●武の道に通ずるは人の目無して
『……ッ、ハァッ……!!』
気合いを伴う、掛け声が響くは、人気の殆ど無い、日本海に面した断崖絶壁。
ゴツゴツとした岩場の上を裸足で駆け、一閃。
流れる様に脚を振り上げ、蹴り上げる、一閃。
そして、更に地面寸止めで、振り落す拳の、一閃。
流麗で、少し独特なテコンドーの殴、蹴を、人気の無いこの場で自己鍛錬の特訓をしている彼は、テコンドーの選手。
……そんな彼の元へ、自身あり気な表情でやって来るのは……幻武極。
『ははは。そうか、そうかそうか!!』
笑う彼女に彼は、じっと睨み付ける……それに。
『お前の、最高の『武術』を見せて見ろ!』
構えを取る幻武極、それに彼は。
『ぬ……っ!?』
頭では馬鹿な事を、と思いつつも、その身体は闘争を求めるが如く、幻武極に対峙、攻撃。
しかし、幻武極はその攻撃を涼しい顔で受け続ける。
そして……暫しすると。
「僕のモザイクは晴れなかったけど、おまえの武術、それはそれで素晴らしいよ!」
と言うと共に、反撃の拳。
その拳の先には、鍵……深く、彼の胸を抉る。
すると、彼はそのまま其の場で崩れ墜ちる。
そして……その横には、彼に似た姿の者、ドリームイータが生まれいずる。
……次の瞬間、またもテコンドーの殴、蹴を確かめるよう、流れる様に技を繰り出していくと、幻武極は。
「いいね。さあ、おまえの武術を見せつけてきなよ」
と指示を与え、そしてドリームイーターは、断崖絶壁を後にするのであった。
「ケルベロスの皆さん、集まってくれたッスね! それじゃ早速ッスけど、説明させて貰うッスよ!」
と、黒瀬・ダンテは、集まったケルベロスに何時も通り挨拶をすると、早速。
「最近、武術を極めようとして修行を行っている武術家が襲われる事件が頻発している様なんッスよ。そして、この武術家を襲っているのが、ドリームイーターの幻武極、の様なんッス」
「幻武極は、自分に欠損している『武術』を奪い、モザイクを晴らそうとしている様なんッスね。ただ今回襲撃した武術家の武術ではモザイクは晴れない様なんッスよ」
「だけど、代わりにドリームイーターは、武術家のドリームイーターを産み出し、暴れさせようとしている様なんッス。出現するドリームイーターは、襲われた武術家が目指す究極の武術家の様な技を使いこなす様で、中々強敵の様ッス」
「幸い、このドリームイーターは人里離れた所にいたッスから、人里に到着する前に劇劇する事が可能ッス。つまり、周囲の被害を気にする事無く戦う事が出来る、って訳なんッスよ!」
そして、ダンテは詳しい情報の説明を続ける。
「今回、ドリームイーターはこの武術を使う一体のみで、他に配下の類いは居ない様ッス」
「それに周りは、木々の生い茂る森の中……視界は悪いものの、被害などを気にしなくて良いので、思う存分戦う事が出来るハズッス」
「ちなみにドリームイーターの扱う武術はテコンドーが元になっている様ッス。ただあくまでも基本は、ッスから、細かいところは我流を通している様ッスね」
「つまりこのドリームイーターの攻撃手段は、殴りと蹴りを活用した、格闘術の様ッス。特に地面からの蹴り上げ攻撃は、足元が地面ッスから砂埃を上げるという、地の利を使った妨害策もある様ッス」
「勿論、正面切っての殴、蹴は攻撃力も高めの様ッスから、直撃を受けない様に要注意ッスよ!」
そこまで言うと、ダンテは。
「どうもこのドリームイーター、自らの武道の真髄を見せつけたいと考えて居る様ッス。戦いの場を用意すれば、向こうから仕掛けてくると思うッスから、しっかりと準備して、ドリームイーターを退治為てきて欲しいッスよ!!」
と、拳を強く振り上げるのであった。
参加者 | |
---|---|
ラピス・ウィンディア(ビルシャナ絶対殺す権現・e02447) |
ユーフォルビア・レティクルス(フロストダイア・e04857) |
久遠・征夫(意地と鉄火の喧嘩囃子・e07214) |
彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456) |
天音・迅(無銘の拳士・e11143) |
チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323) |
ラジュラム・ナグ(桜花爛漫・e37017) |
リンドヴィルド・シュルッセル(独り戦場で哀を謳う・e38456) |
●海の音と
日本海を目指すケルベロス達。
そこには、テコンドーの自己鍛錬をしている、テコンドー選手が居るという……。
極々普通……と言えるかは解らないものの、自己鍛錬に切磋琢磨をしている彼。
そこに不意に襲いかかるは、ドリームイーターの幻武極。
「強くなりたい! って願望を狙われるとはねー」
「そうね。他人のものを奪っていては晴れる訳もないでしょうに……」
ユーフォルビア・レティクルス(フロストダイア・e04857)に、肩を竦めるラピス・ウィンディア(ビルシャナ絶対殺す権現・e02447)。
確かに、武術を扱う者を襲い、その強さを奪うという今回のドリームイーター、幻武極。
しかし強さ、というのは鍛錬するからこそ身につくものであろう。
「本来、技は無形の財産だ。それを被害に逢わせた上で掠め取っていく奴等は絶対に逃がさない。どんな事があっても、だ。必ず追い詰めてやる」
と天音・迅(無銘の拳士・e11143)が拳をぐっと握りしめると、ユーフォルビアと彼方・悠乃(永遠のひとかけら・e07456)も。
「そうだね。武術は自身の努力なんだし、奪えるなんて出来ないんじゃないかな?」
「ええ。武術は戦うための技ではありません。戦い続ける為の技です。より強くなろうとしてきた過去、より強くなろうとする今、より強くなろうとしていく未来……その歩みこそが武術。自身の特性を知り、戦いの場を想定し、工夫を重ねる事もそうです。砂塵、目潰しなら競技では反則でしょう。でも『武器』として考えるなら、それは人が戦う為の選択肢の一つ。ただ、理想の姿を探しても、そこに至る歩みがないなら、怖くはありません」
静かに悠乃の燃やす闘志、それにこくっ、と頷きながらユーフォルビアが。
「うん。ともかく、取り出された夢は元に戻しておかないとね。このままじゃ悪夢になってしまうし」
ニコッと微笑む彼女……対し不敵に微笑むはラジュラム・ナグ(桜花爛漫・e37017)。
「そうだね。武の高みを目指す姿勢は天晴だ。どれ、おじさんも極めし武術を拝見させていただくとしようか」
ぽきっ、ぽきっ、と拳を鳴らせるラジュラム、と、チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)が。
「そうだね。テコンドーベースの武術かー! なかなか面白そうな相手だねっ!」
元気いっぱい、ウサミミのロップイヤーを揺らしながら拳を振り上げると、久遠・征夫(意地と鉄火の喧嘩囃子・e07214)が。
「そうですね。テコンドー、ですか……この前カナダ人が使っている映像を見たし、かなり世の中に広がってんだよなぁ」
と言うと、リンドヴィルド・シュルッセル(独り戦場で哀を謳う・e38456)が。
「ああ。そう、テコンドーの発祥の地は韓国で、二本の空手と違って蹴り技が多彩なんだゾ?」
自慢げに言うリンドヴィルドに、征夫は更に。
「そうかそうか。まぁ……このテコンドー位、私の考えた技も広がれば良いんだがなぁ……後、殺す気のテコンドー使いが相手なんか滅多に無いし、後学の為にも頑張りますかね」
と不敵な笑み、そしてチェリーが。
「そうだね。よーし、がんばるぞー!」
と更に元気よく、拳を振り上げたチェリー。
そしてケルベロス達は、幻武極のドリームイーターが現れるという、日本海、断崖絶壁にほど近い森の中へと向かうのであった。
●波飛沫遠くに
そして、ケルベロス達は、ダンテに聞いた森の中を進む。
一人、隠密気流を纏った悠乃は、翼飛行で空から状況を確認……とは言っても、幻武極のドリームイーターの姿を空から見つけるのは、中々難しい。
……とは言え海岸線の方まで向かい、目を凝らせば……岩場で倒れているテコンドー選手の姿。
「……あそこに居ましたね。必ず救い出してみせます……だから、暫し、待って居て下さい」
と言うと共に、踵を返し、更に空から捜索。
……と、その一方、ドリームイーターを誘い出す為に、戦い易い場所を捜索。
「んと……ここならよさそうでしょうか?」
と征夫がこの辺りのガイド地図をベースに見つけた場所。
ある程度広い場所で、足元もしっかりしている事を確認すると、そこに大きな白い布へ虹色絵の具を取り出し……。
『武芸者求ム』
と大きく記す。
そして記した大布を、木々の間に広げ、更に幻影灯を地面に置く。
……そして。
「それでは、行きますよ」
と仲間達と頷き合い、信号弾を打上げる。
……周りに大きな音が響き渡り、周囲の鳥達が鳴き声を上げて、そこから飛んで行く。
そして……征夫が。
「さて、と。それではナグさん、お相手いただけますか?」
と言うと、ラジュラムは。
「ああ、せっかくこんな面白い舞台を用意してくれたんだしな! 折角だし、やるとするか!」
笑顔を浮かべ、剣術の型を披露するラジュラム。
一方、征夫はラジュラムに対し、刀と蹴りを使った、本気の対戦形式の型で対峙し、戦っている風を装う。
……そんな二人の対峙を見ながら、周囲を警戒する仲間達。
いつ、ドリームイーターが来ても良い様に、腱を伸ばす準備運動もしっかりと。
……剣戟の音がキンキンと鳴り響き……そして、その音に呼び寄せられたドリームイーター。
『……』
声は無いが、何処か不敵に微笑んだ様な気がしたドリームイーター。
そして、木々の間から飛び跳ねてきて、蹴撃。
「っ……!」
と、咄嗟にその一撃を斬霊刀で受け流すラピス。
『ッ……!』
睨み付けるドリームイーターに対し、ラジュラムとチェリーが。
「俺は花楽音流のラジュラム・ナグだ!お前さんの名と流派は如何に!」
「かなりの使い手としてお身受けする! ボクたちと勝負して貰おう!」
と言いながら、桜色の地獄の炎を展開、愛刀の楽来を振りかざすラジュラム。
対してドリームイーターは、ファイティングポーズを取り、戦闘態勢。
「お前、そのテコンドーの力を手に入れて、どうしようと考えて居る?」
と迅の問いかけ……当然、ドリームイーターは答えない。
そして更に迅が。
「武術の世界には『技を盗む』って言葉があるけど、それも日々の積み重ねあってこそだ。降魔や鹵獲の力で真似られるのも上辺だけさ。アンタのテコンドーもどきとやら、見せてみなよ。オレ達が叩き潰す」
と挑発すると、ドリームイーターは接近、シュッと蹴撃を放ち……ラピスがカバー。
「大丈夫ですか?」
と、すぐ悠乃がサークリットチェインを飛ばしてヒール。
と、その蹴撃を間近で目の当たりにしたリンドヴィルドが。
「間近で型を見れるとは思わなかったが、なかなか様になっているじゃないか」
と言うと、ユーフォルビアは。
「そうだね。でもただ無差別に使われるのは、それは武ではないな」
「ああ、確かにな……まぁ脚技が多彩の様だしな。脚を潰すか」
リンドヴィルドは不敵に微笑むと、ラピスとラジュラムが。
「そうね。さぁ、踊りましょう」
「いざ、尋常に参る!」
と宣戦布告、接近……するかと思わせて、ラピスは後方から、ローブ内のリボルバーを放ち、制圧射撃を放つ。
「私は武芸者ではないから名乗りはあげない。武芸者の皮を被った出来底無いを始末する、それだけよ」
と言うラピスにほほう、と笑みを浮かべるラジュラム。
「面白いねぇ……さて、と、それでは行くとするか!」
と至近距離から達人の一撃を叩き伏せるラジュラム。
それに征夫が連携し。
「我は久遠流武術宗家久遠征夫、そちらも武芸者ならば一手御指南頂きたいっ!」
と力強く宣言し、『久遠・肆の太刀「落月」』の一閃を叩き込み、更に迅は仲間に幻夢幻朧影で妨アップ。
リンドヴィルドがテイルスイングで、敵に足止めの一撃を叩き込む。
そして、クラッシャーのユーフォルビアは自分自身に魔人降臨で術アップで強化すると、チェリーが。
「さあ、キミの武術をボクたちに見せて!」
と言いながら、ロップイヤーを跳ねさせながら、アクロバティックな動きで接近、斉天截拳撃を叩き込む。
……ガスッと決まった一撃に、少し苦しげに抑えるドリームイーター。
そして、次の刻。
ラピスが。
「遊んであげるわ。全部受けきってから倒れなさい。臨・兵・闘・者・皆・陣・列・前・行ぉぉぉっ!」
と『氷霧熾烈脚』の一蹴を接近し、叩き込む。
そして流れる様に征夫が惨劇の鏡像、迅が時空凍結弾、そしてリンドヴィルドが猟犬縛鎖、と連携攻撃し、ダメージを蓄積。
そこまでの攻撃に、ドリームイーターは反撃……というか、悪あがきの如く、地面を蹴り上げ砂埃を巻き上げ、視界を阻害。
……しかしそんな視界阻害に負けず、腕をクロスし、砂埃を目には入れない。
そして。
「さぁ、第二ラウンドだ!」
と更に獰猛に笑い、敵の隙を突く絶空斬。
一気にバッドステータスを倍増させて、そしてチェリーが。
「一撃当千! 避けないと……危ないよ!」
と『赤河拳聖の鉄拳制裁』のホーミング効果の一閃をヒットアンドアウェイで仕掛けると、続けてユーフォルビアが旋刃脚。
テコンドーの蹴技に対抗するかの如く、その蹴撃を頭上から振り落し、ドリームイーターは地面に叩きつけられる。
……流石にそれで倒れはしないが、ケルベロス達の仕掛けた連携に、かなりのダメージであるのは間違い無い。
何とかもう一度立ち上がり、幾度となく蹴撃を連続して撃ち放つドリームイーター。
彼から受けるダメージは、メディックの悠乃が確実にサークリットチェインやマインドシールドで回復。
残るケルベロス達が連携を取り、その体力をどんどんと削る。
そして……彼が仕掛け初めて、十数分。
『……っ』
ケルベロス達の攻撃に耐えきれず、体制を崩したドリームイーター。
「おら、どうしたその自慢の脚はどうしたのかなぁ? キレが無くなって来たんじゃないか?」
とリンドヴィルドが挑発するも、もはやドリームイーターに反抗する力は残されておらず。
「そろそろ終わりかな? よーっし、いっくよー!!」
とチェリーの仕掛けるギロチンフィニッシュ。
その一閃が、ドリームイーターに襲いかかり……ドリームイーターは、そのまま崩れ墜ちていった。
●力と影と
そして、幻武極のドリームイーターをどうにか倒したケルベロス達。
「……ふぅ。どうにか終わったかな?」
と、安堵の一息を吐くチェリーに、迅が。
「そうだな。ほんとおつかれさん。またこうやって組みたいもんだな」
とにこり微笑むと、それに対し悠乃が。
「いえ……まだ終わっていません。被害者である武術家さんの救出も行わなければ……既に先ほど、武術家さんの場所は調べてあります。こっちです」
と翼を出現させ、武術家の元へ仲間を誘導する悠乃。
他の仲間達も、彼女に従い追いかけていくと……断崖絶壁のほど近くに倒れているテコンドー選手。
直ぐに彼を、メディカルレインでヒールする悠乃、他、負った傷を包帯などで手当。
……暫しすると、彼は意識を取り戻す。
『……ん……?』
周囲を見渡し、きょとんとしている彼……幻武極との記憶は、殆ど薄れてしまっている様である。
……ともあれ、そんなテコンドー選手は無事なのは間違い無い。
更に彼をヒールグラビティで回復しつつ……彼のテコンドーの身の上話などを聞くケルベロス達。
彼の心を解きほぐしつつ……彼が無事である事を確認すると、彼と共に、帰路へつくのであった。
作者:幾夜緋琉 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年9月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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