 道中、結が言う。
「可哀想だけどまた集められるといいね? ゾンビの良さとか良くわからないけど……」
 結にゾンビにはまられても少々複雑かもしれない。と思う面々だった。


「ヒール……は、形が変わるで駄目か。何とか立ち直ってくれる事を祈ろう」
 再度入手可能な物があるか調べてみるかのう、と瑶を猫じゃらし・改で遊ばせつつ重臣が言う。凛も、
「大事な品やし、完全に元の形に戻せんのは心苦しいね。せめて仇は……あの夢喰共は、必ず討ったる」
「うむ。敵にはああ言ったが、大切な物を壊されれば心も砕けかねん。儂もよく蒐集品が動物達の玩具に……うっ頭が」
 瑶と凛は素知らぬ顔。
 と、トープはそっと被害者の宅を訪ねていた。無事意識を取り戻してはいたが、部屋の惨状は変わらない。気落ちする男に、
「落ち込むな……とは言わん。ただゾンビは襲い掛かってきてこそ、だろう?」
 トープは貴殿のゾンビ達の動く様は鬼気迫るものがあったと慰める。そして、
「損傷が小さいのは直してやれ、我輩も手伝おう。 ……これはどうすれば良いのだ?」
 破片を拾い上げ振り向いた凛々しくも美しいヴァルキュリアに男、思わず、
「あ、あの!」
「何だ」
「お、お名前は……」
「?!?」

作者:森下映 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年10月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 3
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