●円満な家庭に訪れた悲劇
その日は、週末。
明日と明後日、遠藤家は家族6人で海水浴へと出かけることになっていた。
父親がなかなか忙しい人らしく、ようやくとれた夏期休暇。それに土日が上手く重なったことで、祖父母や母親も時間が取れた。中学生の息子と小学生の娘は大喜びだ。
「明日、何して遊ぼうかなあ」
娘がわくわくしながら語る。友達と行くのも楽しいが、家族と行く海水浴はまた格別だ。息子ももう友達と一緒に行くほうが多い年代だが、今回は妹に誘われて同行する形。祖父母も仲の良い兄妹の姿に笑顔を浮かべている。
「よし、明日は張り切って運転しないとな」
父親が腕を振るうと、家族全員から笑い声が上がる。
……しかし、それがたったの数分で、阿鼻叫喚の地獄絵図と化してしまう。
突然現れた、傀儡使い・空蝉。そいつは遠藤一家を次々に居間で殺害していく。
「結衣、逃げ……て」
最後まで娘へと呼びかけていた両親へ、空蝉の持つ刃が突き入れられた。
「おとうさ……おかあ……うう……っ」
ただ、娘は恐怖で動くことができない。すでに家族の血でまみれた刃は、彼女の体にも……。
真っ赤な液体に染まったその場で、空蝉は肉の塊のようなものを中心にこの場にあった死体を混ぜ合わせていく。
「…………」
完成した屍隷兵を見た空蝉は、そのままこの場から姿を消してしまう。
「オオオ、オオオォォォォォオォォォォ……」
一方、この場に取り残された屍隷兵は悲しげな声で咆哮を始め、夜の住宅街にこだましていたのだった。
新たな事件が発生したと聞いたケルベロス達はヘリポートへと向かう。
そこには、神妙な表情をしたリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)がケルベロス達を待っていた。
「ようこそ。依頼の説明を……」
口元を押さえるリーゼリット。よほどひどい予知の映像を目にしたのだろうと、ケルベロス達は察した。
彼女はそれでも気丈に口を開き、説明を始める。
なんでも、神野・雅(玲瓏たる雪華・e24167)の危惧していたことが現実のものとなってしまったらしい。
「螺旋忍軍が研究していたデータを元に、屍隷兵を利用しようとする勢力が現れ始めたようだね」
螺旋忍軍の傀儡使い・空蝉もその一体で、仲の良い家族を惨殺して、その家族の死体を繋ぎあわせる事で屍隷兵を強化しようとしているらしい。
生み出された屍隷兵は、近隣住民を惨殺してグラビティ・チェインを奪う事件を起こしてしまうだろう。
「空蝉の凶行を阻止する事はできないけれど、家族の屍隷兵が近隣住民を襲い始める前には現場に駆けつける事が可能だよ」
屍隷兵にされた家族は近隣住民にも仲が良い家族だと評判が良く、近所づきあいも良好だったらしい。
そんな彼らが、近隣住民を虐殺するような悲劇を起こすわけにはいかないだろう。
「取り急ぎ現場に向かうから、皆には事件の解決を頼みたいんだ」
現れる屍隷兵は3体。3mほどの大柄な個体が1体と、余った部分で作られた1.5mほどの個体が2体いる。どうやら、空蝉の姿は現場周辺にはもうないらしい。
布陣もすでに、大型がクラッシャー、小型2体がディフェンダーとスナイパーだと判明しているので、作戦に活かすと良いだろう。
「屍隷兵の戦闘力は高くないけれど、大柄な相手は屍隷兵の中ではそれなりに手ごわいようだね」
敵のグラビティはいずれも共通で、直接の殴りかかり、体の一部を小さな弾丸としてからの撃ち出し、それに死骸となった苦しみの叫び声の3種だ。
時に、大型は攻撃されたタイミングで、その部分を構成していると思われる家族の名前を叫びながら、反撃を行うことがある。
「非常に痛々しい姿だけれど、もうどうしようも……」
彼女は言いにくそうにしながら、説明を続ける。
現場は、千葉県某所の住宅地だ。
夜、9時ごろに現れる屍隷兵は犠牲者宅を出て住宅地を歩き回り、近隣住民を探してグラビティ・チェインを奪おうと動く。速やかに現場周辺の人払いと屍隷兵の抑え、そして撃破を行いたい。
「この屍隷兵は、螺旋忍軍の集めたデータを元にして作られたものらしいけれど……」
言葉を詰まらせるリーゼリット。あまりにひどい状況に、怒りとやるせなさが入り混じって、なんとも言えない気分になってくる。
「この家族はもう救うことができない。……だから、せめて」
皆の手で彼を、彼らを止めて欲しい。リーゼリットは一筋の涙を零し、ケルベロスへと願うのだった。
参加者 | |
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樫木・正彦(牡羊座のシャドウチェイサー・e00916) |
月枷・澄佳(天舞月華・e01311) |
龍神・機竜(その運命に涙する・e04677) |
リリー・リーゼンフェルト(耀星爛舞・e11348) |
風音・和奈(哀しみの欠如・e13744) |
ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046) |
グレイシア・ヴァーミリオン(夜闇の音色・e24932) |
嶋田・麻代(レッサーデーモン・e28437) |
●地獄からの解放を
空を行くヘリオン。
その機内はひどく静かだった。
「螺旋忍軍の屍隷兵……懲りない連中ね」
武装ジャケットを纏うシャドウエルフ、リリー・リーゼンフェルト(耀星爛舞・e11348)が呟くと、メンバー達はぽつり、ぽつりと続いて声を出す。
「幸せな家庭をこの様に壊すだなんて……」
緋袴に巫女装束を纏う、月枷・澄佳(天舞月華・e01311)は怒りと悲しみによって小さく身体を震わせる。
「罪もない人を材料に使った上に、さらに他の人を襲わせようなんていうのは、決して許しては置けないのですよ」
猫のウェアライダー、ヒマラヤン・サイアミーゼス(カオスウィザード・e16046)も落ち着いてはいたが、見過ごすことができずこの場へと身を投じている。
「もう救う事は出来ないんだね」
自身の家族が大好きな、グレイシア・ヴァーミリオン(夜闇の音色・e24932)。
――もし、6人いる自分の兄弟がそうなってしまったなら。
そう考えてしまったグレイシアには、今回の事件が他人事に思えなくて。
「もう、彼らは救うことができない? ……今、この地獄から解放することはできるはず」
そこで、片翼を地獄で補うオラトリオの風音・和奈(哀しみの欠如・e13744)が異論を唱える。
「倒すことで救う。それが私にできる唯一のことなんだ」
「そうだね、だったらせめて……オレ達でちゃんと眠らせてあげなきゃね」
あまり大きな反応を見せなかったが、グレイシアはそう決意する。
「語るまでも無い……。生命を弄ぶ所業、許さないわ」
螺旋忍軍に対する復讐心を堪え、リリーはこの事態の早期解決の為、現場へと身を投じる……。
夜、千葉県の某住宅地に降り立ったケルベロス達。
街灯はついていたが、場所によっては暗い部分もあり、グレイシアはハンズフリーライトを腰に付け、澄佳はいくつか用意していたカンテラ型の照明を地面へと接地していく。
そして、まだ近隣住人が帰宅などする時間ということで、樫木・正彦(牡羊座のシャドウチェイサー・e00916)はケルベロスコートを掲げつつ、周辺住民に避難を呼びかける。豚の頭となっていることもある彼だが、今回は完全に人型での参戦だ。
「えーと、『あー、あー。夜分遅くに失礼いたします、こちらはケルベロスです』」
ヒマラヤンも拡声器を使い、被害者宅周辺の町内にいるひとへと避難を呼びかける。
「『……被害の拡大を防ぐため、付近の人は落ち着いて避難してください』と、これでいいのです?」
「ええ」
予め、交戦地域を確認していたリリーがヒマラヤンに同意する。戦術通りに確実に撃破できるよう、一行はリリーが提案したポイントに敵……いや、相手を誘導していた。
暗闇から奇襲してくるかもしれない。両手両足が機械のレプリカント、龍神・機竜(その運命に涙する・e04677)は民間人がいないか気に掛けつつ見回す。
近場に一般人がいないことを確認し、嶋田・麻代(レッサーデーモン・e28437)は作業的にキープアウトテープを張り巡らせる。
そして、正彦も外から見えないようにと、バイオガスで戦場想定場所を包み込む。
「住民には見せられないからね」
これから始まる戦いの凄惨さを考えれば。彼なりの配慮だろう。
ここに訪れるのは、歪な形に組み上げられた屍。ぴたり、ぴたりと音を立ててやってくる。
「来たわ……。殺界形成、作戦開始」
リリーはその気配を察して、人払いの為に殺気を放つ。
ぴたり、ぴたり……。
それは、幸せな家庭を絶望に塗れて造られた屍隷兵。大柄な1体が小柄な2体を引き連れて歩いている。
通り過ぎようとしたそれに、和奈が砲撃形態へと換えた「SecondaryDragonCannon」から砲弾を叩き込む。
「どこに行くの!? あんたの相手はこっちだ!」
着弾箇所から煙を上げつつ、そいつは虚ろな瞳をケルベロスへと向けてくる。
さらに長髪を大きく舞わせた澄佳が有無を言わさず、ゲシュタルトグレイブで回転連撃を浴びせかけていく。
「オオォ、オカ、サン……」
「……んー?」
澄佳の斬撃を浴び、嗚咽を漏らす大柄の屍隷兵。それに、麻代が反応して。
「嘆きのマリアでも思ったんですけど、何かしら言葉を発するくらいには仕上がってるんですよねー」
かなり淡白な様子の彼女は、屍隷兵を造り上げる螺旋忍軍の技術に着目していた。
ヒマラヤンも状況を見て、ヴィーくんことヴィー・エフトと敵を抑えようと動く。
「残念なのですが、もう元に戻してあげる事は出来ないのです。せめて、安らかに眠れるよう祈るしかないのですよ」
すでに、割り切った様子のヒマラヤンは、撃破すべき相手を見据える。
他のメンバーは時折、痛々しい屍隷兵の姿に視線を伏せ気味になりながら、交戦の構えを取っていた。
「これ以上苦しませぬ為、ここで終わらせます。安らかに眠って下さい」
澄佳は再び、相手にゲシュタルトグレイブを突きつける。
「殺された家族が安らかに眠れるように……」
無表情ながらも、機竜も仲間の前に身を張り、全身からオーラを噴き出す。
「オドオザアァァ……」
貫かれる屍隷兵から声が漏れ出る。あまりにも痛ましいその姿に、ケルベロス達は時に目を背けて。
(「彼らの理不尽な死に心を痛めるかどうか……。正直そこは興味ないなぁ……」)
仲間の反応を見て、ふと考えた麻代。目の前の相手は屍隷兵としか認識していない彼女は日本刀に手をかける。
「絆の力……なのかちょっと怪しいですけど、楽しませてもらいますよ!」
「オオオォォォオォォ……」
その声に込められていたのは、悲しみか慟哭か。
「全部受け止めて、引導を渡してやるよ」
和奈は飛び出し、目の前の屍にオウガメタルを纏わせた拳を振り上げたのである。
●互いに寄り添い傷ついて
暗い路地を、ケルベロス達が用意した灯りが照らし出す。
屍隷兵が襲ってくる前に、和奈が正面から殴りかかっていく。
オウガメタル「クウ」に覆われた和奈の拳を受けた瞬間。
「オトウ、サン……」
「ユウ、ト……」
相手から苦悶の叫びが漏れ出す。
「…………っ」
天使と地獄の翼を羽ばたかせ、和奈は体勢を整える。痛みをペインキラーでごまかしつつ、彼女は屍隷兵へと呼びかけた。
「その悲鳴は、あんた自身のものなの? それとも、傀儡としてデザインされたものなの?」
相手は応えない。ただ、苦しみの声を上げるだけ。
幸せであるはずの家族を犠牲にした、傀儡使い・空蝉。
澄佳はそいつに対する怒りを抑え、前に立ち塞がる屍隷兵へと組みあがる遺体と遺体の切れ目に一蹴を放つ。
「オ……ジイチャァァ」
機竜もライドキャリバーのバトルドラゴンと共に耐えつつ、ドローンを前面に展開していく。
仲間のダメージが重なれば、リリーがすかさず緊急手術を施す。
「落伍者は出させないわ……。ここは抑える!」
誰一人落とさないように。彼女は全力で攻撃する仲間にいやしを与え、戦線を支える。
その戦線となる前衛メンバーはまず、障害となる小型の屍隷兵から撃破を目指す。
戦場でも、凛々しく立ち振る舞うグレイシア。
「動けなくしてあげるねぇ」
氷にちなむ名前を持つ彼が発したのは、全てを凍てつかせる絶対零度の冷気。
「オバ、アチャ……」
氷に包まれて名前を呼ぶ屍隷兵の声を耳にし、グレイシアはなんとも言えない気持ちに襲われてしまう。
その間も、グラビティを繰り出そうとする大型の屍隷兵。麻代はそいつを抑える為に、地獄の炎を掌に集める。
「根性!」
その手のひらで、麻代は相手へと強烈な平手打ちを叩きつけた。
「ユイ、カアサ……ン」
「家族の名前?」
しかし、麻代は首を傾げて。
「そう叫ばれても……。殺したの、空蝉じゃないですか」
とはいえ、犠牲家族の意志というわけではないのだろうがと彼女は推しかかりつつも、平然と更なる攻撃の為に刀を振るう。
「バァアァァサンヤ」
「アナダァァ……」
家族の名前を呼び合う屍隷兵。そう造られたからなのか、あるいは、素材とさせられた家族の悲しみが強く遺されているからなのか……。
「……遅れてすまない。けど、名前は覚えた」
ナイフを握りしめた正彦は、1人ずつ犠牲になった遠藤一家の名前を紡いで。
――演技をしろ、心を殺せ。今は彼らを解体しろ。
目の前の相手を切り裂き、彼は返り血を浴びる。
「オオオ、オオォォ……」
相手から漏れ出す悲鳴にも、正彦は歯軋りして攻撃を繰り返す。
――自分で選択した道だ後悔はない。これが初めての人殺しだとしても。
「黄道十二騎士団、樫木・正彦がケルベロスの名において、貴方達を殺す」
やればできると念じ、彼は刃引きされた長剣を敵へと突き入れる。
「オオオ、オオオォォォォォオォォォォ……」
一際大きく響く声。それでも、ケルベロス達の攻撃の手は止まらない。
相手は不完全な神造デウスエクス、屍隷兵。
その内情さえ除けば、戦力的には御しやすい相手と言える。
ヒマラヤンは相手の動きを止める為に、古代語を唱える。その詠唱は力を持って魔法の光線となり、大型の体を一部石と変えていく。
メンバー達がその討伐を目指す中、機竜は仲間の回復に重点を置いて立ち回るが、その動きはやや冴えない。前に出ていた彼は時に、敵の肉弾で体を貫かれていた。
しかし、仲間の壁となるのは、彼だけではない。相手の気を引いていた麻代が、主立って攻撃を受けてくれていたのだ。
「やっべぇ、いってぇのもらっちゃいました……」
屍隷兵から放たれた豪腕を受け、続けて肉弾にその身を貫かれ、屈んだ麻代は呻く。
他に壁役となる正彦、そして、手厚い回復に回るリリーの援護。
機竜は仲間に支えられつつも、オーラで相手の体の継ぎ目を狙って殴りかかっていく。
「オオォォ、オカア、サ……」
前に出て身構えていた小さな屍隷兵へ、光の翼を暴走させたグレイシアはその身を粒子に変えて突撃する。
人の姿に戻ったグレイシアが小さく口元を吊り上げて笑うと、屍隷兵は身体を保てなくなったのか崩れ落ちていく。
メンバー達は様々な感情を抱きながら、攻撃を繰り返す。
「我が身に宿すは、鮮血纏いし機械の乙女」
赤い霧を纏う澄佳は白髪紅眼魔人に変貌し、大型に触れて気を引く。
しかし、その時、肉弾を飛ばしていた奥の小型の体がぐらついていたのを、彼女は見逃さない。
「オオォォオォォォ……」
「……っ」
その呻きに、顔をしかめる澄佳。感情が漏れ出すのに気づきながらも彼女は己の身に御業を降ろし、そこから炎弾を放っていく。
炎は小型の屍隷兵の体を包み、大きく燃え上がる。徐々に体は崩れ落ち、人型すらも保てなくなっていった。
残るは、大型の屍隷兵1体。
「オオォォオォォォォ……!」
時に、そいつは苦悶の声を大きくし、ケルベロスに向けて叫び掛けてくる。
寒気すら覚えそうになる嘆きの声。前衛の麻代、正彦、機竜は足が竦みながらも、仲間の盾にならんと身を張っていた。
落ち着いた様子のヒマラヤンは、ヴィーくんが尻尾のリングを飛ばしていたのに合わせ、ファミリアを放って相手の行動を阻害していく。
屍隷兵の叫びに耐えた麻代も斬霊刀に空の霊力を纏わせて、相手に一閃させた。
煌く刃が継ぎ接ぎの体を断ち切れば、正彦も刃引きされた長剣を両手に構えて。
「――sign(サイン)!」
11本のゾディアックソードをスマートリンクによって制御した彼は、それらを目標に対して飛ばし、乱舞を行う。
そして、正彦が手にする牡羊座の剣が敵の体を貫く。
「ユ、イィィィ……」
もはや、この場で感情を露わにはできない。ただ、ケルベロス達は哀れな骸を弔う為にグラビティを繰り出す。
小型がいなくなったことで、少し回復の負担が軽くなったリリーも飛び込む。
「回復役が攻撃しないなんて思った? 戦況は常に変化するのよ……!」
相手に一言呼びかけた彼女は、大鎌「スパイラルネメシス」で速やかに継ぎ目だけを狙って断ち切らんとする。
ピシッ……。
何かが弾け、徐々に崩れ出すその肉体。
「喰らいなっ!」
和奈は左腕に装着したオウガメタル「クウ」を、ドラゴンの爪のように変形させて真横に薙ぎ払う。
「ペインキラーでも、心の痛みは消せやしない。だから、私は」
爪を大きく振るった和奈はそっと瞳を伏せる。
それはもう、誰を呼びかけることもなく。
仲良き家族の遺体は最後まで、寄り添っているようにも見えた。
●悲劇の家族を前に
住宅地の中、誰にも見られることなく終えた戦い。
崩れ落ちた遺体へ、正彦は毛布を掛けていく。
「状況終了かしら、ね。ヒールに移るわ」
リリーはデウスエクスの撃破を確認し、戦場となった道路に癒しの雨を降らす。
「ひとまず一件落着! そんなに強くはなかったですね。サシなら間違いなく強敵ですが」
麻代は事も無げに言い放ったが、現場の空気は重い。
「許しは乞わないし、恨んでくれてもいい」
正彦は毛布の中から出ていた手をとって。
「だが、無念は僕達が持って行く。いいね? 遠藤さん」
最後まで彼らを人として扱い、正彦は弔う。
「絶対に仇はとるよ」
傷つき倒れる機竜を極光で包む和奈は、犠牲となった家族に対して黙祷を捧げる。
「あなた達の命の分も、私は戦い続けるから」
決意を新たにする和奈のそばで、ヒマラヤンもまた戦い前の宣言通りに、安らかに眠れるよう祈っていた。
「こんなの辛すぎる……。早く大本を阻止しなきゃねぇ……」
こんな悲劇を続けてはならない。グレイシアは間延びした口調こそ崩さぬが、元凶となる傀儡使い・空蝉の討伐を早期討伐をと独りごちた。
(「優しい人ばかり……、だからこそ地球を守れているんでしょう」)
そんな仲間の姿に、麻代は眩しさを覚える。
同じ仲間だと胸を張るには……そう考えた彼女はメンバーから目を逸らしてしまうのだった。
作者:なちゅい |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年8月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 3/感動した 2/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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