ミッション破壊作戦~矜持無きか

作者:志羽

●ミッション破壊作戦
「グラディウスが再使用可能になったからケルベロスさん達にどこか、お願いしたくて」
 グラディウスについては知らない人もいるかもしれないので説明するよと夜浪・イチ(蘇芳のヘリオライダー・en0047)は紡いだ。
 それは長さ70cm程の『光る小剣型の兵器』だが、通常の武器としては使用できない。
 その代り、『強襲型魔空回廊』を破壊する事が可能でありデウスエクスの地上侵攻に大きな楔を打ち込むことができるものだ。
「グラディウスは一度使用すると、グラビティ・チェインを吸収して再び使用できるようになるまでかなりの時間が掛るものなんだ」
 ということで、攻撃するミッションについては現在の状況などを踏まえて、皆で相談して決めてほしいとイチは続けた。
 強襲型魔空回廊があるのは、ミッション地域の中枢となる為、通常の方法で辿りつくのは難しい。場合によっては敵に貴重なグラディウスを奪われる危険もある。
「でも上から話は別。俺がそこまで運ぶから、降下して仕掛けてほしいんだ」
 強襲型魔空回廊の周囲は、半径30m程度のドーム型のバリアで囲われている。このバリアにグラディウスを触れさせれば良いので、高空からの降下であっても、充分に攻撃が可能。
 ケルベロス達がグラビティを極限まで高めた状態でグラディウスを振るい、強襲型魔空回廊に攻撃を集中する。場合によっては一撃で強襲型魔空回廊を破壊できる可能性ももちろんあるという。
 一度の降下作戦で破壊できなくても、ダメージは蓄積する。最大でも10回程度の降下作戦を行えば、強襲型魔空回廊を確実に破壊する事ができるはずとイチは続けた。
「強襲型魔空回廊の周囲には、強力な護衛戦力もあるけど、高高度からの降下攻撃を防ぐことはできないし、グラディウスは攻撃時に雷光と爆炎を発生させるんだ」
 この雷光と爆炎はグラディウスを所持している者以外に無差別に襲いかかる。そのため、強襲型魔空回廊の防衛を担っている精鋭部隊であっても防ぐ手段はないという。
「雷光と爆炎が続いている間に、撤退をしてほしい。貴重な武器であるグラディウスを奪われるわけにはいかない。持ち帰る事も重要な事だから」
 しかし、敵を完全に無力化できるわけではない。グラディウスの攻撃の余波である程度は敵を無力化はできるが、強力な敵との戦闘は免れないだろう。
「でも混乱してるだろうし連携をとってくる事はないと思うんだよね。目の前の敵を素早く倒して、撤退できるようするのがいいと思うよ」
 時間が掛り過ぎて、脱出する前に敵が態勢を整えてしまった場合は、降伏するか、暴走して撤退するしか手がないとイチは続ける。
「向かう場所ごとによって敵の特色もあるし、何処に向かうかはケルベロスさん達に向かってほしいんだ」
 向かうのはエインヘリアルがその手を伸ばしている場所のいずれか。
 よろしくお願いするよと、イチはヘリオンへとケルベロス達を誘う。


参加者
霧島・奏多(鍛銀屋・e00122)
玖々乱・儚(罪花喰らい・e00265)
平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)
レクス・ウィーゼ(ライトニングバレット・e01346)
ジゼル・クラウン(ルチルクォーツ・e01651)
霧島・カイト(凍護機人と甘味な仔竜・e01725)
オルテンシア・マルブランシュ(ミストラル・e03232)
日影野・燦(這い寄るコールタール・e32883)

■リプレイ

●想いのせて
 岐阜県岐阜市は今、殲犬大隊マルズ・グリュンヒルデが抑えている地域であった。
 その上空、ヘリオンの中でオルテンシア・マルブランシュ(ミストラル・e03232)はどうしたらいいかと思案していた。
 従者のグラビティもなんとか載せられないかとミミックのカトルの頭頂の金鎖を巻いて見るがうまくいきそうにない。
「ねえイチ、何か良い案ない?」
 問えば悩む声が聞こえて抱っこと一言。そう聞いてぴょんと飛びあがったカトルの心中はいかがなものか。
 しかし時間は来てその話も終わり。オルテンシアはひとつ、息を吐いた。
「私ね、魔空回廊と名のつくものにはまるで全然いい思い出がないの――だから、すべて壊すわ」
 そしてこの後戦うもの達へ向け、怒りも込めて冷たい声を。
「騎士として殲犬を謳うのならば無辜への仇は恥と知れ」
 ふわりと、軽やかに空へ飛べば従者はすぐに追いかける。
「グラディウスを振るうのも3度目になるか……また頼むぜグラディウス」
 足元を見て、玖々乱・儚(罪花喰らい・e00265)はこの時ばかりは、と思う。
 この時ばかりは激情に身を任せてみようかと。
「宇宙の理を乱すケルベロスを絶滅させるねぇ。言ってくれるじゃねぇか」
 儚は思う。おそらく、この場所を占拠した事に意味などないのだろう。
 しかしこの周辺を通る道。そこには平和という言葉を含む通りがあるのだ。
「俺らを絶滅させるなんて言ってるやつらに占領させたままになんてさせない!」
 あんな紋章を掲げる奴らにこの一撃で思い知らせてやるよ! と儚は声をあげる。
「俺たちケルベロスがそう簡単に滅ぼされるような弱い存在じゃないことを! お前たちが抱く宇宙の理とやらを砕く牙を持っていることを!」
 その様を平・和(平和を愛する脳筋哲学徒・e00547)は見て、自分もと飛び降りる。
「宇宙の理だぁ? どうせ、宇宙にデウスエクスを殺しきるものなんて存在しなかったのにってのだろ?」
 笑わせんなと、この宇宙にもともとデウスエクスの死はあったと和は紡ぐ。
 単にお前らが知らなかっただけだ、と。
 それらの思いのたけを聞きつつ、レクス・ウィーゼ(ライトニングバレット・e01346)は確かにと思う。
「手前等が一方的に奪う側だったのが崩れたからって寝言を言ってるんじゃねえ!」
 そう啖呵を切って空へ躍り出たレクスはその想いを言葉に。
「宇宙の理なんてもんを自分の都合のいいように決めつける傲慢さは反吐が出るぜ!! 海賊女の時も思ったが、手前等のような奴等に此れ以上誰かの大切な人を奪わせはしねえ!」
 そう、叫びながら別の場所での戦いを思い出して。
「宇宙の理とかいうが、地球の理に従わないのに突っ込んできてる以上、護るべき人達に危害を加えられて黙って見ているような俺じゃない!」
 身軽に空へ飛んだ霧島・カイト(凍護機人と甘味な仔竜・e01725)に、カイトのボクスドラゴン、たいやきも続く。
 日影野・燦(這い寄るコールタール・e32883)は予告もなく抵抗する力もない人達の街を爆破するような卑怯な奴らが理を正すことに憤りを感じていた。
「裁判所から爆破っていうのも自分たちが裁きをする立場だっていう主張にしか見えないね。上から目線も大概にしろ!」
 燦はその手にグラディウスを持ち飛び降りる。
 先に空へと踊った者達の想い。
 それを耳にしつつ、ジゼル・クラウン(ルチルクォーツ・e01651)は思う。
 魂の叫びというのが、己が内にあるのならば。
 私のそれは、きっと慟哭めいたものだろう。
 嘗て、ジゼルがどれほど声を枯らしても、届くことのなかった想いがあったことを思い出しながら、とんと軽く空へ。
 そこを襲った者達の、勝手な都合。
 それにより潰えた未来があると霧島・奏多(鍛銀屋・e00122)は瞳細める。
 そうして生まれ拡がる疵を幾つも見てきて、幾つも識ったのだ。
 理と、足元の敵は言う。けれど。
「そんなモン、一体誰が決めた。他者を滅ぼす権利など、一体誰にあると云う」
 そう零し、奏多はとんとヘリオンを蹴って空へ踊る。
 俺等はアンタに害為す者。
 アンタは俺等に害為す者。
 只、それだけだろうがと奏多は淡々と零す。空を切る感覚に身を任せながらだ。
「正当気取ンな、しゃらくせえ。その独善、この独善で薙ぎ払う!」
 想いを呈した刃に乗せて奏多は振り下ろす。
 薙ぎ払う。
 その言葉は自分の想いと似ているとジゼルは思った。
 歩む先に応えがあるなら、進む先に障壁があるなら。
「……邪魔を、するな――!」
 その叫びのまま、おそらく払いのけるだろうと。
 その声は決して大きな叫びではなかった。けれどジゼルの意志が強く込められた叫びは強くある。
「猟犬を狩るというのなら、それすらも耐えて終わらせて、平和を乱すのなら、俺が相手になってやる!!」
 これはその為の一撃とカイトは叫び、グラディウスが触れる直前にバイザーを下げた。
「この惨状が正しい理だっていうなら、奪いつくすことが正しいっていうのなら!! そんな理吹き飛ばしてやる!!」 そんなものの犠牲を広げさせてやるものかと燦は叫び。
「お前たちの無知をケルベロスのせいにしてんじゃねえ! いいぜ、教えてやんよ――お前たちに死を齎す、ケルベロスの牙の味をなあ!」
 くらえ、と和は空中で身を翻し、言葉と想い乗せてグラディウスという牙を。
「俺の、俺達、地獄の猟犬の牙が手前等を地獄に送る断頭台代わりだ!! 覚悟しやがれ!」
 レクスの叫びも強く、高く響く。ふざけるのも大概にしやがれってんだ、と続けて。
 咄嗟に伸ばした手はカトルの足を掴む。その手にぴっと金鎖が巻き付き、オルテンシアは小さく笑った。
「さあ、手にしたこの剣にこそ殲の名を。デウスエクスが掲げる理とやらを穿つ楔よ」
 受け取りなさいと紡ぎオルテンシアは続ける。
 矜持無きが甲冑纏うは滑稽ね、と。
 そして儚は手にあるグラディウスに視線を向けて。
「力を貸しな! グラディウス! 奴らに一泡ふかせてやろうぜ!」
 ケルベロス達はそれぞれの想いを乗せて、グラディウスの切っ先を魔空回廊へと向け衝撃を走らせた。

●殲犬大隊がひとり
 雷光と爆炎があたりを包む。それらに身を撃たれた敵は倒れ、動けない様だ。
 強襲型魔空回廊は、砕かれぬままそこにまだある。
 攻撃により発生した煙。その中をケルベロス達は退避すべく進んでいた。
 しかし、敵のすべてが倒れていたわけではなかった。
「ケルベロスどもめ!!」
 煙を断ち切るように振り払われた矛がその存在を示す。
「逃がしはしない……殲犬大隊がひとりとしてこのまま帰さぬ」
 星霊甲冑に身を包んだ女騎士が突如として襲い掛かる。もちろん、このまま見逃すということなどまったくない様子だ。
「さっそく出てきたか」
 カイトは傍らのたいやきに目配せひとつ。たいやきはカイトの前に立ってやる気を見せつつ自らの力を高めて守る気満々だ。
 そしてカイトは妖精弓を番え、それを敵にではなく、儚へ向ける。
 それは敵の恩恵を破る力を与える為だ。
 ジゼルも敵の姿を視止めると同時に前衛へと向けてオウガ粒子を与えていた。
 攻撃があたるか、あたらないか。それは戦いにおいて大きな問題で目の前にいる敵は強大だ。この場を取り仕切る隊長格ではないがそれは変わらない。
 ジゼルからの援護で超感覚が研ぎ澄まされ狙いの制度は上がる。
 奏多もまた魔術を紡ぐ。
 銀を媒介とした魔術は奏多の掌の上で銀糸となり、鳥の姿を織り成した。その鳥達は仲間へ内包する力を降ろし解け消えて行くもの。
 そこで敵が動く。
「理を乱すのは許さない!」
 怒り露にその盾構えて、深く踏み込んで放つ一撃。それは手近にいたオルテンシアへ向けての踏み込みだった。
 オルテンシアはその一撃の重さを痛感する。けれど、決して自身が一撃で倒れるものではないと受けたからこそ知り、薄く笑み浮かべる。
「理を乱すもの、か……それを滅するために生まれた存在は既に理の外の存在なのではなくて?」
 どう? 騎士の風上にも置けぬ騎士さんと紡ぎ一歩、距離をとる。
 その間を作ったのは噛みつきに走ったカトルだ。
 オルテンシアはタイミング良いわねと従者に視線一つ向けながらマインドリングを一撫で。傷癒し守りを一層固めた。
 そこへ燦は流星の煌めきと重力をもって一蹴を。
 今ここで、敵へ一番深い傷を負わせることができるのは燦だ。
「一方的に爆破する卑怯者にもプライドあった? ごめんね」
 敵の怒りを煽るように皮肉を零す燦。
「こっちから行くぞー! てややー!」
 次に和のブラックスライムが敵を捕食するための姿をとる。
 敵に覆いかぶさるようなそんな挙動を見て取った敵は身を翻しそれに呑まれるのを阻んだ。
「っ! 避けやがってー!」
 その様を目にしつつ儚は呪いを紡いでいた。
「我は射貫くもの、確実に刃を届かせる」
 そうするのは、呪いを紡がなかった戦場で倒れるものが出た記憶があるからだ。
 だから今回は、どんなに急いでいてもと。
「ほんじゃぱっぱと片付けて逃げちゃおうぜ!」
 呪い紡いだ後に儚が投げつけたのは殺神ウイルスだ。
 儚の攻撃に合わせて、前衛にいるテレビウムのてれもその武器を振るい加勢を。
「あの海賊女と良い手前等と良い……自分が奪う側なのは当たり前ってか?」
 レクスはビハインドのソフィアを傍らに敵へと肉薄する。
「手前と手前のいる此処も海賊女が居た空間と同じように破壊してやるから覚悟しな?」
 これはそのための一撃とレクスはその脚に流星の煌めきと重力を乗せて地を蹴った。
「此処は手前等の狩場じゃねえ、俺達が住む星だ!」
 敵の身体、その中心を捕らえるように放つ蹴り。そしてソフィアはその助けとなるよう周囲の物を使い敵へ攻撃を仕掛けた。
「勝手を……!」
 怒りに任せるように敵は攻撃を。最初は手近な相手から。
 しかし、次第に狙いを絞り始めて来る。
 敵は一人ずつ、確実に仕留めるよう戦法をとってきた。そしてその攻撃は、近距離の敵しか狙えぬもの。
 守りが固いものよりもと燦の傍に張り付こうとしてくる。
 だが燦もカイト達の影に入るようにそれを振り切ろうともしていた。
 しかし近くに接しているのなら狙いが外れることもない。
「止まれと言われて止まって見てよ」
 燦は重力を捻じ曲げ、動作の逆方向に力は叩かせ動きを止める。そして熱量奪えば、何が起こったのか。
 何も知らぬ者には凍結の受けたように感じる攻撃。
 そして一瞬留まった隙に敵の視界から外れれば。
「戒めるは凍気、喰らうは貪狼の顎、閉じるは氷獄への棺! 『氷獄棺:貪狼』、その欲深き者を覆え!」
 カイトが凍気を練り上げ作った氷の棺で敵を包み込む。
 カイトが攻撃に動けたのはオルテンシアが庇いに入る動きが見えたからだ。
 甲冑も剣も既に喪く。
 けれど、ただ。矜持だけは、今も胸の内にある。
「騎士たるもの――守れぬは何よりの咎」
 それはわかるわと。だから、私も譲れないのとオルテンシアは一撃を受ける。
 攻撃を凌ぎきって、最後まで立ち続け守り癒す。それはこの戦いでの矜持。
 重なる攻撃の中、動きの幅は狭められ、直接それを払う術を敵は持たなかった。
 縛りを払うため耐性を得てもすぐ打ち砕かれ思うままにならない。
 しかし、そうであっても敵の攻撃力は侮れぬままだ。
 ジゼルは敵の動きに目を配りながら攻撃を。
 動きを一層、鈍らせるべくドラグニックハンマーの形態変え竜砲弾を打ち放った。
 その弾丸の衝撃は敵の身がのけ反るほど。
 だが戦意は全く削がれない。
 変わらず敵は燦に攻撃を集中する。そしてその一撃は決してぬるいものではなかった。
 だが狙われる相手がわかればカイトとオルテンシア達も守りに入りやすくもあったのだ。
 カイトは攻撃を受ければ自分でも回復を。
 多少の無茶はというように攻撃を受けるのはこの地に居るものに直接の縁はないが思うところがあるからだった。
「邪魔だ!」
 だが守りに入りやすいだけであって、そのすべてが防げるわけでもない。
「果てろ!」
 振り下ろされた一撃が燦に深いダメージをいれる。
 しかしそこで決して倒れはしなかった。
 誰も欠けさせたくはないという強き想いを以て奏多がここにいたからだ。
 奏多とジゼルは視線を交わす。ジゼルから送られた視線は回復を手伝うかというものだが大丈夫だと奏多は示した。
 奏多は即座に、その傷を強引に塞いで癒しを。
 そして目の前に居るのだから好機とばかりに燦は一撃を繰り出す。
「どんな装甲も何度も攻撃を喰らえば傷の一つ位負うし体の中はどんな奴だって鍛えられねえさ」
 敵の一点を狙い、レクスは銃弾を放つ。そしてその一弾が当たると同時に転がるように距離を詰め、そこへと銃身をあてて。
「さあ弾丸のフルコースご馳走してやるぜ?」
 そう言って放った銃撃は敵の身の内に深く響く。
 それでもまだなお、倒れぬ敵にレクスは舌打ち一つ。
「手前等の勝手で親を、子を、兄弟姉妹を! 大切なダチを奪われる奴を此れ以上増やさせて溜まるかよ!」
 その叫びにそうだなと頷きながら和が踏み込み、その手にある惨殺ナイフを振るう。その斬撃は敵の肉をズタズタに引き裂くもの。
 歪んだ刃先の傷口は癒すには難しい深いものになる。
 とんと地を蹴って、儚は敵の懐へ。
 その腕に纏うパイルバンカー。その先には雪さえも退く凍気が走っていた。
 敵へ打ち込む、その刹那に凍気は敵の上を駆け上がりその身を凍らせた。

●撤退
 儚の一撃に敵の身がすべて凍り砕け消えていく。
「終わった……」
「ほっとしてる暇はまだないよ」
 あっけないほど突然訪れた終わりに儚の気は抜けそうになる。
 けれど燦の一声に引き戻される。
 この場に長居する事はできない。それは周囲で少しずつ、回復し始めている様相が見て取れたからだ。
「簡単にはここは落とせねぇって事か……」
 また次の機会だなとレクスは零し隠れるのに使えそうな建物などを視界の端に収めながら撤退を開始した。
「こっちであってた……はず!」
 撤退の方向を和は見定めて進み始める。
 戦いの空気が薄らぐ先。ジゼルは一瞥して仲間に続く。
 この地の隊長格はどこにいるのか。それを探すのはまたこの場所を訪れる機会があればになるだろう。
 カイトはたいやきに行くぞと声をかける。そのバイザーはまだ上げない。
 ここはまだ、戦場だからだ。
「カトル、早く」
 ぴょんと跳ねた従者は自分よりも元気そうだ。その姿に小さく笑み零し、オルテンシアも身を翻す。
 まだ残る煙の中へ消える間際、奏多は一度だけ振り返った。
「何度だって抗うさ」
 静かに、奏多は落とす。
 俺達を潰そうというのならその目論見をこそ叩き潰す。
 猛き思いを秘め、アイスブルーの瞳は正面を向く。
 まだこの地での戦いは始まったばかりなのだから。

作者:志羽 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年9月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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