精霊馬事件~天の与える役目と人の役割

作者:ほむらもやし

●早朝の庭
「真理子、おまえが植えてくれたビワの木はこんなに大きくなったぞ。定壽も立派な先生になった」
 獅子のたてがみを思わせるような癖毛を持つ老人は庭木の幹に掌を当てながら呟いた。
 愛する妻を看取ってから40年。息子も成人して家庭を持った。
 老人は今、週二回の病院通いをしながら、庭木の手入れをしたり、絵を描いたりしながら、日々を過ごしていた。
「そろそろ役目も果たせたんじゃないかな?」
 ——真理子に会いたい。老人が小さく呟いた。
 太陽が雲で隠れたのか周囲が暗くなり、機を合わせたかのように、精霊馬、ナスで作ったようなドリームイーターが舞い降りてきた。
「なんとこれは。私の願いを聞いてくれるというのか? ならすぐに乗せてくれ」
「よかろう。汝が我と一つになるのならば、その願い、叶えてしんぜよう。……ギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラギュバラ!」
「ああ、ありがたや〜南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、真理子、私も昇天するぞ……」
 歓喜の涙を流しながら、なんとなく念仏を唱えながら手を合わせる老人に、ドリームイーターの呪文は黒い霧のようにまとわりつて行く。果たしてそれが老人の身体を完全に覆い隠した後、老人はモザイクの衣を纏った、超イケメンの青年と変わり、そして精霊馬と一体化する。
「すばらしい、汝のドリームエナジーが、我に流れ込んで来るぞ。これぞ、ワイルドの力! 汝はヒーローだ。救世主だ。そうだ、汝の望みが叶うまで、汝はドリームエナジーを生み出し続ける。これはすばらしいことだ。何も心配ない、これも死者に会うという、ありえん願いが叶うまでの間だけだ」
 カッと目を見開いた、ナスの精霊馬は言わなくても良いことまで口走るが、青年の姿となった老人の耳には届いて居ないようだ。
「さぁ、真理子、今からそっちに行くぞ!」

●依頼
「ケルベロス大運動会、お疲れ様。皆の帰りを待っていたんだ。で、悪いんだけど、危惧されていた、精霊馬のドリームイーターの事件が発生すると分かったから、早速対処をお願いする」
 今回のドリームイーターは、精霊馬に『若返って死別した妻や夫に会いに行きたい』と願う老人の願いを取り込んで、合体してパワーアップ、暴れ出そうとしている。
「精霊馬のドリームイーターは、たぶんドリームエナジーを奪うのでは無く、ドリームエナジーを生み出し続ける人間を取り込んで、さらに強い存在への成長を目指している」
 その想像を裏付けるように、老人を取り込んでいる状態の精霊馬のドリームイーターは、高い耐久力と攻撃力を持つ、かなりの強敵と判断されている。
「それから、老人を取り込んだまま精霊馬のドリームイーターを撃破すると、老人は大怪我をするか死亡してしまうからね。殺したくないなら、説得して助けることも出来るから、戦闘方針はよく考えてから決めて下さい」
 説得は、戦闘をしながらになる。
 戦闘の間に、取り込まれた老人が『死別した妻、真理子に会いに行きたい』という願いを捨て去れば、精霊馬のドリームイーターは老人からドリームエナジーを得られなくなり、増えていた分の耐久力と攻撃力が減少する。
「説得によってドリームエナジーを生み出さなくなれば、精霊馬のドリームイーターは取り込んだ老人を役立たずとみて、切り離して投げ捨てるから、結果として、精霊馬のドリームイーターを倒しても老人には危害が及ばなくなる」
 精霊馬のドリームイーター1体のみで、配下などはいない。受けた傷をモザイクで包んで癒すことを出来るほか、投げ飛ばしたモザイクで精神を侵食したり、巨大な鍵を使って心の傷を抉るような攻撃を繰り出すことも出来る。また攻撃を受けると催眠やトラウマを呼び起こされることもある。
「説得に成功し老人が切り離されれば、多少、だいたい定価の2割引きぐらいのイメージで倒しやすくなるはずだ。もちろんフルスペックの敵との戦いを望み、老人の命を顧みず、説得などしないで戦うというのであれば、止めはしない」
 なお、ここの精霊馬のドリームイーターは老人を切り離す前も後も攻撃方法や癒術が変化することは無い。
「ひとりになってしまうと、なげやりな気分になってり、普通に考えればおかしいと思えることも、正しいと思ってしまうことってありがちだよね。まだ生きられる時間があるなら、僕はその時間を大事に使って欲しいと思う」
 人は生きている限り天から与えられた役目がある。
 他人から与えられた役割を終えたからと言って、人生が終わっていると考えるのは早計である。
 ケンジはそう締めくくると、最後まで話を聞いてくれたケルベロスたち、ひとりひとりの顔を見つめ直してから、さあ行こう。と、手を差し伸べた。


参加者
ヒスイ・エレスチャル(新月スコーピオン・e00604)
戦場ヶ原・将(ビートダウン・e00743)
端境・括(鎮守の二丁拳銃・e07288)
ガロンド・エクシャメル(愚者の黄金・e09925)
セラ・ギャラガー(紅の騎士・e24529)
鍔鳴・奏(あさきゆめみし・e25076)
フィーラ・ヘドルンド(四番目・e32471)
安海・藤子(道化と嗤う・e36211)

■リプレイ

●始まり
 現場に到着した、セラ・ギャラガー(紅の騎士・e24529)とガロンド・エクシャメル(愚者の黄金・e09925)の前に現れた死妖霊牛、ナスの精霊馬のドリームイーターは、ゆっくりとではあるが、進路を変えずに庭から出て行こうとしている。
 巨大なナスに割り箸を突き刺したような四本足、背中にはモザイクで出来た衣をまとった男性が、木々の間から差し込む陽光に照らされて、その異質さを強調している。
「立派な枇杷じゃの、聞けば奥方が植えた物を今日まで手入れしておられたとか。枇杷とは古来長寿を象徴する樹、其の植えられた心の裡を量れるものではないけれど置き去りにするは惜しい」
 まずは庭に留まらせようとする、端境・括(鎮守の二丁拳銃・e07288)の言葉に続けてガロンドも口を開く。
「確かに琵琶も子どもも立派に育った。だが貴方一人で、ではない。真理子さんが支えたからこその、40年経った『今』『子ども』も『びわ』も二人で積み上げたものだろう?」
 まずは歩みを止まらせようと、ガロンドは声を掛け続けるが、背中の男は首を傾げて黙ったまま、自分に言われているとは感じていない様子、死妖霊牛の方も立ち止まろうとする気配を見せない。
「その『二人で』積み重ねてきた年月を投げだして、若返ってまで、何処に向かおうってんだ?」
 ――おじいさん。セラが呼ぶと、首を傾げたままの男は顔を向けた。
「貴方の生命の火はまだ赤々と灯っている。奥さんの元に行く時はまだ先のこと。貴方には息子さんの家族や貴方を取り巻く人々との縁を切るのは早すぎる。これから先に産まれるであろうお孫さんと過ごす楽しい日々もあろうと思う。今一度、思い直すことはできないだろうか?」
「嗚呼、真理子、真理子……」
 男はうわごとのよう愛しい者の名を口にする。今、彼の頭の中に現世の喜びは無く、あるのは非現実のみ、若かりし日に過ごした楽しい時間、その輝く時間を取り戻せる歓喜なのだろうか。
「お、うっ、おおう、これもワイルドなエナジー、すばらしい!」
 ゆえに行く手を阻もうとする邪魔者は敵、その意識で、男と死妖霊牛の気持ちがひとつとなると同時、黒光りし、そそり立つようなナスの先端から輝くモザイクが溢れ、それは前後するような腕の動きと共に放たれる。
 次の瞬間、それは蜜のような粘りとなって前衛の3人に絡みつく。咄嗟に庇おうと前に出た、ガロンドの後ろで、モザイクに覆われたセラがモザイクの散る地面に膝を着く。

●戦い
 説得してから戦うか、説得しながら戦うか、曖昧となっていた一線は崩れ去った。
 死妖霊牛は前進を止める代わりに戦端を切った。そして威力を増した攻撃の効果を満足するように見遣って、ぞっとするような笑みを浮かべた。
「最期を看取った筈だよね?  奥さんは言ってた? 直ぐに会いたい、て?」
「奥様はあなたが自分から死を選んで会いに来ることを望むでしょうか? 貴方を愛しておられるなら天寿を全うした後で誇らしいお気持ちで逢いたいのではないでしょうか」
 鍔鳴・奏(あさきゆめみし・e25076)の言葉に続けるようにして、ヒスイ・エレスチャル(新月スコーピオン・e00604)は、説得を続けながら、癒しの力を含んだ雨を降らせる。それは粘つくモザイクを溶かすように降り注ぎ、異様な光景を霧散させる。通り雨の如きメディカルレインはすぐに止み、機を合わせるよううにして、流星の煌めきを帯びた、戦場ヶ原・将(ビートダウン・e00743)の飛び蹴りが衝突する。
 ——其方の歩んできた『これまで』と歩むことのできる『これから』を捨てるはあまりに惜しいことじゃ。
 説得の言葉と共に、端境・括(鎮守の二丁拳銃・e07288)のサークリットチェイン、重力縛鎖銃から放たれる鎖が輝き。
「災厄を打ち払う力、星の加護を」
 間髪を入れずに、安海・藤子(道化と嗤う・e36211)の描いた、スターサンクチュアリの輝きが立ち広がり、まるで蛍のようにふわふわと浮かんでは消える無数の小さな光が、幻想的な光景を作り出す。
「のぅ、役目は確かに立派に勤め上げられたことと思う。なれば今少しばかり『楽しみ』を糧に生き其を奥方への土産話にしてもよいのでないかの」
「役目、ねぇ……それが何だったのかあたしにはわからないわ。果たせたからすぐに会いに行くってそれはそれでどうなのよ。奥さんが残したものが立派になって満足?」
 次の瞬間、括の言葉、仮面を外した藤子の呼びかけに、耳を傾けはじめたおじいさんの下方を、刃を咥えたオルトロスのクロスが、死妖霊牛の黒皮に一筋の裂傷を刻みつけた。
「ほんとうに、会いたいなら、いっそフィーラが、殺してあげる。慣れてるから。苦しまずに、あの世へ送れると、おもう。――死後の世界があれば、きっとまた、会えるよ?」
 フィーラ・ヘドルンド(四番目・e32471)の声に、何を言い出すのだと、場の空気が硬直すると同時、強く踏み、繰り出した、星形のオーラを込めた蹴りが空振る。
「けど、会いにきたあなたをみて、奥さんはよろこぶ? 死んだあなたをみて、死んでくれてありがとうって、言う?」
 続いた言葉を耳にして、セナは安堵しつつも、素早い身のこなしから、超高速の槍のひと突きを繰り出す。
「老人の生き死にや、エナジーをお前の好きにはさせない!」
 次の瞬間、死妖霊牛に深々と突き刺さった。ゲシュタルトグレイブから生じた稲妻が、その身体の中を駆け巡る。
 だが、祈りを捧げる様に掲げ持った大きな鍵の先が、いつの間にかにセナの腹に突き刺ささっていた。
「?!」
 それは、ゆっくりと腹にめり込んで背中側へと貫通し、間も無く内蔵を掻き回されるような激痛が心と肉体を蝕む。溢れた血と赤黒いモザイクが混じり合ってこぼれ落ち、夏の陽気に乾いた土に黒い染みの潤いをもたらした。
「目を覚ませ! その化け物の虚言に耳を傾けてはいけない」
 絞り出すようなセナの声が響き、続けてガロンドの繰り出した紙兵が舞う。
「奥さんに先立たれて! さぞ寂しかったろう! 辛かったろう! だからって置き去りにするのかよ! 琵琶を! 子どもを! 真理子さんの子どもに、他ならぬアンタが『消えない苦しみ』を与えるのかよ……! それが分からんあんたではないだろう!」
「お孫さんを見てみたいでしょう?」
 おじいさんに言葉が届いているのかを確かめる術は思いつかないが、少なくとも声は届いているはず。ミミックのアドウィクスが作り出した武器を敵に打ち下ろす中、死んだ人間は生き残った人間の幸せを願う人が大半のはず——そう信じてヒスイも短い言葉で繋ぐ。そして、ふわりとした表情を変えないままに、傷ついたセラに癒しの力を送る。
「願いと祈りを心に宿し! 未来の扉を今開け! ……ライズアップ!」
 掲げたカードに描かれたユニットの姿に変じた、将の必殺の一撃が、死妖霊牛を捉える中、説得は続き、奏も言葉を繋ぎながら前に出ると刀を振り上げる。
「やりたいことがあるから生きてんだろ。思い出してみなよ。本当にあんた、何の心残りもないのかい。孫の顔は?明日の飯は? 来週の時代劇は? ……あるはずだぜ、何かそうとも、あんたの人生終わっちゃいねえ!」
「約束があるのなら守らないと。未練があるのなら果たさないと。貴方は、その40年も、想いも、真理子さんと生きた事、全て無駄にするのかな?」
 月光斬の緩やかな軌跡が一条の傷を刻む。依然うわごとのような呻き繰り返す、おじいさんであったが、よく聞けば、真理子という名をばかりではなく、別の名前や単語も混じり始めていた。
「それだけじゃダメでしょ! 土産話を用意しなきゃ。息子さんが独り立ちして家庭を持ったならお孫さんのことを話してあげなさい。奥さんの知らない話をあんたがして、二人で笑いあえる。それが一番理想的じゃないの? 違う?」
 その微妙な変化に気づき、藤子が畳みかけるように語気を強め、影の如き斬撃を繰り出せば、オルトロスのクロスもまた地獄の瘴気を解き放ち、そこにフィーラがぽつぽつと疑問を投げかけて行く。
「あなたには、家族や友だち、いないの? そのひとたちを、置いていくの? そのひとたちは、かなしまないの? ビワもきっと、世話するひと、いなくなったら枯れて、しまうでしょうね」
 果たして、夢うつつなおじいさんにどれだけの言葉が伝わったのか、伝わらなかったのかは曖昧なまま、死妖霊牛はナスの身体を左右に揺さぶり始める。
「よくもよくもよくも、おまえら余計なことばかり、これでは役立たずではないか!!」
「あなたはまだ、必要とされているのでは? それでも、ほんとうに、死にたい?」
 直後、死妖霊牛がおじいさんを振り落とすようにして捨て、自分の傷に手当てを施すのを見て、フィーラは咄嗟に癒しの木の葉を放つ。

●怒濤の攻撃
「さて、ここからが本番じゃのう」
 括が薄く笑うようにして言い放つ。多少手当をしたところで、おじいさんを手放しドリームエナジーの供給を断たれた死妖霊牛はもはや強敵ではなくなっていた。
 即座に括は銃を放ち、御業を込める。
「ひとふたみぃよぉいつむぅなな。七生心に報いて根国の縁をひとくくり。さて、おぬしの御魂は此方側かの彼方側かの?」
 撃ち放たれた弾丸は6体の分身となり、描かれた銃弾の陣は生と死を分かつ結界を作り出す。
 駆け出したセラが、光の翼を暴走させ、全身を光の粒と変えて、体当たる。爆ぜる閃光、昼間の風景を白く塗り上げる程の光の中、さらに強い光の粒が舞い踊り、死妖霊牛の身体を壊して行く。
 ガロンドは構えたバスターライフルに力を送りエネルギー光線を放つ、それは半壊した死妖霊牛のナスの身体をさらに無残な形へと変え、ミミックの撒いた偽りの黄金の輝きが散る。
「悪戯が過ぎましたね。夢を見るのはお仕舞にしましょう」
 乳白色の瞳から零れ落ちた光を翡翠色の光を纏う雷と変えて、ヒスイの放った一撃が死妖霊牛に襲いかかる。
 もはや為す術も無くなったかのように、樹枝状に伸びる稲光に覆われて翻弄される敵の身体の周囲に水晶の如き結晶がわき上がる。死妖霊牛は堪らずに抜け出そうとするが、ゆっくりとしか動くことが出来ない。
 そこに将の電光石火の蹴りが閃く、強かに打ち据えられたナスの身体は地面をごろごろと転がり、黒皮の紫と果肉の如き白の混じったモザイクをそこかしこに散らす。
「我が言の葉に従い、この場に顕現せよ。静かなる冴の化身。全てを誘い、静謐の檻へ閉ざせ。その憂い晴れるその時まで……」
 漂う氷塊に龍の姿を与えた藤子は、転がったナスのような敵の身体を腕で指し示す。氷で出来た龍は意思を与えられたように荒ぶり、そして死妖霊牛を蹂躙する。
「キミの魂は、記憶は、感情は、全て貰い受ける。どうか安らかに」
 続けて氷に閉ざされ掛けた死妖霊牛を目がけて、奏が繰り出すのは魂喰らい、強烈な魔力にむき出しになった身体の裂け目からわき水のように吹き上がるモザイクを見据え、その命を啜り取る。
 悲鳴の如き、死妖霊牛の咆哮が轟くなか、その最後の一滴を啜るまで、奏は攻撃を止めなかった。
 かくして、妖怪とも魔物とも言える死妖霊牛、まるでナスのなれの果てのようにも見える敵は動かなくなる。
 間も無く、残暑の強い陽射しに照らされて、蒸発するように消えて行く死妖霊牛の残骸を見て、誰もが戦いに勝利したことを確信した。

●戦い終わって
 戦いの跡にヒールを施すと、激しく荒れた庭はたちまち元の姿を取り戻した。
「よくは覚えていないが、どうやらお世話になったようだね」
 正気にもどったおじいさんは、括やガロンド、セナが起こったことの概要を告げられると、そういうことかと、妙に納得した様子で頷いた。
「実に無粋だが……仕方あるまい」
 そんなタイミングで、ガロンドが最後に掛けたヒールが刹那の幻を作り出す。
 おじいさんは特に驚いたような反応は見せなかったが、戦いの余波で散り落ちたらしいビワの葉に気がついて、拾い集め始め、そして寂しげに呟く。
「もう、お盆は過ぎましたし。真理子もたくさん土産を持ってかえってくれただろうか」
「ええ、きっと、仰る通りでしょう――」
 おじいさんの表情は健康だが物悲しく、そして儚いと、ヒスイは感じながら、その境遇を自身と重ね合わせた。
 白い薄雲の漂う青空を見上げ、砕け散りごみ屑のようになった死妖霊牛の最期を思い出したセラは、おじいさんの前にしゃがみ込んで視線を合わせると、まだまだお若い、人生はこれからですよ。と、微笑んだ。
 齢75、10年や20年は軽く生きられそうだと。おじいさんは寂しそうに笑い返す。
 そんな様子を遠目に眺めつつ、フィーラ本当にそれでいいのかなあ? と疑問を抱きつつも、曖昧なままの方が良いのかも知れないとも。
 薄く流れる雲の先の方を見れば、急速に発達をする積乱雲が山の上に立ち昇って行く様が見えた。
「これはきつい雨が来そうじゃの」
 括はそう言うと、これからどうする? と仲間の顔を見る。死妖霊牛を撃破し、おじいさんの命を助けるという役割は確かに終えた。
 だけど、役割が終わっても役目がある、役目が終わっても役割がある、両方終わったら、時間は自分の為に使っても良い。そう考えることも出来る。
 かくして、仕事は此処で終わりとなって、自由な時間が始まるのだった。

作者:ほむらもやし 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2017年8月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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