「んーどっちかな、こっち? あっち?」
目隠しした少年が木のバットを持ってフラフラと砂浜を歩く。その先にはブルーシートの上に丸く大きなスイカが乗っていた。
「あと6歩? え? 行き過ぎ? 一歩下がって右側っと」
周囲から聞こえる好き勝手な声に従って少年は狙いを定め、バットを振り下ろす。パッカーンとイイ音が鳴り響いた。
「お!」
目隠しを取ると、見事に割れたスイカが目の前にあった。
「やったーー! オレすげー!!」
はしゃぐ少年が飛び跳ね、スイカの横に立った。
「よーし、それじゃ食べよっかな」
割れた部分を手に取り、豪快にかぶりつく。
「あまー! うめー!」
美味しそうにシャクシャクとスイカを食べていると、背後から伸びる影が少年を覆う。
『楽しそうだね♪ ボクも混ぜてもらおうかな♪』
声に振り返るとそこに居たのは5mはある巨大なスイカ。皮を抉って目と口を描き、ふぁさっとブルーシートがマントのように靡く。そしてマントから伸びる白い手袋にはバットが握られていた。
「ス、スイカがしゃべってる! お化け!?」
目を見開いて少年が後ずさる。
『人間はスイカを割るのが楽しいんだよね? じゃあボクたちスイカは何を割ったら楽しいかな♪』
ブンブンッと勢いよくバットを素振りするスイカは口をニタッと笑みに歪める。
『もちろん、人間を割ったら楽しいに決まってるよね♪』
スイカがバットを掲げると、少年の頭上から思い切り振り下ろされた。
「うわーーーーーーーー!」
パチッと少年が目を見開く。そこは暗い部屋の中。
「わ? 部屋だ……は~夢……」
脱力して少年はベッドの倒れ込む。
「スイカに割られるとか、マジこえー……」
ぐったりする少年の胸に鍵が突き立てられた。
「私のモザイクは晴れないけれど、あなたの『驚き』はとても新鮮で楽しかったわ」
ベッドの横に突然現れた魔女が鍵を引き抜く。すると少年は意識を失い、魔女の姿も掻き消えた。
代わりに現れたのはマントを羽織る巨大なスイカ。
『楽しく遊ぼう♪ 夏といえば……人間割りが今の流行さ♪』
手にしたバットで窓ガラスを破り、外へふわりと飛び出した。
「えっと……またドリームイーターが現れて被害を出すみたいだよ。バウムクーヘンの次は……おっきなスイカお化け?」
ネリシア・アンダーソン(黒鉛鬆餅の蒼きファードラゴン・e36221)がその姿を想像して、怖さを感じずに首を傾げた。
「第三の魔女・ケリュネイアが少年から奪った『驚き』から、新たなドリームイーターを生み出してしまうようです」
隣のセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が資料を出して説明を始める。
「ドリームイーターは人を襲いグラビティ・チェインの奪取を目的としています。人々が犠牲になる前に敵を撃破し、少年を助けてあげてほしいのです」
今なら犠牲者が出る前に現場に辿り着け、敵を倒せば少年の意識も取り戻せる。
「ドリームイーターは5mある巨大なスイカの顔に、マントの胴体と手袋の手をしています。武器に木製バットを持ち、それで相手を殴って攻撃してくるようです」
バットで人の頭を割ろうと執拗に狙ってくる。
「敵が現れるのは千葉県の海に近い民家付近。敵は普通のスイカのフリをして驚かせようとするみたいです」
じっとしているので、巨大スイカの発見は容易い。
「それと、驚かない対象が居る場合は、その人物を最初に狙うようです」
上手く利用できれば敵の攻撃対象を絞る事も出来るかもしれない。
「夏の海にスイカ割りというのはすぐにイメージの湧くお約束イベントですね。そんなイベントをスイカがやり始めるとなるととんでもない事になってしまいます。スイカに割られないように気を付けてください」
どうぞよろしくお願いしますとセリカは頭を下げ、出発の準備に取り掛かる。
「スイカは美味しいよね……スイカを割る以上食べられるならちゃんと食べてあげないと……人に迷惑を掛ける前に美味しく頂いてあげようね」
ネリシアは真っ赤な甘い果肉を想像して口元を緩める。それに釣られてようにケルベロス達も甘い味わいを幻想し、素早くヘリオンに向かうのだった。
参加者 | |
---|---|
ラビ・ジルベストリ(恩讐ここに無く・e00059) |
リナリア・リーヴィス(クラウンウィッチ・e01958) |
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426) |
マティアス・エルンスト(レプリフォース第二代団長・e18301) |
エストレイア・ティアクライス(さすらいのメイド騎士・e24843) |
長谷川・わかな(白のかくれんぼ・e31807) |
津雲・しらべ(追憶者・e35874) |
ネリシア・アンダーソン(黒鉛鬆餅の蒼きファードラゴン・e36221) |
●夜の海辺
日が落ちても暑さが残り少し歩くだけで汗が流れる。
「スイカのドリームイーターか……」
夏らしい敵が現れたものだと、ラビ・ジルベストリ(恩讐ここに無く・e00059)は汗ばむ額を鬱陶しそうに腕で拭う。
「ふむ、これまでスイカ割りと称して割られ続けてきたスイカの逆襲なのじゃ」
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)が付け髭を摘みながら歩く。
「じゃが、あたし達も負けるわけにはいかぬのじゃ。この夏スイカ割りを楽しみにしておる皆の為にものう」
「スイカ割り、か……やったことないけど、楽しいのかな……」
津雲・しらべ(追憶者・e35874)はスイカ割りという言葉からイメージを思い浮かべる。
「スイカ、甘いって……食べられるかなぁ……」
そしてドリームイーターを食べても大丈夫なのかと首を傾げた。
「スイカは甘くて美味しい良いものだ……が、人間を襲うのはよろしくない。スイカは割られるもの。大人しくしてもらわなければ」
人を害する前に退治してしまおうと、マティアス・エルンスト(レプリフォース第二代団長・e18301)は暗闇を見通すように視線を向けた。
「悪さをするスイカは真っ二つです!」
元気一杯のエストレイア・ティアクライス(さすらいのメイド騎士・e24843)は、割れたスイカを想像して美味しそうと思考が逸れていく。
「スイカが人を割る……ねぇ? いわれてみれば、なんでスイカ割りなんて遊びがあるんだろうね」
由来はなんだろうとリナリア・リーヴィス(クラウンウィッチ・e01958)があれこれ想像してみる。
「何かの余興だったりしたのかな? 何にしても、被害が出る前に止めなきゃね」
スイカに頭を割られる訳にはいかないとリナリアは敵の姿を探す。
潮風に向かって進めば広がる砂浜に月の光を反射する海。そして緑に黒い縞模様の5mはある巨大スイカが堂々と鎮座していた。
「おっきなスイカはロマンだけど、それが襲ってきたらたまらないよね。でもあれだけ大きなスイカだと食べごたえがありそうだねぇ……ふふふっ♪」
微笑みながら長谷川・わかな(白のかくれんぼ・e31807)は巨大スイカへ足を向けた。
「今日はスイカ割りだね。みんなでスイカ割りを楽しむかな……あっ……ほっといたら、化けスイカが……人間割りなんてスプラッタな事をして……一般人が巻き込まれるだろうし」
程々に楽しんで倒そうとネリシア・アンダーソン(黒鉛鬆餅の蒼きファードラゴン・e36221)は、黒鉛のオウガメタルを棒の形に変えスイカに近づく。
●スイカお化け
「おっきなスイカです! みんなで食べても食べきれないかもしれません!」
元気にエストレイアは飛び上がり驚いたフリをしてみせる。
「……此処まで大きいスイカって居たんだ。実際目にすると……ビックリするよね」
ネリシアは恐る恐る近づいて実が詰まっているのか棒で叩いてみる。するとポンポンとしっかり身の詰まった音が響く。
『もしかしてボクを割るつもりかな?』
するとスイカにパカッと目と口が出来て喋り出した。
『残念! 今回はスイカであるボクが割る番なのさ♪』
ブルーシートをマントにし、白い手袋を操り大きなバットを振り上げた。
「な、なんなのじゃ。このジャックオランタンではなくスイカオランタンは、ハロウィンには早すぎるのじゃ」
目を見開いたウィゼは髭を震わせて驚いてみせる。
「スイカが喋って動いてる……!」
相手に見えるよう演技してわかなは驚きを表現する。
「ええ……いくらなんでもお前それはムリがあるだろう……」
敵の猿芝居にラビは零れそうになった呆れ声を抑える。
「うわーなんということだーまさかこいつがスイカのバケモノだったなんてー」
そして白々しい棒読みの演技で驚きを表現してみせた。
『驚いてるみたいだね! とても気分がいいよ♪』
「驚く? いや、ただのでかいスイカでしょ? 驚くどころか、呆れるだけだよ。椅子、キミもそうじゃない?」
眼鏡を外して平然とスイカを見上げたリナリアは、隣のミミックの椅子と共に呆れ顔をみせる。そして強大な追い風を巻き起こし仲間達に加護を与えた。
『どうして驚かないの? そんな頭は要らないよね?』
スイカがバットを振り下ろすと、面倒臭そうに椅子は動かずそのまま攻撃を受けて砂にめり込む。
「ふむ、スイカか……スイカ割りにちょうど良いな」
挑発するように口元に笑みを浮かべたマティアスは、巨大な剣を構えて敵の正面に立つ。
『キミもか!』
振り抜かれたバットを剣で受け止め、勢いに負ける前に剣を傾け受け流す。
「スイカ割り……どんなふうにするのかな……? あのスイカで、出来るかな……?」
そんな疑問を浮かべながらしらべはネジを手にする。
「先生は銃だけど……私はこれ……狙い打つよ」
ネジを親指で弾くと、弾丸のように飛んでスイカに穴を空けた。
「ティアクライスのエストレイア、ここに参上致しました! 夏の日差しもなんのその、メイド騎士にお任せあれ!」
メイド騎士の姿へ変じたエストレイアは黄金の長剣を振るい、その輝きが星座となって仲間達を守護する。
「……スイカ割りの始まりだよ……」
信じる心を魔法に変えたネリシアが棒を叩き込むと、スイカの表皮が凍っていく。
「これで粉々にしちゃうんだからね!」
そこへわかなは鉄鍋をバットのようにフルスイングする。衝撃で凍った部分が砕けスイカがゴロリと転がった。
「さて、敵の注意が外れたことだし、そろそろ始めるとするかのう」
観察眼で構造を見抜いたウィゼは、鋭く蹴りを叩き込んで皮の薄い部分に大きなひびを入れた。
「スイカ割り、か。日本の夏の代表的な遊びのひとつだと聞く……どれ、このスイカを割ったら食べごたえがありそうだ。楽しみだ」
マティアスは腕を高速回転させてドリルのようにスイカを抉っていく。
『割るのが人間の特権だとでも? ノンノン、スイカだって割る権利はあるのさ!』
スイカはバットを振り上げた。
「ふむ、こういう連中は往々にしてツッコミどころ満載な理屈をぶちこんでくるというのが恒例なわけだが、こいつの主張は案外正論と言えば正論なのかもしれん」
背後から近づいたラビは扇を振るい鋭い打撃を叩き込み、スイカ内部に衝撃を浸透させる。
「まあ、でっかい食べ物っていうと過去にプリンアラモードに出会ってるからね、慣れてる」
リナリアはルーンの刻まれた特注の酒瓶を振り上げスイカに叩きつけた。ひびが入りプシャと果汁が漏れる。
「慣れるっていうのもイヤだけどねぇ」
慣れるほど会いたくはないと考えていると、反撃に振り下されるバットを酒瓶で受けて後方へ撥ね飛ばされた。
「これが私の……太刀筋、だから……切り捨てる……」
入れ替わるように間合いに入ったしらべが右腕の手首から刀を取り出し、その刃でスイカを斬りつけた。
『キミ達も一度経験してみるといいよ、割られるってどんな気持ちか♪』
口から無数の種を弾丸のように吐き出した。
「お任せを! 仲間を守るのも騎士の務めです!」
エストレイアは光の盾を生み出し、種を出来るだけを受け止める。
「確かにスイカ割りのスイカは、スイカ本人の身からすれば死刑執行を待つ囚人のようなものであり、そこに関して復讐してやろうという気持ちもあるいは理解でき……いや、やっぱりムリだな。おとなしく割られてもらおうか」
想像して前言撤回したラビは魔力で角砂糖を作り出し、それを弾丸のように飛ばすとスイカに当たって爆弾のように爆ぜた。皮が割れ中から果汁が血のように流れ落ちる。
「酒瓶でスイカを叩き割る……っていうのも何だか冒涜的よね」
忍び寄ったリナリアは酒瓶を何度も叩きつけ、傷口を悪化させて真っ赤な果肉を露出させた。
「そういえばスイカを焼いた事がないのう、どうなるか実験してみるのじゃ」
ローラーダッシュで炎を纏わせたウィゼが、割れた部分に蹴りを浴びせて果肉をジュッと焼き付けた。
『割る次は焼くっていうのかい? 人間は残酷だね!』
スイカは薙ぎ払うように種を飛ばしてウィゼを吹き飛ばす。
「スイカ、どこを見ている? 人間を叩くならこっちだ」
注意を引くように呼び掛けながら、マティアスは大剣に炎を纏わせて振り下ろし、スイカを切り裂き皮に焦げ目をつけた。
「おっきくてもスイカはスイカ! こうやれば簡単に割れちゃうよ!」
その傷口にわかなは鉄鍋を叩き込み、果肉をグチャグチャにして汁を噴き出させる。
「……まずは硬い皮を削ろうかな……ガイア……チャージキャリバーっ!」
ネリシアは根源より集めたエネルギーでスティックワッフルを生み出し、幾重にも振るってスイカの表面を削っていく。
「大きい的だから……外さない……」
しらべは指でネジを弾き、その傷に食い込ませて汁を噴き出させた。
●割るもの
『キミ達を割って同じように果汁を噴き出させてあげるよ♪』
ブンブンとバットを振るってスイカが襲い掛かる。
「残念だけど、バットで人間は割らせないよ」
割って入ったリナリアは酒瓶を振り抜いてバットを弾き返した。
「食べやすいように粉々に砕いてやろうか」
ラビの撃ち出す幾つもの角砂糖がスイカに着弾し、爆発を起こしてスイカを砕き果肉を撒き散らした。
『食べるならまだしも、グチャグチャに潰すなんて酷い!』
怒りに任せてバットを振ろうとするが、スイカの手が止まる。見ればバットに何かが巻き付いていた。
「ふぉふぉふぉ、ようやく気がついたようじゃの、お主の武器の異変にの」
隙をついてウィゼはキープアウトテープをバットに巻き付け、大きく振れないよう動きを制限していた。それでも無理矢理スイカはバットを振り下ろす。
「攻撃軌道、計算完了」
攻撃を予測したマティアスは大剣でバットを受け流す。そしてスイカが勢い余って反転している間に、露出した果肉を引き剣で抉って食べてみる。
(「こんなに甘くて美味しいなら、スーパーで買いたかったものだな」)
『勝手に食べちゃダメ!』
思わぬ美味に味わうマティアスを、スイカは種を吐き出して吹き飛ばした。
「こうすれば……スイカ割りになるのかな……?」
間合いに踏み込んだしらべは刀で縦に斬りつけスイカの動きを止めた。その隙に果肉を切り取り口に運ぶ。
「……甘い」
予想以上の甘さにもう一口と切り取って食べてしまう。
「私もちょっと味見してみようかなぁ……」
そんな様子に興味を持ったわかなは鉄鍋を振り抜いて叩きつけ、皮を割ると手を入れて果肉を取り出し口に含む。
「うん、あまーい♪」
口に広がる瑞々しい果汁の甘みに思わず笑顔が浮かぶ。
「……中は綺麗なスイカそのものだね」
断面を見ながらネリシアはワッフル盾をスイカに押し付けると、内臓パイルが発射してドリルのように突き刺さった。飛び散るスイカの破片を口に入れる。
「……こんなに甘いスイカは……初めてかも……」
『ダメって言ってるのに! 人間ってやつは!』
スイカは己が身を守ろうとマントで体を覆う。
「星厄の光、満ちたり。儚き者よ、燃え尽きろ」
左右に長剣を抜き放ったエストレイアが詠唱すると、黒い光が溢れ出し剣を振り抜いて放つ。スイカを黒い光が覆いマントをぼろぼろにさせていく。
「どれだけカッコをつけても、スイカにブルーシートではな……」
ラビはグラビティ・チェインを扇に込めて叩き込むと、刃のような鋭さを持ってスイカのマントを切り裂いた。
「スイカは甘くておいしいのはわかるけど、食べ過ぎるとお腹下すから私はパスかな?」
リナリアも拳を叩き込んでマントを引き千切り、地面に放り捨てた。続いて椅子が蓋を開けて噛みつく。
「椅子、食べるの?」
椅子は齧りつくとムシャムシャとスイカを食べ始めた。
『スイカは弄ばれる為に生まれたんじゃないんだよ!』
体を揺らして振り払い、スイカはこれ以上近づくなと回転しながら種を発射する。
「そうはさせんのじゃ、これを種避けにするのじゃ」
ウィゼは大量の小型ドローンを周囲に展開し、種に対する防壁となって撃墜されていく。
「そちらにも色々言いたい事はあるようじゃが、人を割らす訳にはいかぬからのう」
突っ込んだウィゼは蹴りを叩き込んでスイカを砕いた。
「特殊コマンド、実行。……凍てつけ」
周囲の水蒸気がコアに集積され、マティアスは胸部の発射口から光線を撃ち出し、スイカを氷漬けにしてしまう。
「か弱き民草の頭をカチ割ろうなど言語道断です! 私の剣で貴方の頭をグランドオープンです!」
跳躍したエストレイアは長剣で斬りつけ、スイカに大きな斬り傷を残した。
「そろそろ割っちゃうよ、当ったれー!!」
駆けながら鉄鍋を振り上げたわかなは、目を瞑って思い切り叩きつける。衝撃に大きくスイカが割れ、真っ赤な果肉を晒した。
『割られるのは人間のはずだろ!』
血のように全身から果汁を垂れ流すスイカは、バットを振って暴れ回り砂埃を巻き起こす。
「……最期に……温もりを……」
それに紛れるように近づいたしらべはスイカに優しく触れる。その腕から刃を出して深くスイカの中心を貫いた。
「……スイカらしく、綺麗に割ってあげるね」
ネリシアがスティックワッフルを大上段に構えて跳躍し、振り下ろす剣閃がスイカを両断した。
『割られちゃった、これがスイカの運命なんだね……』
パカッと二つに分かれたスイカは昇天するように消え去った。
●スイカを食べに
夜の砂浜に静けさが戻り、波の音だけが響く。
「あー消えちゃった……消えちゃう前にもっと食べとけば良かったね」
勿体ないとわかなは手に付いた甘い汁をペロリと舐めた。
「スイカはねぇ、お腹を冷やすから程々にね」
リナリアの隣では体を赤く汚した椅子がもう満腹だと言わんばかりにだらけていた。
「スイカでも、喋る相手を食べる気にはなれないな……」
嬉々として口元を汚した仲間達を見て、ラビは肩を竦めた。
「やはりスイカを割る方がしっくりくるのじゃ」
スイカを割る感触が楽しいからスイカ割という行事が続いているのだろうと、ウィゼは腕を組んで思索していた。
「スイカ割り、やった事がないからやってみたくなった。楽しそうだ」
中々爽快な手応えだったと、マティアスは切った感触を思い出す。
「倒してしまってから言うのもなんですが、なんだか勿体無い気分にさせられますね。食べられたらよかったのになぁ」
少し羨ましそうにエストレイアはスイカを食べて口元を汚している仲間達を見る。
「安全に遊べるのが、大事……帰りにスイカ、買って帰ろうかな……みんなで……楽しく、食べたい……」
「……みんなでスイカ割りも、楽しそうだね」
ヒールを掛け終えたしらべは、みんなでスイカを食べたいと言うと、ネリシアも賛成してそっと手を上げる。それに続き仲間達も声を上げ、皆でスイカを食べようと砂浜に足跡を残し歩き出した。
作者:天木一 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2017年8月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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