ガン・スリンガー・キル

作者:ハル


 バンッ、バンッ、バンッ!!
「オオオッ~~、これだ、これ!」
 夏の昼下がり。人で溢れる商店街に響き渡ったのは、連続した破裂音。その音が轟くや、頭部に風穴を開けられた複数の人々が地面に倒れ込み、物言わぬ死体となった。
「俺を気が遠くなる程の間、コギトエルゴスム化して閉じ込めたのは勘弁ならんが、それはさておき、生物を撃つこの感覚だけは変わらんな」
 言いながら、この凶行の原因たるエインヘリアルは口端を釣り上げる。そして、呆然とこちらを見上げる人々を見下ろし――。
「……動くなよ、お前等は『的』なんだからな」
 一旦腰のホルスターに納めた二丁の銃を抜き放ち、またしても一瞬の内に死体を量産し始める。
 ――あ、ああああ、ああああああああ!
 同時に、人々もようやく我を取り戻し、激しいパニックに襲われた。
「動くなって言ってんのに……」
 エインヘリアルの言葉は不満げだが、表情はむしろ嬉しげ。動き回る『的』に銃を向け、エインヘリアルは頭の中心を正確に狙撃する。
 そうして、すべての『的』の血と脳漿をぶちまけさせる事に成功したエインヘリアルは……。
「次の的を探しに行くとするかね」
 銃を回転させながらホルスターに納め、夥しい数の死体を踏みにじり歩きだすのであった。


「大変です、皆さん! 昼下がりの商店街で、アスガルドで凶悪犯罪者を犯し、拘束されていたはずのエインヘリアルが動きだしました!」
 山栄・桔梗(シャドウエルフのヘリオライダー・en0233)が慌てた様子で告げると、すでに会議室に集まっていたケルベロス達の表情も、真剣なものに変わる。
「一之瀬・瑛華(ガンスリンガーレディ・e12053) さんの懸念が当たってしまった……という事になりますね。このまま放置すれば、多数の死傷者を出すことは必至です。また、私達の味方として活動をしてくれているエインヘリアルの方々にも、よくない影響が出てしまうことが予想されます!」
 ただちに、現場となった商店街に向かって欲しい。そう告げる桔梗は、ケルベロス達に資料を配る。
「繰り返しますが、現場は人通りの多い商店街で、数は一体のみです。人口密度が非常に高いので、一般の方々を助けるためには、細心の注意が必要となっています」
 桔梗が、資料のページを一ページ捲るように告げる。
 ケルベロス達が現場に到着できるのは、エインヘリアルが出現する2分前。人口密度の多さ故、敵の出現までに避難が完了できるかは未知数だ。
「そのための時間稼ぎに利用できそうなのが、エインヘリアルの武装です。エインヘリアルは二丁の銃を装備しており、一旦銃をホルスターに納める行動を見ても、早撃ちに精通している様が見て取れます。そこで、エインヘリアルが行動を起こすよりも先に、彼に早撃ち勝負を仕掛ける……といった作戦も有効かもしれません」
 無論、エインヘリアルの到着までに避難を終えられるなら、それに越したことはない。有効な対策を取れれば、間に合う可能性もある。上記の案は、次善策として考慮して欲しい――桔梗は、そう頭を下げた。
「エインヘリアルは、不利な状況になっても、逃走の心配はありません」
 その点は、安心して欲しい。
「私達の味方をしてくださるエインヘリアルの方々のため、狙われた一般の方々のために、どうか皆さんで撃破してください! 後、言い忘れていましたが、避難が完了した後でも早撃ちの勝負を持ちかけることは有効だと思います」
 卑怯な手になるが、挑発に乗ってきた際の敵は隙だらけであろうから……。桔梗は、悪戯っぽく笑った。


参加者
芥川・辰乃(終われない物語・e00816)
葛城・唯奈(銃弾と共に舞う・e02093)
ティユ・キューブ(虹星・e21021)
君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)
ジェニファー・キッド(銃撃の聖乙女・e24304)
エメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)
植田・碧(ブラッティバレット・e27093)
園城寺・藍励(孤高なる白猫・e39538)

■リプレイ


 ジリジリと太陽が照りつける中、その商店街は普段客に観光客も加わり、大いに賑わっていた。威勢良く客を呼び込む店主。両親の元、物珍しげに視線を彷徨わせる子供達、はぐれないよう、手を繋いで歩く恋人達……。
(人々の命は、的にあらず。命は弾丸の重さに等しく……)
 その心構えこそが、射手にとって最も大事だと知る芥川・辰乃(終われない物語・e00816)の瞳が、スッと細まる。
「私達はケルベロスだ、此処にエインヘリアルの襲撃があるとの予知があった!」
 与えられた時間は2分。フェスティバルオーラと共にエメラルド・アルカディア(雷鳴の戦士・e24441)が声を上げると、人波がザワザワと揺れ動く。
「重ねて言おウ、ワタシ達はケルベロスだ。今からここにデウスエクスが来ルと予知されていル。焦らず、指示に従って速やかに避難してくれ」
「慌てず騒がずお願いするよ。方向さえ間違ってなければ大丈夫。僕が君達を安全な場所まで導くからね」
 エメラルドに続き、君乃・眸(ブリキノ心臓・e22801)の呼びかけが拡張期で増幅され、雑音に邪魔されず凜と響く。手を上げたティユ・キューブ(虹星・e21021)が、事前に頭に叩き込んだ避難経路に誘導するために後退すると、人々もその後に続いた。
「できるだけ迅速にお願いします。眸さんのケルベロスコートや、エメラルドさんのケルベロスカートを見て貰えれば、これが冗談ではない事が分かってもらえるはずです」
 辰乃が言うと、人々が足早になる。眸が懸念していたのは、高齢者や逃げ遅れそうな人の対応だったが――。
「君乃さん、そっちは私に任せて! ご両親とはぐれた子や、お年寄りで手が必要な人がいたら、手を上げて!」
「碧、うちもそっちを手伝うで! 手を貸して欲しい人がいたら、遠慮せずにうちらを呼ぶんだよ!」
 植田・碧(ブラッティバレット・e27093)と園城寺・藍励(孤高なる白猫・e39538)が、その点はフォローしてくれていた。
 急を要する状況では、エメラルドのフェスティバルオーラも功を奏したようで、ちょうど2分が経過し、遠くから一発の銃声が轟いた頃には、避難は完了していたのだった。

(ガンマンとして、風上にもおけねぇぜ!)
 葛城・唯奈(銃弾と共に舞う・e02093)のリボルバー銃が、白煙を上げている。その視線の先には、見上げる程の巨体を持つエインヘリアル。
「……何のつもりだ、お前等?」
 エインヘリアルは、足元を掠めた銃痕を眺めると、こちらを見る。注目を集める事に成功した唯奈は、「そんな事も分からないのか?」そう言いたげに中指をクイッと曲げてみせると、今度は外さないとばかりに、エインヘリアルに銃口を向ける。
「いえ、お兄さんが銃に覚えがあるようにお見受けしましたので。早撃ち勝負でもしませんか?」
 挑発的な唯奈に変わり、怒りを内に秘めたジェニファー・キッド(銃撃の聖乙女・e24304)は帽子の縁を指で支えながら、何食わぬ表情で告げる。
 エインヘリアルは、唯奈の正確な威嚇射撃に加え、ジェニファーのいかにもな風貌に興味を惹かれたのか、
「いいぜ、『的』にしてやるよ」
 そう口端を歪めた。


 避難誘導組が加勢に到着した頃、ちょうど二度目の銃声が轟いた。
(罪のない方々を大量虐殺しようなんて……絶対許せません!)
 背中を向かい合わせて10歩。振り返りと同時にジェニファーとエインヘリアルが放った目にも止まらぬ弾丸は、一瞬交錯した後に互いの肩を撃ち抜き、相打ちとなる。
「次は俺だ――」
 まだまだやれる! 肩を押さえながらジェニファーは目でそう訴えるも、一先ず唯奈が変わり二戦目に持ち込もうとしたその時!
「さて、信頼に応えましょうか、棗」
 辰乃のオーラが、ジェニファーの傷を癒やす。
「皆、無事か。避難は無事完了しタ。後はこいつを……仕留めルだけだ」
「チッ、増援か、ケルベロス!」
「問答無用ダ。これで、燃え尽きろ」
 眸は、挟撃のような状態になった事を悟り、歯嚙みするエインヘリアルへ、蒼白い地獄の炎を纏わせた剣で斬りつけた。
「葛城さん!」
「おう、分かってる!」
 銃を構える碧の合図に合わせ、予期していたよりも早い援軍の到着に笑みを浮かべていた唯奈も銃を構えると、エインヘリアルに高速射撃と跳弾が襲い掛かった。
「ガンマンモドキ共が、調子に乗るな! 所詮お前達は『的』でしかないんだよッ!」
 奇襲によって否応なく弾丸を撃ち込まれるエインヘリアルが、銃を手に回転する。回転しながら放たれる弾丸は、前衛を薙ぎはらうようにバラまかれた。
「ガンマンを自称する割には、狙いが正確じゃないみたいだね。動かない『的』じゃないと、当てられない程度の腕前なのかな?」
 キリノが金縛りで追撃を止める中、ティユが前に出て、銃弾のいくつかを受け止める。だが、前衛に位置する精鋭には、初撃からエインヘリアルの銃弾を避ける猛者も存在した。ティユが揶揄するように碧を振り返ると、当の碧は、「修行が足りないんじゃないかしら?」そう言って、何事もなかったかのように笑う。
「よ、よく言いやがった! 覚悟しやがれ!」
 その物言いは、エインヘリアルのプライドを酷く傷つけたようだ。激昂するエインヘリアルが、絶え間なく列に向けて一斉掃射を繰り返す。
「コギトエルゴスム化での投獄。そちらの方が万倍も良かったと、その身に教えてやろう……我はヴァルキュリアの戦士、エメラルド! これより貴様を討つ者だ!」
 銃撃を浴びようと、エメラルドの戦意は些かも衰えず。エインヘリアルに因縁ある身として、なおさら負ける訳にはいかない。
「彼の者は来たれり!」
 自分を、そして仲間を奮い立たせるように、エメラルドは声高に勇壮な凱旋歌を歌い上げた。
「――――戦目、壱之型『執爆』、『エクスキューション・デトネイト』!」
 藍励によって練り上げられた、複雑極まるグラビティ。大気を振動させる程の力を宿した斬撃が、エインヘリアルを一薙ぎする。
「グゥ!」
 一拍遅れて爆風と共に電撃が迸ると、エインヘリアルは動けなくなり静止。
「導こう」
 星を輝きを投影するティユの補助も借りたケルベロス達に、さらなる追撃を受けた。

「さっきの発言、撤回しやがれケルベロス!」
 弾丸が火を噴き、エメラルドを射貫く。辰乃を庇う棗が、ふよふよと漂いながら苦しげな表情を受けべている。
「ペルル、頼んだよ?」
 ティユの指示を受け、ペルルが順次後衛に属性をインストールしていく。だが、そこは腐ってもデウスエクス。度重なる列攻撃に対し、ケルベロス達のキュアも追いつけない場面が少しづつ出てきていた。
「修行が足りないだ? ケルベロス風情が、舐めやがって! ハハッハハハ!」
(……一体、何が楽しいのかな? うちらにそうしたように、商店街の人々にも同じ事をしようとしたんだね)
 銃弾がケルベロス達を抉る度、エインヘリアルは堪えきれず嗤う。藍励は、そんなエインヘリアルが理解できず、また許せない。列攻撃から難を逃れている藍励は、積極的に攻勢に出て、惨殺ナイフでエインヘリアルの肉を抉る。すると、エインヘリアルに刻まれた火傷が疼き、呻かせる。
「チッ!」
 堪らずエインヘリアルは、火傷を消せないまでも体力の回復を図ろうと、己が感覚を増幅させる。
「眸さん、援護します! ヴァルキュリアの弾丸よ、敵を貫け!」
「了解だ、ジェニファー。エンチャントを放っておく理由はナい」
 エインヘリアルの攻撃にブレイクが追加されれば、ペルルの付与してくれたエンチャントの効果が薄くなってしまう。
 ジェニファーが放つヴァルキュリアの翼の力が込められた弾丸と、徹底して行動阻害を狙うキリノの念を目眩ましに、接敵した眸の音速の拳が、エインヘリアルのエンチャントを破壊しながら深々突き刺さる!
「悪いけれど、前言を撤回するつもりはサラサラないわ!」
「ッッ!」
 碧のグラビティー弾と、エインヘリアルの弾丸。共に命中はしたものの、一度外したエインヘリアルと違い、碧は未だ外していない。クラッシャーとスナイパーでこの結果なのだから、エインヘリアルは屈辱に震えるしかない。
「ええ、碧さん。撤回する必要はありません。エインヘリアル……貴方が奪おうとするもの全て、私達は護ってみせます」
 それは、覚悟にも似た願い。棗のヒールに合わせ、霊薬混じりの弾頭が、辰乃の魔力を帯びて霊気化していく。バンッ! と、エインヘリアルとは違い優しい音色で放たれたその弾丸は、前衛の間を縫うようにして、仲間達を苛む炎を癒やしていく。
「ありがとう、辰乃」
 そのヒールによって、ティユと眸の表情が幾分和らいだ気がした。あまり表情に出さない二人だからこそ、心配なのだと辰乃が微笑む。
「僕もペルルも、まだまだいけるよ」
 ティユは不遜な笑みを浮かべると、ダメージが色濃いエメラルドへオーラを溜める。
「助かる、ティユ殿! 私も一先ず、援護に徹する事にしよう!」
 次いで、仲間の負傷状況を確認したエメラルドは、ジェニファーに電気ショックを。
「俺だってまだまだだぜッ!」
 早撃ち勝負が出来なかったゆえ、唯奈の闘争心は溢れるばかり。ガンマンとして、自分の方が上であると証明するように、アームドフォートから一斉発射する。
「ギッ!」
 その際のエインヘリアルの反応が、一際苦痛に満ちていた事から、唯奈は口の中の飴を噛み砕き――。
「見つけたぜ、お前の弱点」
 そう凄絶な笑みを浮かべながら、棒を吐き捨てた。


「碧さんに対して吼えていたあなたの威勢はどこにいったのですか? それとも、もしかして……」
 ――私達が怖いんですか? ジェニファーが言うと、エインヘリアルの額に青筋が浮かぶ。
「ふざけやがってえええええええッッ!」
 激昂と共に向けられたエインヘリアルの銃口から放たれた弾丸は、未だ正確にジェニファーを狙い撃った。だが、射貫かれて膝をつくジェニファーの表情に、撃ち負けたという落胆はない。その表情の意味を証明するように……。
「あなたがやろうとしたこと……身を以て思い知りなさい!」
「ガァ!?」
 まったく予想もしえないルートを通って、跳弾がエインヘリアルを穿つ。クリティカルに追撃もプラスされたその一撃は、消耗したエインヘリアルに重くのし掛かる。
「こ、この俺が……『的』如きに!?」
「追い詰められた者の行動程、分かりやすいものはないな」
 後退するエインヘリアル。彼は、慌ててヒールしようと精神を集中させる。その耳元で、エメラルドの冷淡な声を響いた。
「速いのは何も、私の仲間達の銃だけではないのだ……!」
 エメラルド自身の辛い過去……今でも続く贖罪の日々。眼前のエインヘリアルに覚えがなくとも、エメラルドには忘れえぬ地獄が彼女の脳裏を満たす。その地獄を少しでも払拭し、同時に償いとするために、エメラルドの稲妻を帯びた槍が、エインヘリアルの守りを砕く!
「――アアッッ!」
 その瞬間、ケルベロス達が執拗に重ね、藍励がジグザグで積み重ねてきたパラライズが真価を発揮する。エインヘリアルが、生き残るために是が非でも行いたかったヒールを失敗したのだ。
「ヒトの命の重さが分からぬ外道」
 眸が、エメラルドグリーンのエネルギー剣を生成する。
「同時に、ヒトの優しさを理解できヌとは、実に哀レだ」
 そして、碧の軌跡を奔らせながら、エインヘリアルを叩き斬る。
「貴方、今の自分がいい『的』だって自覚はある?」
 快楽のために虐殺を行うエインヘリアルに、容赦は無用。碧はあえてエインヘリアルのプライドを粉々に砕く言動と共に、弾丸を放つ。
「ケルベロスウウウウウウウウッッ!」
 ようやく行動に移れるようになったとて、もう遅い。脅威であったはずの全方位射撃が、まるで死を恐れる臆病者の舞のよう。
「棗、もう一踏ん張りですよ。射手にとって大事な事を皆で教えてあげましょう。弾丸は今、思いを乗せて……!」
 だが、そんなその場しのぎの攻撃は、辰乃と棗によって容易く無力化されてしまう。光り輝く弾丸の軌跡こそ、仲間の絆と希望の証。
 ティユは、ブレスを放つペルルの頭を撫でた。幾重もの傷を負おうと飄々と、自信に満ちた振る舞いは、彼女の専売特許である。
「でも、そろそろ僕も攻めに回らせてもらうとするかな――お前の戯れ言も、いい加減聞き飽きたからね」
 『お前』と告げるティユの声は、一際低く。放たれるオーラの弾丸が、エインヘリアルに喰らいつく。
「変幻自在の”魔法の弾丸”……避けるのはちーっと骨だぜ?」
 特に、今のお前にはな……唯奈の二丁拳銃から、弾丸が放たれる。神の見えざる手が操っているかの如く変幻自在な軌道を描く弾丸は、それこそ”魔法”のようにエインヘリアルを追い立て、撃ち抜いた。
「うちの手で、危険を排除する。そのためにうちは、ケルベロスになったんだよ!」
「……何故……お前達『的』……如きに……!」
 藍励が操るキツネビ・オーヅツの砲口が、大口を開けてエインヘリアルを捉える。自身の死を前に、エインヘリアルは呆然と砲口の奥の闇を見つめるしかない。
「簡単だよ。人は、『的』じゃないし、虐殺していいものでもないからだよ」
 それを防ぐために、平和のために自分達ケルベロスがいるのだと、藍励は自負を持って一斉発射を開始する。爆音が轟き、エインヘリアルの身体が消滅した。
「ざまぁみろ」
 唯奈は、地獄のエインヘリアルに見せつけるように銃を手元で回転させると、ホルスターに納めるのであった。


「こんなものかな?」
 ヒールを終えたティユが、手をパンパンと叩いて周囲を見る。銃痕だらけで物騒だった現場も、今やその面影すら残ってはいない。
「負傷した方はいないんですよね?」
「ああ、ジェニファーと唯奈のおかげデな。安全が確保できタ事を伝えニ行かねバならないな」
 眸の言葉に、ジェニファーはホッと吐息を零す。避難は早い段階で完了したというが、僅かでも貢献できたなら、怪我を負った意味もあるというものだ。
「皆、お疲れ様……」
「ええ、お疲れ様」
 人々を呼びに行く眸とジェニファーを呼び止めて藍励が言うと、碧を含めた皆が笑みを返してくれる。
「今日も頑張ったねー!」
 唯奈などは、戦闘時とまるっきり違う穏やかで明るい表情だ。
「護りたかった人達が、帰ってきましたよ」
 辰乃が、戻ってきた喧噪に、ふんわりとした笑み。
「ヴァルキュリアの戦士として、彼らの役に立てたなら、良かった」
 エメラルドも、今だけは贖罪を忘れられる。
「皆さん、デウスエクスは撃破しました。もう、大丈夫……」
 人々に、藍励が言った。すると――。
「ありがとー!」「助かった!」「店に来てくれたらサービスするよ!」
 そんな暖かな声が次々に聞こえてきて……。
 ケルベロス達は、達成感に胸が一杯になるのであった。

作者:ハル 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年9月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 8/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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