鎌倉ハロウィンパーティー~ぼっち男の夢

作者:雷紋寺音弥

●ぼっちのハロウィン
 街角に、少しずつカボチャの飾りが見受けられる季節。
 寒空の下の公園で、ベンチに座りハンバーガーを食べる青年が一人。
「けっ……なにがハロウィンだよ。どいつも、こいつも、浮かれた気分になりやがって……」
 そう言ってハンバーガーを貪る青年には、残念ながら何もなかった。
 年齢=彼女いない歴を続けて、そろそろ30年が過ぎようとしている。リアルの世界には友人さえおらず、現在無職で親の脛を齧って生活中。当然、貯金などまったくなく、増えるのは腹の脂肪ばかり。
 一度でいいから、自分もリア充と呼ばれる存在になってみたい。そう、青年が願った矢先、彼の目の前に赤い頭巾を被った少女が現れた。
「ハロウィンパーティーに参加したい……ですか。その夢、かなえてあげましょう。世界で一番楽しいパーティーに参加して、その心の欠損を埋めるのです」
 そう言って、少女は手にした鍵を突き出すと、青年の胸元を刺し貫いた。
 白目を剥いて、青年がベンチから転がり落ちる。それと同時に、その隣に煌びやかな衣装を纏った何かが姿を現すと、青年を一瞥して音もなく立ち去った。

●鎌倉の危機、再び!
「藤咲・うるる(サニーガール・e00086)さんが調査してくれたのですが、日本各地でドリームイーターが暗躍しているようです」
 ハロウィンパーティーを前にして、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)がケルベロス達に語り出した話。それは、他でもないハロウィンに乗じて現れる、ドリームイーターの話だった。
「出現しているドリームイーターは、ハロウィンのお祭りに対して劣等感を持っていた人の夢が具現化したものですね。ハロウィンパーティーの当日に、一斉に動き出すようです」
 ハロウィンドリームイーターが現れるのは、世界で最も盛り上がるハロウィンパーティーの会場だ。つまり、鎌倉のハロウィンパーティーの会場に他ならない。
「ハロウィンドリームイーターは、ハロウィンパーティーが始まると同時に現れます。ですから、開始時間よりも早くパーティーが始まったように装えば、誘き出すことができるはずです」
 敵のドリームイーターが得意とするのは、心を抉りトラウマを具現化する鍵による攻撃。加えて、モザイクを飛ばして様々な状態異常を引き起こし、夢や欲望を食らうらしい。
 また、今回のドリームイーターは、ハロウィンを象徴するかの如く仮装をしている。衣装を除く全身がモザイク化しているため、一般人と見間違えることはないはずだが……問題なのは、その格好だとセリカは告げた。
「ドリームイーターの仮装は……魔法少女、というのですか? レースやフリルの付いた可愛らしい衣服を身に纏っているのですが……素体になったのは、肥満体の男性です」
 一瞬、その場にいた全員の顔が凍り付いた。
 素体が男ということは、当然のことながら衣服は可愛くても体型は男!
 それは即ち、肥満体のモザイク男が、無理やりに魔法少女の衣服を身に纏っているに他ならず。
「折角のハロウィンパーティー、デウスエクスの無粋な妨害は不要です。皆さんの力で、パーティーを邪魔するドリームイーターを撃破してください」
 こんな気色悪い存在に、一年に一度の祭りを邪魔されては堪らない。そう言って、セリカは改めてケルベロス達に依頼した。


参加者
ルリナ・アルファーン(駆け出しアイドル・e00350)
セラス・ブラックバーン(竜殺剣・e01755)
水沢・アンク(クリスティ流神拳術求道者・e02683)
愛柳・ミライ(宇宙救済系・e02784)
マリス・エナメル(偽心の放浪機人・e02802)
桐崎・早苗(天然風味の狐娘・e03380)
馬鈴・サツマ(小物臭漂う植物使い・e08178)
ウルスラ・ファーヴニル(ドラゴニアンの降魔拳士・e15423)

■リプレイ

●魔法少女のお茶会
 ハロウィンパーティーを間近に控えた鎌倉にて。
 ドリームイーター出現の報を受けたケルベロス達は、パーティーを装って敵を誘き出す作戦に出た。
「私はセルンちゃん! このプリンを食べて契約して、魔法少女になって欲しいんだ☆」
 ギターで楽しげな曲を奏でつつ、着ぐるみ姿の愛柳・ミライ(宇宙救済系・e02784)がバケツプリンを取り出して言った。だが、着ぐるみの出来が拙かったことが災いし、どう見ても『純粋無垢な少女に危険な契約を迫る不気味な何か』にしか見えないのが残念だった。
「自宅のカフェからも持ってきましたよ。……作ったのは私ではなく父ですけどね」
 そう言って、南瓜のケーキやマフィンを取り出したのは水沢・アンク(クリスティ流神拳術求道者・e02683)だ。そんな彼の仮装は、タキシードにマント、シルクハットを中心としたもの。どことなく、乙女のピンチに颯爽と現れ、助けてくれそうな雰囲気が漂っている。
「私は、大福をお持ちいたしました。それと、こちらにはクッキーも……」
 いつもとは少し違った服装に戸惑いながらも、桐崎・早苗(天然風味の狐娘・e03380)もまた持ち寄った食べ物を取り出して見せる。
 リボンやフリルの装飾で彩られた、白と黄色を基調とした服。髪型も、普段とは違うツインテール。こんな時でもなければ挑戦する機会もないだけに、今日は存分に楽しみたいと思っているようで。
 互いに菓子を交換し、仮装について談笑を交わす。そんな楽しげな雰囲気と、ギターの音色に誘われたのだろうか。
「み、見つけたぞぉぉぉっ! お前達の夢、この僕がぜ~んぶもらってやるぅ!」
 突然、卑屈で野太い声と共に、リボンやハートマークで飾られた衣服に身を包んだ、全身モザイクの肥満体が現れたのだ。
「折角の楽しいハロウィンを台無しにしようだなん……て……。あ、あの……どうしても、その仮装じゃないとダメだったんですの……? せめて、もう少し体型隠すとか……」
 服の隙間から飛び出しているモザイク状の何かを見て、ウルスラ・ファーヴニル(ドラゴニアンの降魔拳士・e15423)は早くもドン引き。
 とりあえず、どこから突っ込んでいいか解らない。それは他の仲間達も一様に同じだったが、しかし馬鈴・サツマ(小物臭漂う植物使い・e08178)だけは別だった。
「あの体型で魔法少女になるということは、彼にはそれがよほど重要なことに違いない。せめて無念が晴れるよう、こっちも魔法少女で行くっす!」
 なんと、何を勘違いしたのか、彼もまたプリンセスクロスに身を纏い、臆することなくプリンセスモードを発動した。
「むふぅ……。お前、僕に対抗するつもりなのか? 生意気なぁっ!」
 対抗し、腹を突き出して叫ぶドリームイーター。まだ戦いが始まってもいないのに、これは酷い。同じ空間に魔法少女の格好をした肥満体と筋肉青年が同居しているとか、もう混沌を超えた別次元の何かである。
「折角の祭りだ、楽しんで行け。……と言いたい所だが、それを壊す様な無粋な奴は退場願おうか」
 気を取り直し、マリス・エナメル(偽心の放浪機人・e02802)が箒を剣に持ち替える。魔女の仮装をしながら両手に剣とは物騒な気もするが、それはそれ。
「さて、お気の毒で残念なドリームイーターを倒しましょう」
 淡々とした口調で、ルリナ・アルファーン(駆け出しアイドル・e00350)がドリームイーターに告げる。だが、それでも敵は何ら意に介さず、むしろ更に激しくヒートアップ!
「そうやって、強がっていられるのも今の内だよぉ? それぇ、萌え、萌え、キュン♪」
 腹の脂肪を揺らしながら、投げキッスの動きで肥満体モザイクが決めポーズ!
 うげっ、マジで戻しそうだ。これ以上は、見ているだけで視覚と心が薄汚い何かに穢されてしまう気がして仕方がない。
「くっ! これも全て、とにかく何もかもデウスエクスが悪いんだ! 今、目を覚まさせてやるぜ!」
 瞳に焼き付いたゲテモノを振り払うようにして鉄塊剣を構え、セラス・ブラックバーン(竜殺剣・e01755)が大地を蹴る。
 これは悪夢だ。宴の前の、ちょっとした悪い夢に過ぎないと。そう、心に暗示を掛けなければ、正直やっていられなかった。

●堕ちたる肉襦袢
「えっと……覚悟はしていましたが……想像以上に強烈ですね……」
 迫り来る魔法少女コスの肥満体モザイクを前に、アンクは思わず言葉を失った。
 だが、しかし、ここで退いては始まらない。覚悟を決め、地獄と化した右腕を解放したところで、勢い余ってタキシードの袖を台無しにしてしまったことに気が付いた。
「……あ。つい何時もの癖で……。ま、まぁ、回復魔法で直るでしょう……多分……。改めて、クリスティ流神拳術……参ります!」
 とりあえず、服装を気にしている場合ではないと、炎を纏った闘気を拳に込めて殴りつける。
「壱拾四式……炎魔轟拳(デモンフレイム)!!」
 瞬間、敵の腹に拳が食い込んだと同時に、こちらに伝わる不快な感触。腐った肉の塊に拳を突っ込んだらこんな感じがするのだろうか。
「ぐへぇっ!? お、お前達、ただの人間じゃないな!? いったい、何者なんだよ、お前達はぁっ!!」
 自分の身体が炎に蝕まれ始めたことで、肥満体モザイクが身体を震わせながら叫んでいた。無論、こういった状況で相手の正体を聞くということは、大概の場合、死亡フラグにしかならないわけで。
「私か? そうだな、マジカル・ウィッチとでも名乗っておこう」
 ウイッチハットの位置を軽く直し、マリスが駆ける。だが、しかし、彼女が繰り出すのは魔法ではなく、流星の如き飛び蹴りの一撃。
「ふぎゅっ!?」
「生憎、魔法の箒なんて洒落た物は無いんでな」
 真上から踏み付けられ、肥満体モザイクが地に倒れた。そこを逃さず、今度はセラスが炎を纏った鉄塊剣を叩き付けた。
「デウスエクスから世界を守るため、正義の使者、魔法少女マジカル☆セラス参上! 貴方のハートを、トリック・オア・ダイ!」
 なんとも物騒な決め台詞の魔法少女もいたものである。まあ、相手がデウスエクスである以上、手加減する理由もないのだが。
「マジカル☆ブレイズクラッシュ! うらぁ!」
「ぶげぇっ!」
 起き上がったところを間髪入れずに薙ぎ払われて、再び大地を転がる肥満体モザイク。それでも、なんとか立ち上がるが、そこに待っていたのはガトリングガンを構えたサツマ!
「我こそは魔法少女ぽてと☆サツマ! 銀狐師団の名の下に、芋に変わって仕置つかまつる! 受けよ、我が魔法……マジカル☆ガトリングガン!」
 撃ち出されるは、豪雨の如く降り注ぐ鉛の弾。この場合、魔法ではなく『魔砲』とか言った方が正しいのだろうか。
「わわ、魔法少女がいっぱい……。でも、本物は1グループだけだよ! 偽物はお仕置きだよ☆ 皆にならきっとできるよ!」
 ボクスドラゴンのポンちゃんと共に、ミライは仲間達を応援する歌をでドリームイーターへと奏でた。
 味方に癒しを与える楽曲も、敵へ用いれば破壊を齎す音色へと変わる。もっとも、着ぐるみの出来が微妙なためか、隣でブレスを吐いているポンちゃんの方がマスコットっぽく見えるのが、やはり残念なことだったが。
「むぎゃぁぁぁっ! いい加減にしろ、お前達ぃぃぃっ! 偽物は僕じゃなくて、お前達の方だろうがぁぁぁっ!」
 殴られ、蹴られ、ハチの巣にされ。早くもボロボロになった肥満体モザイクが、ブチ切れながら身体を揺らす。服と服の間から食み出たモザイク状の何か。ケルベロス達の精神を汚染すべく、それらを飛ばして攻撃して来た。
「な、なんて醜い……。あの体型で、お腹を出したら駄目だと思いますの……」
 揺れる脂肪とモザイクの嵐に、ウルスラは杖を持ったまま思わず込み上げた吐き気を堪えた。
 いかん、これはなかなか強敵だ。とりあえず、原罪を肯定するメッセージを乗せた歌で、ウルスラは汚染された仲間達の心を回復させる。あんなものに飲み込まれて心を穢されるとか、間違っても想像したくない。
「歌と知識のプリンセス、キラ・オンディーヌ……とでも名乗っておきましょうか?」
「えっと……マジカル雷刃突……で、いいんですよね?」
 ここはできるだけ時間を掛けず、さっさと倒した方がいいだろう。
 右腕を回転させて迫るルリナに、耐魔の刃を構えて突き立てる早苗。だが、攻撃が炸裂した次の瞬間、二人に恐るべき後悔の念が襲い掛かって来た。
「ぶぎゃぁぁぁっ! ぼ、僕の大切な正装がぁぁぁっ!」
 ズタズタに引き裂かれ、モザイクと共に飛び散る衣服。なんというか、これは醜い。敵がモザイク状の身体をしていなければ、色々な意味で放送事故だ。
「……この技は危険ですね」
 今回に限っては、下手な乱発は控えようと。目の前で哀しみの雄叫びを上げている肥満体モザイクを余所に、早苗は独り、静かに心の奥で誓うのだった。

●コミケに行ってろ!
 ハロウィンパーティーを間近に控えた鎌倉にて、ドリームイーターとケルベロス達の戦いは続いていた。
「……しかし、体型も、声も、その衣装を着るのなら、もう少しどうにかならなかったのですか?」
 ついでに、その醜い何かを削ぎ落としてやろうと、ルリナがマインドソードで斬り付ける。が、既に満身創痍にも関わらず、肥満体モザイクも退こうとしない。
「おうふっ!? そ、そうか……君達は、きっと洗脳されちゃった魔法少女なんだね? だったら……僕の魔法のキスで、今直ぐに洗脳を解いてあげちゃうよ~ん♪」
 なにやら、盛大に斜め上な勘違いをしつつ、頭部を巨大な口に変形させてドリームイーターが迫る。その矛先が物怖じした様子の早苗に向けられるが、しかし彼女に下品な肥満体モザイクの唇は届かなかった。
「あ、危ないっす、早苗さ……むぐわぁぁぁっ!?」
 なんと、間一髪で割り込んだサツマの方を、勢い余って飲み込んでしまったのである。さすがに、これは予測していなかったのか、肥満体モザイクも「違う! お前じゃないんだぁぁぁっ!」と叫んでいたが、もう遅い!
「祭りは日々の感謝や祈りを表し、再び前へと歩むためのもの……。ならばこそ、妨害を許すわけにはまいりません」
 目の前の凄まじい光景が、却って気付け薬代わりになったのだろうか。
 冷静さを取り戻した早苗が、非物質化した刃で斬り付けた。こんな醜い塊に、顔を汚されるとか考えたくもない。
「行け、ラブリー☆攻性捕食! 奴の喉笛を食いちぎれっ!」
 サツマも辛うじて脱出し、捕食形態へと変化させた攻性植物を差し向ける。再び倒れ、今度はウルスラの方へと縋るようにして手を伸ばす肥満体モザイクだったが、残念ながら彼女が癒すのはケルベロス達だけだ。
「け、汚らわしいですわ! 近寄らないでいただきたいですの!」
 絶対に触りたくなかったので、とりあえず炎の息で焼いておいた。だが、その結果、敵の衣服がますます焼けてボロボロになり、更に見たくもないような光景に。
「ああ! もう! こんなの着ながら戦うのやっぱり無理!」
 もう、こうなったらヤケクソである。
 着ぐるみを脱ぎ捨て、ミライはポンちゃんのブレスに合わせ、ありったけの気弾を叩き込む。敵の衣服が弾け飛び、醜い腹の何かが揺れまくるのを見て、セラスが駄目押しの突っ込みを。
「ってーか、よく考えたらお前、男で魔法少女になりたいって、それハロウィンじゃなくてコミケに行けよ! 仲間たくさんいるじゃねーか!」
 ついでに言うと、今の格好は限りなくリア充から遠ざかっている。どうせならイケメンに変身してみせろと、溜まった鬱憤を吐き出すように言ってのけ。
「マジカルチェンジ、アルティメットスタイル! これぞ、二段階変身! 視聴率も人気投票も貰ったぜ!」
 最終決戦モードへと変身し、天高く敵を斬り上げれば、続けて襲い来るは炎を纏った刃の乱舞。
「地獄に落ちろ! 焔舞い!」
「ぎゃふぅぅぅっ! フォ、フォームチェンジとか、聞いてないござるぅぅぅっ!?」
 全身から炎を吹き出して、肥満体モザイクの身体が地に転がった。
 既に敵は、立ち上がる力さえ残されてはいない。しかし、ここで見逃してやるほど、ケルベロス達は甘くない。
「私も魔法少女らしく、グラビティの頭にマジカルと付けてみるか」
「……と。そういえば、ミラクルとか付けるんでしたっけ? 私は不要ですかね?」
 敵が次なる行動に出るよりも早く、マリスとアンクが同時に仕掛けた。無数の結晶体から放たれる地獄の炎。そして、超高速の乱打を繰り出して、避ける暇さえ与えない。
「マジカル・Flamme Strahl! ……こんな感じか?」
「これが今の私に出来る全力……! クリスティ流神拳術壱拾六式……極焔乱撃(ギガントフレイム)!!!」
 地獄の炎が、哀れなデウスエクスを焼いて行く。魔法少女の衣服諸共に、醜いモザイクを飲み込んで。
「……これが、裁きの拳です」
 そう言ってアンクが残身を取った時には、既に敵の姿は炎の中に消え去っていた。

●転生した夢の欠片
 戦いは終わった。戦闘で荒れてしまった場所を簡単にヒールで修復し、ケルベロス達は改めてハロウィンパーティーの会場へ向かう準備を開始した。
「……この服、結構高かったんですけど、直りますよね?」
「ちょっとファンタジーな見た目になるかもしれませんが……それを気にしなければ、大丈夫ですの♪」
 どちらかというと、その方がハロウィンには似合いだと、アンクの服の破れた袖に、ウルスラが修復のヒールを施している。
「さて、そろそろ始まる時間か。折角来たんだ。楽しまなければ損と言うものだな」
「そうですね。あら? あそこにあるのは……」
 ふと、マリスの言葉に早苗が顔を上げれば、そこには今までなかったはずの、コミカルな表情をした魔法少女型の飾りが。
「もしかして、これってあのドリームイーター!?」
「やっぱり、彼の服装には譲れない何かがあったみたいっすね!」
 空いた口が塞がらないセラスを余所に、サツマはどこか納得した表情で頷いている。何やら壮大な勘違いをしているようだが、その程度は些細なことだろう。
「何歳でも、どんな状況でも、夢があるって素敵ですよ、大丈夫。現実は、厳しいけれど、それでも……」
 人様に迷惑かけなければ、とりあえず心配ないと呟くミライ。
「では、行きましょうか。仕事も終わったことですし、用意したお菓子も皆で食べましょう」
 最後に、ルリナが持ってきたチョコレート菓子を片手に仲間達へと促した。もっとも、その中身は単なるチョコだけではなく、唐辛子入りチョコやカカオ100%の激苦チョコまで。
 トリック・オア・トリートならぬ、トラップ・&・トリートである。予期せぬ当たりを引いてしまった者は、そう思ったに違いない。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 4/キャラが大事にされていた 4
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