図書館の少年

作者:犬塚ひなこ

●図書館の怪異
「ねぇ、あなた達、怪談話は好きかしら?」
 数人の学生の前に現れたのは不気味な雰囲気を纏う少女。
 学生達は驚いたが、思わず好きだと頷いてしまう。すると彼女は学校の図書館に纏わる怪談話を語っていった。
 静まり返った深夜の図書室。
 本来ならば誰も入ることの出来ない場所だが、或る夜にだけ扉がひらいている。
「それはね、図書館に住まう少年悪魔の仕業なのよ。少年は入った人間を書架の中央に誘ってね……そして――その人間を襲って、一冊の本に変えてしまうの」
 少年は襲った際に抜き取った血を使い、それをインク代わりにして本に不幸な物語を記すのだという。赤い文字で書かれた本は書架に並べられ、怪談の一部となる。
 図書館の少年。その怪談はそう呼ばれているのだと少女が話し終わると、学生達は怖々ながらも興味を示す。そして、この話が本当なのか問いかけようとした。
「あれ、いない?」
「さっきの子、何処に行っちゃったんだろう。でも……」
「深夜の図書館か。ちょっと気になるね」
 少女の姿が消えてしまったことを訝しむ学生達だが、いつしか話は怪談を確かめてみようという方向に進む。やがて、夜は更けていき――。

●怪談少女にご注意を
 学生達は肝試しに向かい、学校の図書室に潜んでいた屍隷兵に襲われる。
 そのような未来が予知されたのだと語り、クララ・リンドヴァル(鉄錆魔女・e18856)はケルベロス達に事件の経緯と首謀者について説明を始める。
「事件を起こしているのは、『ホラーメイカー』というドラグナーのようですね……」
 ホラーメイカーは作成した屍隷兵を学校に潜伏させた後、怪談に興味のある学生に怪談を話し聞かせにゆく。そうして、その話に興味をもった中高生が自分から現場にやってくるように仕向けているらしい。
 既に行方不明になった者達もおり、早急に解決する必要がある。
「ええと、ホラーメイカーが広めた怪談話は『図書館の少年』というものです。この怪談話を信じて学校の図書室にいくと、屍隷兵に襲われるらしいです」
 学生達が危険な目に遭うと知っていて放っておくわけにはいかない。
 そこで、一般人が事件現場に現れないように対策しつつ、学校に潜伏する屍隷兵の撃破を行うのが今回の任務だ。協力してくれますか、と問いかけたクララは仲間達を見つめ、敵の詳しい情報について話し始めた。
 出現するのは屍隷兵が一体。
 ホラーメイカーは直接関与せず、図書室に現れるのも少年めいた姿の屍隷兵だけだ。
「少年、といっても見た目は恐ろしいものです。どうか油断しないでください」
 クララは仲間達に注意を伝え、敵の詳細を告げていく。
 屍隷兵の戦闘力はあまり高くはないが、麻痺や毒の効果を持つ攻撃を行うらしく注意が必要となる。しかし、協力しあえば怖い相手ではないらしい。
 クララはヘリオライダーから伝え聞いた情報をすべて語り終え、ゆっくりと息を吐く。
「敵は学校に屍隷兵を潜伏させてから、人間を誘き寄せるような怪談話をばらまく用意周到なドラグナーです。そんな相手の企みはしっかりと潰してしまいましょう」
 クララは仲間達をもう一度見つめ、静かに頷いた。
 何よりも本と図書館を穢すようなホラーメイカーの行動は好ましくない。クララは手にしていた本の背をそっと撫で、紫色の眸に静かな思いを宿した。


参加者
ディディエ・ジケル(緋の誓約・e00121)
ゼロアリエ・ハート(晨星楽々・e00186)
ジゼル・クラウン(ルチルクォーツ・e01651)
ベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944)
ルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994)
羽乃森・響(夕羽織・e02207)
クララ・リンドヴァル(鉄錆魔女・e18856)
皆守・信吾(激つ丹・e29021)

■リプレイ

●夜の図書館
 真夜中の学校に忍び込む。
 それは日常の中の非日常であり不思議と心躍らせる行為だ。それも図書館の少年という怪談の噂つきならば、なおさら興味を引くというもの。
 ホラーメイカーの噂を聞いた学生達は今、校門前に立っていた。
 だが、そのとき。背後からくすくすと笑む声が響いた。
「まぁ……皆さんお揃いで夜のお散歩?」
 突如としてかけられたクララ・リンドヴァル(鉄錆魔女・e18856)の声に驚いたのか、学生達はびくりと身体を震わせる。
「うわ、誰!?」
「ご、ごごめんなさい!」
 見つかった、やばい、と焦る彼らに対してジゼル・クラウン(ルチルクォーツ・e01651)とディディエ・ジケル(緋の誓約・e00121)は身分を明かし、状況を伝えた。
「……これからデウスエクスとの戦闘になる。危ないからもう帰るといい」
「とても危ないからね。自分達で避難は出来る?」
 皆守・信吾(激つ丹・e29021)もディディエと共に学生達に声をかける。好奇心は誰にだってあるものだから無謀を叱りはしないが、命で贖うほどの価値があるか否か見極める目を養ってほしい。そんな思いを込めた言葉は真っ直ぐに学生達に届いたらしく、信吾は去っていくその背を見つめた。
 ベルノルト・アンカー(傾灰の器・e01944)も手を振って彼らを見送る。
「ご家族に心配を掛けてはいけません。夜道には気をつけてお帰りくださいね」
「――Curiosity killed the cat.人ならば尚更だ。夢々気を付けねばね」
 ジゼルも軽く息を吐き、これで一般人が戦闘に乱入する危機は去ったと判断する。
 そして、一行は学校内へ踏み入った。
「真夜中の学校ってなんだかワクワクするね! 図書室の怪談ってのも良いねぇ」
 心惹かれると語り、ゼロアリエ・ハート(晨星楽々・e00186)はホラーメイカーもやるなと感心する。ルア・エレジア(まいにち通常運行・e01994)も同じような感想を抱き、暗闇に包まれた廊下を眺めた。
「夜の学校ってスゲーよね。迫力あるっていうか……出る! って雰囲気」
 面白いよね、と明るく笑うゼロアリエとルア達に対し、羽乃森・響(夕羽織・e02207)は緩く首を振った。
「夜は怖いほうではないけれど怪談話は苦手なのよね……」
 図書館の少年についての話を思い浮かべた響は、目の前に図書室と書かれたプレートがかかっている教室を発見する。仲間達は室内にある何かの気配を確かめた。
 そして、その扉はベルノルトによってひらかれる。
「気を付けてください」
「……ああ」
 いつ襲撃があってもいいよう、ベルノルトの呼び掛けに頷いたディディエは身構えた。その中でクララは内部を見渡してぽつりと呟く。
「……。良い図書館です……ね」
「注意しろ、クララ。其処に居るようだ」
 信吾が前位踏み出すと、見据える先で屍隷兵らしき影が動いた。一瞬後には戦いが始まると察したケルベロス達は其々に武器を構え、戦闘態勢に入る。
「不変のリンドヴァル、参ります……」
 クララも同様に身構え、真剣な眼差しを敵に向けた。
 そして――戦いは始まりを迎える。

●図書館と少年
 少年型、とはいってもおぞましく醜い姿の屍隷兵が腕を振りあげた。
 その狙いはルアに向けられており、その軌道を察した信吾が敵の前に躍り出た。
「させるか!」
「うわ、助かったよ。ありがと!」
 自分の代わりに殴打を受けた信吾にルアは礼を告げ、敵を睨み付ける。信吾の身体には麻痺の力が巡ったが、すぐにベルノルト達が援護に入った。
「少年の屍隷兵――。思う所は在れど、これ以上の被害は食い止めねばなりません」
 ベルノルトは元が少年であろう敵を注視しながら、幻想の刀身を顕現させる。まぼろしの力が信吾を癒し、加護を巡らせてゆく。
「ちょっとした厄除け祈願だ」
 信吾自身も仲間の盾たる意志を基に、前衛へと紙兵を散布していく。
 すかさずクララも溜めた気力を放ち、彼の麻痺を取り払っていった。その間にジゼルが敵へと踏み込み、自らの身体を変形展開させる。
「……」
 ジゼルは無言のまま、出現した発射口から光線を撃ち放った。敵が元は何だったかの考えは今は押し込めるべきで、今はただひたすら攻撃を続けるのみ。
 響もウイングキャットのフォンと共に行動に移る。翼猫が羽を広げて清浄なる力を仲間へと施す中、響は件の噂について考えた。
「本になるんじゃなくて、本の中の世界を冒険できるなら楽しそうなのに」
 どうせなら赤いインクではなく虹色のインクで。
 不幸の物語ではなく幸せの物語が聞きたい、と微かな笑みを浮かべる響は爆破スイッチのボタンを押す。色とりどりの煙が広がる戦場で静かに目を瞑った響はそっと自分の裡にある怖さを振り払った。
 ディディエも其処に続き、凍結弾を解放していく。
「……さて、ひとつ頑張るとしよう」
 ホラーメイカーの真の目的はまだわからないが、一つ一つ企みを潰して行き、悲劇を防ぐのが近道だ。そう感じたディディエは敵の胸元を正確に貫いた。
 だが、屍隷兵はその衝撃を耐えてみせる。
 ゼロアリエはウイングキャットのリューズに呼び掛け、一緒に攻め込もうと呼ぶ。
「リューズ、ガンガン攻撃してね! あ、でも本は傷つけたらダメだよ!」
 激しく巡る戦いの中、ゼロアリエは気を付けてと注意した。しかし、当のリューズは無反応のまま攻撃に移るだけ。
 二人は仲悪いのかな、と首を傾げたルアだが、リューズはちゃんと攻撃を行っているのでいわゆるツンデレのようなものだろう。
 俺も、と踏み出したルアは手にした刀の柄を強く握り締める。
「行くよ、手加減はしないから――!」
 雷刃の突きで敵を穿ったルアは素早く身を翻した。その空いた射線を利用したフォンが尻尾を振り、リングを舞い飛ばす。
 更に信吾が電光石火の蹴りを放ちに駆けた。屍隷兵を蹴り込んだ勢いを殺さぬまま、信吾は宙を舞うようにして回転する。
 着地した彼が仲間の前に立ち塞がる様を見遣り、クララは掌を上に向け胸の高さまで掲げた。すると、其処へ明滅する赤い球が現れる。
 そのとき、ふと思うのは噂の内容と、それに踊らされた学生達のこと。
「……。つまり、全部嘘です。それでも、いえ、それでこそ好奇心は持ち前の甘さ苦さをいや増しに増すのかも知れません。もっとも……」
 彼はそれを味わう事が出来ないけれど、とクララは屍隷兵を見つめた。
 怪光球は戦場を赫々と染めあげ、髄の奥底に眠る闘争本能を刺激していく。其処から湧きあがるような力を得たディディエは更なる攻勢に出た。
「……火力には自信が有るのでな」
 ――現し世へと至れ、妖精王よ。汝の軌跡を、此処へ。
 薄く双眸を細めたディディエは伝承に伝えられた妖精王の物語を諳んじる。魔音が戦場を乱れ飛び、屍隷兵を容赦なく打ち貫いた。
 苦しげに暴れる敵は周囲の書架にぶつかりながら次の一手に出る。
 本を投げる敵がジゼルを狙う様に気付き、ベルノルトが庇いに向かった。ゼロアリエも、リューズ、と相棒猫を呼んで本に被害が及ばぬよう書架側に回る。
「ちゃんと本は守らなきゃね。それにしても……この敵、少年て単語から抱くイメージと全然違うのだけ気になるけど!」
 攻撃を重ねながらゼロアリエは屍隷兵を改めて見た。
 その疑問を聞いたジゼルは自らの腕を凶器に変えながら、首を横に振る。
「単に、元が少年だったからだろう」
 其処に感情はなく、ジゼルは事実であろうことを述べただけ。はっとしたゼロアリエは僅かに俯き、ごめん、と口にした。
 そしてジゼルの放つ一閃が敵を揺らがせ、リューズの引っ掻きが追い打ちをかける。
 ゼロアリエも首にかけたゴーグルを軽く弄り、気を取り直した。其処から放たれた凍結光線は戦場を真っ直ぐに翔ける。
 ルアも屍隷兵が人の亡骸から作られていることは分かっていた。死を覆すことは出来ない。ならば、と拳を握ったルアは力を溜めてゆく。
「倒すしかないなら、全力で!」
 声にグラビティを乗せて発したルアは衝撃波を巻き起こし、屍隷兵を貫いた。
 一瞬だけ敵の動きが鈍くなり、響は好機を見出す。敵の攻撃で戦線が崩れる気配は見られない。それならば、と攻撃に入った響は杖を掲げて迸る雷を敵に向けて放つ。
 クララも癒しは必要ないと判断し、帽子を被り直した。
「書籍への乱雑な扱いも、まぁ、今回は大目に見るとして。……。それでも、為すべき事を為すのみ」
 不意に過ぎった思いは胸の奥に押し込め、クララは精神を集中させる。
 爆発が巻き起こり、屍隷兵の身が傾いだ。信吾はこのまま畳みかけていけば勝てると判断して身構え直す。
「終わらせてしまおうか。長引いて良いことなんて一つもないからな」
「ええ、その通りですね」
 縛霊の一撃で敵の動きを阻み、信吾は「今だ」と仲間に呼び掛けた。その合図を受けたベルノルトは刃を差し向け、絶空の斬撃を解き放つ。
 屍隷兵に巡る痺れが増幅され、その動きは更に縛られていく。
 響は苦しむ様子を見つめて思う。
 屍隷兵は本来眠りについていた存在。無理やり起こされて、兵も、周囲も苦しみを生むのは見たくない。
 響が祈るように瞳を閉じれば、夕焼けに染まった髪が僅かに白む。
「お願い、もう苦しまないで」
 其処に滲み出る黒い死神の影。コートに刻む赤い文様が風にはためき、翼のように広がってゆく。そして響は低く刃を構え、一閃を振るった。
 鷹の姿と化した死神が飛び、剣戟と重なるように屍隷兵を貫く。
 その一撃が起点となり、終わりの始まりが訪れた。

●死の先
 屍隷兵の呻き声が図書室内に響き渡り、木霊する。
 振るわれる殴打も狙いが定まっておらず、ベルノルトは軽く一撃をいなした。ルアも敵が弱っていると感じており、黒の豹耳をぴんと立てる。
「チャンスだ!」
「……中々に、血が逸る。行くぞ、ルア」
「もちろん、最後まで手は抜かないよ!」
 ディディエから呼びかけられた声にルアが反応し、古代語魔法を詠唱する。迸る石化の光線が炸裂した刹那、ディディエによる一閃が屍隷兵の力を奪い取った。
 クララは間もなく戦いが終わると感じ、仲間達に再び精神魔法を施していく。
「……」
 ただ、言葉もなく。目の前の存在を終焉させるためにクララは動く。
 狂躁の伝染は前衛達に激烈な効果を齎して迸っていった。己に漲っていく力を感じつつジゼルは手を宙に翳す。
「――開け」
 旧き精霊魔法によって一瞬で光り輝く鍵めいた武器が召喚された。その鍵に宿るいたずら妖精の力が発動され、銀の魔鍵は敵を撃ち貫いてゆく。
 だが、屍隷兵は力を振り絞って反撃に移った。その一撃が恐ろしい猛威を振るうだろうと察した信吾は狙われたディディエを守りに向かう。
 振り下ろされた腕。毒を孕む一撃は重い。しかし、果敢に耐えた信吾はその腕を弾き返し、身を捩った。
「その程度か。だったら、こっちからもお返しだ」
 敵はかなり疲弊していると悟った信吾は旋刃の蹴撃で以てその身を蹴り飛ばす。
 ベルノルトも斬霊刀を振りあげ、刃をひといきに下ろした。ふと頭に過るのは敵への思い。その存在は酷く哀しいものに思える。
 異形と化された屍は蠢く血肉の塊か、然れど魂の在処は――。
 戦いを望まずとも、屠らねばならぬものは増えていく。ベルノルトは敵から視線を逸らしそうになったが、敢えてそのまま見つめ続けた。
 更に翼を広げて飛び掛かったリューズとフォンが敵を引っ掻き、其処に続いてゼロアリエが得物に紫電を纏わせる。
「ちゃんと終わらせてあげるね」
 閃光と共に一気に放たれた一撃が刹那のうちに屍隷兵を貫いた。
 響も天空高く飛び上がり、美しい虹をまとう急降下の蹴りを浴びせかける。クララも攻勢に戻り、達人めいた一撃で冷たい衝撃を与えた。
 ディディエとルアも再び攻撃の機を得て、左右から同時に畳みかける。
「……失せろ」
「ヘッズ・アップ!」
 魔音と力を込めた声が重なり、屍隷兵を逃れえぬ衝撃が包み込んだ。ゼロアリエは腕に装備したパイルバンカーに力を込め、螺旋力を高める。
 デッドエンドの名に相応しく、その一閃は敵の腹に大きな穴をあけた。
 ジゼルと信吾は次の攻撃が終わりの引鉄になると感じて、仲間達に視線を送る。臆さず、怯まず、驕らず。信吾は仲間に最後を託した。
 響もフォンと一緒に、そのときに攻撃の機を得ていたベルノルトに眼差しを向ける。
「さあ、夜の夢の中へ還ってもらいましょう」
 その呼び掛けに応えたベルノルトは小さく頷き、霊刀を握る手に力を込めた。振り払うのは忌まわしき呪縛。振り下ろすのは――『彼』の最期を飾る一刀。
「罪業は全て拙き刃に、貴方を隷属から解き放ちましょう」
 そして、ベルノルトの言葉が紡がれ終わった刹那、屍隷兵の首が落ちる。
 それは紛れもなく、終幕を示す証だった。

●噂の果て
 戦いは終わり、図書室に静けさが満ちてゆく。
 倒れた屍隷兵は断末魔すら遺さずにその場で崩れ、跡形もなく消えていった。
 クララは長手袋を脱ぎ、戦場だった場所にそれをふわりと落とす。
 そうして、ディディエ達は荒れてしまった図書室の整理を行う。床と書架の一部が削れた程度で後は本が散乱しているだけだ。
「さあ、この棚を直していきましょう」
「うん、大丈夫! あ、この本のタイトル面白いね」
「本当だな。と、一つずつ興味を示していたら終わらないな」
 響とゼロアリエはヒールを担い、信吾も他に損傷がないか確かめる。
「一冊、二冊、三冊……これで全部?」
「そのようだね」
 ルアは落ちた本を拾っていき、ジゼルは元あった場所にそれらを戻していく作業に入った。真夜中ではあるが、何だか図書委員の仕事をしているようだとルアが笑うとディディエが同感だと答え、仲間達も可笑しそうに同意する。
 そんな中でベルノルトは先程まで屍隷兵がいた場所を見つめていた。
「屍をも利用するとは死者への冒涜です。元凶の動向を突き止めなくては……」
 ホラーメイカーの行為を思い、ベルノルトは小さく俯く。
 するとクララがそっと顔をあげ、窓辺から見える夜空を振り仰いだ。闇の中には幽かな星灯りが見える。
「……。いずれ、答えが出るでしょう」
 そして――小さく呟いた言葉は、未だ深い闇の中に消えていった。

作者:犬塚ひなこ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年9月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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