鎌倉ハロウィンパーティー~一人ぼっちのカボキュラ

作者:大亀万世


 カラフルなイルミネーションの光が、カーテンの隙間から差し込んでくる。
 薄暗い部屋の中から、それを睨みつける男は、力任せに床を叩く。
「畜生、何がハロウィンだ……馬鹿にしやがってっ」
 街の賑わいとは無縁な部屋が、男の気持ちを更にいらだたせる。
「俺だって、俺だって……田舎に帰れば友達だって」
 恨めしそうに外へと続く扉を振り返る男の前に、何時からいたのか赤い頭巾を被った少女が立っていた。
「!?」
 ずぶりと、少女の持つ鍵が男の胸に突き刺さる。
「ハロウィンパーティーに参加したい……ですか。その夢、かなえてあげましょう。世界で一番楽しいパーティーに参加して、その心の欠損を埋めるのです」
 引き抜かれた鍵には血も付いていないにも関わらず、男の体からは力が抜けて散らかった床に倒れていく。
「……ぐ、な?」
 そして部屋の中に現れたのは、カボチャ頭に吸血鬼のような燕尾服を身に着けた異様な人物だった。
 マントを翻して部屋から出て行くその怪物の背中を、薄れ行く意識の中で男は見送ることしか出来なかった。

 集まったケルベロス達に向けて、セリカが地図を察し示す。
「藤咲・うるる(サニーガール・e00086)さんの調査で、日本各地で暗躍するドリームイーターが発見されました」
 ハロウィンに劣等感を抱いた人々から生み出されたドリームイーターは、世界で最も盛り上がるパーティ会場、鎌倉に一斉に襲撃を仕掛けようとしている。
「皆さんには、パーティーが始まる前にこの、ハロウィンドリームイーターを撃破していただきたいのです」
 ハロウィンドリームイーターは、パーティが始まると同時に姿を見せる。
「そこで、予定時間よりも早くパーティーが始まったと錯覚させるように賑やかに騒げば、一般人が集まる前に誘き出すことが出来るはずです」
 会場に現れるハロウィンドリームイーターは、ドラキュラのような燕尾服にマント姿、頭部にはくり貫かれたカボチャを被っている。
「くりぬかれたカボチャの中身は、モザイクになっていて中を見通すことは出来ません……このモザイクで攻撃をしてくるようですね」
 セリカは説明を終えると、手にしたレポートから視線を上げる。
「折角のパーティです。皆さんで楽しめるよう、ドリームイーターの撃破にご協力ください」
 そう言って、ケルベロスたちを鎌倉へと運ぶのだった。


参加者
メーア・アルケミス(ヴァイストゥーン・e00089)
ディディエ・ジケル(緋の誓約・e00121)
レティシャ・アーティライト(ツンデレミュージシャン・e00441)
斎宮・初(白妙の・e01230)
燈・シズネ(迷い猫・e01386)
日色・耶花(くちなし・e02245)
久瀬・彰人(地球人のガンスリンガー・e04430)
ハンス・ドレイク(ドラゴニアンの降魔拳士・e18232)

■リプレイ


 10月の終わりを迎えて、鎌倉の街は祭りの気配に沸いていた。
 大きな通りには南瓜や蝙蝠の飾りが並び、店には南瓜を使ったメニューが張り出され、子供たちに配るお菓子の籠が見え隠れしている。
 背の高い大時計は、もうすぐ始まるパレードに向けてチクタクと時を刻み続けていた……。
(「死者の霊が戻ってくるハロウィン……亡き妻クマンサも戻ってきてくれたらうれしいが……なんにせよ皆が楽しみにしているイベントだ。ジャマをさせるわけにはいかない!」)
 ハンス・ドレイク(ドラゴニアンの降魔拳士・e18232)は、街の様子にそう心の中で決意する。
 だが、お菓子を片手にした大きな猫のきぐるみ姿からは、彼の心情を読み取ることは難しい、例えそれが共に戦う仲間であっても。
(「参加したいのに飛び入りする勇気も無くて八つ当たりしてる所を狙われたって所か。雰囲気に流されれば結構すんなり入れそうな気がしないでもないが。と言うか祭りは見るほうは楽しいが実際やる方はかなりしんどいんだがな」)
 貴族風の仮装で、秋風にマントをなびかせるのは久瀬・彰人(地球人のガンスリンガー・e04430)だ。
 物静かな風貌の彼も、今日ばかりは賑やかにしながら通りを歩いていく。
「……賑やか、だな」
 仲間たちの様子にディディエ・ジケル(緋の誓約・e00121)が囁く。
 騒がしいのが得意でないと言う彼だが、その独特の雰囲気も相まって、山伏風の鴉天狗の仮装が見事にはまっている。
「ハッピーハロウィンまぐろーん!」
 仮装と言う点で誰よりも楽しんでいるのはきっと、メーア・アルケミス(ヴァイストゥーン・e00089)だろう。
 マグロの着ぐるみに身を包み、目を輝かせて……いや、死んだ魚の目をしたメーアが床に横たわれば、ハロウィン会場があっという間に魚河岸市場のようだ。
「気分はお化け屋敷やテーマパークのお化け役って感じだな。 なかなか愉快だぜ、トリックオアトリート!」
 包帯を肌に巻いた軍人ソンビのような姿をした燈・シズネ(迷い猫・e01386)も、仲間たちの仮装姿を目に楽しげに通りを歩く。
「私も仮装してきたのー! ナースよ。どう?」
「おおー、似合ってるぜ!」
 豊満な肢体をピンクのナース服に包み、見せ付けるようにヒールを鳴らす日色・耶花(くちなし・e02245)に、シズネがぐっと賞賛を送る。
「ありがと、シズネちゃん。トリートは……最近お気に入りの南瓜プリン!  人数分あるからどうぞ」
 おおっと、お腹のすき始めたシズネを初め、集まった仲間たちに配られたカボチャのプリンは、ハロウィンの気分を盛り上げる。
 盛り上がる一堂の中で若干緊張した面持ちを見せるのは、レティシャ・アーティライト(ツンデレミュージシャン・e00441)だ。
「姉妹や戦い以外に他の人に演奏するのって初めてだし……、す、少し緊張はするわね、ほ、ほんの少しよ!?」
 背中の大胆に開いた妖艶な黒いドレスで楽器を握るレティシャは、緊張を隠すように強がって見せる。
 彼女同様に、白い着物に白い額烏帽子を頭に巻いた斎宮・初(白妙の・e01230)も、緊張を隠しきれず手には力がこもっている。
「あ、あまりこういった賑やかな場は慣れていないのですが……折角ですし、が頑張ります」
 だが、初も自分はミュージックファイターだと自分を奮い立たせて、奏でられ始めるレティシャの音楽に合わせて歌い始める。
 演奏にあわせて歌われる2人の陽気な歌に、行進する仲間たちも合わせて楽器を叩き踊りだせば、パーティが既に始まっているかのような賑わいを見せる。
「……ぁ……ぁ」
 その行進の前に、見覚えの無い仮装が1人立ちふさがる。
 ドラキュラのようなタキシードの頭部に乗せられたくり貫かれたカボチャ。
 カボチャの中に見え隠れするモザイクを確認して、ケルベロスたちは一斉に戦闘準備に入った。 


 おびき出されたドリームイーターは、パレードの音が急に止まってしった事に、戸惑うようにかぼちゃ頭をぐるりと巡らして、ケルベロス達を見回している。
「このままパーティー気分でいたいけど、そうもいかないみたいね」
 ナース服からこぼれそうな胸を揺らしてそう言うと、耶花が現れたドリームイーターへ向けて武器を構える。
「タノシソウナ格好……ハロウィンなんて、無くなってシマエェっ!」
 仮装したままの姿に狙いを定め、ドリームイーターがケルベロス達へ向かって来る。
「仮想のお化けは歓迎だけど、本当にお化けはご退場よ? 永遠にね……」
 レティシャの奏でるメロディが、走り出した仲間に守りの加護を与える。
「ウワァァ!」
 カボチャ頭の目から飛び出すモザイクが、接近しようとしていた彰人へと襲い掛かる。
「やらせぬっ!」
 その攻撃に、ねこの着ぐるみを着たハンスが、間に割り込みモザイクを受け止める。
「いくぜっ!」
 ハンスに庇われ、モザイクの攻撃を免れた彰人は、駆け寄る勢いのままに足を振り上げて強力な回し蹴りをドリームイーターへと見舞う。
「パーティーに参加してぇならもちろん菓子は持ってきてるよな」
 体勢を崩したドリームイーターを、弧を描いて繰り出されたシズネ刃が切り裂いた。
「……受けて、見せろ」
 いつの間にか忍び寄ったディディエは、ゆらりとルーンアックスを振りぶり、かぼちゃ頭めがけて振り下ろす。
「グハァツ!?」
 真っ二つとはいかないながら、強力な一撃がにドリームイーターの口から悲鳴が漏れ、ふらつくように後退する。
「……楽しそうなカッコウで……ネタマシイィィ!」
 大きく開いたカボチャ頭の口から、先ほどよりも大量のモザイクが吐き出される。
「ここはメアにまかせるデス」
 仲間たちの前へ一歩踏み出したメーアの体が、モザイクに飲み込まれる。
 どのようなトラウマに襲われているのか、だらだらと額から汗を流して、マグロの着ぐるみ姿も心なしかぐったりと鮮度が落ちたような気さえする。
「数の上ではこちらが勝っています! このまま押し切りましょう!」
 初の励ましとともに迸る電撃に打たれ、メーアはびくりと跳ねるように体を起こすと、大きなマグロ型アームドフォートから小さなマグロ型ドローンを大量に放つ。
「トゥーンゲレート、ヴァールN」
 自分の周りを飛び回る小さなマグロ型ドローンをうっとりとみつめる内に、メーアのトラウマも癒されていくのだった。


「氷のオブジェになれば、パーティー参加は認められるかしらね」
 ドリームイーターの周囲の空気が凍りつき、レティシャの言葉通り全身が氷に包まれる。
「あら、雪まつりはもうちょっと先よね。ハロウィンにはお呼びじゃないわ」
 氷に包まれたドリームイーターへと、耶花がアームドフォートの狙いを定める。
「逃げたければどうぞ、動いてもいいわよ」
 耶花の手から放たれた弾丸は、狙い通りにドリームイーターのカボチャに風穴を開ける。
「喰らえっ!」
 崩れ始めたカボチャからモザイクを覗かせるドリームイーターを、ハンスが振るう爪の連撃が更に追い込んでいく。
「……そこ、だ」
 ドリームイーターへ急接近するディディエが、ルーンの光を宿した斧を振り下ろす。
「グワァ!?」
 ざくりと深く食い込んだ刃に、頭のカボチャを押えながらドリームイーターが悲鳴を上げ、その隙に彰人が両手に機関銃を構えて肉薄する。
「こいつが俺のとっておきだ! インフィニティブラスター!」
 唸りを上げる機関銃が至近距離から撃ち込まれる大量の弾丸に、ドリームイーターは全身を穴だらけにして、よろよろと後退する。
「ウ……アアアァァァッツ!」
 そして、ドリームイーターが頭を押さえて苦しみだしたかと思うと、ポンッ! 軽い音を立ててカボチャ頭が弾け飛ぶ。
 カボチャ頭の内側から、カラフルなリボンと共に無数の小カボチャが飛び出して、モザイクは通りを彩る飾りへと姿を変える。
「……パレード開始まであと5分。間に合いましたね」
 大通りの時計を見上げて、初が呟く。
 パレードを楽しみにしていた人々も、ケルベロス達が武器を収めると、大通りへと一斉に姿を見せるのだった。


「せっかく菓子も用意したんだし本物のパーティも楽しもうぜ!」
 定刻通りに始まったパレードへ、シズネが我先にと飛び込んでいく。
「そうね、折角用意したのだもの……少しくらい良いわよね」
 彼の勢いに乗せられるように、レティシャ達も賑わうパレードに加わり、街の活気に飲み込まれていく。
「……賑やかなものだな」
 用意していた菓子を配り終え、ぼろぼろになった猫の着ぐるみを脱いだハンスは、通りを見下ろす階段に腰かけて、パレードを見ながら物思いにふける。
 彼の背後では、ビハインドも静かにパレードを見下ろしていた。
「パーティーの続きしたいー! このまま飲みに行っちゃおっかなー」
 ハンスと同じように、用意してきた菓子を配り終えて身軽になった耶花は、パレードを抜け出してハロウィンの特別メニューを掲げるダイニングを物色し始める。
 パレードに活気づく街で、ケルベロス達も思い思いに過ごしながら、ハロウィンの夜は更けていくのだった。

作者:大亀万世 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年10月31日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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