浮かぶ巨大アヒル現わる!

作者:天木一

 夏休みで静かな誰も居ない学校。そこに1人の少年が入り込む。
「よーし、遊ぶぞー」
 少年が元気に屋外プールに飛び込んだ。すると水中に何か泳いでいるのに気づく。
「あっなんかいる! 魚かな?」
 少年が潜って目を開けて探すが、影が右へ左へと俊敏に動き追いきれない。
「ぷはっはえー! 」
 何とか見つけようと少年は頑張って泳ぎ、翻弄されながらも食らいつき、やがてその手が硬い物を掴んだ。
「つっかまえたー!」
 ガバッと水面から顔を出し、手にしたものを顔の前に上げる。するとそれは黄色いアヒルの玩具だった。
「え? これってお風呂で遊ぶ……あれ?」
 目を凝らしても変わらない、それはアヒルの玩具。
『プゥプゥッ』
「今、鳴いた?」
 アヒルが鳴くと、ザバッとプールの水を割って巨大な黄色いものが浮かび上がる。それは手にしたアヒルの数十倍、5mにもなるアヒルの玩具だった。
『プゥーーーー!』
 重厚な鳴き声と共に巨大アヒルが覆い被さって来る。
「わぁーーーーーーー!?」
 少年が自らの叫び声で目覚め、暗い自室を見渡す。
「あー……変な夢見たー……ニュースで巨大アヒル見たせいかなー? それともプールに行ったから?」
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
 少年の背中から鍵が突き刺され、胸の中央を突き出る。鍵を手にした魔女が引き抜くと、傷一つなく少年は意識を失う。
 魔女は突然現れたと同様姿を消し、少年は意識を失いベッドに倒れた。
『プゥッ』
 そこへ現れたのは黄色いアヒル……その玩具だった。だがそのサイズはお風呂に浮かべる数十倍、5mはあった。
 アヒルはぷかぷかと泳ぐように浮かび、窓を突き破って外へと飛び出した。

「暑いとこ悪いな、ドリームイーターが現れて悪さをするみたいでな」
 こうして集まってもらったのだと、リーズレット・ヴィッセンシャフト(アルペジオは甘く響いて・e02234)が説明する。
「第三の魔女・ケリュネイアが少年から奪った『驚き』からドリームイーターを生み出し、事件を起こすようです」
 資料を手にしたセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が事件の詳細な説明を始めた。
「新たに現れるドリームイーターはグラビティ・チェインを奪う為、人々を襲い多くの犠牲者を出してしまいます。そうなる前に敵を撃破し、眠りについた少年を目覚めさせて欲しいのです」
 今なら犠牲者が出る前に敵と接触できる。敵の撃破に成功すれば少年も目覚め助けられる。
「ドリームイーターは子供がお風呂で遊ぶような黄色いアヒルの玩具の姿をしています。全長5程で、嘴で突いたり、体当たりしたり、空気を入れて膨らんで巨大化したりするようです」
 見た目は可愛らしいが、その大きさで攻撃されれば一般人は一溜まりもないだろう。
「現れるのは埼玉県にある住宅街です。周辺に通行人は少なく、巻き込む心配は低いでしょう」
 アヒルは空を泳ぎながら獲物が現れるのを待っている。
「それと敵は出会った相手を驚かせようとしてきます。そして驚かない相手を最初に狙うようです」
 驚かないようにすれば、敵の攻撃を引き付ける事が出来る。
「見た目は可愛くても、人を襲う以上放ってはおけません。犠牲者が出ないようによろしくお願いします」
 セリカが頭を下げるとすぐにヘリオンの準備に向かった。
「もう夏休みも終わりだな、まあ私には関係ないが、まだまだ夏休みを元気に遊びたい子供を助けるためにも、アヒル退治に向かうとしようぜ」
 リーズレットの言葉に暑そうにしていたケルベロス達が頷き、出発の準備に取り掛かった。


参加者
リーズレット・ヴィッセンシャフト(アルペジオは甘く響いて・e02234)
大首・領(秘密結社オリュンポスの大首領・e05082)
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)
エフイー・ゼノ(希望と絶望を司る機人・e08092)
瑞澤・うずまき(受け流すフルフル・e20031)
スノー・ヴァーミリオン(深窓の令嬢・e24305)
鍔鳴・奏(あさきゆめみし・e25076)
ラルバ・ライフェン(太陽のカケラ・e36610)

■リプレイ

●空飛ぶアヒル
 夜の公園に集まったケルベロス達が作戦を開始する。
「スノーさん、うちの響を宜しくな!」
 リーズレット・ヴィッセンシャフト(アルペジオは甘く響いて・e02234)はボクスドラゴンの響を手渡した。
「響を大切に預かるわね。このモフモフは誰にも汚させないわ!!!」
 大切にそうにスノー・ヴァーミリオン(深窓の令嬢・e24305)は胸に抱きしめ、そのモフモフ感に満面の笑みを浮かべた。
「今回のアヒルって、風呂場とかで見るやつだよな? どんだけ膨らむのか見てみたい……じゃなくて、人が潰される前に潰さねえとな」
 巨大なアヒルを思い浮かべながらラルバ・ライフェン(太陽のカケラ・e36610)は翼を羽ばたかせて空へ飛び立った。それにリーズレットも翼を広げて続く。
「むむ、ついにこの時が来たのう。あたしのアヒルちゃんミサイルDXの宿敵とも言えるようなドリームイーターの出現なのじゃ」
 嬉しそうにウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)は付け髭を震わせ興奮していた。
「アヒルちゃんミサイルもいつもにもましてやる気に満ちておるのじゃ」
 早く撃ちたいとうずうずしながらウィゼは夜空を見上げ、公園に巨大アヒルの収まる大きな巣を作り始めた。
「ここは危険な戦場となる、速やかに帰宅するがいい!」
「ひぃっ」
 怪しい仮面を被った大首・領(秘密結社オリュンポスの大首領・e05082)が近づくだけで、公園周辺に居た一般人は怯えて逃げ出した。
「あのアヒルの玩具すっごく好きだけど、大きいのもめっちゃ可愛いと思うけど、悪戯するのはダメだよ。お仕置き! だね!」
 ふんすと気合を入れた瑞澤・うずまき(受け流すフルフル・e20031)は立入禁止テープを巣の周りに張り巡らせる。
「少年の為にも、ここで落としておかなければな」
 チラリと空を確認したエフイー・ゼノ(希望と絶望を司る機人・e08092)は、被害を出さないようにとテープを張るのを手伝う。
 上空を旋回していると、まるで水面に浮かぶように宙をふよふよと飛んでいる巨大な玩具のアヒルを発見した。
「巨大アヒルとか超シュール……あ、写メしとこ」
 光の翼で空を飛ぶ鍔鳴・奏(あさきゆめみし・e25076)は、視界に入った黄色い巨大アヒルを写真に収める。
『プゥプゥッ』
 アヒルは飛んでいるケルベロスの3人に気付き近づいてくる。それを誘導して公園へと導くように速度を合わせて移動を始めた。

●巨大アヒル
「ほう……巨大アヒルか……あのなんとかという芸術家の作品か何かだろうか……?」
 人を追い払った領は、公園上空に近づくアヒルの玩具を懐かしい物を見るように眺めた。
『こちらリーズレット、準備オッケーだ! そっちはどう?』
 空を飛びながら紙吹雪を用意したリーズレットが携帯で問いかける。
「うむ、完成したのじゃ! これでいつ叩き落として構わんのじゃ!」
 立派な巣を完成させたウィゼは、満足そうに手で押してクッション性を確かめる。
『こちらも準備は完了した。予定通りの場所で待っているぞ』
 エフイーが返事をし、花火に火を点けて合図を送る。
「何か紙吹雪とか……リズの黄金劇場である! とか言いたそうな顔してますし……光源かなり余ってますし……後でリズにも光向けといてあげますか……」
 疲れた顔でスノーもランプを大きく振って落下地点を報せた。
「さぁ、奏とラルバさん! 盛大に叩き墜とすぞ!」
「紙吹雪まで用意してやんの……派手に行くか!」
「任せろ! ド派手にいくぜ!」
 広げた光翼から粒子を紙吹雪と共に飛ばしながら飛翔した奏は、メタルを纏わせた腕でアヒルの顔を殴りつけ、同時に上昇したラルバはガントレットから空気を噴流して加速し、眼前に広がるアヒルの背中を殴りつけた。連撃にアヒルの体が歪む。
『プゥウ!』
 アヒルがバランスを崩し、斜めになって高度を下げていく。
「おぉ……奏ってば素晴らしい演出! ラルバさんもナイスな一撃!」
 それに見惚れながらリーズレットは紙吹雪を放り投げ、次は自分の番だとアヒルの正面に立ち塞がる。
「いくぞ! これが余の黄金劇場である!」
 紙吹雪の舞う中リーズレットは霧を作り出してアヒルを包み込み、高圧圧縮してアヒルの体を押し潰す。堪えきれなくなったアヒルが地上へと落下を始めた。
「あれはリーズレットか?……楽しそうで何よりだな」
 そんな様子を見たエフイーは苦笑してアヒルを迎え撃つ準備を整える。
「そのまま巣に落ちちゃえ!」
 うずまきは電柱を駆け上って大きく跳躍し、アヒルの頭上から踏みつけた。
 落ちてきたアヒルは大きな巣をクッションにして衝撃を和らげ地面に着陸した。そこへ平然とした顔でエフイーは破砕槌をフルスイングして叩き込んだ。
『プゥ!!』
 胴をボヨンと大きく揺らしたアヒルが、ケルベロス達を見下ろし敵意の混じった激しい鳴き声を上げる。
「ふむ……最近のアヒル玩具は、空も飛ぶのだな―……う、動いただと……!?」
 それに対し驚いたように領は後ずさりして体で感情を表現する。
『ププゥッ!』
 その態度に満足そうに体を揺らし、アヒルは口から水を水鉄砲のように放出した。だがその水勢は鉄砲水のようで、巻き込まれたうずまきを吹っ飛ばして滑り台にぶつけた。
「落ちてきたわね、響も一緒に行くわよ!」
 飛び掛かったスノーは鋭く回し蹴りを浴びせてアヒルの腹を凹ませ、そこへ続いて響が体当たりするようにして腹を凸凹にした。
「その程度の図体では驚く程でもないな。どうした?まだ大きくなれるのだろう?」
 挑発するようにエフイーが声をかけ、大剣を振り下ろしアヒルを大きく斬り裂いた。アヒルは反撃に水を飛ばしエフイーを吹き飛ばす。
「さあ、行くのじゃアヒルちゃんハイパーDX!!」
 入れ替わるようにウィゼはアヒル型ミサイルを発射し、ドリルのような嘴でアヒルを切り裂き周囲を飛び回って行動を妨げる。
「フハハハ……我が名は世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスが大首領!!」
 その隙に堂々と名乗った領はアヒルに魔光を放ち、その黄色ボディを石に変えていく。
『ブウッ』
 アヒルは領に向かってゆっくり前進を始める。それはゆっくりに見えるが、巨体の一歩は普通の人にとっては何歩分にもなる。すぐに間合いを詰めて目の前に迫る。
「おっきなアヒルの玩具だね、だけど悪さする子にはお仕置きだよ!」
 起き上がったうずまきは懐に突っ込み、雷を帯びた槍を突き入れアヒルを感電させ、ウイングキャットのねこさんが尻尾の輪を飛ばして顔にぶつけた。
『プゥ!』
 怒った声を発してアヒルは感電して速度を落としながらも、そのまま踏み潰そうと前進を止めない。
「あれは誰だ? 美女だ? ケルベロスだ!?」
 そこへ空から舞い降りた奏は、竪琴を鳴らし魂を引き寄せ仲間達に纏わせる。
「勿論! 余だよ♪」
 残った紙吹雪で登場を演出しながらアヒルの上に着地したリーズレットは、オーロラの光で仲間達を包み込み身体を正常に戻す。
「でっかい姿、見せてみろよ!」
 続けて落下してきたラルバは飛び蹴りをアヒルの背中に叩き込み、足跡を深く残した。
『ププゥプゥ!』
 体を揺らして乗ったケルベロス達を振り払い、アヒルはその上に覆いかぶさろうとしてくる。そこへボクスドラゴンのモラは突っ込んで身を挺して突進を防ごうとするが、質量の差に撥ね飛ばされた。
「大きいだけではな、そんなのろまでは私達を捕まえられんぞ」
 だがその僅かな遅延の間に、エフイーはシューズから焔を噴き出して加速し、アヒルの顔に飛び蹴りを浴びせた。
「フハハハ……ラバーダックの末路の如く、萎ませてオムレツ状態にしてくれよう!」
 怯んだところへ領は大槌を変形させた砲から轟音を響かせ、砲弾をアヒルの腹ににぶち込んだ。衝撃に揺れてアヒルの動きが止まる。
「大変服が切れてるわ!!これでは、満足に戦えないわ!! そうくると思って フリフリのメイド服を奏が着れるサイズに仕立て上げておいたわ是非使って!!」
 ローラーダッシュで加速したスノーは奏にメイド服を投げ渡し、炎を纏う足でアヒルを蹴りつけ焦げ目をつけた。
「絶対に断る!」
 即答して駆け出した奏は服を投げ返し、刀を抜いてアヒルの胴を斬りつけた。
『プゥッ』
 アヒルはいったん距離を取ろうと奏に水鉄砲を浴びせて引き剥がし、宙へ浮かび始める。
「空には戻らせぬのじゃ!」
 そうはさせじとウィゼはブランコの支柱を駆け上って跳躍すると、アヒルの背中を押し付けるように蹴り飛ばし地面に留めた。
「これだけでっかいと殴りがいがあるぜ!」
 そこへラルバはジェット噴射で速度を上げて勢いよく殴りつけ、アヒルをブランコにぶつけて薙ぎ倒した。
「今のうちに回復しておくぞ!」
 禍々しい紫色のスイッチを手にしたリーズレットがボタンを押すと、周辺に爆発を起こして仲間達の闘争本能を高めた。

●アヒルの玩具
『ププープゥーーー!』
 アヒルが大きく口を広げたかと思うと、どんどん空気を取り込みその巨体を更に膨張させていく。
「うおっまだでっかくなるのかよ!?」
「うわっどんどん膨らんでく! このまま大きくなったら公園が壊れちゃうよ!」
 跳んだラルバは抉るような蹴りを腹に見舞って、アヒルの呼吸を一瞬止めた。
 続いてうずまきは槍にグラビティを乗せてアヒルの腹に叩きつけ、空気を口から押し出した。
「これだけ大きいと何所を狙っても当たりそうだね!」
 リーズレットは魔法の矢を放ち、アヒルの胴を射抜くと、響はブレスを放つ。
『プープー!』
 アヒルは空いた穴から空気を排出し、その反動でふわりと宙に浮いてケルベロス達を踏み潰そうと落下してくる。
「このままだと踏み潰されそうだわ」
 スノーは魔法光線を放ち、アヒルを石へと変えていく。
「アヒルの玩具に潰されるなど、笑い話にもならん」
 エフイーは大剣の平を盾にして石となった硬い部分に当ててアヒルを受け止め、フォトンエネルギーを体内で巡らせて活性化し敵の勢いを抑えきった。
「いやまあ、実はこうやって手繰り寄せるのは簡単なんだけどね」
 背後から奏は透明な鎖を伸ばしてアヒルの全身に巻きつけ、引き寄せるように地面に戻す。
『プ――!』
「そこで大人しくしておるのじゃ」
 何とか戒めから逃れようと暴れるアヒルに、ウィゼは植物の蔓を伸ばし、アヒルの体に巻き付けて動きを封じ込める。
「落ちたアヒルはただのアヒルだな!」
 幼き頃アヒルの玩具を潰してしまった事を思い出しつつ、領は振り上げた大槌を横っ腹に全力で叩き込んだ。ボヨヨンとアヒルの体が大きく凹む。
『プゥ!』
 やり返そうとアヒルが回転して口を領に向けた。
「こっちだよっ」
 その背後から跳躍したうずまきは、アヒルの背に乗って槍を刺し根本まで押し込んだ。
『ププゥップゥ!』
 怒ったアヒルは所かまわず水を撃ち出し、ケルベロスや遊具を纏めて吹き飛ばしていく。その合間を縫って近づいたねこさんが顔を鋭い爪で引っ掻く。
「お風呂グッズは大好きだけど、ここはお風呂じゃないし、人に迷惑がかかるようなのはダメ!」
 水の勢いが弱まったところに、近づいたうずまきはアヒルを駆け上り頭を踏みつけた。頭が凹み水が堰き止められる。
「玩具は使ったら片付けないとな!」
 駆けて背後から接近した奏は、雷を宿した槍をアヒルの尻に突き入れ、そこにモラがタックルをした。穴から空気が漏れ出しアヒルが萎んでいく。
「フハハハ……原型を残さぬ程叩き潰してくれよう!」
 領の頭上に浮遊する歪な巨腕が現れ、アヒルを殴りその巨体を地面に転がした。
『プゥ!!』
 倒れながらもアヒルは水を発射しながら浮き始める。
「どちらのアヒルちゃんが優れているのか、これで証明してみせるのじゃ、アヒルちゃんミサイル発射なのじゃ!」
 対してウィゼはアヒル型ミサイルを新たに発射し、放射される水を切りアヒルの周囲を飛び回って表皮を切り裂いていく。
『プ――プ―――ッ』
 アヒルはゆっくりと巨体を持ち上げて公園の外を目指して移動していく。
「駆け抜けろ、疾風の狼!」
 グラビティ・チェインを練り上げて狼を生み出し、ラルバは敵目掛けて放つ。地を駆ける狼はアヒルを追い尻尾に牙を突き立てた。そのまま噛み千切るように傷をつけ、空気と共に力が抜けたようにアヒルの速度が落ちる。
「行くぞスノー」
「いつでも構わないわ!」
 呼びかけたエフイーは息を合わせ、大剣を振り抜いて横一閃にアヒルを斬りつける。そこへスノーは飛び蹴りを打ち込み、切れ目を大きく広げた。
「アヒルを押し潰しちゃうぞ!」
 ウンディーネの力を借りたリーズレットは、霧でアヒルを包み込み圧縮させると、皆の与えた傷口から空気が漏れ、アヒルをぺちゃんこに押し潰して圧縮してしまう。
『プギュッ』
 潰れたような声を漏らし、ペラペラになったアヒルは消えてしまった。

●夏の思い出
 荒れ果てた公園にヒールを掛け、ケルベロス達は遊具を修復した。
「アヒルちゃんミサイルの勝利なのじゃ!」
 こちらこそが真のアヒルであると、アヒルちゃんミサイルを掲げたウィゼは満足そうに笑った。
「でっかいアヒルの夢、狙われて大変だったろうけど……これもいい夏休みの思い出になるといいな」
 ラルバは今日の夢が少年の楽しい思い出になればいいと八重歯を見せて笑う。
「遠き日の思い出か……はて、そういえば何をしにここまで来たのだったか……芸術鑑賞か? まあよかろう! フハハハ!」
 アヒルの玩具で遊んだ幼少の回想に浸っていた領は、すっかり当初の目的を忘れ去っていた。
「お腹が空いたから皆で何か食べて帰ろう!」
「いいな! スノーが奢ってくれるってよ!」
 リーズレットが皆を食事に誘うと、奏が悪戯っぽくニヤリと笑ってスノーを見る。
「え! ご飯?! いくいく! 奢りなんて凄いね♪ よっ! ふとっぱら☆」
「お……? スノーさんの驕り? やったぁ!」
 無邪気にうずまきが喜び、リーズレットも一緒になって笑みを零した。奢りよりもふとっぱらという単語に若干嫌そうな顔を見せるスノーが振り向く。
「私の奢りで皆さん食べる事になってるの……? 奢るのは構わないけど……勿論奢るからには、皆さまのメイド服姿が見たいわね?」
 にこりとスノーは微笑み、メイド服を取り出して皆を見渡した。すると奏が後ずさり、じりじりとスノーが間合いを詰める。
「あまり無茶振りをするんじゃないぞ?」
 そんな様子にエフイーが呆れたように肩を竦めると同時に、追い駆けっこが始まる。
「うずまきー! そこのスノーを止めてなさいって言ってるだろー!!」
 奏の叫びは虚しく聞き流され、うずまきはリーズレットとお風呂の話題で盛り上がっていた。
 これも楽しい夏の思い出だと、賑やかにケルベロス達は食事処に向かって歩き出した。

作者:天木一 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年9月6日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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