狙われた尻子玉ッ!

作者:ゆうきつかさ

●奇妙な夢
「うわあああああああああ!? い、今のは……夢!?」
 目を覚ました子供は、自分が今まで見ていたのが、夢だったのか、それとも現実だったのか、判断する事が出来なくなっていた。
 夢の中に現れたのは、河童。
 どこからどう見ても、河童。
 今にも『クワッパァ!』と鳴きそうな河童が夢に現れ、尻子玉をゲットすべく襲い掛かって来た。
 幸い尻子玉が抜かれる前に目を覚ましたものの、後もう少し目を覚ますのが遅ければ……酷い目に遭っていたかも知れない。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
 そんな中、第三の魔女・ケリュネイアが現れ、手に持った鍵で起きたばかりの子供の心臓を一突き。
 この攻撃はドリームイーターが人間の夢を得るための行為……。
 それによって、子供の『驚き』を具現化したような河童のドリームイーターが産み出された。
 驚きを奪われた子供は意識を失って崩れ落ち、ドリームイーターが倒されるまで、深い眠りにつくのであった。
●都内某所
「子供の頃はビックリする夢を見たりしますよね。理屈は全く通っていなくとも、とにかくビックリして、夜中に飛び起きたり……。そのビックリする夢を見た子供が、ドリームイーターに襲われ、その『驚き』を奪われてしまう事件が起こっているようです。ワーブ・シートン(とんでも田舎系灰色熊・e14774)さんが危惧した通り、奪われた『驚き』を元にして現実化したドリームイーターが、事件を起こそうとしているようです。現れたドリームイーターによる被害が出る前に、このドリームイーターを撃破して下さい。このドリームイーターを倒す事ができれば、『驚き』を奪われてしまった被害者も、目を覚ましてくれるでしょう」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「ドリームイーターは一体のみ。配下などは存在していません。またドリームイーターが現れるは夜の市街地で、被害に遭った子供の家の近所です。ドリームイーターは、相手を驚かせたくて仕方がないようなので、付近を歩いているだけで向こうから現れ、驚かせようとしてくるでしょう。そのため、驚かなかった相手を優先的に狙ってきます。またドリームイーターは相手の尻子玉を奪うため、執拗に尻を狙ってくるので注意しておきましょう」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
「子供の無邪気な夢を奪って、ドリームイーターを作るなんて許せません。被害者の子供が、再び目を覚ませるように、ドリームイーターを倒して、事件を解決してください」
 そして、セリカはケルベロス達に対して、深々と頭を下げるのであった。


参加者
シヲン・コナー(清月蓮・e02018)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
ワーブ・シートン(とんでも田舎系灰色熊・e14774)
野和泉・不律(ノイズキャンセラー・e17493)
リオルト・フェオニール(ドラゴニアンの思春期・e26438)
雁・藍奈(ハートビートスタンピード・e31002)
鬼灯・こよみ(カガチの裔・e39618)

■リプレイ

●夜の市街地
「河童……やっぱり、出てきたですよぅ。まぁ、メジャーな妖怪だしぃ、いつ、どこかで、出てきてもおかしくないですからねぇ。そんな河童が、妖怪というより、ドリームイーターとして出てきたって所で、何とかしないといけないとダメですよねぇ……」
 ワーブ・シートン(とんでも田舎系灰色熊・e14774)はしみじみとした表情を浮かべ、ドリームイーターが確認された市街地にやってきた。
 この場氏は被害に遭った子供の家の近所で、既に何人かの一般人が尻子玉を抜かれ、腑抜けになっているようだ。
「河童……零落した水神の姿、と言います。……であれば、ドラゴニアンの私が、偽の河童相手とはいえ、後れを取るわけにはいきませんねっ」
 鬼灯・こよみ(カガチの裔・e39618)が、自分自身に気合を入れる。
 ただし、今回の河童はドリームイーター。
 そのため、似た非なる存在と考えた方がいいかも知れない。
「そう言えば、尻小玉、お尻付近にある魂みたいなものだっけ? 曖昧な知識だけど、謎めいた驚きだよね。小さい子なら、河童も含めて怖いだろうし……」
 リオルト・フェオニール(ドラゴニアンの思春期・e26438)が、何処か遠くを見つめる。
 ドリームイーターが現れた事で、子供達だけでなく、大人達までガタブル状態。
 『河童なんて、いない。いる訳がない』と思いつつ、『でも、まさか……』と言う気持ちがあるため、外出する事すら出来なくなっているようだ。
「尻子玉とは、医学データによると、そのような部位の記載は無いので調べたのだが……。人の肛門付近にあり、摘出すると腑抜けになる、とされる部位……のことのようだ。迷信……と言えば、それまでだが、子供からすれば恐怖以外何者でもないだろうな」
 シヲン・コナー(清月蓮・e02018)が、尻子玉についての蘊蓄を述べる。
 実際にドリームイーターが現れたせいで、何やらピリピリとした空気が漂っているため、早く解決しなければ取り返しがつかない事になるだろう。
「とりあえず、誰かが外出する心配は無さそうだな」
 野和泉・不律(ノイズキャンセラー・e17493)が、ゆっくりと辺りを見回した。
 ドリームイーターが暴れているせいで、当たりにはまったく人の気配がない。
 そう言った意味で、一般人を避難させたり、注意を呼び掛けたりする必要もなさそうである。
「……とは言え、子供の夢を奪ってドリームイーターを作るだなんて許しません。周囲に被害が出る前に被害にあった子を目覚めさせる為にも河童をぶっ倒してみせます!」
 ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)が、ドリームイーターを捜して歩いていく。
 ドリームイーターが何処に隠れているのか分からないが、それを生み出した子供がここにいる以上、他の場所に移動する事はない。
「それじゃ、近所の人達に被害が出ないように、あたしが囮になってドリームイーターを誘き出すねっ」
 雁・藍奈(ハートビートスタンピード・e31002)がセクシーなコーデでヒップラインを強調し、思わせぶりな態度で愛嬌を振り撒いた。
 そのせいか、尻の辺りに寒気が走ったものの、ドリームイーターが現れるまでは我慢である。
「ドリームイーターと戦うのは初めてだけど、あの子が新しい朝を迎えられるように頑張るしかないな」
 そう言ってロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)が被害に遭った子供の家を一瞥した後、ドリームイーターが現れるのを待つため物陰に隠れるのであった。

●河童
「ところで『カッパ』ってどんな怪物なんだろ? ひょっとして、こんな感じー?」
 藍奈がひょっこりと出てきたドリームイーターを指差し、不思議そうに口を開く。
 それはどこからどう見ても、河童。
 河童そのもの。
 そうとしか言えない代物が街頭に照らされて目の前にいるのだが、藍奈は素で気づいていないようである。
「うわ、こいつはびっくりだ!」
 ロディが大根演技で大声をあげ、その場から飛び退いた。
「うわ! なんだ、こいつは?!」
 シヲンも大袈裟に驚いて、ペタンと尻餅をつく。
「みんな驚き過ぎだ。デウスエクスの蔓延るこの世の中、河童程度で驚く訳……って、うわあああああああああああああああああああああああああああ!?」
 不律も釣られて、オーバーアクションで、驚いたフリをした。
「クワッパッパッパッ! 獲物だ、獲物ッ! 久しぶりの獲物だッ!」
 それに気を良くしたドリームイーターが、興奮した様子で鼻息を荒くさせる。
 この様子では、シヲン達が何者なのか、まだ気づいていないのだろう。
 完全に油断しており、調子に乗っているようだった。
「なるほど、これがジャパニーズモンスター……と言っても、デウスエクスだけど……」
 ミリムが複雑な気持ちになりながら、ドリームイーターに視線を送る。
 何となくイメージ通りのカッパであるが、何やらツッコミどころが満載であった。
「……とは言え、思ったよりも、見た目は中々ちゃーみんぐではないか。まあ、中身は残念そのものだが……。ところで、尻子玉なる内蔵を狙うらしいが……食べるのか?」
 不律が淡々とした口調で、ドリームイーターに問う。
「いや、ゲットするだけさ。俺にとってのソウルアイテム。コレクションに加え、一日中眺めたりするものだ!」
 ドリームイーターが意味もなく小躍りしながら、尻子玉の使い道を語っていく。
「たしかぁ、河童はぁ、川にいてぇ、キュウリが好物だったと聞いてるんですけど……」
 ワーブが色々と察した様子で、キュウリをチラつかせた。
「おお、これは御馳走だぁ~♪」
 それに気づいたドリームイーターが、興奮した様子で舌舐めずり。
 地面まで涎を垂らして、ムシャムシャとキュウリに貪りついた。
「河童と言ったら好物は胡瓜に弱点は頭の皿だよね!」
 ミリムが本で読んだ知識から、ドリームイーターの頭部を狙う。
「殺気がバリバリで、モロ分かりっパァー!」
 すぐさま、ドリームイーターがその場から飛び退き、ケルベロス達の尻子玉を狙って、両手をワシャワシャとさせた。
「狙いがわかれば、対応できます」
 それと同時に、こよみが素早い身のこなしで、ドリームイーターから離れていく。
「クワッパッパッパッ! そんな事をしても、無駄ッパ! オイラの両手が必ずお前達の尻子玉を奪うッパ!」
 ドリームイーターがキリリとした表情を浮かべ、傍にいたミリムに足払いを仕掛けて跪かせた。
「……え? ちょ、ま……やめるのですっ! 恥ずかしい……って、あっ、アーッ!」
 次の瞬間、ミリムがドリームイーターに襲われ、悲鳴をあげながら腰砕けで崩れ落ちていく。
 しかも、ドリームイーターの手には、何やら尻子玉っぽいモノが……。
 それが何なのか分からないが、ミリムは完全に骨抜き、グッタリである。
「これ、これ! これっパッ!」
 ドリームイーターが上機嫌な様子で、尻子玉っぽいモノにキスをした。
「……え、シリコダマって、そういう……無理、無理、無理! そんなの絶対入らないから! ロディくん、たーすーけーてー! アッ――!!」
 それを目の当たりにした藍奈が悲鳴を響かせ、ミリムと並ぶようにしてグッタリと倒れ込む。
「そんな恰好をしている方が悪いッパ!」
 ドリームイーターが鼻歌混じりに、尻子玉っぽいモノにキス。
「ご、ごめん……間に合わなかった……」
 ロディが申し訳なさそうにとしながら、気まずい様子で視線を逸らす。
 ふたりとも過ごし格好で地面に突っ伏しているため、直視する事が出来ないほどの危険な状態。
「こ、これは早くしないと、皆の尻子玉が……」
 そう言ってリオルトが危機感を覚えつつ、ドリームイーターに攻撃を仕掛けるタイミングを窺った。

●ドリームイーター
「クワッパッパッパッ! まさか、オイラを倒す気かい? 絶対無敵の王者である、このオイラを!」
 ドリームイーターが自信満々な様子で、フンカフンカと鼻息を荒くさせる。
「どうやら、僕が想像していた尻子玉とは違うようだな。それが分かったところで、何の解決にもならないが……」
 シヲンが警戒心をあらわにしながら、ライトニングウォールを使う。
 ボクスドラゴンのポラリスも、同じように警戒しつつ、ぷきゅぷきゅと鳴く。
「絶対に後ろは見せたく無い相手だな……相手の一挙一動に注意して、立ち回るとしよう」
 不律が身の危険を感じつつ、ブロック塀を背にして、少しずつ間合いを取った。
「クワッワッワッ! そんな事をしても無駄ッパ!」
 ドリームイーターが高笑いを響かせ、拳法のようなポーズを決める。
 それに何の意味があるのか分からないが、ドリームイーターは色々な意味で、やる気満々のようだ。
「絶対に、お尻だけは狙わせません!」
 こよみが危機感を覚えながら、ドリームイーターに雷刃突を仕掛ける。
「クカアアアアアアアアアアアアアアアアアッ! お前ら、 みんな纏めて、尻子玉をゲットくわァァァァァァァァァァァア!」
 それに腹を立てたドリームイーターが捨て身の覚悟で、一気に距離を縮めていく。
「トドメですよぅ!」
 次の瞬間、ワーブがドリームイーターを迎え撃ち、右手と鋭い爪に力とグラビティを一点集中させて衝撃を放つ。
「ま、まさか、オイラが……クワッ! クワッ……クワッパァァァァァァァァァ!」
 その一撃を食らったドリームイーターが、ブクブクと血の泡を吐き、弾け飛ぶようにして消滅した。
「お尻が……凄く……痛いよぉ……」
 ミリムがあられもない姿のまま、放心状態で口を開く。
「被害に遭った子供は大丈夫かな……?」
 リオルトが心配した様子で、被害に遭った子供の家を眺める。
 すべての元凶であったドリームイーターが消滅したため、深い眠りについていた子供も目を覚ます事だろう。
「尻……大丈夫か?」
 ロディが心配した様子で、藍奈にサッと視線を送る。
「でも、あの子が夢の中でお尻を狙われないでよかったね」
 そう言って藍奈が被害に遭った子供の家を眺め、乾いた笑いを響かせた。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年9月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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