クッキーゴーレム

作者:天木一

「おっやつー♪ おやつー♪ 今日のおやつはなにかなー?」
 少女がダイニングの棚を開けると、そこには平べったくて丸い大きな缶が置かれてあった。
「あ! クッキーだーー!」
 少女が取り出してテーブルに置くと、パカッと開ける。そこには色とりどりの美味しそうなクッキーが所狭しと並べられていた。
「わー! どれもおいしそー! チョコのやつもおいしいしー、アーモンドのもカリカリしておいしーよねー。でもやっぱりこの赤いジャムの乗ったのにしよ!」
 少女はアプリコットジャムの乗ったクッキーを取り出すと、パクッと噛んで半分を食べる。そしてモグモグと目を輝かせて飲み込むと、残りの半分も食べてしまう。
「おいしーー! は~やっぱりクッキーはカンに入ってるのが一番だよー」
 次々と種類を食べていき、缶の中のクッキーはどんどんと山を減らしていく。
「は~いくらでも食れちゃうけど、食べすぎるとママにおこられちゃうからね!」
 ここでお仕舞いと、最後に一枚クッキーを手にして蓋を閉じる。
「おいしかったー、もうクッキーの山にうまりたいくらいだよ」
 少女が満足そうに最後のクッキーを口に含む。その時だったグラグラと家が揺れる。
「わっなに?」
『クッキー……ゴーーーレーム』
 少女が振り向くと、ドドーンとそこに現れたのは巨大なクッキーが張り合わせて出来上がった人型の怪物だった。
「おっきな……クッキー?」
 少女が驚いて硬直していると、クッキーが大きな足を上げて少女を踏み潰す。
「わわっまって! クッキーにふみつぶされるのはイヤだよー!」
 バッと汗を掻いて起き上がったのは少女の眠る暗い寝室だった。
「巨大クッキー……の夢……ふぁ~おっきなクッキーだったなーあんな夢はじめて見たよ」
 驚いたと少女は微笑みながら汗を拭う。するとその胸に鍵が突き立てられた。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
 目の前に現れた魔女が鍵を引き抜く。その胸には傷一つないが、少女は意識を失いベッドに崩れ落ちた。
 魔女は現れた時と同様、音も無く姿を消す。代わりに甘い香りと共に現れたのは巨大なクッキーで出来たゴーレムだった。
『ゴーーーレーーム……』
 クッキーゴーレムは壁を突き破り、闇の広がる外へと出ていった。

「新たに美味しそうなドリームイーターが現れるのですよ……!」
 無表情な機理原・真理(フォートレスガール・e08508)がケルベロス達に事件が起きる事を告げる。
「第三の魔女・ケリュネイアが少女の夢から奪った『驚き』を使い、ドリームイーターを生み出して人々を襲わせるようです」
 続けてセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が詳しい説明を始めた。
「ドリームイーターはグラビティ・チェインを奪う為に人々を襲います。皆さんにはそれを阻止し、少女を助けてあげてほしいのです」
 ドリームイーターを倒せば、眠りに就いた少女も目を覚ます。
「ドリームイーターはクッキーで出来たゴーレムの姿をしています。全長6mもある巨体で、殴ったり踏みつけたりといった攻撃をしてくるようです」
 単純な攻撃方法だが、その巨体が繰り出すと威力も高く避けにくい攻撃となるだろう。
「場所は神奈川にある住宅街で、敵は通りすがりの人を驚かせてから攻撃してくるようです。そこで驚かない相手をまずは狙って攻撃してくるようです」
 『驚き』から生まれた所為か、相手を驚かせようとする。そして驚かない相手には腹を立てるようだ。それを利用すれば攻撃される対象をあるていど制限できるだろう。
「クッキーは美味しいですが、クッキーで出来た怪物に踏み殺されるなんてぞっとしません。犠牲が出る前に皆さんでこのクッキーを退治してください」
 セリカが宜しくお願いしますと頭を下げ、出発の準備に取り掛かる。
「巨大クッキーのゴーレム……美味しそうです。だけど人を害するようなのは放ってはおけないのですよ! みんなで食べ……た、退治してやるのです!」
 真理の言葉に大きく頷き、ケルベロス達はクッキーを完食する為に動き出した。


参加者
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
富士野・白亜(白猫遊戯・e18883)
マルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)
地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)
エレコ・レムグランデ(小さな小さな子象・e34229)
ポン・ポシタ(月夜の白狼・e36615)
ウルスラ・ワルフラーニ(プラス・e37377)
シャーロット・ファイアチャイルド(炎と踊る少女・e39714)

■リプレイ

●バターと甘い香り
 夜遅く人々が寝静まった街を、ケルベロス達は少し距離を取りながら敵を探す。
「さて、敵を探そうか、クッキーなら甘い香りがしそう」
 マルレーネ・ユングフラオ(純真無表情・e26685)は表情を変えぬまま、辺りの匂いを嗅いでみる。すると道の先から砂糖とバターを焼いたような甘い香りが流れてくる。
「クッキーのゴーレムですか……美味しそう、ですね」
 無表情ながらも機理原・真理(フォートレスガール・e08508)は足取り軽く敵の姿を探し、ライドキャリバーのプライド・ワンが黄色いヘッドライトで辺りを照らす。
「クッキーゴーレムか。ドリームイーターの行動は認められないが、普通においしそうなのが腹立つな」
 一般人が居ないか周囲を見渡した富士野・白亜(白猫遊戯・e18883)は、大きなクッキーを想像してピクリと猫耳を動かした。
「この辺りには人は居ないようです……」
 地留・夏雪(季節外れの儚い粉雪・e32286)も反対側を視認して人が居ないのを確かめた。
「クッキーを早くさがさないと」
 シャーロット・ファイアチャイルド(炎と踊る少女・e39714)は杖を梟に変え、カメラを持たせて空から捜索する。
「戦いは怖いけれど、同い年くらいの子が危険な目にあうと聞いたら黙っていられない……」
 そうカッコいい台詞を告げるポン・ポシタ(月夜の白狼・e36615)の口元は、クッキーの甘い香りに涎が垂れそうになっていた。
「我輩クッキーは大好きなのパオけど、こんなでっかいのは初めてパオ!」
 6mのクッキーと聞いたエレコ・レムグランデ(小さな小さな子象・e34229)は、興奮した様子で巨大クッキーのゴーレムを思い浮かべる。
「どんなゴーレムかわくわくなのパオ!」
 そして早く出会いたいと歩く速度を上げた。
「じっちゃんの約束のとおり、太陽の戦士としてでうすえっくすをブッたおしてやるゾ!」
 気合を入れるウルスラ・ワルフラーニ(プラス・e37377)は、そこで仲間達がクッキーの話題ばかりを口にしているのに気づく。
「えっ、クッキー? ちょっとくらい食っても……」
 もじもじしながらもどんな味なのだろうかと興味津々だった。
 そんな時、甘い匂いが強くなったかと思うと、曲がり角の先が壁になっている。否、それは壁ではなくクッキー。大きなクッキーが繋ぎ合わさって出来たクッキーゴーレムの姿だった。
「見つけたのですよ!」
 真理の声にケルベロス達が集まり、ゴーレムと対峙した。

●クッキーのゴーレム
『クッキー……ゴーーレーーーーム』
 威嚇するようにゴーレムは両腕を広げてケルベロス達の前に立ち塞がる。
「わぁぁ! おっきいのパオ! 我輩のゴーレムよりずーっと大きいのパオ! すごいのパオ!」
 目一杯エレコは飛び跳ねるように驚き、感嘆の声を上げた。
「ぜーーーんぶ、クッキーでできてるんだ! すごーい!」
 目をキラキラさせてゴーレムを見つめ、シャーロットは素直に驚きを表に見せる。
「クッキーのゴーレム……だと」
 敵を下から上まで確認した白亜は耳をパタリと動かして驚きを表現してみせた。
「わっ……想像していたよりも大きくて迫力があります……!」
 素直に夏雪は驚きを見せて、目を見開いてゴーレムを見上げた。
「大きい! 食べきれるだろうか……」
 その巨大さにポンは驚き、完食するつもりだった心が不安でたじろぐ。
「わー、怖いなあ……」
 棒読みでマルレーネが何とか怖がってる演技を頑張ってしてみせた。
「そ、そんなのじゃビックリしないゾ! おいしそーなだけだゾ!」
 ビクッと反応するのを堪えたウルスラは、キッと見返して棍に炎を纏わせて殴りつけた。同時に微動だにしないボクスドラゴンのトラミもブレスを吐きつける。
『ゴーーレムーー』
 すると驚かなかったウルスラに向かってゴーレムは一歩踏み出す。
「ん……前にテーマパークで見たお菓子のお城の方が、大きくて凄かったかも、ですね」
 内心ワクワクしながらも表情を変えずに真理はゴーレムを見上げる。
『ゴーーレムーー!』
 するとゴーレムが怒ったように拳を振り下ろしてきた。それに対して真理は特別仕様のチェーンソー剣で受け止める。駆動する刃が拳をゴリゴリと削り始めた。
「さて、じゃあ、行こうか!」
 シャーロットが古代語の詠唱をすると、ゴーレムを閉じ込めるように4面の炎の壁が出来上がる。
「クッキー何人分でしょうか……」
 そんな想像をしながら夏雪は亡き人を悼む歌で魂達を呼び寄せ、仲間達に纏わせて力を与えた。
「クッキーゴレゴレをおどろかせてやるゾ」
 高くジャンプしながらウルスラは漆黒のボールを投げ、ゴーレムの頭にぶつけて悪夢を見せる。
『ゴーーーレム!?』
 蟻の集団が這い上って全身のクッキーを齧る幻にゴーレムが怯む。
「我輩のゴーレムも見せてあげるパオ!」
 対抗するようにエレコは小さなゴーレムを大量に錬成して、巨大ゴーレムに取りつかせる。ゴーレムが腕を振るって振り払うが、一振りする間に次々と他の個体が張りついて動きを妨害した。
『ゴーレム―』
 巨大な足を踏み出し、電柱を蹴り倒してゴーレムが踏み潰そうと迫る。テレビウムのトピアリウスはゴーレムを止めようと割り込んで、押さえ切れずに蹴り吹き飛ばされた。
「踏まれそう、まずは動きを鈍らせる」
 マルレーネは御業を呼び出してゴーレムに組み付かせ前進を止め遅くさせる。
「動いていると食べにくいですから、動きを止めるのですよ!」
 真理はカモミールの花を咲かせる植物の蔓を伸ばし、ゴーレムの脚に絡みつけた。そしてプライド・ワンは炎を纏って突進してゴーレムの脚にぶつかる。衝撃にゴーレムの脚が後ろに下がった。
「思いっきり食ってやるぞ」
 そこへ白亜は地獄の炎で自らを覆い、ローラーダッシュの加速と共に燃え盛る蹴りを腹に叩き込むと、クッキーの焼ける甘い香りが漂う。そして離れ際に白亜は割れている部分からクッキーを頂戴して口に放り込んだ。
「こんなに大きくて色んな種類のクッキー、全子どもの夢なのだ……」
 じーっとクッキーを見つめたポンは全身に氷の粒を纏い、突進して思い切りパンチを左脚に叩き込む。そして勢い余って顔から衝突してチョコクッキーに埋まった。
「ん、美味しい……」
 ずぼっと顔を抜いたポンは頬一杯にクッキーをもぐもぐと食べていた。
「ではまずはそのチョコチップのクッキーをいただくのです!」
 敵の足元へ近接した真理はチェーンソーを薙ぎ払い、右足首から先を斬り飛ばしてその破片の口に運んだ。
「ん……美味しいのです。マリーも食べてみるのですよ」
 一緒に食べようと欠片をマルレーネに手渡す。
「真理、ありがとう」
 小さく微笑んでクッキーを食べながら、マルレーネは魔法光線でゴーレムの足先を撃ち地面ごと石化させた。
『ゴーレムー!』
 ゴーレムは無理矢理足を動かして石になった部分を切り捨てながら大きく踏み出す。
「まっタ! オレが先にあいてするゾ!」
 自分が相手だとウルスラは炎纏う棍で攻撃を受け止めるが、堪えきれずに後ろに吹き飛ばされる。
「大丈夫です……すぐに痛くなくなります……」
 夏雪は雪の様に泡雪状のグラビティを降らし、ウルスラを覆い尽くすようにして傷を癒してゆく。
「動力はどうなってるパオ? それにどうやってクッキーで重量を支えてるパオ?」
 エレコは氷の騎士を召喚し、そのランスでゴーレムの胸を貫き傷口を凍らせると、あちこち移動しながらゴーレムを観察して思案する。
「クッキー♪ クッキー♪ あーまいクッキー♪」
 自作のクッキーの歌を唄いながらシャーロットは杖を白梟へと変え放つ。飛翔する梟はゴーレムの脚の傷口に爪を突き立てた。
「おいしいな……次は何味にしようか」
 猫耳を上機嫌に動かした白亜はハンマーを砲に変えて砲撃を行い、ゴーレムの胸に着弾させてマーブルクッキーを砕きその飛び散る破片をパクッと口でキャッチした。
「次はチョコチップにするのだ」
 跳躍したポンは飛び蹴りを脚に浴びせ敵のバランスを崩す。そこに飛び掛かりクッキーの破片を奪い取った。

●甘いクッキー
『ゴーーーレーーーム!!』
 体を構成するクッキーがボロボロになったゴーレムが吠えると、宙に新たな巨大クッキーが何枚も現れ、ゴーレムの体に張り付いていく。一回り大きな体となってゴーレムは拳を振り下ろした。アスファルトが砕け衝撃波にケルベロス達が薙ぎ倒される。
「あれ、やっつけたら食べていいんだよね! ね! ね!」
 満面の笑顔を浮かべクッキーの事で頭を一杯にしたシャーロットは、炎でゴーレムを囲み動きを封じようとする。
『ゴーレムーー』
 だがゴーレムは拳で炎を突き破り、強引に表面を焼いて甘い香りをさせながら炎を突破し、ギロリとシャーロット見下ろした。大きく拳を振り上げて叩き潰そうとする。そこへトラミは体当たりして落下地点を逸らして地面に拳が埋まり、放射状に広がる衝撃波から仲間を守ろうと真理が前に出て受け止める。
「幾ら食べても無くならないクッキーか、家に一つ欲しくなるな」
 背後から白亜はナイフを突き立てて背中のセサミクッキーを切り抜き、口に放り込んで反撃の前に急ぎ離れる。誰も居ない場所をゴーレムの裏拳が空振った。
「うーん、これ以上観察しても得るものは無いパオ、ならさっさと終わらせるパオ!」
 もう十分観察は済ませたとエレコはチェーンソーで斬りつけ、回転する刃がガリガリとクッキーを削り出すと、そこへトピアリウスも凶器でゴリゴリとクッキーを削り出した。
「……! 甘くて凄く美味しいです……!」
 クッキーの破片をキャッチした夏雪は口に入れて頬を緩めながら、粉雪を降らして真理の治療をする。
「どれも美味しいのだ、これならいくらでも食べられそうなのだ……」
 クッキーを味わいながらポンは大鎌を振り抜き、ゴーレムの脇腹を斬り裂いて新たな味のココナッツクッキーを手に取る。
「次はアプリコットジャムをご馳走になるのです!」
 どこか楽し気に真理はチェーンソーを激しく駆動させ、轟音を鳴り響かせながら上腕部を斬りつけてクッキー装甲を削り取った。そして新たなクッキーを手にして幸せそう齧る。
「一口大に崩して、食べちゃうぞ……食べちゃうぞ」
 駆け寄ったマルレーネは光の剣を生み出して、すれ違い様に敵の脚を斬り抜け、そのまま背後に回って背中を斬りつけた。砕いたオレンジクッキーをメタルが回収し、それをパクパク食べながら戦う。
「みんなおいしそうダ……オレも食べるゾ!」
 そんな様子にもう我慢出来ないとウルスラが飛びつき、棍で胸部を叩き割るとキャラメルクッキーを手に取って食べる。
『ゴーーーレーーーーム』
 ゴーレムは腕を振るって群がるケルベロスを引き剥がし、蹴り飛ばそうと足を振りかぶった。
「ナッツのも食感が違って美味しいです……あっ」
 つい食べるのに夢中になってしまった夏雪は慌てて気持ちを切り替え、手に付いたクッキーの粉を叩いて大鎌を握り、駆けながら振り抜き軸足を斬り裂いた。バランスを崩しゴーレムは尻餅をつく。
「そういえば味はまだ確認していなかったパオ、試してみるパオ!」
 エレコはチェーンソーを高鳴らせると、その衝撃でクッキーがボロボロと崩れ落ちる。それを手に取り口に運ぶと、バターの香りとバニラの風味が広がる。
「味はちゃんとした美味しいクッキーパオね」
 もぐもぐともう一つ大きなドライフルーツクッキーを手に取って味わう。
『ゴーーーレムーーー!』
 猛ったゴーレムは起き上がると拳を振り回して塀を壊し、ケルベロス達も纏めてミンチにしよう荒れ狂う。
「でうすえっくすはブッたおすゾ! でももうちょっと食いたいゾ……」
 クッキーを味わい目を輝かせていたウルスラは、倒すのか食べるのか悩み、それならばと敵の拳に跳び乗って更に跳躍して肩に乗り、棍で砕きながら食べる事にした。
「やっつけてクッキーゲットだよー♪」
 杖を向けたシャーロットは白梟を放ち、突っ込んだ梟がゴーレムの腹を貫通して抉り取って風穴を空けた。
「消えてしまう前にできるだけ食べるのだ……」
 名残惜しそうにしながらも氷の粒を纏ったポンは突っ込み拳を握る。だが打ち込む前につんのめって転んでしまい頭からゴーレムにぶつかった。ならばと食い千切る勢いでクッキーに齧りつく。
「もったいないが、そろそろ倒してしまわないとな」
 白金色の地獄の炎を身に纏い、白亜は白猫の姿となって駆け、燃える足場で宙を駆け昇って肩のアーモンドクッキーを噛み千切ってゆく。
「最後に一口」
 マルレーネがライフルの銃口を向け光線を放つ。閃光は左肩を撃ち抜きクッキーがバラバラに砕け、左腕がボロリと落下した。その腕から破片を回収し、レモンクッキーを口に放り込んだ。
「残念ですが、これでご馳走様です……!」
 心底残念そうな声を零して跳躍した真理はチェーンソーを振り下ろし、頭から股下まで真っ二つに斬り裂いてゴーレムを両断した。
『ゴーーレムーー……』
 倒れたゴーレムの体はバラバラのクッキーになり、砕けて散って跡形もなく消え去った。

●夜のおやつ
「クッキー美味しかったぞ。ごちそうさまだな」
 猫のように割れた壁から部屋に入った白亜は、気持ちよさそうに眠る少女に告げて持ってきたクッキー缶を枕元に置いて外に出る。
 そこではケルベロス達が壊れた道路や周辺の建物の修復作業を行っていた。
「かたづけかたづけ! トラミもいっしょにがんばろうナ!」
 ウルスラはトラミと一緒に周辺の片付けに走り回っていた。
「ああ……消えてしまった」
 がっくりとポンは消えたゴーレムを前に肩を落とす。
「きっとポンちゃんも今夜巨大クッキーの夢を見てしまうのだ」
 そこでクッキーをもっと食べようと心に誓う。
「き、きえちゃった……やっつけたら食べられると思ってたのに……」
 ガクリとシャーロットはショックを受けたように蹲った。
「クッキーは美味しく食べるのが一番パオね!」
 クッキーはゴーレムにするより食べるのが良いと、エレコは味を反芻する。
「お土産にクッキーを買って帰ろうかな……」
 孤児院のみんなにも食べさせてあげようと、夏雪は口の中に残る甘さに微笑んだ。
「クッキー食べたくなってきた。コンビニでクッキー買って帰ろう」
 まだ食べ足りないとマルレーネが真理に声をかける。
「もうちょっと、食べたいですね?」
 そんな事もあろうかと用意しておいた缶クッキーを取り出した真理は、蓋を開いてカラフルなクッキーをマルレーネの前に広げた。
「真理はよくわかってる。せっかくだしみんなで食べよう」
 軽く微笑んだマルレーネはがっかりしているシャーロットや他の仲間も誘い、皆で缶の中に宝石のように詰められたクッキーに手を伸ばす。
 バターの香りに包まれ、ケルベロス達は楽しい夜のおやつを楽しむのだった。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年9月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 4
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