溢れ出るプール

作者:荒雲ニンザ

 とある学校の1シーン。やっていない夏休みの宿題をやらされている放課後、欝な表情の男子生徒が3名、問題集を前にへばっている。
 そこへ音もなく近づいたのは、ホラーメイカーと呼ばれる彼女。
「……ねぇ、あなた達、怪談話は好きかしら?」
 ぼんやりした生暖かい空気を突然変化させられ、少年3名は驚いて顔を上げる。
「えっ……?」
 何だろうと訝しげな表情で見返したが、強がりを決め込んだ男子中学生達は思わず2~3度頷いてみせる。と、彼女は静かに怪談話を始めた。
「この学校……夜になると、プールの排水口から水が溢れ始めるの。下水から逆流したとは思えないような、とてもきれいな水なんだけどね。いつだったか、校庭が水浸しになっているのに気がついた女子生徒さんが、不審に思って排水口の近くを上から覗き込んだら……溢れ出ていたはずの水が突然排水を初めて、彼女、中に引き込まれて亡くなっちゃったんだって」
 男子3名がゴクリとつばを飲み込む。
「事故でしょ、それ。怪談じゃなくね?」
「たまたま目撃した生徒さんがね、言ってたの。彼女がプールの排水口を覗き込んでいる周囲に、ずぶ濡れで立ってる大勢の人間がいたって……。みんな仲間が欲しいのね」
 一瞬にして、男子生徒の肌がブワッと鳥肌を立てる。
 動揺した男子の落としたシャーペンがカランと音を立てたので、3名の視線が床に流れた。
「それって、点検しに来た業者じゃねーの?」
 興味はあるが、怖がっているのを隠したい男子が何か理由を探して口を開き、顔を戻したが、すでにホラーメイカーの姿はどこにも見あたらなかった。
「うわ、やっべ、ゾッとして鳥肌すげえし」
「あんな程度でかよ」
「排水溝、何かつまってんのかな?」
「確かめ行く?」
「えー、ウソに決まってんじゃん、あんなの」
「このまま宿題やっててもつまんねーしー」
 強がっていても、興味は隠せず。
 遠からず、この中学生は、怪談話の真相を確かめに行くことになるだろう。

 言之葉・万寿(高齢ヘリオライダー・en0207)が眉毛を下げながらやってきた。
「今年の夏は、良い天気に恵まれず、寒々しいというか、どうにもシャキッとしませんなあ」
 そんなじめっとした夏、ドラグナー『ホラーメイカー』が、屍隷兵を利用して事件を起こそうとしているようだ。
 ホラーメイカーは、作成した屍隷兵を学校に潜伏させた後、怪談に興味のある中高生に、その屍隷兵を元にした学校の怪談を話して聞かせ、その怪談に興味をもった中高生が、屍隷兵の潜伏先に自からやってくるように仕向けているらしい。
 既に、学校の怪談を探索して行方不明になった者達もおり、早急に解決する必要があるだろう。
「どうやら、事件の舞台となる学校で、ホラーメイカーが広めた怪談を探索しようとすると、屍隷兵に襲われてしまうようでございます。男子学生3人が肝試しをしに向かっているようなので、まずはそれを引き留めて頂く所からですな」
 怪談話を聞いた一般人が事件現場に現れないように対策しつつ、怪談話に扮して学校に潜伏する屍隷兵の撃破をお願いしたい。

 時間は夜。戦闘場所は学校の敷地内にある野外プール。すぐ横は校庭。
 ホラーメイカーの怪談に興味がある人物が訪れると、プールの排水口から水が溢れだしてくる。そしてプールの中を覗き込むと、突然背後から『大勢の人間』に突き落とされ、そのまま水と共に吸引されてしまう。
「しかし、大勢の人間とは言っても、髪の毛の束で繋げられて一個体となってしまっているようです。分離できる屍隷兵は2体で、無数の手足や顔がついた屍隷兵1体とあわせて、3体と考えればよいかと」
 合体した状態だとコンビネーションをしかけてくるので、分散させて対処する方が楽に戦えそうだ。
 攻撃方法は、複数伸びた手足で殴る蹴る、長い髪の毛で締めかかる、水を使った遠距離などがある。
「敵は排水口の中に潜伏しておりますぞ。どうやっておびき寄せるか、十分な策を練らねばなりませんな」
 なお、部活動によりプールの中の水は循環してあるので、問題なく泳げるようだ。
「この屍隷兵は、螺旋忍軍の集めたデータを元にして作られたものなのだと思われます。奴らに、これ以上好き勝手させてはなりませぬ。我々ケルベロスたちがその行いを阻止せねば」
 がんばろう。


参加者
橘・芍薬(アイアンメイデン・e01125)
ビーツー・タイト(火を灯す黒瑪瑙・e04339)
サイファ・クロード(零・e06460)
ユーカリプタス・グランディス(神宮寺家毒舌戦闘侍女・e06876)
マサヨシ・ストフム(蒼炎拳闘竜・e08872)
カティア・アスティ(憂いの拳士・e12838)
ナクラ・ベリスペレンニス(オラトリオのミュージックファイター・e21714)
黄瀬・星太(火風・e28582)

■リプレイ

●興味本位は事故の元
 深夜の中学校。
 普段着姿の中学生が3名、校門を乗り越えた。
 懐中電灯の光は頻繁に四方へ流れ、その様はどう見ても怯えている。
「……なあ、やめねえ?」
「何だよ今更、何もいませんでしたー的にSNSに投稿しよーぜ」
「バカ、炎上すんだろ!」
 完全に3名ともガクブルな足腰が遠目からでも分かる。強がってはいるものの、一向に前に進まない。
 今のうちにやるべきことを済ませるべく、ケルベロスたちは校内を走り回っていた。
 キープアウトテープ片手にプール周辺をリレーしているのは、橘・芍薬(アイアンメイデン・e01125)とそのテレビウムの九十九、カティア・アスティ(憂いの拳士・e12838)とサイファ・クロード(零・e06460)、そしてナクラ・ベリスペレンニス(オラトリオのミュージックファイター・e21714)とナノナノのニーカだ。
 深夜の学校には誰もいないはずであるが、今回の学生3名のように強がりっ子がいる可能性もなきにしもあらずということで、念には念を入れて用意は周到に。
 その間に校内の点検をして戻って来たマサヨシ・ストフム(蒼炎拳闘竜・e08872)が、フンと気に食わなさそうに鼻を鳴らす。
「気に食わねぇな。溺死した奴をいつまでも水底に閉じ込めるなんぞ……」
 それを聞いていた黄瀬・星太(火風・e28582)が神妙な顔つきで頷く。
「酷い自作自演だ。全てホラーメイカーの仕業じゃないか……こんな茶番はさっさと終わらせよう」
 宿直は過去の話、夜中の学校に入り込みたいと思う不届きな輩もいないようなので、次の作戦に移る。
 プールの周辺で隠れていると、何やら遠くから足音が聞こえてくる。例の学生3名がこちらへ向かってきたようだ。
 カティアが持参したペットボトルの水をドバドバ頭から被り始める横、ナクラがニイと笑ってから棒にぶら下げたこんにゃくを取り出した。
 何も知らずに通りがかる少年3名は、ぷるぷる震えながら迫り来る灰色の物体を背後から首筋に当てられ、黄色い声を上げる。
「キャーッ!?」
「な、何だよ! ビビらせんなよ!」
 ベタだが効果はテキメンである。何せこの3名は強がりなビビリなのであるからして。
 互いに『お前がやったんだろ』だの、『気のせいだ』だの言い合っている所へ、びしょ濡れのカティアが物陰からゆらりと現れる。
 ピタリと少年たちの動きが止まり、1秒間の瞬きが6回。乾いた目は潤ったが、女の不気味な姿はなくならず、これは現実なのだと少年達の脳に電撃が走った。
 もしかしてコレが例の怪談の正体なのでは……。そんな思考が過ぎった時、髪で顔の半分を隠したカティアがひたりひたりと、少しずつ彼らに近付きはじめた。そしてニタリと笑って、うめくように……。
「キミ、何を、見に来た、のぉ……?」
 ヒ、と3人の喉の奥から声が漏れる。
「一緒に、遊ぶ? ……それとも、沈む? うふふ……くひひひ……あはははは……!」
「アワワワワワワ……」
 少年達が生まれたての子鹿のような足腰で立ちすくんでいると、突然天井に張り付いていた芍薬が逆立ちのまま彼らの目の前に顔を出した。
「貴様らを排水溝に叩き込んでやろうか!」
 乱れた髪がおでこにふれ、少年達は女子さながらの悲鳴を上げる。
「キャーーーー!!!」
 声変わり中の甲高い声が学校内に響き、もつれるようにして彼らは校門の方へと逃げ出して行った。
「ふー、どう? 迫真の演技だったでしょ♪」
 芍薬の顎の下をライトで照らす九十九の横で、カティアが濡れた身体を夜風に冷やされて大きなクシャミを一発。
「ここはひとまず大丈夫そうだね」
 星太が言うと、この場の成功を喜んだ皆が顔を合わせる。
 生徒の安全は確保できた。ではプールに急ごう。

●騙し騙され
 プールで待機していた囮チームの元に、生徒対応の4名が合流した。
 学生の次は敵を騙す。
 相手は水の中、排水口の中だ。おびき出さねば手が出ない。
 ユーカリプタス・グランディス(神宮寺家毒舌戦闘侍女・e06876)がミミックのトラッシュボックスを横に口を開いた。
「肝試しですか……昔学校に通っていたこともありましたが……。そういうことはしませんでしたね。何が楽しいのですかね」
 ポロッと本音が顔を出した彼女の前に、慌てて飛び出した星太がわざとらしく声をあげる。
「お化けなんて本当にいるのかな?」
 彼は興味がある振りをしてプールの中を覗くと、ゆらゆらと自分の顔が水面に映る。屍隷兵の姿はまだ見えない。
 うっかりの本音により、興味がないのがバレてしまったのだろうか?
 その水面を、背後からサイファが覗き込む。
「お化けとかいる訳ねーじゃん」
 フフンと笑ったその声は、どことなく安堵感が見え隠れ……。どうやら彼は怪談の類いが苦手とみた。
 ビーツー・タイト(火を灯す黒瑪瑙・e04339)がボクスドラゴンのボクスと共にプールサイドを歩いてまわり、排水口の位置を確かめている。
「どうせ何かと見間違えたのだろう」
 そうは言いつつも、顔と視線を大仰に動かし、慎重に排水口を探している素振りで敵を誘っている。彼の手にしたランタンの光がゆらゆらと水面を照らしていた。
 芍薬が肩をすくめてあくびをする。
「ま、結局ただの噂話ね」
 ビーツーが排水口を見つけると、サイファが小走りに駆け寄った。
「排水口見るんだったら、せーので確認しようよ」
 マサヨシがそのサイファを後ろから笑ってみせる。
「細かい振動が伝わってくるような?」
「……べ、別に怖がってないし!」
 ちょっと腰が引けているのは当然演技、だ。足がぷるぷるしている気がするが、こちらも本人曰く、当然演技、だ。
 そんなやりとりではしゃいでいる時、波も立てず、静かに……静かに、1本の髪の房が水面から上へと伸びてサイファの背後を狙っていた。
 すると、興味のなさそうなユーカリプタスが口を開く。
「さあ、屍隷兵お掃除の時間でございますね」
 彼女がサイファの横をすり抜け、迫り来る髪の束を振り払うと同時、ビーツーは水中にライティングボールを投げ入れる。
 光源が水の中を照らすと、水面が破裂したようにふくれあがり、その中央から青白く水ぶくれした3体の屍隷兵が現れた。
 数名が思わず息を呑んでしまった容貌。大勢の人間が半液状化して合体し、お互いを押しのけてもがいている。斬ればそこから半透明な乳白色の体液が噴き出しそうなイメージがついて回り、できれば触りたくないような、そんな複雑な気持ちが胸中に満ちたのは否めない。
 同時に、これが被害者なのだと心を痛めもした。
「肝だめしのつもりで来たらこんな目に遭うなんてなあ……」
 サイファの声に力が入る。
「無念は絶対晴らすよ」
 一同戦闘体勢に入り、足に力を込めた。
 作戦は、分断優先。
 狙いは、3体の屍隷兵を繋いだ髪縄だ。

●水難の呪い
 ビーツーの視線を受けたボクスが敵にタックルをしかけ、その隙にサークリットチェインを前列に施す。
 同じく芍薬が盾アップを今度は後衛のビーツーへ。九十九が凶器攻撃で飛びかかると、屍隷兵が水ぶくれの身体を揺らして水面を波立て、激しい水流をこちらに向けてきた。
 6本の腕が勢いよく水をすくい、プールの水がなくなるほど渦を巻かせているのを目にしたユーカリプタスは、戦闘前にスカートの裾を摘み折り目正しく一礼。スウと息を吸い込んだ。
「神宮寺家筆頭戦闘侍女、参ります」
 そして、頭上から落下しようとする水の塊を全身で受け止めた後、激流と共に数メートル押し流される。
「ユーカリプタス!」
 誰が叫んだのかは分からなかったが、強烈な一撃を食らって気が遠のきかけた彼女を引き留めるのには成功した。
 トラッシュボックスにかばわれながら、気力溜めで自らを回復するユーカリプタスを確認した後、星太が冷や汗を流す。
「まずい……連続で集中されたらもちそうにない。早く分裂させないと」
 ナクラもそれには同感だ。
「つか、Jホラー真っ青な仕上がりでグロい……早くバラそうぜ」
 攻撃再開。
 屍隷兵3体を繋ぐ髪の縄めがけ、マサヨシがドラゴンブレスを吐きかける。着火しそうになったが、屍隷兵の1体が手でもみ消そうと暴れ始めた。
 敵がそちらに気をとられているうちにカティアが続き、グラインドファイアで炎を被せてやる。
 ぶよぶよした屍隷兵身体から水が流れ始め、流れ出たプールの水が補充されていくと炎が消えそうになった。
「おっと!」
 サイファがエクスカリバールを振り上げ、もろくなったであろう髪縄めがけて撲殺釘打法を繰り広げる。
 水中に逃げ込まれそうになったが、すかさず星太のスターゲイザーが同じ場所のダメージを重ねると、髪縄はブチブチと弾けて屍隷兵の肉塊から1体を水中に落下させた。
「うーす! いっきまーす! あ、ニーカはユーカリプタスにヒールよろ!」
 ナクラが再びスターゲイザーを被せると、もう一体を繋いでいた毛縄緩んだようだ。
「惜しい! もう少し!」
 気がつけばプールの水が満たされている。どこからか水が生まれているのか、給水口から継ぎ足されているのかは定かではないが、これでは炎が消されてしまう。
 ニーカがナノナノばりあでユーカリプタスを回復していると、ボクスと九十九もそれに加勢する。ビーツーが雷激癒流で大きく回復し、何とか次のダメージに耐えられるだけの体力は確保できた。
「すでに1体落ちてる。次にダメージ喰らったとしても、さっきほどじゃない」
「次来たら、私が受けるわよ。でも……冥土の土産よ、元いた地獄までふっとべ!」
 そう言い放った芍薬が髪縄の繋ぎ目にヘッドショットを喰らわせると、保ちきれなくなった力が髪縄を引きちぎり、残りの1体を水中へと放り落とした。
 ナクラが手を叩く。
「よし! これで戦い易くなった筈だが……見た目悪化した気がするのは俺だけか?」
 ユーカリプタスがブレイブマインを施しながら、身を起こした。
「さあ、ここから盛り上げていきましょうか」

●波紋は消える
 分断された2体は水面に浮かんだまま、のろのろと手足を動かしてもがいている。現時点で特に何かしかけてくる様子もなく、ただ溺れているようなイメージを抱かせていた。
 ライティングボールとランタンの灯りのみが周囲を照らす。薄暗い中、マサヨシの緑の瞳が火ノ玉のように見え、宙に浮かんだように見えた。
「待ってろ、開放してやるよ」
 獰猛な笑みの中にちらつく憤怒。死者を弄ぶ行為を彼は決して許さない。
 水中に立つ1体に集中し、体中からオーラがわき上がる。
「その魂、あの世までの明かりはオレが照らしてやるよッ!」
 弔いの炎はふやけた屍隷兵の顔面にめりこみ、中から水分を吹き出させると、しぼんで皮だけになった敵の骸はプールの波の上にへらへらと横たわった。
「の、残り2体……!」
 カティアが拳を握りしめて周囲を見回す。
 ちぎれて散乱した髪、屍隷兵の中から溢れ出た半透明の体液。彼女にとって嫌悪するモノばかりがそこにある。
 少しばかり躊躇の隙をつかれ、浮いていた屍隷兵の1体が手足をばたつかせてカティアに殴りかかってきた。
「ひゃっ……!」
 左手で防御をとろうとしたが、それが光り輝き始めた。
「お化けなんて、信じ、ません……!」
 彼女はそのまま『聖なる左手』で屍隷兵を引き寄せ、そのまま漆黒纏いし『闇の右手』で粉砕すると、再び拳を握ってプールサイドに着地する。
「あと1体!」
 サイファがマンドラゴラの叫びを響かせると、屍隷兵は水ぶくれの身体を大きく揺らして殴りかかる。
「サイファ!」
「くっ……! いいから、とどめを」
 星太がグラインドファイアを巻き上げて敵の進路を遮り、苛々が頂点まで達した屍隷兵はその炎を両手で振り払おうと水の中で暴れ始めた。
 空と炎を掻いた手が目の前を過ぎた後、ナクラのブレイジングバーストが目に写る。
 そして、屍隷兵の何もかもを焼却させた。

 ビート板を持ってはしゃぐボクスを見ながら、ビーツーが穏やかな気分で周辺のヒールをしている。
 マサヨシは何をするでもなくプールに浮かび、夏の終わりを感じながら、倒された屍隷兵へ黙祷を捧げていた。
 同じく、星太も静かに祈っていた。
「安らかに眠れますように……」
 寂しいような、涼しいような、そんな気怠い空間も心地よく、プールサイドに腰掛けて足で水を動かしていたカティアがハッと顔を上げる。
「……はっ! これって、流行りの、『ナントカ映え』……!」
 戦いの後、仲間達と学校のプールで静かにたたずむ。確かに良いシーンだ。ドキドキしながら自撮りするのも仕方がない。
「あれ?」
 遠くから例の強がり3学生がこちらの様子を覗っているのに、サイファが気づいた。
「何やってんだよ! 帰ったんじゃないのか」
「な、何か、ものすごい音がしてたので……け、けけ警察を呼ぶべきかどうかって、話してて」
「でも、確認しないと、呼べないかもって言うから……」
「こ、これ、何があったんですか?」
 ある意味肝の据わった学生3人に、ケルベロスとしては思わずため息が出てしまう。
「すっげぇ怖いとかすっげぇ痛い目に遭いたくなかったら、あんまヤバいことに首突っ込むなよ」
 サイファのセリフにナクラも同意する。
「そーそー。夜に学校なんか来ちゃ駄目だぜ? 今日は幽霊じゃないがガチの奴が出たし。もし怪我したり、万一お前達に何かあったりしたら、かーちゃんやとーちゃんや、お前のこと好きな奴が泣くだろ?」
 ガチとは何だろうと思っている様子だが、言葉が出ないほど怯えているらしい。学生3名は素直に頷いて下を向いた。
 芍薬が手を叩く。
「じゃあ、帰りましょう」
 若人達を自宅まで送り届けなければ。親御さん方は、消えた息子を心底心配しているだろう。それこそ警察を呼ばれてしまう。
「あ、折角だし怖い話でもしながら帰る?」
 もうお腹一杯です! と、一同帰路についた。

作者:荒雲ニンザ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年8月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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